FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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400年の呪い

「僕を終わらせる? 君がかい?」

 

 ティアが命を支払って倒せと言った巨悪、黒魔導士ゼレフは、とても穏やかな雰囲気で真刀滅却を構えるウィズを見て、ポツリと呟く。

 

「それがオレの使命であり、師が目指した悲願。巨悪を討つのが選択者の受け継がれてきた宿命」

 

「……選択者……どこかで聞いたことがあるね。遠い記憶だ。遥か遠方の地に因果すら断ち切る剣士、サムライとか言ったかな。の伝承があった。君がその……」

 

 さすがは400年生きた人間。選択者のことも噂くらいには聞いたことがあったようで、しかし会うのは初めてとあって少々驚いた顔をするが、次には何故か笑ってみせて、それには決死の覚悟で来たウィズの神経を逆撫でされる。

 

「何がおかしい?」

 

「すまない。別に君の行動や理念を笑ったわけではないんだ。ただ笑わずにはいられなかったのさ。ようやく僕を『終わらせてくれる』存在が現れたかもしれないからね」

 

「……終わらせてくれる?」

 

「……僕は、好き好んで不老不死の身体になったわけではないんだよ。400年以上前にこの身体は死ねない呪いを受けてしまった。それ以来、僕は自分を殺すためにいくつもの手段、エーテリアス。今の時代で言えばゼレフ書の悪魔を生み出したが、どれも僕を殺すまでには至らなかった」

 

 望まぬ不老不死。

 それは生きながらに絶望が続く地獄だったのだろう。

 さらに話をするゼレフは、その呪いが命を尊く思えば思うほど周りにある命を奪ってしまうことまで吐露し、それを抑えるために自分の魔法を上手くコントロール出来ないことまで話す。

 ずっと孤独だったと、涙を流したゼレフに同情とは違う何かを感じたウィズは、自分の思っていた人物とはずいぶん違うゼレフを見て思った。

 ──救いたい。

 

「…………その呪い。どれほどのものかわからないが、救ってやるよ。オレのこの刀で、選択者の力でな」

 

「救いなんて、もうないと思っていた。アンクセラムの呪いは強力だよ。それでも斬れるのかい?」

 

「……斬るよ。それがお前を黒魔導士たらしめている元凶なら」

 

 400年前、ゼレフがどうしてそんな呪いを受けたのかまではわからない。

 きっとそうならざるを得ないことをしでかしたからなのだろうが、救いを求めるゼレフの声はウィズの心に確かに届いた。

 

「1つ、約束してくれ。もしお前を救えたなら、その時は世界をどうにかしようとか、そういう危険思想は持たないと。それができないなら、呪いを断ち切ってから、お前を殺す」

 

「それが1番世界のためになるだろうけど……そうだね。世界の脅威という意味では、僕の他にもまだ存在するか」

 

「アクノロギアも、オレが倒す」

 

「いや、君にもあれの撃破は難しいかもしれない。だから約束しよう。君がもし僕を救ってくれたなら、僕は人間の味方となって共にアクノロギアを滅ぼす。それを終えたなら、僕は全てのゼレフ書の悪魔を処分し自ら命を絶つよ。信じられないなら君はその時それを見届けてくれればいい」

 

 全てを語ってはいないゼレフに気づいてはいたウィズだが、嘘は言っていないことはなんとなくわかる。

 だからこれ以上の言葉を交わすことなく、目を閉じたゼレフはその手を広げてウィズの一撃を受け入れる体勢になり、それを見ながら真刀滅却を静かに抜き放つと、いつの間にか隣にメイビスが現れて、前に進み出たウィズに言葉をかける。

 

『あの人を、救ってあげてください』

 

 それはメイビスがゼレフを知ってるという意味が含まれていたが、その言葉を黙って受け取ったウィズはゼレフの目の前まで来てその手の真刀滅却を上から下へと袈裟に振り下ろしてゼレフを……ゼレフにかけられたアンクセラムの呪いのみを断ち切る。

