あの日からオレたちは毎晩チラシ配りをした。勿論勝負することを忘れず、毎日無駄に疲れた……。
小猫ちゃんはそれを見て、毎日罵倒をしていたがそのおかげで多少なりともオレに興味を持ってくれたようだ。挨拶をすれば返してくれるし、短い会話ならしてくれるようになったしな。
前までは挨拶をしても無視当たり前で、反応してくれたとしても毒舌ばかり吐かれていたのでこの程度でも超嬉しかった。
そんなある日、いつも通りチラシ配りに行こうとしたが、
「イッセー、近衛。今日でチラシ配りは終わりよ。次の段階にいきましょう。依頼者のところに行って契約を取ってきてちょうだい」
「お!やっと悪魔っぽくなりましたね」
「契約って実際どんなことをするんですか?」
「依頼者の願いを叶えてその願いに釣り合う対価をもらうのよ」
楽しそうにするオレに対しイッセーは質問した。それに部長は簡単にだが答える。すると姫島先輩が、
「部長、小猫ちゃんに予約依頼が二件入ってます」
「そう。じゃあ一つは二人に行ってもらおうかしら。普通は一人でやるのだけど、二人とも初めてだからね。お互いにカバーしあうのよ?」
「わかりました!」
「了解です」
返事をすると早速準備に取りかかるようで、
「二人ともこっちに来て手を出して」
言われた通りにすると、部長も手を出してかざした。そしたら、部長の手から魔方陣が出てきてオレたちの手の中に消えていく。
「?」
「これは?」
「それは転移用に使う魔方陣よ。依頼者の元に行き依頼を叶えたら、自動でこちらに転移させてくれるの」
へぇーこれまた便利な力だ。悪魔の力は汎用性が高いみたいだな。しかもそれを実現してるってんだからまたスゴい。伊達に1万年も寿命があるだけはあるな。
「じゃあ早速行ってもらうわよ」
そう言うと部長は魔方陣から出て、魔方陣が光出す。光は強くなり、しだいに弱くなっていくとそこは部室ではなかった。つまり転移は成功したのだ。
「ん?僕は小猫ちゃんを呼んだんだか?」
目の前にいた男性がそんなことを聞いてくる。
「あ、すみません。小猫ちゃんはもう一件依頼が有りまして、そちらの方にいってしまいました。その代わりとしてオレたち二人が来ました」
そう言うと男性は怪訝な顔をした。あれ?おれ可笑しなこと言ったか?今。
「二人?君一人しか居ないが?」
「え?そんなことありませんよ。もう一人……」
言いながらイッセーがいる方を見たが、そこにあいつは居なかった。
「はっ!?確かにオレと一緒に来たはずなのに……ちょ、ちょっと待ってください。確認をとるんで」
携帯を取り出して部長に電話した。良かった。こういう時の為に連絡先聞いといて。
「あ、部長?イッセーの奴こっちに居ないんですが……え?魔力が無さすぎて転移出来なかった?で今チャリで向かっていると……はい、はいわかりました。あいつが来るまでオレ一人で頑張ってみます」
部長からある程度の説明を受けて電話を切ったオレは男性に向き直って説明した。
「すみません。こちらの手違いでもう一人が遅れてくるそうです。なのでそれまではオレが対応しますんで」
「そ、そうか。それよりさっきの電話、転移出来なかったとか……」
「それはあいつが来てから聞きましょう。オレも詳しくはまだ分かんないんで」
そう言って男性と世間話を始めた。
彼の名前は小向雪男。公務員をやっていて人の温もりに飢えていたところこのチラシを見つけて召喚したら小猫ちゃんが来たそうだ。でその時小猫ちゃんを気に入って月に何度か呼ぶそうになったそうだ。
「はぁー、じゃあ普段は小猫ちゃんにコスプレをさせてお姫様抱っこをしてもらっていると」
「うん。僕みたいな大きな人を小猫ちゃんのような小柄な人がお姫様抱っこするのが以外と面白くてね」
うん。この人以外と変態だな。
だが、オレも最近は小猫ちゃんに罵倒されるのがいいと思ってきたから人のことは言えないけど……。べ、別にMとかじゃないからな!?
そうこうしていると、
ピンポーン
小向さんの部屋のチャイムがなった。
「お、やっと来たかな?」
こんな夜中に訪問する奴なんて普通にいない。なんでほぼイッセーと決めつけ玄関にいくと、メッチャテンションが低い奴がいた。低すぎて後ろから黒いオーラが見えた。
「うお!?どうしたイッセー?」
聞くとあいつは、
「魔力が赤ん坊より無いのと、悪魔なのに自転車漕いで向かうのが精神的にキツくて……」
その後は、小向さんと一緒にイッセーのケアに回ったため契約は取れなかった。
ちなみに、帰りはオレだけ魔方陣で帰るのは気が引けたため、イッセーと共に歩いて帰った。
次の日の放課後
部室に行くと部長が怒っていた。
「……(ガクガク)」
「(ブルブル)」
「……」
無言の沈黙。その間オレらはただただ震えていた。しばらくすると、
「これはどうしたものかしらね」
部長が言ってオレたちを見てきた。その目は人一人なら簡単に視殺出来るんじゃないか、ってくらい鋭くって怖すぎて声も出せない。つか目合わせてんのが超辛い!
