FAIRY TAIL~選択者の軌跡~   作:ダブルマジック

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変化と経過

「おうおう! やれやれガキども!」

 

 ミラ達が妖精の尻尾へとやって来てひと月。

 結局ミラは家族を守るための力として悪魔の力をまた石から接収し、それを自在に操れるように魔法の勉強を始め、今では悪魔の力も内部に留めて表面化しなくなり、ずっと着ていたローブも脱いで本来の明るい……明るすぎるやんちゃな性格が出てきてギルド内は度々ミラのイタズラによってちょっとした騒ぎになったりも珍しくなくなった。

 喧嘩は煽るし火種も撒くとあってウィズの悩みの種にまでなってしまったミラだが、それでも塞ぎ込んで一切笑わなかったあの頃よりは100倍はマシだと思う。

 そんなミラに今日も煽られたナツやグレイ、エルザやカナがお菓子を食べられたと取っ組み合いの喧嘩を始めてしまい、レビィと一緒に読書をしていたウィズは犯人を知ってるだけに教えてやるのもやぶさかではなかったが、そうすると腹いせにイタズラをされてしまうし叱ってものらりくらりと聞き流すだけの度胸もあるので物理的な手段を使わざるを得ない。

 ミラを野放しにするつもりはないが、ミラもミラでイタズラの範疇を弁えてるところがあって、笑いや呆れで済んでしまう程度に留めるため本気で怒るタイミングも難しいのだ。

 それは裏を返せばウィズの抑止力が働いてる結果とも言えるが、13歳のミラにいつまでもそんなイタズラをさせるわけにもいかないので対策は練ろうと考え始める。もちろん同い年のエルザがナツ達に混ざって喧嘩してる状況も非常に悩ましい。

 今はまだ小さなつぼみかもしれないが、いずれはこのギルドの中心となる子達。

 個性派揃いのメンバーをビシッと姿勢を正せる存在はちゃんと育てないといけない。それが繋ぐという意味であることをウィズも理解しているし、マカロフもそれを願っているはず。

 次代のリーダーという意味ならウィズと同い年のラクサスは適任にも思えるが、どうにもラクサスは反抗期突入中のようでマカロフも素直には任せていない。

 それを思うと不安しかない世代だが、期待値込みで優秀な粒揃いなのもまたエルザ達の世代。手はかかるがそれだけの苦労をかける価値はあるのだ。

 そんなエルザ達を見てそろそろうるさいと思い始めたウィズが睨みを効かせようとしたところで、ギルドの入り口に困り顔の少女の姿を発見する。

 ギルドの子ではないが街の子であろうその子が何か用があるのだと思ったウィズは読んでいた本を置いて喧嘩するナツ達に1発ずつ小突くようなチョップだけを入れて通り過ぎ、おどおどする少女の目の前まで行き目線を合わせて屈むと、その子の話を聞いて立ち上がりギルド内に声を響かせる。

 

「おいガキども。喧嘩とかしてないで手伝え。仕事だ」

 

 ウィズのお呼びとあって喧嘩も1度ピタリと止まるが、依頼人がウィズの傍にいる少女とわかるとエルザとレビィ、リサーナ、エルフマン以外は無視。

 おそらくは手伝っても報酬など期待できないからだが、ウィズが『喧嘩を1度だけ見逃す権利』を与えると言えば日頃その制裁に怯えるナツとグレイとカナ。ジェットやドロイといった面々は豹変して食いついてくるのだから単純。

 しかしミラだけはからかう相手がいなくなってつまらなそうに無視を決め込んだので「手伝ってくれたリサーナとエルフマンには今夜ご馳走する」とミラに聞こえるように言ってやれば、喜ぶ2人を見て意外と寂しがり屋なミラはひとりぼっちの夕食は嫌なのか結局手伝う羽目になるのだった。

 少女からの依頼は単純なもので、大切にしていたブローチを誤って落としてしまい、それを探してほしいというもので、ブローチの特徴を聞いたナツ達は当然我先にと捜索を開始。

 こういう探し物は人海戦術が早いのでナツ達を駆り出したが、当然正式な依頼でもないから報酬など出ない。

 そんな便利屋みたいなことをしていてはギルドとしての機能が失われてしまうが、マカロフはウィズがこういったことにナツ達子供連中しか使わないことを知っているので、今までも特別咎めたりしたことがない。

 街の方々に散ったナツ達とは別に、少女と一緒に行動しながらブローチを探していたウィズは、唯一ついてきたミラが頭の後ろで手を組んで周りをなんとなく見て探してるだけの態度にちょっとムッとしてしまう。

 だからミラに聞こえるよう少女にもしブローチが見つからなかったらと話して悲しそうな顔をさせれば、根は優しいミラもぬぐっ、と気まずそうな表情を浮かべてから組んでいた手を解いて腰をちょっと低くし真面目に探し始め、始めからそうすりゃいいのにと思いつつ少女をなだめて自分も真剣に探すのを再開させていった。

