ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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またしてもお待たせしました。
本当はもっと早く投稿するつもりだったんですけど、色々とありまして遅くなりました。

少し早足ぎみですが違和感はないと思うので、どうぞお楽しみください!


第12話

「『美しい友情だな。いや、これも愛の一つか?』」

 

 そう呟くのは近衛を乗っ取った九尾の化物。次はこいつから近衛を取り戻す。

 

「もう一度聞く。お前は誰だ。近衛をどうした。何が目的だ」

 

「『もう一度と言いながら先程とは違うのも混ざってるぞ』」

 

「知るか。聞きたいことがあるんだ。答えろ」

 

「『まぁいいだろう。我に名などない、好きに呼べ。次に近衛とやらだが、別にどうもしていない。少々この体を頂いただけだ。最後に目的か。簡単に言えば世界を破壊することだな』」

 

 随分素直に答えたと思ったらヤバそうな思想の持ち主だった。世界の破壊とは……テロリストたちと一緒じゃないか。

 

「世界の破壊?何の為にだ、お前も禍の団と繋がってるのか」

 

「『禍の団とやらが何かは知らないが繋がってなどいない。我が世界を破壊する理由は簡単だ。ただ憎いからだ。己の存在を認めない世界、卑しき者たちによって穢された世界が』」

 

 怒り、憎しみ、嫌悪。奴の表情から様々な負の感情が読み取れた。それはあまりにも濃くて、深く一歩後退りしてしまった。

 

「───ッ!そ、それが近衛とどう関係するんだ。お前個人の憎しみなら関係ないだろ」

 

「『なんだ、何も聞かされてないのか?いや、この者自身知らないのかもしれんな。いいだろう教えてやろう』」

 

 随分と上から目線で来たなこの野郎。スゴいムカつくがここで変に挑発しても意味がない。我慢するか。

 

「『この者の父と母が陰陽師と妖怪、九尾の妖狐であることは知っているか?』」

 

「あぁ、知っている。父親に関しては本人の口から聞いてはいないけどな」

 

「『それはなんとも、くくく。まぁよい。陰陽師と妖怪、この二つは遥か昔から対立し相反する者同士だ。相反するのは別に相手のことが嫌いだからという理由だけではない。魂、精神、存在。それら根本的な部分で互いを受け入れられないのだよ。それは何故か?』」

 

「何故か?……陰陽師、妖怪。敵同士で光と闇みたいな関係……」

 

「───ハッ!まさか、そういうことなの?」

 

 部長が何かに気づいたように声をあげる。俺はまだわからない。その事実が無性に腹が立った。

 

「『少年よ、いい所を突くな。光と闇、まさにその関係だ。陰陽師が陽、妖怪が陰、彼らは陰と陽の関係。言い換えれば聖と魔だ。ここまで言えばわかるか?』」

 

「……なるほどな、そういうことか。聖と魔、光と闇、陰と陽。絶対交わることない者同士。だから世界に存在を認められないのか」

 

「『そうだ。聖書の神と魔王の消失による聖と魔のバランスは何も悪魔、天使、堕天使だけに影響があるわけではない。───桜近衛は生まれてきたこと、存在すること事態許されないのだよ』」

 

 陰陽師と妖怪の間に生まれた子。陰と陽、本来交わることがないのが交わった存在。世界に存在を認められない。だから近衛は……。くそ!

 

 隣の部長を見ればなんとも言えない表情をしていた。部長もこの問題に対してどうすればいいか思い付かないようだ。

 

「『少年の質問には答えた。してこれからどうするのだ?我の目的を知り、少年の仲間がそれに賛同している。何もせず諦めて我の目的が果たさせるのを待つか』」

 

 ピクッ

 

 ───近衛を諦める?中学から五年間、ケンカから始まった仲だけど俺はそれなりに楽しかった。明るく、クラスではムードメーカー。そのくせして何処か常に暗さを隠してる。自分の弱さを認め克服しようとしてる頑張り屋。俺の大切な親友。そんな近衛を諦める?───ふざけんな!

 

「そんなわけねぇだろ!あいつは俺の親友だ!仲間だ!何があっても見捨てない!」

 

「『ならばどうする?』」

 

「お前を倒して取り戻す!」

 

『Explosion‼』

 

 今まで倍加していた分を維持し力を高める。そして魔力の球を作り出し打ち出す!

 

「食らえ!ドラゴンショット!!」

 

 ズドオォォン!

