失敗した、と松坂さとうは思った。
じゃあ、何がどうなれば成功になったのだ? それはわからないけれど、とにかくこれは失敗だ。それだけは確かだ。
現在目の前に転がっているのは、少し前まで「親友」という言葉でその関係を呼んでいた少女の身体。同い年のバイト仲間。飛騨しょうこ。その彼女が、目の前の床に倒れている。後頭部から血を流し、微動だにしない……と言いたいところだが、背はゆっくりと上下している。つまり、まだ生きている。
そもそもの発端は、しおといっしょにいるところを見られたことだ。いや、見られただけなら良かった。しょうこは自分たちの姿を写真に撮った。携帯のロックの外し方を教えろと迫ったが、頑として首を縦に振ってくれなかった。
警察には行かないと言っていが、そんな言葉は信用できない。押し問答になり、さとうはつい手近にあったものをしょうこめがけて振り下ろしてしまった。
……つい?
つい、ではない。それに、大事なのはそれではない。
目の前に転がっている、親友だったものを、どうするかだ。
ざっといくつかの可能性を考える。トドメを刺して、ばらして、袋に詰めて……。いや、ダメだ。この部屋の持ち主だったお兄さんとしょうこは違う。しょうこが家に戻らなかったら、きっと騒ぎになる。実際、言っていたではないか。親が口うるさくて嫌になる、と。口うるさい親のいない自分にはしょうこの言っている意味が実感できなかったが、帰宅が遅いだけで大騒ぎする人間は、帰って来なかったらもっと大騒ぎするだろう。
同じやり方では、ダメなのだ。
しょうこの傍らに膝をつき、身体の下に手を差し込んでぐっと持ち上げる。重い。だがこの場所に転がしてはおけない。ここでは、しおの目につく。変なものを見せてしおを汚すわけにはいかない。あそこへ移さないと。
重い、友人だった人間の身体を引きずってさとうは部屋を歩く。行くのは、お兄さんがアトリエとして使っていた部屋。綺麗に掃除しようと思っていたけれど、なかなか汚れが落ちなくて、まだ赤黒い汚れが残っていて、だからしおには入るなと言い聞かせてある部屋だ。しおがうっかり入らないように、外からかかる鍵をつけてある。
そこへしょうこの身体を移すと、さとうは荒い息を吐いて呼吸を整えた。それからしょうこの頚動脈に指をあてる。脈動は感じられた。……死ぬほどの怪我ではなかったようだ。
でも、帰すなんてありえない。
ビニールテープを持ってきて、それでしょうこの手足を縛る。……念のため、だ。そして部屋のドアを閉じて鍵をかける。これで出て来られない。少しは時間が稼げるだろう。
さあ、これからどうする?
目を閉じてドアにもたれかかる。ここは自分たちだけの夢のお城のはずだった。でもそのお城は、砂でできていたのかもしれない。簡単に崩れてしまうもの。
いや、それで諦めるのはまだ早い。このお城がダメになっても、また別のお城をみつければいいだけ。ハッピーシュガーライフのために、なんでもすると決めたのだ。だから、そうする。
さとうは顔をあげ、静かに笑顔を作った。