FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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目覚めるとそこはX791年

 目が覚めた時には、仰向けで倒れていた自分に乗っかる形でミラが寝ていた。

 

「……ダメよウィズ……みんないるから……」

 

 どうにも緊張感のない夢を見ているらしいミラの寝言で自分が夢に出ていることはわかるのだが、夢の中の自分がミラに何をしているのか気になる。

 夢はその人のプライバシーに関わるから聞かなかったことにするとしても、いつまでも上で寝られていても困るので頬を引っ張って起こしにかかると、寝ぼけ目で起きたミラは自分の今の状態を瞬時に理解し顔を真っ赤にして理不尽な平手打ちをウィズへと打ち込んで離れてしまった。

 それから近くにリサーナやエルフマンらの姿もあったので全員を起こしながら冷静に状況を確認したウィズは、アクノロギアの一撃を受けて無事なことと、何の変化もない天狼島の様子に違和感を覚える。

 

「……あの時に何が起きたんだ……」

 

 どう考えてもアクノロギアの一撃は防ぎようのないものだった。

 それが何事もなかったかのような今の状況の異常さは、起きてきた仲間達も感じたのか呆然としていたが、そんな一同の疑問に答えるように1人の声が周囲に響く。

 

『その疑問には私がお答えします』

 

 芯の通った強い意思のあるその声に聞き覚えのあったウィズは、その声の出どころへと視線を向け、皆もそちらへと向くと、そこにはウィズ達を見て微笑む初代マスター、メイビスの姿があった。

 メイビスの登場に驚く暇もなく、何故かずいぶん大人びたビスカ、アルザック、マックス、ウォーレン、ジェットに太ったドロイが現れて、これも何故かウィズ達を見て泣きながら近寄って来たので不思議に思う。

 別にウィズだけなら不思議はないが、ナツ達を見ても同様の反応をされてはウィズにもその理由は察せないため、それを含めて知っていそうなメイビスと目を合わせると、ニッコリ笑ったメイビスは騒ぐ一同を制して改めて話をする。

 その話によると、アクノロギアの一撃を受ける瞬間、ウィズ達の強い思いと魔力で妖精三大魔法の1つ『妖精の球(フェアリースフィア)』を発動しアクノロギアからの攻撃を防ぎ島ごと凍結封印を施したらしく、今の今までその封印の中で眠り続けていたのだとか。

 封印中は時の流れから外れてしまい、封印の解除に7年も要してしまったとかで、現在はX791年になってしまっているからビスカ達が大人びていることにようやく納得。

 実際問題、ウィズ達の感覚ではついさっきアクノロギアから攻撃されて、目覚めたら7年後の世界でしたレベルの出来事で現実味がなかったが、そうでもなければ説明がつかない状況なので無理矢理にでも納得するしかない。

 

「そうだメイビス。あの時の返事……」

 

 納得した上で話自体が収束したタイミングでふと思い出したようにメイビスに話しかけたウィズだったが、神速のごとくマカロフによる「ばっかもーん!」からのど突きが入れられて言葉を遮られる。

 

「初代になんて口の聞き方をするんじゃ!」

 

「いやだってじいさん、オレはメイビスともう会って話したことあるし。話してなかったけど」

 

『ですねぇ。初めて会ったのは今から11年前になっちゃいますか。あの時から私とウィズはお友達ですから、3代目も怒らないであげてください』

 

 マカロフに殴られた頭を擦りながら、トンデモ発言をして笑い合うウィズとメイビスに全員が口あんぐりをするが、そんなことはいいんだと話を戻したウィズは改めて話そうとすると、そちらもメイビスは折り込み済みらしく、その話はあとでと言ってとりあえずギルドに戻ろうということでビスカ達が乗ってきた船でマグノリアへと戻っていった。

 てっきり天狼島でしか霊体として存在できないのかと思っていたら、普通についてきたメイビスに何でもありだなと呆れつつ、マカロフを交えて3人で内緒話をする。

 

『3代目。突然ではありますが、ギルドに戻ったらウィズにルーメン・イストワールのところに案内してください』

 