 

 ドラゴンショットは奴に直撃した。倒すまではいけなくともそこそこのダメージは与えれただろう。それだけ威力に自信はある。しかし、土煙が晴れて見えた奴の姿に俺はその考えが甘かったことを知った。

 

「『ふむ、中々の威力だ。一瞬とはいえ力も何倍に上昇したみたいだしな。いいだろう。準備運動も兼ねて相手をしてやる』」

 

「な!?む、無傷……!そんなバカな……」

 

「『何をそんなに驚く?仲間の能力くらい把握しているだろう?』」

 

「近衛の『堅牢』か!」

 

「『そうだ。体を使ってるのだから能力が使えない道理はないだろ?』」

 

 したり顔をして奴は言った。くそ!奴自身の力もわからないのに近衛の力も使えるなんて!面倒くさい奴だ!何か近衛にも腹立ってきたぞ。

 

 若干イライラしながら作戦考えてると、部長が肩を叩いてきた。

 

「イッセー落ち着きなさい。二人で行くわよ」

 

「部長……わかりました。じゃあ俺が隙を作るので一発デカイの撃ってください」

 

「わかったわ」

 

「せ、先輩!ぼぼ僕も一緒に戦います!近衛先輩を助けたいです!」

 

「ギャスパー、お前……よし!いっちょやってやるか!」

 

「はい!」

 

 部長とギャスパー。二人もやはり近衛を助けたいみたいだ。当たり前だよな。あいつを仲間と思ってるのは俺だけじゃない。他の眷属のみんなだって思ってんだ。必ず助け出してやる!

 

「『今度は全員で来るか。いいぞ。もっと我を楽しませろ!』」

 

「生憎こっちにその気はないんでな!早急にカタをつけさせてもらうぞ!ギャスパー!」

 

「はい!」

 

 ギャスパーが瞳が怪しげに光り、神器が発動する。俺を視界に入れながらもギャスパーは見事に奴だけを停めた。そして倍加が続いてる状態で奴をぶん殴る。

 

「おらぁ!」

 

「『ぐっ!……ふはは!やるな少年!そこの吸血鬼の力で我を停めただ愚直に殴りに来るとは。威勢がいいな!』」

 

「いい意味で受け取っとく!もう一発食らっとけ!」

 

 今度は右足で回し蹴りを放つ。しかし奴はそれをバク転して躱す。その際尻尾で俺を弾き飛ばしてきた。

 

「がっ!くっ、さすがに何度も攻撃できないか」

 

 ギャスパーの神器もさっきはたまたま上手く発動したが今度はどうなるかわからない。最悪俺だけを停める場合があるから博打だな。部長の攻撃も今撃ったところで『堅牢』を使われて防がれる。ベストとしては俺に意識が向いた状態で使ってもらいたいところだ。

 

 チラッと俺は自分の右腕にあるリングを見る。奴の能力がわからない以上まだ使いたくないがそうも言ってられないか。

 

「ドライグ、頼む!」

 

『いいのか相棒。ここで使っても。早すぎる気がするぞ』

 

「それは俺も思う。だけどもうこの手しかない。部長の一撃で決めるにしてもそのための隙が必要だ。俺はそれを作らなきゃならない。なに、最悪体の一部をお前に渡して強制的にならせてくれればいいさ」

 

『はっ、さすがは相棒!いい覚悟だ!』

 

『Welsh Dragon Over Booster!!!!』

 

 神器が赤く光輝くオーラを発し俺の体を覆う。アザゼルから貰ったリングが上手く発動したようで今回は犠牲を払うことなく禁手になれた。

 

「よし!これで更に時間がかけられなくなったな。背水の陣で挑んでやる!」

 

『BoostBoostBoostBoost‼』

 

「ドラゴンショット!」

 

 初めに撃ったものより遥かに巨大な魔力の塊が奴を襲う。しかし、当然さっきと同様『堅牢』を使って防ぐだろう。だから!

 

 俺は自分で撃ったドラゴンショットに隠れながら奴に近づく。案の定奴は『堅牢』を使って防いだ。ここまでは予想通りだ。後は能力を解除した瞬間を狙って渾身の一撃を叩き込む!

 

「『こざかしい。同じ手を使われて易々と受けるバカがどこにいる。少し興醒めしたぞ』」

 

「そうかい!だったらこれでも食らいな!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

 ドゴォン!

 

「『がはっ!』」

 

「部長!今です!」

 

「ええ!はあぁぁ!」

 

 部長の手から強大な魔力が放たれる。それは今までの全ての攻撃を凌駕していた。これなら行ける!

 

 俺はすぐにその場を離れる。直後に部長の攻撃が奴に当たった。強い衝撃と盛大に土煙を発生させて落ち着いた。あのタイミングでは防御するのは不可能だ。これで奴も……。

 

 多少願いを込めながら土煙が晴れるのを待つ。少しして土煙が晴れてきた。そして見えてきた奴の姿に軽くガッツポーズをとる。

 

 咄嗟に尻尾でガードしたのかほとんどが無くなっていて、顔の上半部の右側が吹き飛んで無くなっていた。全身も血だらけでどこから見ても満身創痍だった。

 

「や、やった!やりましたよ部長、先輩!」

 

「あぁそうだな。後は奴から近衛を元に戻す方法を聞いて───」

 

