ハイスクールD×D~九尾の少年~   作:toruyuki

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第14話

「……よう、やっと会えたな」

 

 暗闇の中、いるであろう相手に話しかける。いや、確実にいる。この場所が何よりの証拠だ。しばらく待つと、観念したように姿を現した。

 

『随分と無茶なことをするな』

 

「お前に会うためなら何だってするさ」

 

『死ぬかもしれないぞ?現に聖剣は貴様の体を蝕んでる。後一刻ほどで貴様は死ぬ』

 

「それならそれでいいさ。ただ部長たちには謝らなきゃいけないから死ねないけどな」

 

 オレは自分があの人たちにしたことを思い浮かべる。どれも死ぬ可能性があったものだ。ヤベッ、マジで死ぬ気で謝らないと殺されそう。

 

『ククク、酔狂な奴だ。自分で言ったろ?目的のためなら立ちはだかる障害は排除すると』

 

「言ったのお前だし、やったのもお前じゃん」

 

『我とお前は二つで一つ。いや、我らは三つで一つか』

 

「……やっぱな。だったらオレがどうしたいかわかるよな?」

 

『わからんなぁ。言葉にしてくれないと』

 

 ビキッ!

 

 ……どこぞの少女マンガだ!感情表現が苦手な彼女に彼氏が好きって言わせる台詞か!オレか?オレが彼女なのか!?ふざけんな!

 

 などとこめかみに青筋をたてながら思ったことをぶちまける。もちろん心の中で。おかげで多少荒けた心も落ち着いた。

 

「はぁ……オレは一度世界に絶望した。たしかにそれは事実だ。存在するはずのないオレを世界がどうするかわからない以上先に行動するか死ぬしかない。だからお前の案に乗った───だけど、それでもみんなはオレを止めるため、取り戻すために戦ってくれた。オレはその想いに応えたい。だからお前を止める」

 

『なるほど、貴様の考えはわかった。してどうするのだ?どのようにして我を止める?』

 

「希望は話し合いだ。それですむなら楽だし。だけど無理だろうな」

 

『わかってるじゃないか。それくらいで止まるなら初めからやってなどいない』

 

「だよな。そうなるともう一つしかない」

 

『当たり前だな。男が矜持を通したいならすることは一つ。───力で相手をねじ伏せることだ!』

 

 その言葉を皮切りに奴は魔力弾を放ってくる。ッ!随分と気の早い奴だ!こちとら目覚めたばかりだっつうのによ!

 

 とは言えそうも言ってられない。魔力弾を体を逸らしてかわして、すぐさま『疾風』を発動して近づき一撃を入れる。だがそれは奴の尻尾によって阻まれた。

 

「いきなりとは酷くねぇか?」

 

『いつも先手を譲られるとは思わない方がいい。戦いに奇襲は付き物だしな』

 

「確かにな。んじゃ気合い入れてやりますか!」

 

 『疾風』を解除して力任せに押しきる。それに逆らうことをせず奴は後方に移動する。そして今度は九本の尻尾で攻撃してくる。上左右の三方からくる攻撃を腕をクロスして受ける。しかし、予想より一撃が重く後ろに弾き飛ばされた。すぐ体勢を整えようとするが、奴はその隙を与えないように追撃してくる。

 

 足で地面に叩きつける攻撃を体を捻ることで避けるが軽く掠った。それだけでも肉を少し持っていかれ少なくない血を流す。不幸中の幸いは腕や足ではなく胴であるとこか。

 

「ぐがッ!」

 

『どうした、これで終わりか?貴様の覚悟とやらは随分ちっぽけなモノなんだな』

 

「んなわけ!ねぇだろうが!」

 

 気合いと共に回転の勢いそのまま『剛力』を発動して奴の横っ面を蹴り飛ばす。それで終わらず地面に足をつけ顎を打ち抜く。止めとばかりに前宙踵落し!

 

「どうだこんちくしょう!」

 

『ガフッ!ク、ククク!やるなぁ、今のは効いたぞ!だがまだ全力ではないだろう?でなければ我は倒せんぞ!』

 

「はっ!お前なんて『九尾化』使わなくたって充分だ!」

 

 なんて言ったが単なる強がりだ。奴の言う通り『九尾化』しなければ敵わないだろう。いや、なった所で良くて互角だ。このままやったら負ける。そんなことはわかってる。だからこれはただの意地だ。

 

「お前はオレの力で倒す」

 

『ふむ、そういうことか。端から見れば愚かな行為だが……面白い!やってみろ!』

 

「言われなくてもそのつもりだ!」

 

