『護る』というコト。 作:シャール
カーテンの隙間から差し込む光が廊下を照らす。起床する時間にもかかわらずまだ寝ている凛音を起こしに行くことにした私は、そっと凛音の部屋のドアをノックする。
「凛音…起きてる…?」
「…」
返事が無い。なら部屋に入っても…いいよね?
そう思った私は静かにドアノブを回しドアを開けていく。忍び足で中に入ると、部屋の奥に据え置かれたベッドの上でこちらに背を向けて寝ている凛音が見えた。
「凛音…起きて」
お寝坊さんな妹を起こそうと肩を優しく揺すると、凛音は何か寝言を言いながら寝返りを打ってこちらを向いた。
「燐、ねえ…」
「…!ふふっ…」
寝言の中に自分の名前が入っていたことに驚きながらも、凛音のあどけない寝顔に思わず微笑んでしまう。昔から引っ込み思案な私を気にかけ、時に支えてくれていた凛音。同じクラスの友人は少し大人びた印象を持つ人も多いらしいし、私自身考え方が大人びていると思っている。それでも、こう寝顔を見ていると年相応の可愛さが…なんて思ってしまう私はおかしいのだろうか。
凛音の頭をそっと撫でる。静寂の中、愛おしい妹の寝顔を見ながら私は穏やかな時を過ごすのだった。
「んぅ…」
微睡みから醒める。ぼやけた視界に最初に入ってきたのは艶やかな黒髪と、私の頭を撫でる雪のように真っ白な手。
「…あ、起きた?」
「燐ねえ…?おはよう…」
…あれ?何で燐ねえがボクの部屋にいるのかな?
「今…何時?」
「10時半、だよ…?」
…ああ、なるほど。完全に寝坊したやつか。やっちゃったなと思いながら起き上がろうとすると、燐ねえに押さえつけられた。
「…いや、燐ねえ?」
「別にまだ…寝ててもいいんだよ?」
「いや、起きる時間とっくに過ぎて──」
「だって、最近凛音頑張ってたし…疲れてるでしょ?」
…言われてみれば、ここ最近ずっと忙しかった気がする。昨日は休憩無しでギターのメンテナンス、燐ねえのピアノの調律をやったし、一昨日はバイトで半日外だったな…。
「少しぐらい…休んだっていいんだよ?」
そう言って、ボクの頭を太股の上に乗せた燐ねえは静かに微笑んだ。てか膝枕…意識してないのかな?
「り、燐ねえ…膝枕してるけど…」
「別に午後からでもいいから…少し、のんびりしよう?」
「燐ねえ…」
頭を撫でられている内にまた瞼が重くなってきて、疲れが溜まってたんだなぁと思いながら、静かに目を閉じる。
(もう少しだけ…いっか)
久しぶりの穏やかな時間を過ごしながら、ボクの意識は闇へと落ちていった。
ほのぼの苦手だ…難しい。