「───ッ!イッセーまだよ!まだ終わってないわ!」

 

「え?」

 

「『───く、くくく。これはこれは。素晴らしい一撃だ。まさか我がここまでの傷を負うとは。見事だ、少年たちよ』」

 

「な……に!?」

 

「『だが、我を倒すには少々足りたかったようだな。これはほんのお礼だ。受けとれ』」

 

 奴の上空に光の球が出現する。そしてそこから無数の光が発射された。それはテロリストの魔法使いたちを全滅させた技だった。

 

 驚愕していた俺は動くのが一歩遅く全身にそれを食らう。部長はとっさに防御障壁を展開しギャスパーを守ったが、数の多さに負け吹き飛ばされた。

 

「きゃあ!」

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

「があ!」

 

「『形勢逆転だな。何、別に恥じることは何もない。この我をここまで追い詰めたのだ。胸を張って死んで行け』」

 

 それだけ言うと奴は高速で近づき、少し起き上がっていた俺にタックルを決めた。衝撃をもろに貰い新校舎の壁まで吹き飛んだ。

 

「がは!……ごふっ」

 

 内臓がグチャクチャになり血を吐いた。鎧のお陰で体の方はなんとか無事だが全身に力が入らない。まさに絶体絶命。───だけどそれでも俺は諦めない。諦められない!

 

「ぐっ……が、あぁぁぁぁ!」

 

「『……』」

 

「はぁ…はぁ……まだ、だ。まだ……死ねない!」

 

「『……何故そこまでして頑張る。この者は少年にとってなんなのだ?』」

 

「……親友…だ」

 

「『それは命をかけるものなのか?』」

 

 親友のために命をかける。普通ならば絶対にない。家族ならまだしも元々赤の他人だった者に命をかける物好きはいない。俺自身そうだ。だったら何故俺はここまでして近衛を取り戻したいんだ?近衛の家族のため?仲間たちのため?いや違うそうじゃない。ならなんのために……。

 

「あぁ……そうか、そのため…か」

 

「『もう一度聞く。貴様は何故命をかける』」

 

「自分の……ためだ」

 

「『自分のため?』」

 

「そうだ。俺は……あいつのいる日常が好きなんだ。隣でバカやったり、小猫ちゃんとイチャイチャしてるのを見て部長たちと笑い合う……そんな日常が。だから俺は近衛取り戻したい」

 

「『だがそれは少年の勝手な想いだ、エゴだ。この者は死にたいと願っている』」

 

 そうだ奴の言う通りだ。近衛に戻ってきてほしいなんて俺が勝手に想ってるだけで、あいつは望んでいないのかもしれない。───でもそれがどうした?わがままだって言われるかもしれない。お節介だって言われるかもしれない。

 

「それでも俺は……!近衛と一緒にいたいんだ……生きていきたいんだよ!俺だけじゃない!部長や朱乃さん、アーシアにゼノヴィアに木場、ギャスパーに勿論小猫ちゃんも。みんなお前とまだ一緒にいたいと願ってんだ!お前はどうなんだよ近衛!!」

 

 体に鞭打って突撃する。その間に最大まで倍加をする。きっとこの一撃を決めたら禁手は解除されるだろう。それでもいい。この一撃に力も、想いも全て込める!

 

「おおおぉぉぉぉぉお!!」

 

 バキィィン!!

 

「『ぐおおぉぉぉおお!』」

 

「吹っ飛べぇぇぇぇぇ!!」

 

 バアァァァン!

 

 奴の体は校庭の反対側まで飛んでいった。結界に当たったのか盛大な音をたて地面に崩れ落ちた。俺の方も力を全て使い果たして鎧は解除されたが、気合いで倒れるのは我慢した。

 

「はぁ…はぁ、はぁ。ど、どうだこの野郎」

 

「『は、ははは。本当に見事だな、少年。まさか我が倒されるとはな。いいだろう。少年の想いに免じて返してやる』」

 

 その言葉に疑問を覚えながらも、その後の奴の行動で信じることにした。奴の体が光ったと思うとその体積が徐々に小さくなっていき、最後には人間サイズになった。そして光が晴れた後に見えたのは近衛だった。

 

「近衛……!」

 

 俺は姿が見えるなり駆け寄る。近衛も気がついたのか体を少し起こしていた。

 

「よぉ、イッセー」

 

「近衛か?本当に近衛か?」

 

「おいおい、オレ以外に誰がいるってんだよ。ありがとな、イッセー。お前の想い、しっかり届いたよ」

 

「何、気にすんなよ。俺とお前の仲じゃないか」

 

「あぁそうだな。だからオレは───」

 

 ドスッ!

 

「え───」

 

 背中に強い衝撃。次いで喉に込み上げてくる血の味。下を見てみれば、何かが俺の胸を貫いていた。

 

「近……衛…?」

 

「オレは世界を破壊する道を選ぶ」

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