翌日。ウィズの話に一喜一憂したルーシィ達は、忘れるところだったエルザの今日わかるというみんなの忙しさの謎について触れることになったが、ぶっちゃけウィズの話の中でこの時期に行われていることが話されていたのでネタバレしてるに等しかった。
それでマカロフの召集によりギルドにゾロゾロと集まったルーシィ達は、今年も行われるS級試験の参加者とその試験内容を聞かされた。
「なお今年の試験はギルドの聖地である天狼島にて行なう!」
あらかたの内容を話したマカロフが最後に口にした今回の試験会場は、まだ足を踏み入れた者も多くはない天狼島。
それだけに参加資格を得たナツやグレイらは一気に闘志を燃やしてやる気満々に。
その様子を見てルーシィはこれから始まる激闘の予感を感じずにはいられなかった。
それと時を近くして、ウィズもとある情報から地道に悪魔の心臓へと繋がる糸をたぐり寄せていて、ようやくその構成員の1人を捕まえる。
闇ギルドは滅多なことでは表の世界には顔を出さないため、空振りの方が圧倒的に多くてフィオーレを右往左往しているうちに2年も経っていたが、ついにその足取りを掴めるかもしれないところまで来た。
一応これまでの成果として悪魔の心臓のマスターとその最高幹部7人、『煉獄の七眷属』については少し知ることができたが、どいつもこいつも失われた魔法の使い手らしく厄介極まりないようだった。
さらにそれとは別にブルーノートとかいう男の名だけがあったが、こちらは詳細は不明。下部構成員では知ることもできない人物らしく、そのブルーノートと同様に得体の知れない女の情報もあり、それこそがウィズが探す人物で間違いないようだった。
悪魔の心臓は拠点を魔導飛行戦艦としているらしく、決まった場所に拠点を持たないとかで、道理で今まで見つからないわけだと納得。
聴覚以外の五感を抜き取られた構成員は、拷問されるよりもある意味では恐ろしい状況に易々と口を割ってくれたが、やはりただの構成員。知っていることもたかが知れていたが、しかし運が良いことにその戦艦に乗っていたとかで話を盗み聞いたことがあったらしく、思い出したように口を開いた。
「そうだ! 確か次の目的地の話をしてるのを聞いた! なんでもゼレフがそこにいるとかでようやく悲願が叶うとかって話だった……」
「ゼレフが……生きてるだと?」
「オ、オレら悪魔の心臓のメンバーはそう聞いてる。ギルドの目的は全てゼレフを永き封印から解くことにあると」
「……まぁそれはどうでもいい。悪魔の心臓の目的には興味がないしな。それでその戦艦の行き先は?」
かなり有力な悪魔の心臓の行き先についてを知っていたのは儲け。
そう思っていた矢先にゼレフが生きているという話が出てきてちょっと動揺するも、自分の目的はゼレフでも、ましてや悪魔の心臓というギルドにもないので今はスルーし行き先を吐かせる。
「そ、その行き先は確か……」
そして幸か不幸か、運命のいたずらによってウィズはまたあの島に行くことになってしまう。
全てを終えるまでは帰らないと決めていたあのギルドの聖地。天狼島へと。
しかし聖地と言えどギルドのメンバーが来ることなど滅多なことではないはずで、ウィズがいた4年の間でもマカロフが明確に行くと宣言したのはS級試験のあの時だけ。
時期的にはもうすぐそのS級試験だが、そう何度もあの島で試験をすることもないと思うので、悪魔の心臓との遭遇も可能性は低い。
全てを話してくれた構成員はもうギルドへは戻れないだろうなと思い、五感を戻してあげてから逃亡に必要だろう資金を恵んで解放。
次にやるべきは島へ行くための手段と定めたウィズは、天狼島に1番近い港町を目指してどうにか安く仕入れた魔導二輪に股がり出発した。
2日ほどかけて港町へとやって来たウィズは、定期船なども出ていないあの島へ行くために個人で乗れる魔導機械を探して市場へと踏み込む。
人1人を乗せて動けばいいのでかなり小型のものでいいのだが、そう上手い具合に丁度良い品は売ってなく、諦めて大きめのものにしようかと思ったところで、しがない魔導機械の商店を発見し中を覗くと、サーフボードに動力装置だけを着けたような非常にコンパクトな水上用の乗り物が置いてあり、値段もプライスレス。
操作などを聞く限り水上では止まるとバランスを崩して転覆するため必ず陸に上がらないと止まれないポンコツということなのだが、止まらなければいいだけなので即決で購入すると、次は移動距離がそれなりになるので自らの魔力を使って動かす魔導機械ではその先に待つ悪魔の心臓との接触の時にはヘロヘロになってしまう。
それを解消するために魔力を予め蓄えておける魔導機械を付属させる必要があり、それがあるだろう店を紹介してもらって積載できる大きさと十分な許容量を持つタイプを購入。
取り付けはウィズでも出来そうだったので今日のところはその動力源となる魔導機械にありったけの魔力を注ぎ込んでおき、出発は明日と決める。
しかしこれがまたかなりの労力を割くことになり、ありったけの魔力を注ぎ込み終わった頃にはウィズの疲れも限界突破。そのまま泥のように眠る羽目になってしまったのだった。
翌日。朝早くから一足先に天狼島へと向かうためにS級魔導士であるエルザ、ミラ、ギルダーツの3人は、ウィズの停泊する港町から船に乗って出発していき、遅れること数時間後にナツ達参加者組もマカロフの先導で船に乗り込んで天狼島へと向かっていったが、肝心のウィズは昨夜の疲れが響いて未だ爆睡中。
ウィズが目を覚ましたのはナツ達が出発してからおよそ2時間後の昼過ぎになっていた。
出発は朝早くと決めていたウィズだけにこのロスは痛く、慌てて準備を整えて港へと移動すると、魔導サーフボード──勝手に命名──を海に着水させて自らもその上に着地。
静止状態では本当に立ってるのもままならないため支えに掴まった状態で機械を駆動させると、推進力を得た魔導サーフボードは前進を始めてあっという間に加速。スピードさえ出れば安定するので下手に動いたりしない限りは大丈夫そうで、燃費の方もなかなか。
逆算で片道なら昨夜貯めた魔力だけで足りそうなのを確認してから遅れてしまった分を取り戻すようにそのスピードを少し上げて天狼島を目指していった。
X784年12月。
この日、誰もが知る由もなく天狼島ではあらゆる人物達が顔を合わせることとなる。
妖精の尻尾。悪魔の心臓。黒魔導士ゼレフ。そしてウィズ・クローム。
──運命の時は、刻一刻と迫っていた。