「粗茶です」
「あ、どうも」
「ありがとうございます」
ソファーに座るオレたちに、お茶を出してくれた姫島先輩。透き通った色をした緑茶だ。オレもたまに淹れるけどこうはならないな。お、うまい。
「美味しいです、姫島先輩」
「あらあら、ありがとうございます」
イッセーも飲んだようでそう言っていた。姫島先輩も嬉しそうに微笑んでいる。
「じゃあ朱乃、あなたもこっちにきて座ってちょうだい」
「はい、部長」
オレとイッセーが座っている椅子のテーブルを挟んだ反対側に座るオカルト研究部の面々。姫島先輩がリアス先輩の隣に腰を下ろすと、全員視線が俺たちに集まる。
「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔よ」
「マジ単刀直入ですね」
「そうですか……」
オレとイッセーは同様の反応を示す。突然学校の先輩に『私たち悪魔です』なんて告白されても『マジですか!それスゲェ!』なんて事にはならないよ。
「残念だけど、事実よ。昨日、あなたたちがあった男は堕天使よ」
「堕天使?」
「あいつらは何なんですか?」
「彼らは元々、神に仕えてた天使。でも邪な感情を持っていたため、地獄に落とされた存在。私たち悪魔の敵でもあるわ」
神とか天使とか地獄とか、そういうのが好きな人が聞いたら喜んで食いつきそうだな。生憎オレは違うけど。ファンタジーすぎるよ!
「私たち悪魔は冥界―人間界で言う地獄の覇権を巡って堕天使と争っているの。悪魔は人間と契約して力を得る。一方堕天使は人間を使役し悪魔を滅ぼそうとする。ここに神からの命で、悪魔と堕天使を滅ぼそうとする天使も加わって、三すくみの関係で太古から争っているの」
「いや、先輩。流石にそれは大きすぎません?」
「えぇ、普通の男子高校生の俺たちには分かりかねますよ。オカルト研究部ってこんなことする部活ですか?」
「これは事実よ。それとオカルト研究部は私の趣味ね。本当は悪魔の集まりよ」
うおーマジですか。いやでもオレみたいな存在もいるわけだし嘘では無いのか。
「―――天野夕麻」
先輩がそんなことを言ってきた。ん?誰だそいつ。聞いたこと無いな。
しかしオレは知らなかったが、イッセーは違ったらしい。その名前を聞いた時驚いていた。
「ッ!……どうして彼女のことを?」
「それは彼女も堕天使だからよ」
それを聞いてオレは一昨日イッセーを刺した女がその人であることが分かった。なるほどそんな名前だったんだな。
「!そうですか。でもどうして……?」
俺に近づいたんですか?声には出していなかったが多分そんなとこだと思う。
「それはある目的があったからよ」
「目的?」
「そう、あなたを殺すため」
「ッ!じゃあ、あれは夢じゃなかった……?」
やっぱり。一昨日のことを夢だとイッセーは思っていたようだ。実際に見ていたオレですら誰かが誰かを殺すなんて受け入れてないんだからな。
「どうして俺だったんですか?他の人じゃなくて……。俺が何したって―――」
「落ち着いてイッセー」
彼女に殺されたという事実に混乱しているイッセーを、宥めるように先輩が言った。
「あなたに近づいた理由だけど、あなたの中にあるものがないかの調査だったの。きっと反応が微妙だったのでしょう。で一昨日ハッキリと分かったの。あなたが神器を宿すものだと」
「神……器。なん……ですかそれ?」
何と!イッセーにも神器が宿ってたのか。やっぱり世界は分からないことだらけだな。
そんなイッセーの問いには木場が答えた。
「『神器』とは、特定の人間に宿る規格外な力。歴史に名を残す人たちは、全員所有者だと言われてるよ。その力を使って歴史に名を残した」
「現在でも、神器を宿す人はいらっしゃいます。世界的に有名な人たちがそうですわ」
木場に続いて姫島先輩が答える。へぇーそうなんだ。じゃあ某世界一の合衆国大統領も持ってんのかな?
