ビターブラックゴールドライフ   作:目白皐月

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それはどちらもLで始まる

「あら、今日もあなたがお相手なの?」

「ご期待にそえなくて、悪いね」

 独特な笑顔を浮かべる松坂みつの向かいの椅子に腰を下ろしながら、五島はそう言った。松坂みつは頬杖をつき、楽しげな様子でこちらを見ている。

「残念だわあ。あなたとは楽しいお話ができないんだもの」

「そりゃけっこう」

 五島は素っ気無く口にした。後ろの机の前には葉山が座り、調書を開いている。

「私はね、あなたはまだ愛をみつけてないだけだと思うの」

「寝言はどうでもいい。それで、あんたの姪のさとうは今どこにいる?」

「さとうちゃん? あの子はね、愛をみつけたの。だから、愛といっしょに出て行ったわ」

 五島は反射的に目の前の松坂みつを半眼で睨みそうになったが、そんなことをしても効果がないだろうと思い、踏みとどまった。

「……あんたはそればっかりだな」

「愛より大切なものはないでしょう?」

「そんな話はどうでもいいんだよ。保護が必要な未成年がどこだかわからんところをうろついてる、そっちが問題だ」

「まあ、それは心配ね、うふふ……」

「あんたの姪の話をしてるんだが」

「そうだったわね」

 まったくもって、埒が明かない。松坂さとうの所在についての取調べはいつも、こんな感じだ。

「愛を知らない刑事さん。いえ、愛がわからない刑事さんかしら? ……あなたも苦労するわね?」

 最後の台詞は、後ろで調書を取っている葉山に向けられたものだった。葉山が顔をあげるが、その顔にはうんざりした表情が浮かんでいた。

「なんでもいいから、とっとと五島さんの質問に答えてください。取調べが進みません」

「それそんなに大事なの? もうみんな喋っちゃったじゃない。あと何が訊きたいのかしら?」

「さっきから言ってるだろう。あんたの姪の居場所だ」

「あの子なら、愛をみつけて出て行ったわ」

「……ああはいはい、罪状に不保護罪も追加ってことでいいんだな」

 言いながら、不保護罪にするのは少々厳しいかなとも思う。さとうは十六歳だ。未成年だが、不保護罪が成立するほど幼いかと訊かれると難しい。

「刑事さんは罪にしか興味がないの?」

「興味があるのは事件の中身だ。……それで、あんたが本当に深谷を殺したのか?」

「ええ」

「動機は」

「殺してくれって頼まれたの」

「なぜ深谷はそんな頼みを?」

「さあ?」

「あんたは頼まれたら誰でもホイホイ殺すのか?」

「それが愛だもの」

 あっけらかんと笑う顔は童女のようで、五島とさほど変わらぬ年齢の女性とは思えない。

「あんたの姪の友達である、飛騨しょうこを殺害しようとした理由は?」

「愛を求める小鳥ちゃん? 可愛い子だったけど、見たらいけないものを見ちゃったのよ。かわいそうだけど、仕方なかったの」

「飛騨しょうこはあんたに、あんたの姪が1208号室にいると言われ、そこへ向かったと言っている。そして、あんたはついてこなかったし、そこでさとうと会ったとも言っている。さとうはこの一件の事件に関わっているのか?」

「やったのは私で、さとうちゃんは関わってないわ」

「ならどうして、さとうは姿を現さない? 後見人の叔母が逮捕されたのに、行方をくらましている?」

「愛をみつけたからよ」

「飛騨しょうこが見た、見たらいけないものとはなんだ?」

「それはもう話したでしょう?」

「きちんと起きたことを順序立てて話せ。しょうこには、具体的に何を見られた? 死体か? 凶器か?そもそも、彼女はどうやって1208号室に入った? そこには、あんたの姪がいて、死体をバラしている最中だったんじゃないのか?」

「小鳥ちゃんは、見てはいけないものを見てしまったの。愛の巣を暴くのはいけないことよ」

 愛の巣、という言葉に、五島はひっかかるものを憶えた。松坂さとうは、あの部屋で生活していたのではないか?

「さとうは1208号室で生活していたのか?」

「さとうちゃんは、いつでも、やりたいようにやる子なの」

「そこに、さとうと誰がいたんだ。……さとうと同じバイト先の宮崎すみれって子が白状した。さとうに自分と妹のパスポートを貸したとな。あんたは火事の前にさとうの預金を解約している。逃亡資金か?」

 松坂みつは笑うだけで、答えようとしない。苛立ったら負けだ、と五島は内心で呟き、言葉を続ける。

「さとうは誰を連れて逃げたんだ?」

「誰でしょうね?」

「あんたが知らんはずはないだろう」

「さとうちゃんが愛した人なのは確かだと思うわ。愛の逃避行、ステキな響きよね?」

「十六の子供に、もっと小さい子を連れさせて海外へ行かせる。さぞやステキな未来が待ってるだろうよ。はっきり言って、ろくでもない奴らの格好のエサだ。犯罪に巻き込まれてないことを祈るんだな」

 最後の方はやや強い調子になってしまったが、松坂みつが動じる様子はなかった。

 




 叔母さん、書くの難しい……。

 ところで、私はこの人が「具体的にさとうに何をしたのか」がよくわからないんですよね。だってアニメだと、彼女のやってることって、キャンディの入ったでかい瓶を手渡して「これが愛よ」(この時点で私には意味不明)とかのたまうのと、まともに家事をしていない(少なくとも掃除はできていない)のと、イカれた男性を家に引っ張り込んで変な行動を見せ付ける(叔母さん、もしかしてあれで収入得てるの? それとももっとヤバいことしてた?)なので、全体的に何がどうなのかがよくわからないんです。いや、もちろん、こんな環境でまともな大人になるのは難しいですが、これだけじゃあの性格になるのは説明不足な気がするんですよね。

 そして見ながら、さとうはよく歯が無事ですんだね、と思うのでもありました。あんな環境で育ったら、全部虫歯だらけでひどいことになりそうです。

 この作品ではさとうとしおは逃げちゃってますが、逃げたところで、待っている運命は『リリア 4ever』だと思います。
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