 そうして探すこと1時間ほど。鼻が利くのに勢いで探してたナツが息を切らせて合流し、何故か上着を無くしたグレイがゼーハー言いながら合流しと収穫なしが続いたが、少女の行動範囲を一緒に探していたミラはその間も周囲に目を凝らしていたのか、不意に何かを見つけて近寄りそれを拾い上げると、少女が真っ先に反応し走り寄る。

 それは少女が探していたブローチに間違いなく、パアッと笑顔の咲いた少女はミラからブローチを受け取ると「ありがとうお姉ちゃん!」とお礼を言う。

 すると感謝されるのに慣れてないミラは顔を赤らめてそっぽを向いてしまい、依頼完了ということでナツ達は解散。一斉にギルドへと戻り始めるが、少女を見送ったウィズはミラを引き留めて話をする。

 

「人に感謝されるってのは嬉しいもんだろ」

 

「……金にならねーなら結局は疲れただけだろ」

 

「ミラはまだイタズラの方が楽しいかもしれないな。でもいつかそういう気持ちに喜びを得られて大切にできるようになったら、きっとミラはみんなに頼られる存在になるよ。あと良いお嫁さんにもなれるかも」

 

「バッ! お嫁さんとか恥ずかしくねーのかよバカウィズ!」

 

 ブンッ!

 またお節介かと話を聞き流していたミラだったが、ウィズの予想外の言葉に顔を真っ赤にして蹴りを入れようとしたが見事に見切られて空振り。

 どうせ当たらないと早々に諦めて地団駄を踏んでからリサーナとエルフマンを追ってギルドに戻っていってしまったが、これまでも聞き流してはいたが耳は塞がない素直なミラにちょっと笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 X778年12月。

 ラクサスがS級試験に合格し、そのお祝いをギルドでしていた頃。

 ナツとリサーナが一緒に卵から孵した猫らしき生物、ハッピーに色々と先輩面で教えていたりとありながら、騒ぐメンバーの中心であるラクサスは何やら冷めた感じで酒を飲んでいたが、その理由は単純。

 マカロフしか知りはしないが自分を負かしたウィズがS級試験を受けることすらなかったからだ。

 毎年何人かが試験を受けて、その中から1人だけがS級魔導士となれる。或いは1人もなれないこともあるギルド内の神聖な催しだが、試験を受けられるメンバーはマスターであるマカロフが活躍やらを考慮して選出する決まり。

 その中に今年、ウィズの名前はなかった。それがラクサスは納得がいかなかったらしく、密かにマカロフへと異議を唱えていたのだが、活躍という視点から見たらウィズは目に見える活躍は全くしていなく、ギルドに入ってから1度たりともマグノリアから出たこともないレベル。

 それではさすがのマカロフも実力はあろうと認めるわけにはいかないとウィズを弾いていた。

 その結果ウィズ不在でS級になったラクサスはなんだかスッキリしない昇格に素直に喜べずにいたわけだが、同じS級魔導士の先輩に当たるギルダーツが『時の運』とか言いながら酒を勧めてがぶ飲みしていたのでもうそれで納得するしかなくなっていたし、自分を尊敬する普段は滅多に顔を出さない雷神衆の3人も自分のことのように喜んでいるのでいつまでもシケた顔をしていたら悪いと開き直っているようだった。

 その酒の場でガキどもが寝静まってゆっくり飲む時間となってから、口の緩くなった面々が唐突に今まで口にしてこなかった疑問をポロッとこぼす。

 ──ウィズとギルダーツが戦ったらどっちが強いのか。

 現在の妖精の尻尾で最強の男と目されるギルダーツ。その相手に名を連ねたのは未だその実力を全く見せないウィズ。

 ちょうど当人達もいる中でされたその話題にウィズもギルダーツもキョトンとしながら互いに顔を見合ってしまい、他の連中はどうなのよとグイグイ迫ってきたが、目をぱちくりさせた2人は揃って同じことを言った。

 

「「勝算が少ない喧嘩はやるだけ無駄だろ」」

 

 それには聞いてきた周りよりも言った当人達がビックリ。

 ウィズは本心からギルダーツには勝てないと思って言ったのに、そのギルダーツまでが勝てないかもと言葉を濁してきたのだ。

 

「あのさ、ギルダーツ。オレそんなに化け物じゃないから」

 

「いやオメェ、それはちょっと過小評価だろ。ってかサラッと化け物扱いすんなよ!」

 

「過小評価も何もオレは魔導士としては欠陥だらけで話にならないし。だからボロが出ないようにマグノリアからも出てないわけで……」

 

「欠陥だぁ? その欠陥をチャラにできるだけのもんがあるだろうに、それすら見せねぇで引きこもってるわけか。何かあんのは見てりゃわかるが、そうしなきゃならねぇ理由がお前にはあるってことか」

 

 事実として自分の欠陥を曖昧にではあるが口にしたウィズだが、それ込みで自分と同等くらいの実力はあるだろうと見たギルダーツは、そうして本来のパフォーマンスを発揮しないウィズの事情はあえて聞かず、無言の肯定で返したウィズを見て「よし、この話終わり!」とお開きムードにして切り上げてくれて、それに感謝しつつ酒の席を立って先に帰っていった。

 

「(このギルドに……家族に迷惑はかけられないからな……)」

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