「ほとんどが大きな力はないのだけれど、極希に私たち悪魔や堕天使をも滅ぼすことのできるものがあるのよ。そしてそれがイッセー。あなたに宿っているということ」
そう言うと先輩はイッセーの方に行き、
「イッセー、手をかざしてちょうだい。そう、そしてあなたが一番強いと思うものを思い浮かべて」
「一番強いもの……」
イッセーが呟くと、左腕が輝き出した。手の甲に緑の宝玉みたいなのは現れて、そこから左腕の前腕にかけて赤い籠手が出現した。
「な、なんだこれは!?」
「それがあなたの神器よ。一度発動すればいつでも出せるわ」
「へぇーそれがイッセーの神器か。カッコいいな」
「?驚かないのか?」
驚かないオレに驚くイッセー。何処のコントだよ。
「あぁオレの中にもあるからな」
『え?』
オレの衝撃発言に全員が聞き返した。そんなに驚かなくても。
「いや、だから。オレも持ってんの。神器」
そう言って発動させる。右手が輝き、収まった後右手の人差し指には指輪がついていた。
「これは『停止する異能』って言いまして、有りとあらゆる異能を使えなくするやつです。神器でもある程度までなら弱められます。ま、オレより実力が高い相手には効果は薄いですし、圧倒的ですと全く聞きませんけど」
『………』
苦笑しながらそう説明したがみんな唖然としていて聞いてない様子だ。
「あ、あれ?どうしました?」
あまりに動かないので聞いてみたが反応は無い。暫くするとグレモリー先輩が聞いてきた。
「……あなたって何者?」
「オレですか?オレは九尾の狐と人間のハーフで、神器持ちです」
『えぇぇぇぇ!!!!』
正体を教えたらメッチャ驚かれた。
「つまり、あなたは前からこちら側の世界を知っていたってこと?」
「らしいですね。まぁ天使やら悪魔なんて所詮絵空事だと思ってたんで記憶にないですけど」
笑いながら答えた。自分に関わりあるのに忘れてるなんて我ながらありえないわー。
「なるほどね。まぁ予想外のことはあったけど、取り敢えずあなたたちに教えたかったのはこれくらいよ」
「そうっすか」
「わかりました」
「ところであなた」
「オレ?」
「悪魔になる気はないかしら?」
「へ?」
今度はオレが驚く番だった。
「えぇぇぇぇ!!!……悪魔ですか。ん~面白そうだから良いですよ」
楽観的に返事をした。それにはリアス先輩もまた軽く驚いたようだった。
「そ、そう。随分簡単に返事をしたわね?」
「えぇまぁ。ここ数日でオレもそろそろ自分の立場と向き合わなきゃと思ってたんで」
「そう、わかったわ。じゃあこれを」
そう言って懐から出したのは、イッセーの時にも使ってた紅いチェスの駒だった。
「あなたをこれから『戦車』に転生させるわ」
先輩が言うと駒が輝き、オレの胸の中に入っていく。その時体の中で何かが変わる感じがした。
「?これで完了ですか?」
「えぇそうよ。じゃあ新しい部員も増えたことですし、改めて自己紹介をしましょうか。祐斗」
「はい。僕は木場祐斗。君たちと同じ二年生です。えーと悪魔です」
「……一年生、塔城小猫です。……悪魔です」
小さく頭を下げる小猫ちゃん。
「三年生の姫島朱乃ですわ。部活の副部長もしております。悪魔です、うふふ」
礼儀正しく頭を下げる姫島先輩。
「そして私が彼らの主の、グレモリー家次期当主のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵ね。こらからよろしくねイッセー、近衛」
優しい微笑みで挨拶するグレモリー先輩。
「二年生の兵藤一誠です。先日悪魔になりました。右も左も分からないのでよろしくお願いします」
畏まった挨拶をするイッセー。
で最後に、
「二年生の桜近衛です!先ほど悪魔になりました!九尾のハーフで悪魔というワケわかんない存在ですが、こらからよろしくお願いします!」
元気に挨拶をするオレ。
こうしてオレの悪魔としての長い長ーい人生が始まった。
「あ、そういえばグレモリー先輩のことはなんて呼べばいいんですか?」
みんなが部長と呼ぶのでふと気になった。それにグレモリー先輩って言いづらいんだよね。
「例えばお姉さまとか?」
「お前呼べんのかよ……」
「当たり前だ」
お姉さまなんて言うからイッセーをからかったら真面目に返された。お姉さまなんて恥ずかしくて呼べないよ!