「契約を取れないだけじゃなくて、依頼者に心のケアまでさせた」
「「ッ!す、すみませんでした!!!」」
プレッシャーに耐えきれなくて謝るオレたち。
そんなオレたちに部長は、
「あの紙にはね、裏面に感想を書く場所があるの。で昨日の依頼者はこう書いていたの。『楽しかった。今まで一番。悪魔のケアというレアな体験もできたし、もう一人の子も話していて楽しかった。次はいい契約を取りたい』と」
―――え?それって……。
「契約は取れなかったけど依頼者からはとてもいい賛辞を受ける。こんなの初めてよ。だから困って多分しかめっ面になっていたでしょう」
てことは部長は、怒っていた訳ではなく困っていたと。
そうわかったオレたちは、安堵のため息をついた。
「「はぁ~~~……」」
「悪魔にとって大事なことは契約を取ること。取らなければ意味がない。でも依頼者は喜んでくれた。私も初めてどうしたらいいのか……」
すると部長は、フッと笑った。
「やっぱり面白いわね。あなたたちを下僕にして良かったわ。これからも頑張りなさい。次はしっかり契約を取るのよ?」
そう言われ、
「はい!わかりました!」
「了解です。次は取ってきます」
と元気に返事したオレとちょっと気まずそうなイッセー。
とにかく気合いを入れ直したオレたちだった。
その日の夜
依頼が無いオレは部室にいた。他に部室にいたのは、部長と木場と小猫ちゃんだ。
部長は優雅に紅茶を飲んでいて、木場は本を読んでいる。
小猫ちゃんはというと、
「パクっ……モグモグ」
お菓子を食べていた。
「ねぇ小猫ちゃん」
「……なんですか?」
オレが話しかけると不機嫌そうに返す小猫ちゃん。態度が良くなったといっても、最初のが尾を引いていてまだまだ悪い。
落ち込みかけるオレだが何とか持ちこたえてめげずに、
「そんなに毎日お菓子とか食べて大丈夫?」
そう小猫ちゃんは毎日何かしら食べていた。それが和菓子であったり、洋菓子であったり、駄菓子であったりと毎日違うが結構な量を食べていた。
「……それがどうしたんですか?」
「いや、そんなに食べたら太って―――」
ドスッ!
部室にそんな音が響いた。
「グホッ!」
左隣にいたオレの腹に小猫ちゃんが右フックを決めた音だ。てかメッチャ痛い!体格から考えられないんですけど!?
「……余計なお世話です、フンッ」
そう言ってさっきより更に不機嫌になってお菓子を食べるのを再開した。
それを見ていた部長と木場は笑っていた。
くそー!イケメンには笑われるし、小猫ちゃんには更に嫌われるし、依頼は来ないし今日は最悪だー!
そんなことを思う今日この頃であった。
次の日
イッセーはまたしてもテンションが低かった。
理由は、昨日の依頼でまた契約を取れなかったが依頼者から最高の賛辞を受けて部長に注意を受けたからだ。
なんでもその依頼者ってのが漢の娘(男の娘ではない)だったらしく、依頼も魔法少女にして欲しいとのことだ。
しかし当然無理なわけでその事を伝えたら、泣き出し慰めたら魔法少女ミル☆たんというアニメを見ようと言われたらしい。で見たらこれが以外と面白くそのまま日付が変わるまで見続けたそうだ。
こう見えてこいつはアニメ、マンガオタクであり、これは人には知られていない数少ない趣味である。
で部長に用事があって今日部活が休みだから、帰りながら慰めているのだ。
「元気出せよ、イッセー!」
「あぁ……」
「良い依頼者だったんだろ?漢の娘だったけど……」
「……あぁ。俺の依頼者ってこんなのが続くのかな……」
ダメだこりゃ。んーどうしたもんかねー。
そんなことを考えていると、
「キャ!」
可愛らしい悲鳴が聞こえ、ドスン!と誰かが地面に転ぶ音が聞こえた。音のした方を見てみるとシスター服の女の子が転んでいた。け、結構デカイ落としたけど大丈夫か?
イッセーも心配だったらしく近くに駆け寄って手を差し出した。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ。なんで転んでしまうのでしょう。……すみません。ありがとうございます」
そう言って手を握ろうとしたところ、
ブワッ!
