FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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結末は唐突に

 確実に死んだ。

 絶対不可避の剣撃。もつれた足では何もかもが間に合わなかった。

 右肩に食い込んできた真刀滅却の刀身はそのまま袈裟方向に振り下ろされていき、身体に致命的なダメージを与えようとする。

 だがウィズは後ろへと倒れかけていた身体を真刀滅却の辿る軌道と同じ方向に同じ速度で捻って胸に到達していた刀身をやり過ごしてうつ伏せで倒れる。

 これが完全な真下への振り下ろしであったなら、この回避も意味を成さなかった。全てはこのタイミング、この角度で振り下ろされたから可能だった奇跡のような回避。

 しかし肩から胸にかけてを斬られたウィズは痛みと出血で意識が飛びかけるが、再び真刀滅却を振り上げたティアを見るより早く転がってその太刀を回避し飛び上がるように立ち上がって20センチはある切り傷を破けた服で気休め程度に止血。

 致命的なダメージではないが、血が止まらないと危ないのはなんとなくわかったので、この戦いもチンタラしてられなくなった。

 

「その傷じゃ持って5分ってところね。命乞いして島から出て行くなら、手当てして逃がしてあげるけど?」

 

「……優しいんだな。だがそんなことするつもりはない。5分? そんだけあれば十分だろ。今からあんたの妖刀と魔手を攻略する」

 

 余裕など全く見えないウィズの姿に最終警告のようなことを言うティアだったが、そんな状態でも不敵に笑ってみせて自分を倒すと言うウィズに、心底驚いた顔をする。

 ハッタリなどではない。

 ウィズは本当にティア攻略の手段を思いついた。そのきっかけは今の攻防。

 自分の言葉にティアが思考を巡らせる前に動き出したウィズは、ハッとしながら迎撃に動いたティアの全ての動作を並み外れた動体視力で見切る。

 1度大きくバックステップしながら納刀しすかさず抜刀。

 煌めく剣閃は寸分の狂いもなく横一閃に振るわれてウィズの左側から迫るが、その真刀滅却にのみ集中したウィズは右手を添えるように軌道に乗せ、当たる瞬間に右手を引いて刀身に優しく触れると、親指と中指、人差し指で刀身を掴んで止める。

 白羽取り。選択による恩恵がなければ不可能だったその離れ技には、さすがのティアも驚愕でその動きを止めるが、ここでウィズはサッと刀身を止めていた指を鍔の根本まで走らせて鍔を掴むと、人体の構造を利用して力の入らなくなる方向に捻ってティアから真刀滅却を手放させる。

 その真刀滅却を慣れた手つきで回して柄を握り、思わず距離を取ったティアにその刃の先端を向ける。

 

「これで形勢逆転、か」

 

 自分でも驚くくらい手に馴染む真刀滅却に恐怖すら覚えながら、それでも優勢となった状況は好機以外の何物でもない。

 

「…………まだよ」

 

 真刀滅却を失ったティアは少しだけ諦めた表情を浮かべたものの、すぐにそれを消して腰に差す真刀滅却の鞘を抜き左手に構える。

 

「特殊な金属ではできてないけど、この鞘も十分その刀と打ち合える」

 

 あくまで真刀滅却への対応として構えた鞘だが、こちらは選択の影響を受ける。強度さえ奪ってしまえば木の棒同然。

 それでも一分の隙もなく構えるウィズは、おそらくティアに教え込まれたのだろう剣術を体の覚えるままに動かして突貫。

 先ほどのお返しとばかりに筋力任せの剣閃でティアへと迫ったが、冷静なティアはそれをことごとく鞘で打ち落としてカウンターの右手を差し込んでくるが、ウィズも負けじと紙一重でそれを躱す。

 選択者同士の接近戦はたったの一手で決着する。

 触れられたが最後、視覚から始まって雪崩のように五感を奪われていき文字通り手も足も出なくなってしまうからだ。

 だからウィズはその勝負をする距離よりも確実な真刀滅却での決着が効果的だと確信していた。

 しかしティアレベルの魔導士に手加減などする余裕はなく、そうなるとほぼ確実にティアを斬ることになってしまう。下手をすればそのまま……

 相容れなかったとはいえ、自分を鍛えてくれた師匠。やはりその結末にはどうしてもためらいがある。

 そんなウィズの内心を敏感に感じ取ったのか、ティアは深いところに踏み込んでこないウィズに怒りを露にする。

 

「とんだ甘ちゃんね! 殺してでも止める覚悟もない人間が、私の前に立ちはだかるなんてふざけるのも大概にしなさい! 私はもうそんな覚悟で止まるほどなりふり構ってないのよ!!」

 

 至近距離からの怒声はウィズの動きをほんの少し怯ませて、その隙を逃さずに鞘での殴打を脇腹へと打ち込んで胸の中心を鋭く突いて吹き飛ばす。

 肋骨が折れ、呼吸も一瞬止まって血が込み上げて吐き出してしまうが、ギリギリ踏み留まったウィズだが、そこに畳み掛けるように一番強い殺気を持って迫ったティア。

 もう、ダメだ。

 本気の本気で殺そうとしてくるティアに、真刀滅却の刃の先を向けたウィズは、一切の躊躇なくその刃をティアへと突きつけた。

 それはティアレベルなら、選択の恩恵による動体視力を以てすれば確実ではないが避けられた一撃だった。

 しかしティアはウィズの一撃を鞘で弾くこともなく正面から受けてその心臓を貫かれ、ウィズにもたれ掛かってその動きを止めていた。

 

「…………おい、ティア……」

 

「……………………『これでいい』」

 

 ──意味が、わからなかった。

 今の今まで自分を本気で殺そうとしていたティアが、自らが刺されてこれでいいなどと、いいわけがない。

 

「…………あなたは優しいから……こうしないと私を……殺せないからね……」

 

「なんだよそれ……意味がわかんねぇよ……」

 

「痛くしてごめんね……本当は、心が引き裂けるくらい辛かったけど……最後まで心が持ってくれて良かったわ……」

 

 ウィズに抱かれるようにもたれ掛かるティアは、かすれた声でそう言いながら自らの身体に左手で触れてから、その手でウィズの背中に触れる。

 それは選択のリセット。失われた記憶を戻すことを意味する。

 何もかもわからないままそうして記憶を戻された瞬間、ウィズは走馬灯のように全身を駆け巡ったティアとの日々の記憶を認識して、ゼロコンマ数秒の間に全てを思い出す。

 

「……あ……あああああああああああああ!!!!」

 

 全てを思い出した時、ウィズは絶叫した。

 何故ティアが自分から記憶を抜き取り、こんなことをしたのか、その全てが記憶の中にあったから。

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