 ──音はなかった。

 しかし真刀滅却は確かにゼレフの中の何かを両断し消滅させた。その証拠にウィズの──が恐ろしいレベルで減少したから。

 斬られてから目を開けたゼレフは、その身に起きた奇跡を感じたのか、確かめるように納刀しようとしたウィズの手を止めて真刀滅却で右手を軽く刺してみると、傷口からは赤々とした血がポタポタと流れ出す。再生の気配は、ない。

 

「あ……ああ……戻った……僕はもう、死ぬことができる……もう、誰の命も奪わなくて済む……ありがとう……ありがとう……」

 

 止血もしないままその場に崩れて泣き出したゼレフは、その生を噛み締めるように俯いたままウィズに感謝の言葉を続けた。

 これで良かったのか、ティア。

 巨悪を討つという意味ではまだ完璧ではない。しかしティアなら、笑ってこう言うはずだ。

 ──よくやったわね、と。

 ひとしきり泣いたゼレフは、静かに立ち上がってウィズを見ると、とても穏やかな表情で口を開く。

 

「まだ名前を聞いてなかったね。僕を救ってくれた恩人の名前だ。忘れるわけにはいかないだろ」

 

「ウィズ・クローム」

 

「ウィズか。良い名前だね。それじゃあ僕も改めて名乗ろう。僕はゼレフ・ドラグニル。君が知るだろうナツ・ドラグニルの兄に当たる」

 

「ナツの兄、だと?」

 

「君には全てを知る権利がある。だが今はまだ黙って受け入れてほしい。そして救ってもらった身で申し訳ないが、君に1つやってもらいたいことがある。これはナツに関わる重要な案件で、君にしかできないだろうことだから、必ず成功させてほしい」

 

 衝撃的な自己紹介にさすがのウィズも動揺を隠せなかったが、ここで冗談を言うほどバカな人物ではないことはわかるので、言う通り事実として受け止めてからナツに関わるという1つの願いを聞く。

 半信半疑ではあるがそれを引き受けてから、まだやるべきこともあるのでナツ達と合流するために移動しようとするが、ゼレフは下手に何か行動してまた呪いをかけられても困るということで静かに島から出ると言ってウィズを見送った。

 

「……いるのだろう、メイビス。姿は見えないが感じるよ。君には悪いことをしたね。だが彼なら、アンクセラムの呪いを断ち切ったウィズなら、君をも救えるかもしれない」

 

『……もしもそれが叶ったとしたなら、先に待っていますよ。私達はもう、とうの昔に眠るべき時代の亡者。時代は流れ行くものですから』

 

 見当違いの方向を見てはいたが、それでも姿なきメイビスに語りかけたゼレフ。

 それに届くはずがないとわかってはいたが言葉を返したメイビスも、かつて愛した男の心穏やかな姿に涙し、島を出るために歩き出したゼレフを黙って見送ったのだった。

 

 かつてない重労働を強いられて結構身体にダメージが蓄積されていたが、まだ倒れるわけにはいかないと森を駆けるウィズは、その森を抜けた先に停泊する悪魔の心臓の戦艦の前まで来てから、その戦艦から聞こえる戦闘の音ですでにナツ達が戦っていることを悟る。

 

「ったく、待つって選択はないのかあいつらは……」

 

 合流すると言ったのにさっさと行ってしまったナツ達にそんな悪態をついてから、グレイが作っただろう氷の階段を駆け上がって甲板部分に到達すると、奥の方で倒れるナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ、ウェンディの姿が見えて、さらに奥にはマスターハデスらしき長い髭をたくわえた老人が攻撃しようと魔力を高めていた。

 それを見るや最速の走りで距離を詰めたウィズは、攻撃しようとしたハデスの目の前まで行こうとしたが、直前で上から懐かしい気配が来るのがわかり、雷と共に現れた人物と揃ってハデスの前に立ちはだかった。

 

「ようウィズ。ずいぶんとひでぇ怪我だな」

 

「そっちは今の今まで何やってたんだよ、反抗期が」

 

 互いに再会の言葉は悪態に近かったが、今は共通の敵が目の前にいるのでそれだけにして拳をコツンと合わせてから、ウィズとラクサスはハデスへとまっすぐに視線を向ける。

 

「仲間を傷つけた野郎は……」

 

「誰であっても許さねぇぞ!」

 

「吠えるなよマカロフのガキ共!」

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