FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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未来の選択

 数日後。

 改めて天狼島へと、今度はギルドのメンバー全員でやって来たウィズ達。

 その目的は初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンの本当の意味での弔い。

 祭りの翌日に二日酔いやら何やらでグッタリしていた面々を無視してメイビス本人からされたルーメン・イストワールの話やゼレフとの関係からギルド設立の経緯などなど。

 おそらくはメイビスが話せる全てのことを聞いたウィズ達は、どうあがいても霊体としていられる時間が残り少ないことを聞かされて善は急げで今に至り、形だけであるメイビスの墓へとやって来て正真正銘のお墓としてあげる。

 

『皆さん、何から何までお世話になりました』

 

 埋葬も終えてしてやれることを全て終えてから、墓の前でウィズ達と対面したメイビスは深々とお辞儀をして感謝を述べる。

 

『私達先人の時代は終わり、これから先の未来を紡ぐのは今の時代を生きるあなた方です。どうか皆さんの力で誰もが笑顔でいられる明るい未来を作ってください』

 

 そして初代マスターとして、偉大な先人として今を生きるウィズ達に笑顔でそんな言葉を残したメイビスは、誰1人として涙せずに凛々しく立つウィズ達をざっと眺めてからゆっくりとその姿を消していく。

 

「向こうに行ったら、ティアをよろしく頼む。心配性でまだ入り口にいるかもしれないからさ」

 

『まぁ。過保護な師匠なのですね。ではあなたが元気なことをちゃんと伝えて安心させておきます』

 

「ありがとう、メイビス」

 

 消え行くメイビスを見て、ふとその墓の隣にあったティアの墓を見て思わずそんなことを言ってしまったウィズに、クスクスと笑いながらお願いを聞いてくれたメイビスに感謝。

 それを最後にメイビスは完全にその姿が消えてしまい、残されたウィズ達はマカロフの言葉に従って少しだけ長い黙祷をメイビスに捧げたのだった。

 メイビスを見送って、ギルドを空にして来てることもあり割とすぐに撤収の流れになって船へと戻ってきたウィズ達は、そこで1人で待っていたゼレフと入れ替わるように船に乗り込んで、島に残る予定だったゼレフと言葉を交わす。

 

「本当に良いのか?」

 

「ああ。僕はこの島で残りの時間を使わせてもらうよ。ここにはメイビスも、君の師匠もいるしね」

 

 事前に話は通っていたとはいえ、いざそうなると少し寂しいものだとウィズは思う。

 ゼレフはアンクセラムの呪いから解き放たれたが、長年の不老不死の反動か急激に身体が弱ってきていたようで、あと半年も生きられないかもしれないと話していた。

 その前にウィズ達にまた会えたのは本当に良かったと言ったのと同時に、ゼレフはその残りの時間を天狼島で静かに過ごしたいと申し出て、最初こそナツが止めたのだが、死に顔を誰にも見られたくないと強く言うゼレフに結局折れて、マカロフとメイビスの了承を得た上で今に至っていた。

 

「ナツを、弟をよろしく頼むよ。やんちゃで無茶苦茶なところが心配だけど、君がいてくれると思えば安心できる」

 

「オレはナツの保護者じゃないぞ。だがまぁ、無茶した時は怒ってやるくらいはしてやる」

 

「ちょっと待てぇええ!! 俺を子供扱いすんなよ!!」

 

 出発準備が進む中でそれなりの関係性を築いたウィズとゼレフがしんみりしない程度の会話をしていたら、別れの言葉は言いたくないとか言って引っ込んでいたナツがガーッと噛みついてきて、それをルーシィとハッピーが腕を掴んで止めていた。

 

「400年生きた僕からすればナツはまだまだ子供だよ」

 

「子供扱いに過剰な反応してるやつが吠えるなよ。大人なら言葉の1つや2つ受け流せるようになれ」

 

「ウィズのアホー」

 

 そのナツを見て2人して笑ってそんなことを言ってやって子供扱いを取り下げないでいると、挑発するようにナツがウィズを馬鹿にしたので、ぐりんと振り返ったウィズはルーシィとハッピーに手を放すなと言いつつナツに迫っておしおき。

 全然流せてねーじゃねーかぁあ!!

