FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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許し、別れ、願い、そして絶望

 悪魔の心臓との戦いは終わった。

 みんなの傷を癒すために一旦キャンプへと戻ることにしたマカロフはラクサスと一緒にガミガミ言い合いながら行ってしまい、いつの間にか元に戻ってる天狼樹を見上げてから自分も行こうとしたウィズだったが、近くで倒れるハデスの姿を捉えて近寄る。

 

「マカロフも甘い。小僧、お前は違うだろう? 今の私は動けぬが、ここで見逃せばまた妖精の尻尾を倒しに行くぞ」

 

「そうだな。オレはじいさんほど優しくはなれない。だが、じいさんが見逃したならオレもそれ以上の事はしない。それに次またお前らが襲撃してきたら、今度は『命を賭けて討ち滅ぼす』覚悟くらいある」

 

「……ふんっ。やはり力を隠しておったか。私程度には使いたくなかったと言いたいのだろうが、それもまた甘い考えだということを自覚しろよ、小僧」

 

 倒れてなお口が達者な老いぼれに呆れてしまうが、言ってることもわからなくはないので参考程度に受け取っておき、ティアの埋葬もしなきゃならない手前、それでキャンプへと行こうとしたが、今回の悪魔の心臓の目的を思い出し報告くらいはしておこうと大事な話をしてやる。

 

「そうそう。お前らが探して求めていた黒魔導士ゼレフ。あれはもうお前らが求める存在じゃなくなった。今のゼレフは来たる日に備えて戦う準備をする人類の味方だ」

 

「……何を言っておる。ゼレフが我々の求める存在じゃ、なくなった?」

 

「ゼレフにかけられた不老不死の呪い。それをオレが断ち切ったんだよ。ここに来る前に、直接会ってな。だからもうゼレフを追っても無駄だと思うぜ。ゼレフはもう、命の尊さを忘れないから」

 

 嘘を言うようなタイプではないウィズの言葉にただただ驚くハデスだったが、それでも追うのだろうなと思いつつそれ以上は何も言わずその場を立ち去り、仲間達の待つ場所へと歩いていった。

 

 天狼樹が復活したからか身体の回復が思った以上に良いので、辿り着いたキャンプでもワイワイ騒ぐ仲間達をざっと眺めてから、ナツに声をかけて近寄らせると、どうしたといった表情のナツにいきなり問答無用で真刀滅却を抜き放って選択を発動。

 いきなりナツが斬られたため騒いでいた連中が一斉にウィズとナツを見たが、静かに真刀滅却を鞘に納めたウィズはどこも斬れてなくて不思議がるナツを見て安堵する。

 

「どこも異変はないか、ナツ」

 

「い、いきなり何すんだよウィズ! でも今、確かに斬られたのに傷も痛みもねぇぞ」

 

 自分の身に起きた不思議に疑問が湧きまくりのナツに全員が安堵する中で、その原因を作ったウィズはそれ以上に安堵の表情を浮かべてナツの頭をポンと触ると、何でもないと言ってティアの元へと歩いていく。

 これでゼレフの願いには応えられたはずだ。

 別れる前にゼレフに頼まれたのは、ナツのある機能を断絶し切り離してしまうこと。

 その機能というのが、今も信じられないがナツがゼレフ書の悪魔、END(エーテリアス・ナツ・ドラグニル)であるという事実。

 その生まれる段階で元の人間をエーテリアスとして生まれ変わらせたことから、どこかにあるらしいENDの書と、ゼレフ自身とのリンクがあり、どちらか1つでも消滅すると連鎖的にナツまでが消滅してしまうらしい。

 ゼレフは今のナツを見たからこそ、ナツの消滅は防いでやりたいと兄としてその可能性をウィズに託した。

 そしてウィズがナツの中から断ち切ったのは、ナツを構成するエーテリアス。

 それさえなくなればENDからも独立し単独で生存可能らしいのだが、それによってナツが死ぬ可能性があると言われていたので、正直やるかどうか迷ったのだが、君にならできると言ったゼレフの言葉を信じて実行した。

 その結果、ナツの中のエーテリアスは断ち切り消滅させることができ、ナツにも悪影響は出なかった。

 そしてゼレフから言われたことは他言無用。

 いつか全てを終えて自分の口から話すと言っていたから、ウィズもその時までは黙っていようと心に誓い、寝かされていたティアの穏やかな顔に優しく触れてから、ずっと話せなかったことを自分をまっすぐに見る仲間達に振り返って、マカロフを途中に挟む形でゆっくりと話をした。

 たっぷりと時間をかけて自分がギルドに来た経緯からこの天狼島へと来た理由を説明し、さらにこの島で起きたティアとのことを話し終えてから、沈黙する一同に改めて頭を下げた。