突然強い風が吹いて、彼女が被っていたヴェールが飛んでいった。
すると今まで隠れていた金髪が太陽の元に現れ、キラキラと美しく輝いた。
「あっ!」
彼女は顔を上げ素顔が見えた。
「「……」」
オレたちは見とれてしまった。それほどまでに彼女は美しくかった。
「あの~どうしました?」
それのおかげでオレたちは正気に戻った。
「ッ!あ、あぁ何でもないよ。それより大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫です!」
オレはそれを聞いて近くに落ちていたヴェールを拾い渡しながら、
「旅行か何かですか?」
「い、いえ。実はこの町の教会に赴任することになりまして、あなたたちもこの町の方ですね。これからよろしくお願いします」
彼女はそう言って、ペコリと頭を下げた。
「それでこの町に来て困っていたんです。私……日本語上手く喋れないので……道に迷ったんですけど、誰に聞いて良いのやら……」
あぁ成る程。それでここら辺にいたのか。そう言えば部長が『悪魔になったらどの言語でも自分に一番聞きやすい言葉になる』って言ってたっけ。だから
オレには日本語に聞こえるのか。
「教会なら場所知ってるぞ」
「ほ、本当ですか!?できれば連れていってくれませんか?」
「あぁ勿論いいぜ!」
オレの言葉に顔を輝かせるシスターの少女。こうしてオレたちは教会に向かうことになった。
その道中公園の前を通ったんだが、泣いてる男の子がいてシスターの彼女が、
「大丈夫?これくらいで男の子が泣いてはいけませんよ」
と優しい微笑みで声をかけておもむろにキズに両手をかざした。するとなんと言うことでしょう、彼女の手から緑色の淡い光が現れ、男の子キズを治してくではありませんか。
「あれは……」
「神……器?」
「はい、これで大丈夫よ」
直ぐに男の子のキズはなくなり、彼女は笑いながらそう言ってこちらに戻ってきた。
「すみません、つい」
「ありがとう!お姉ちゃん!」
男の子が元気に大声で感謝を述べた。それをイッセーは彼女に教えてあげると嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、お姉ちゃんだってよ」
「えへへ……」
「それにしてもさっきのって」
「あ、はい。あれは神様からもらった癒しの力です」
そう嬉しそうに言うが彼女はどこか寂しげだった。そこからは世間話をして教会に向かった。
しばらく歩くと丘の上の方にある教会に着いた。
「あ、ここです!確かにここです!良かった~たどり着けて。お二人さん、本当にありがとうございます!」
「いやいいって、当たり前の事をしただけだから!」
「そうだ。別にお礼を言われることじゃないさ」
そう言って普通に振る舞うオレたちだが、実はさっきから悪寒が尋常じゃなかった。
そういえば、部長が教会と神社だけには絶対近づかないこと、って言ってたっけ?言われた時はよく分かんなかったけど、これなら納得だ。
「じゃ俺たちはこれで」
「待ってください!せめてお茶だけでも……」
「いや、悪いけど俺たち急用を思い出したから」
「いや、でも……」
それでも引かない彼女に、
「俺は兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるからイッセーって呼んでくれ」
イッセーが自己紹介をする。オレもそれに続ける。
「オレは桜近衛だ!呼び方は自由でいいぜ」
「わ、私はアーシア・アルジェントと言います!」
「それじゃあアーシアさん、また会えたら良いね」
「は、はい!またいつか!」
そう言ってオレたちは帰っていった。
その日の夜
オレたちは部長に呼び出された。
「ガクガク……」
「……ブルブル」
「……」
部長はまたしても怒っていた。しかも今回は困ってではなく本気で。前にも増して眼光鋭いです。
「イッセー、近衛。どうして呼び出されたかわかる?」
「……」
「……教会に近づいたからですか?」
オレはあまりの恐怖に答えられず、オレよりは幾分かマシなイッセーが答えた。
「えぇそうよ。私あれほど言ったわよね?教会には近づかないで、と」
静かに、しかし怒った口調で部長は言った。
「「も、申し訳御座いませんでした!!!」」
オレたちは素早く土下座をした。それはもう土下座選手権があったら確実に世界を取れるレベルで綺麗に決まった。
「ふー。あなたたちは殺されても文句が言えない状況だったのよ?それどころか、悪魔と天使の争いに発展してもおかしくなかったんだから」
部長からそう聞かされた。やべぇ。オレたちそんな危ないことしてきたの?
「で、でも俺たちはただ困ってたアーシアを案内しただけで……」
「でももただもないわ。今回はそれのおかげで攻撃されなかったけど次は分からないわ。いい?二度と教会には近づかないでちょうだい」
部長にピシャリといわれ、
「はい!わかりました!」
「了解です!今度から気を付けます!」
流石のイッセーでも大声を出していた。