 脇の傷を魔力で止血して駆け出す。ただ愚直に真っ直ぐ。対して奴は尻尾で薙ぎ払いをしてくる。それをジャンプでかわし殴りかかる。しかし、それは容易く避けられ爪で吹き飛ばされる。

 

 カウンターぎみに入れられた攻撃は思ったより強く結構な距離飛ばされた。無様に転がるも立ち上がりまた駆け出し吹き飛ばされる。何度も立ち上がり吹き飛ばされる。何度も、何度も。

 

 少し経つ頃には全身傷だらけで至るところから血を流してる。立っているのがやっとのくらいだ。だけど、それでもオレは立ち上がるのを止めない。

 

『……何故だ、何故そうなってもまだ諦めない。あのドラゴンの少年もそうだった。貴様を助けるために死にかけながらも諦めなかった。我には到底理解できん』

 

「……ハッ、だろうな。オレからも一つ聞きたい」

 

『なんだ』

 

「お前、大切な奴っているか?」

 

『そんなものはいない』

 

「やっぱり。それじゃあお前は一生理解なんてできないな」

 

 嫌みたらしい笑みを浮かべる。それを見て奴は見るからに不機嫌になった。纏う魔力も若干波立って揺れている。

 

「人間はな、とても弱い。力も肉体も心。すぐに楽な方へと逃げ出す醜い生き物だ。妖怪からしてみれば取るに足らない存在だ」

 

『そうだな。だからこそそんな存在に穢されたこの世界を破壊するのだ』

 

「───だけど、そんな人間でも自分の命を賭して戦う時がある」

 

『……それはどんな時だ?』

 

「大切なモノを守る時だ」

 

 真っ直ぐ奴の目を見て答える。射貫くような俺の視線に奴は畏縮し後ずさる。

 

「敵が圧倒的な力を持っていていようと、絶体絶命の死の淵に立っていようとも。人間にはそれだけの強さがある。だからオレもイッセーも満身創痍になろうが諦めねぇんだよ!!」

 

『ッ!!───わからん、理解ができん。己以外は全て矮小な存在。取るに足らない邪魔な存在。それを守るために命を賭ける?意味がわからん』

 

「一生そうやってろ。お前がその考えを変えない限り理解なんて出来やしない。オレに倒されて大人しくしてろ」

 

『……いや、もういい。考えるだけ無駄だな。どうせこんな世界破壊し尽くすだけだ。貴様を倒して身体を乗っ取って完遂する』

 

 ここに来て言葉による説得を試みて見たが意味が無かったようだ。くそー、結構良いこと言ったつもりなんだけどな。流石はオレの半身。いや三分の一身?頑固だな。

 

「人間考えるの止めたらそこで終わりなんだぞ?人間は考える葦だなんて言われるくらいだからよ」

 

『我は妖怪、九尾の妖狐だ。人間なんぞの型に嵌めるな』

 

「あーはいはいすみませんでした。これ以上の問答は無意味だな!」

 

 奴に向かって駆け出す。それを見て奴は盛大に笑った。

 

『くははは!!愚かな!先程と何ら変わらない突進。それでは同じ結果だぞ!』

 

「だろうな!だから今回は小細工させてもらうぜ!」

 

 手に魔力を集めてイメージする。形状は球、射程距離は小距離、効果範囲は大、衝突後発揮する効果は───爆発。

 

「食らいやがれ!」

 

 射程距離に入るなり魔力の球を発射。直径50センチのそれは弧を描くように飛んでいく。予想外の攻撃に奴は回避することが出来ず衝突した。

 

 ドオォォンッ!!

 

 盛大な音をあげて魔力は爆発した。すかさず水を出現させ蒸発させ白い蒸気を発生させる。それで奴の視界を塞ぎ次の一手の準備をする。

 

『グッ!!───小賢しい!その程度の爆発で我が倒せるか!』

 

「だろうな。そんなんで倒せるなんて思っちゃいねぇよ。本命はこっちだしな」

 

『本命?何をいっ───!この感じ……まさか貴様!』

 

 驚きの色に奴は表情を染めた。そして足から力が抜けたようで右前足の膝をつく。今まで一切体勢を崩さなかった奴が見せた最大のチャンス。この隙に一撃決めたい───しかし体がそれを許してくれない。奴同様足から力が抜け片膝をついた。

 

「へへっ、どうだ…この野郎。……しかし、思ったよりキツいなこれ…」

 

『き、貴様……!どうしてこの力を!』

 

「おいおい、お前が言ったんだろ?オレたちは一つだって。お前に出来てオレに出来ないわけがない」

 

『グオォ…!まさか、『殺生石』まで……!』

 

 奴は悔しそうにする。そう、奴の言う通りオレが作り出したのは『殺生石』。周囲の魔力、体力を吸収する球だ。石って言うくらいだから石だと思った?残念!