「なっ!? それは本気で言っておられますか、初代……」

 

『冗談でこんなことは言いません。ウィズにはあれを解き放ってもらいます』

 

「ちょいメイビス。オレはまだやるとは言ってないだろ」

 

『そう、でしたね。では1度その目でルーメン・イストワールを見て、それからお返事を聞かせてください。急を要することでもありませんし、使わなければ問題もありませんからね』

 

 マカロフの驚き方が尋常ではなかったことにウィズも驚くが、ちゃんと返事をしていないことを割り込んで言えば、しょぼんとするメイビスのあざとさは天然なのか狙ってるのか判断が難しかった。

 どのみちルーメン・イストワールとやらは拝見することになるらしいので、今はそれ以上のことを話しても仕方ないかと内緒話から外れたウィズは、自分がいない間に入ったルーシィ達と心の距離を詰めるために他愛ない話をして港までの時間を使っていった。

 数時間後、港へと到着しゾロゾロとマグノリア目指して行列を作ったウィズ達は、やはり7年も経って雰囲気の変わった港を見て時の流れを実感。

 それはマグノリアの街にさしかかったところでも感じることとなり、外観に大きな差はないものの、明確に何かが違うと一同に訴えてきた。

 それでもギルドがお世話になってきた街ということで明るい雰囲気で街へと入ろうとしたのだが、その入り口にはウィズ達の到着を待つ男の姿があって、その男を見た途端に身構える者も何人かいた。

 

「……そろそろ帰ってくるだろうと思っていたよ」

 

「……お前は……黒魔導士ゼレフ!!」

 

 穏やかな表情で出迎えたゼレフを見て、グレイが臨戦態勢でそう言うので、釣られてほぼ全員が警戒を強くする。

 しかしその姿を見ても動じることがなかったウィズは笑顔を見せるゼレフへと近寄って、止めようと声を上げるナツ達だったが、それをメイビスが手で制す。

 

「7年経ってるらしいんだが、悪さはしなかったか、ゼレフ」

 

「そんなことをしてまた呪われでもしたら、君に合わせる顔がなくなってしまうだろう?」

 

 全員が沈黙する中で友人と挨拶するように話をし笑い合った2人を見て、メイビスがとても嬉しそうに笑っていたが、他のみんなは何が何やらといったキョトン顔をしてしまい、そんなみんなに振り返ってウィズは口を開いた。

 

「こいつはあの日、天狼島で黒魔導士ゼレフじゃなくなった。今はオレ達と同じ普通に生きる人間だ」

 

「そ、そんなことがありえるのか?」

 

「じいさん、オレの力は説明しただろ。信じろよ」

 

 もう驚きすぎて芸にも見えてきた仲間達の反応にゼレフと肩を組んでピースしてみせたウィズだが、また自分達の知らないところで色々やってたウィズに怒ったナツ達は一斉に詰め寄ってウィズをフルボッコ。

 そういうことはちゃんと話せ!

 各々が怒鳴りながら蹴るわ殴るわで弁明の余地すらなくすナツ達の有り余る元気にはついていけないが、なんだか自分に対する扱いが雑になってることには怒りが込み上げてきたので突然キレて1人ずつお仕置きを始めて立場が逆転し逃げ惑うナツ達。

 それを見てゼレフは本当に楽しそうに笑って一部始終を見届けるのだった。

 バカどもの対応に手間取ったが、何人か地面に沈めたところで一旦怒りを治めたウィズは、思い出したようにゼレフへと近寄ってナツの件が成功したことを知らせておき、兄としてそれを喜んだゼレフも、今日ここに来た理由を話してくれる。

 

「君達がいなかったこの7年で、僕はやれることを全てやった。アクノロギアは僕が作った国……アルバレス帝国の総力を以て討ち倒したよ」

 

 事後報告としてそう話したゼレフの話に、ウィズのみならず、それが聞こえたマカロフやメイビスまでが今日一番で驚きの表情を浮かべた。

 あのアクノロギアを倒したと言うゼレフに、ウィズはどう反応していいのかわからなくなってただ立ち尽くしてしまった。

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