 そんなナツの断末魔が響く中で船は出発。

 それを笑顔で静かに見送ったゼレフに、ウィズは少しだけ手を振ってから甲板に沈んだナツのおしおきを再開していった。

 ナツのおしおきを終えてガヤガヤと賑やかな仲間達と適当な話をしてから、船頭であぐらをかいてうんうん唸るマカロフに近寄ってみたウィズは、何を唸ってるのか尋ねると数ヵ月後に開催されるフィオーレ最強のギルドを決める大会『大魔闘演武』の出場メンバーの選出だった。

 候補にはエルザやナツ、グレイなどの名前が挙がっていて、もう実力を遺憾なく発揮できるようになったウィズも当然候補に選ばれていたのだが、大会の規定が書かれた本を読みながら軽い感じで宣言しておく。

 

「じいさん、もしオレを選ぶなら、ラクサスをギルドに復帰させてくれよ。いつまでも頑固になってても仕方ないって。ラクサスがしたことは間違ったかもしれないけど、間違えない人間なんていない。オレもその1人だし」

 

 視線など合わせずにそんなことを言うウィズにマカロフはさらにうんうん唸るものの、ウィズの入らない戦力低下とラクサス復帰による戦力増強は実際問題かなり大きい。

 もちろん大会のことがなくてもラクサスの復帰は悩んでいただろうが、その時はギルダーツやエルザ、ミラといったS級も連れ出して物申していたので、これで済むなら御の字といったところ。

 それで今度はあんまり交遊のなかった新規組に混ざるためにルーシィやウェンディの場所に割り込んでみると、丁度ルーシィが星霊魔導士にとって大事な鍵を磨いていたので、その中の黄道十二門の鍵を見てそういえばとギルドを出ていた時の話をする。

 

「そういや昔、ちょっとしたゴタゴタを解決した時に黄道十二門の鍵を2つ手に入れちゃったんだよな。今ルーシィが10個の黄道十二門の鍵を持ってるから、それ合わせれば全部揃ってたんだな」

 

「ってことは、ウィズはもうその鍵を持ってないってことだよね? もしかして売っちゃったとか?」

 

「ああいや……オレは選択以外の魔法が使えないからもて余してたんだが、少しして素質のありそうな子にあげちゃったんだ。その時まだ10歳前後だったから、今は17、8歳になってるかな」

 

 そうした思い出話をしたら、あの時に出会った少女の顔が頭に浮かんで、別れる時に何か言ったような気がしてそれを思い出そうとする。

 

「じゃあ、順調に魔導士として成長してたら、今頃どこかのギルドに入ってたりするかもね」

 

「ん、かもな。戻ったらあの子のいた街に行ってみるか。もしかしたら会えるかもしれないし」

 

「あ、それ私も行きたい! 同じ星霊魔導士になってるかもしれない子だもんね。仲良くなれたらいいなぁ。星霊も紹介してもらいたいし」

 

 ああ、あんなこと言ったっけと思い出したところで、ルーシィがギルドに入ってるかもと予想するのでそれもあり得るなと考えつつ、昔その子と会った街に行ってみることを口にすれば、まだ会えるとも限らないのにルーシィがついてくると言って楽しそうにするので、苦笑しつつ了承。

 昔に会ったその子はとても内気でネガティブ思考の強い少女だった。

 だからウィズは鍵を渡してこう言ったのだ。

 

『楽しそうにしない子に近づこうとする子なんていない。だからまずは笑顔になれるように楽しいことを考えよう。寂しいなら君がこの鍵を扱えるようになって、呼び出す星霊と友達になってもらえばいい。そうやって少しずつ人の輪を広げていけ』

 

 確か名前は……ユキノ・アグリアだったはず。

 その子の何を知ってるわけではないが、無視できないくらいには孤独になりかけていた少女に手を差し伸べた責任がウィズにはある。

 いつか再会して、その時にその子が自分のことを覚えていて、さらに笑顔が見られたらそれは、とても幸せなことだ。

 

「まぁ、それはそれとして今は7年の開きをどう埋めていくかの方が大事かな。特にガキ組。お前らたぶん、マックス達と良い勝負だぞ?」

 

 そんな風な考えを抱きながら話題を変えてニヤニヤしながらルーシィ達に向けて現実を突きつけてやると、何故かマックス達にまでツッコまれるが、ここで自分を含めない辺りにウィズの自信がうかがえた。

 

 数ヵ月後。

 大魔闘演武に参加した妖精の尻尾は、7年のブランクをものともせずに奮戦し見事優勝。

 特にウィズは大会中、ただ1つの怪我も負わずにほぼ無傷で全ての競技に完勝。

 かつて全くの無名だった選択者がフィオーレ王国にその名を轟かせた。

 大会後、目覚ましい活躍からウィズはイシュガルの四天王、ゴッド・セレナの抜けた穴を埋めるべく聖十大魔導の称号を与えられ、所属を妖精の尻尾としたまま、聖十の権限を以てゼレフが繋いだ世界平和への交渉に参戦。

 数年間も続いたアルバレス帝国との和平は困難を極めたが、表面上はどうにか無事に収束した。

 そしてさらに数年が経って、ウィズもとうとう1人の父親になる。

 最大でもあと20数年でその命が尽きてしまうウィズだったが、ちゃんと繋いだ未来の形にこの上ない幸せを感じつつ、今日も精一杯生きる。

 

 大きな、とても大きな『選択』の過ちを冒さないように、慎重に、1歩ずつ、確かめながら歩いて、今日も晴れ渡るイシュガルの空を笑顔で見上げるのだった。

 

 

END

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