 

 しかしその吸収力は予想より強く、発動してからそれほど経っていないのに体に力が一切入らない。───だけどそれがどうした。この程度、オレがみんなに与えた痛みに比べたら!

 

「う、おおおぉぉぉ!!……はぁ、はぁ。おら、どうしたよ?まさかこの程度で終わりなんて言うんじゃないよな?」

 

『……当たり前よ!この程度屁でもないわ!』

 

「そうこなくっちゃなぁ!この一撃で終わらせてやる!!」

 

『望むところ!!』

 

 互いに全力疾走して肉薄する。オレは右腕に力を込めて、奴は足に力を入れて。

 

「『おおおおぉぉぉ!!!」』

 

 激突した。オレの全力の右ストレートと奴の全力の突進が。ぶつかった力は拮抗し互いに静止した。そして押し負けたのは───。

 

『我の勝ちだ!!』

 

 オレだった。殺生石による魔力、体力の吸収とそれまで受けてた傷のせいであと少し及ばなかった。あーあ、やっちまった……。まさか、ここでヘマするか…オレよ。よく考えてみれば、ライザーの『女王』もコカビエルも、大事な時ってとこで勝つことが出来てないな……情けな。……まぁでもこれで終わ───。

 

 ゛……待ってます。私、いつまでも゛

 

「れるわけねぇだろうがあぁぁぁ!!」

 

 ゴンッ!

 

『ガハッ!!』

 

 勝利を確信して油断しきってる奴の額めがけて力一杯頭突き!妖怪と言えど脳を揺らされれば怯むだろ!

 

 予想通り、頭突きされた奴はよろめき後退した。さらに体から光の粒子が出始めて、若干体が薄くなっている。

 

 しかし、それには気も止めず衝撃に負けて後退しかけた体を途中で踏ん張って止める。呼吸もままならないまま奴を見て叫んだ。

 

「オレは弱い!!自分で決めたことも守れない、幻で簡単に騙される、仲間たちを傷つける最低最悪のくそ野郎だ───だけど!そんなオレにも愛する人たちがいる!愛してくれる人たちがいる!その人たちのためにオレは、生きるんだ!!」

 

『……ク、ハハハ……なるほど、それが人間の力か。まさか、本当に我を倒すとはな。負けたぞ、桜近衛よ』

 

 さっきとは似ても似つかない穏やかな表情で奴は言った。一瞬何を言っているのかわからなかったが、すぐに言葉の意味を理解して安堵した。

 

『だが忘れるな。我は常に貴様の中にいる。貴様がまた世界に絶望するようなことがあれば、その時は必ず貴様の体を乗っ取り世界を破壊する』

 

 それだけ言って奴は光の粒子となって消えていった。

 

「上等だ。今度会ったらその時こそお前を───」

 

 その瞬間、全身に激しい痛みとかなりの倦怠感が体を襲いぶっ倒れた。あー、これヤバイな……体、ピクリとも動かねぇや……。せっかく、あいつ倒して……一件落着なのによ……死ぬとか───。

 

 

 

 

 

 グッグッ

 

「近衛ッ……死ぬなよ!」

 

「イッセー……」

 

 イッセーが近衛を聖剣で刺してからずっと、彼は近衛に心臓マッサージを施している。もちろん、アーシアの神器で体の傷と聖なる力は癒えてはいる。しかし、心臓を聖剣に刺されて失った意識が戻る気配は無かった。

 

「イッセー……もう…」

 

「まだ……です!ここで……諦めたら……今までの……努力が!」

 

「貴方の気持ちはわかるわ。でも、もうこの子は助からないのよ。酷なことを言ってるのもわかる。だけど受け入れなさい」

 

 リアスが何とかイッセーを諭そうとするが、彼は聞く耳持たずただひたすらに心臓マッサージを繰り返すだけだった。他のオカルト研究部の面々も為す術なくただ見守るだけだった。

 

 どれだけたった頃か。イッセーはマッサージする手を緩め、最後には手を止めた。そして頬を一筋の涙が伝う。

 

「くそッ……!何で…何でなんだよ!こいつが死ぬ必要なんてないのに……!」

 

 悲しみで打ちひしがれるイッセー。他の人たちも顔を背ける者、顔を覆う者、泣くのを我慢する者など同様だ。そんな中、一人だけいつも通りの表情でいる者がいた。小猫だ。彼女だけは顔色一つ変えずただ愛する少年の顔を見続けている。まるで帰ってくることを疑わないように。そしてそれは現実のこととなる。

 

「……勝手に…人を殺……すなよ、バカ野郎」

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