「んーそうねぇ。それもいいけどやっぱりみんなと同じく部長でいいわ」
「わかりました!部長!」
「了解です。部長」
やった!ありがとうございます部長!やっぱり普通が一番だ。
「ふふ、二人とも面白いわね。じゃあこれから二人に悪魔について教えるわ。とは言っても近衛の方は既に知ってるみたいだけどね」
「いやいや、さっきも言ったっすけど殆ど記憶にないんですよ。なんでよろしくお願いします」
「わかったわ。まずは先の大戦についてね、朱乃」
「はい、部長。大昔に悪魔、天使、堕天使の三すくみでこの世の覇権を争う戦をしましたの。しかしその戦は勝者がいないまま各勢力を弱らしただけに過ぎなかったのです。その戦により悪魔は四大魔王と多くの上級悪魔、下級悪魔を失ったのです」
姫島先輩は説明が終わり元の位置に戻る。そんなバカでかい大戦が行われてたのか。三種族絶滅の危機になるとか……誰か止めなかったのかよ。
「ありがとう朱乃。次、祐斗お願い」
「はい、部長。それにより種の存亡が危ぶまれた悪魔は、数を増やすためにある対策をしたんだよ。その対策が他の種族を悪魔に転生させ眷属にするものだったんだ。これにより悪魔はどんどん数を増やしていった」
これが前に部長が言ってた転生ってやつの正体ね。それにしても悪魔ってのは面白いこと考えるもんだな。
「ありがとう、祐斗。じゃ最後に小猫お願いね」
お!次は小猫ちゃんだ!
「……はい、部長。……しかし眷属を持てるのは上級悪魔以上で、それより下の階級の者は眷属を持てません。……そのため下の階級の悪魔たちは眷属となり人間と契約をとったり、レーティングゲームと呼ばれる試合で成績を残して、上を目指すのです」
ほーほーそんなことをして上を目指すのか。じゃあオレたちも頑張れば上を目指せるって事だな。それより、小猫ちゃん可愛い過ぎ!
小猫ちゃんも同様に説明が終わり、移動した。……オレから遠ざかるように。
「ありがとう、小猫。さて、これまでで質問はあるかしら?」
「無いです」
「ありません」
「そう、じゃあ二人にはさっそくこれから悪魔の仕事をしてもらうわ」
そう言って部長は、チラシとレーダーみたいなのを渡してきた。このレーダーどことなくド〇ゴンレーダーっぽいんだが……。
「部長これは?」
「それは、願いがある人の場所を教えてくれるものよ」
イッセーの質問に部長は答える。おいおい……確信犯の匂いがしてきた。てかスッゲーそのハイテク技術。
「それが指す場所に行って、ポストにチラシを入れてきてちょうだい」
ポ、ポストにチラシって……何だか新聞配達みたいだな。
「ポストに投函、楽しそうですな」
「了解です。行ってきます」
「えぇ、気を付けてね」
そう言ってオレたちは新聞はい……じゃなくてチラシ配りに向かった。
「ぶ、部長……終わり……ました」
「ただ……いま戻……りました」
「あら、おかえり。以外と早かった……ってどうしたの?」
あの後オレたちは別れてそれぞれチラシをポストに入れてきた。しかし、二人とも考えることは同じで、オレはイッセーに、イッセーはオレに配るスピードで負けたくなく猛スピードで終わらせた。
その結果滅茶苦茶疲れて帰るのが大変だった。
「……ただのバカです」
「ぐはっ!」
小猫ちゃんにそんな事を言われてオレは最後の体力を失った。