 

「すまなかった。オレは自分の目的のためにギルドを利用した。お前達に何も話さず勝手に出ていった。これだけ好き勝手やって許されるつもりはないが、お前らを大切に思ってた事だけは信じてほしい」

 

 ウィズが頭を下げる姿など、ギルドの誰もが見たこともなかっただけに、その衝撃はウィズにも伝わってきたが、そんなことはもうわかってると言わんばかりの顔になった一同は、長話で固くなった身体をほぐしながら立ち上がると、どこかへと移動を始めてしまう。

 

「お前ら、どこに?」

 

「どこって、決まってるじゃない。ティアさんをちゃんと埋葬してあげなきゃ。いつまでもあのままなのは可哀想でしょ」

 

 珍しく察しが悪いウィズに代表して発言したミラは、呆然とするウィズの腕を引いて立ち上がらせると、見晴らしが良いところがいいだのと言い合うナツ達に続く形で歩かせる。

 何も、言わないのだ。

 自分がギルドを利用していたことにも、黙って出ていったことにも、みんな何も言わない。

 それはもう許されたと背中で語るナツ達に、どうしようもないバカどもだなと思いつつ、またこの輪の中に入れてもらえたことに感謝してティアの埋葬を始めたのだった。

 寂しがり屋なティアには小高い丘とかそういうところは如何なものかと意見したウィズと、だったらというマカロフの意見によってティアの墓は初代マスター、メイビスの墓の隣に立てられ、心が痛むだろうがナツに亡骸を焼いてもらってから、その遺骨をみんなで丁重に埋葬し黙祷を捧げる。

 ──さよなら、ティア。

 別れの言葉はそれだけだ。それだけだと、思っていた。

 しかし現実にはそんな簡単にティアを送り出せるわけもなく、完全に戻ったティアとの思い出が一気に溢れてしまう。

 すると黙祷していたナツ達が静かに撤収を始めてしまい、それに釣られて動こうとしたウィズを皆は止めマカロフが口を開く。

 

「泣かぬのは立派なことじゃが、泣きたい時に泣けぬのはそれ以上に辛いことじゃ。儂らは先に戻る。落ち着いたら戻ってこい」

 

 その言葉を聞いた途端、ウィズの中で何かがプツリと切れてしまい、ずっと止められていた涙が滝のように流れ出してしまった。

 そこからしばらくの記憶はウィズにはなかった。

 ただ、泣いた。

 涙が枯れるのではないかというほど泣いた。

 大好きだったティアをこの手で殺めてしまった自分を呪いたくなった。

 でもそんな自分に精一杯生きてほしいと願ったティアの思いを噛み締めて、ティアの分も精一杯生きようと涙を止めて立ち上がった。

 だが不意に半ばまで抜いた真刀滅却に目を向けたウィズは、その思いすら無下にするかもしれない現実に本当に申し訳なく思いながら真刀滅却を納刀。

 そのタイミングでまたも唐突に現れたメイビスにもう驚きもしないウィズだが、そのメイビスが真剣な表情で見てくるため何事かと目を合わせる。

 

『あなたの力を見込んで、お願いしたいことがあります』

 

 初代のお願いとあれば何なりとといきたいところではあったが、自分の力を見込んでと言われるとあまり良い予感はしない。

 

「それは、オレにしかできないのか?」

 

『はい、おそらくは。ゼレフの呪いを断ち切ったあなたなら、できるはずなんです。私に……私の身体にかけられたアンクセラムの呪いを、断ち切ってほしいのです。そしてルーメン・イストワールを……妖精の心臓(フェアリーハート)を真の意味で解き放ってください』

 

 アンクセラムの呪い。

 あまり聞きたくなかったその単語に嫌な汗が出たが、そのあとに続いたルーメン・イストワールやら妖精の心臓やらがさっぱりで困惑するウィズに「詳しくは3代目に聞き直接見ればわかる」と話したメイビス。

 しかしアンクセラムの呪いとなるとウィズももう迂闊に踏み込めない領域だ。

 何故ならそれを断ち切るだけの対価を、もうウィズは持っていない。

 いや、正確に言えばもう『後がない』。それをしてしまったらおそらくウィズは……

 真剣なメイビスにどう答えていいか迷ったウィズだったが、鋭くなった超感覚が身の毛もよだつおぞましい気配を感じ取り全身が硬直してしまう。

 その変化に気付いたメイビスが必死に声をかけてなんとか持ち直したウィズは、この島に近付いてくる何かにどうすればいいか考える前に仲間達の元へと走り出していった。

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