縢れ運命!叫べ勝鬨!魔鎧戦線まどか☆ガイム   作:明暮10番

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お菓子の魔女編を終わらせるまで、連続投稿いたします。


バロンと鎧武、尋常に勝負!

 龍玄とマミもまた、先に進む。

 

 

「あの、マミちゃん……」

 

「……すみません、暗い話をしてしまって……」

 

「いや、いいよ。まどかちゃんに良く考える機会を設けられたんだしさ」

 

 

 光実もまた、戦う事を急いでしまった人間だ。マミの気持ちも、自分と同じ境遇を歩ませる心苦しさも分かる。

 だけど今は何も言わず、目的を達成する事に集中しようと考えた。

 

 

「……空に使い魔たちが……」

 

「僕たちの存在に気付いていたようだね……まぁ、結構騒いだから仕方ないけど」

 

「……離れました。今のうちに行きましょう」

 

「うん」

 

 

 分断されてしまったまどかと鎧武と同じく、二人もまた歩き始めた。

 

 

 板チョコの影響で少なからず地形が変化しており、隆起した地面のケーキが活断層のように浮き出ている。

 後はグチャグチャになったお菓子の破片。

 

 傷んだお菓子を見つけてストラッチャーに乗せるナース姿の使い魔が大挙したが、ケーキの断層を利用して身を隠し、何とかその場を凌ぐ事が出来た。不幸中の幸いとはこの事を言うのだろう。

 

 

「少し、先を見てくるよ」

 

「気を付けてください」

 

「ありがと」

 

 

 龍玄は使い魔の有無を確認する為、先導し様子を見に行った。

 

 

 残ったマミは徐に振り返る。その目には、明確な敵意。

 

 

 

 

「……貴女もいたの」

 

「………………」

 

「……暁美さん」

 

 

 パックリ割れたケーキの隙間から、魔法少女姿の暁美ほむらが現れた。

 一歩一歩、確かな足取りでマミの方へと歩み寄る。しかしいつもの、何を考えているのか分からない無感情的な表情とは少し変わり、若干の焦りが見えていた。

 

 

「……貴女もあのチョコレートに巻き込まれたのね。魔法で何とか逃げ切れた訳?」

 

「魔力はセーブしている。孵化をなるべく促進させないように注意は払っているわ」

 

「それで? 私たちと協力したいの?」

 

 

 ほむらは立ち止まり、ジッとマミを見据える。

 

 

「……違う」

 

「はい?」

 

「貴女は手を引きなさい。ここの魔女は、私が狩る」

 

 

 共闘の提案ではなく、単身討伐の願い出だった。

 

 

「勿論、まどかたちの安全も保証する」

 

「だから手を退けっていうの?」

 

「なんなら、グリーフシードも渡したって良い」

 

「その至れり尽くせりな態度が既に怪しいのよ」

 

 

 マミの手が微かに光った。

 それに気が付き、反応をしようとした瞬間には遅い。地面から射出された黄色いリボンがほむらの身体に巻き付き、束縛する。

 

 魔女が必死に抵抗しても、なかなか剥がれない魔法のリボン。魔法少女たる彼女には成す術はない。

 

 

「なっ……!?」

 

「怪我はさせないし、使い魔が近付いて来たら離すようにはするわ」

 

「ほ、解きなさい!! こんな事をやってる場合じゃ……!」

 

 

 踵を返し、マミはその場を後にしようとする。

 龍玄の元へ行こうとする彼女に、ほむらは叫ぶ。

 

 

「今度の魔女は訳が違うッ!!」

 

「関係ない。私が倒すわ」

 

「貴女じゃ倒せない!!」

 

「どう言う理屈でそう言えるのか分からないけれども……」

 

 

 一度立ち止まり、顔を傾ける。

 流し目にほむらを見つめ、冷徹さを馴染ませた微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「……私の居場所を壊すなら、次は容赦しないから」

 

「……愚かなっ……!!」

 

 

 彼女の恨み節を無視し、颯爽と走り去る。

 背後で何度もほむらは説得を試みようと叫ぶが、その声は次第に小さくなって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で別ルートのまどかと鎧武。

 チョコレートの位置より、いち早く離脱した為、使い魔の大群と遭わずに済んでいた。

 そろそろ気分も悪くなってくる程のお菓子の匂いにうんざりしながらも、迷宮を突き進む。

 

 

「えぇと、この道で合ってんのかな?」

 

 

 先へは進んでいるとは思うが、自信はない。兎に角目に映る場所を進もうと取り決め、まどかを守護しながら魔女のグリーフシードを目指す。

 

 

「まどか。俺から離れんなよ」

 

「………………」

 

「……ん? どした?」

 

「あの、絋汰さん」

 

 

 呼び止められ、進行も止める。

 振り向き、まどかの顔を見る。苦しそうな表情だった。

 

 

「おいおい……ど、どうしたんだ?」

 

「すみません……マミさんの話を聞いて、色々と考えたんです」

 

 

 まどかは続ける。

 

 

「前に絋汰さんにも話した通り……私、特技とかも才能とかも、自慢出来る物は無いんです。守られてばかりで、役立たずの自分が嫌だったんです」

 

「……まどか」

 

「だから、魔法少女は憧れで、第一線で戦うマミさんはやっぱり凄いなって…………でも」

 

 

 彼女の脳裏には、寂しそうに、そして恐怖を押し隠そうとするマミの姿が過る。

 

 

 

 

「……もしかしたら魔法少女は……ううん。戦うって、何かを失ってなければ、続けられないんじゃないかって」

 

 

 その言葉に鎧武が……絋汰は思わず息を飲んだ。

 だが彼の動揺は皮肉にも、鎧武としての仮面が隠してしまう。まどかが気付く事はなかった。

 

 

「そしたら自分が何て恵まれていて、幸せなんだって思えて来て……それなのに物足りないって感じていて……」

 

「……じゃあ魔法少女には、ならないのか?」

 

「……私は願い事も覚悟も、本当は持っていないかも……でもやっぱり、このままの私は嫌なんです」

 

 

 真っ直ぐ、澄んだ瞳で鎧武を見る。

 

 まるで目覚めのような、夜明けを灯すような、晴れた笑顔。

 

 

「……マミさんに言いたいです。『もう独りじゃないですよ』って、『誰かの笑顔の為に戦いたい』って……その為なら私、変わる事を受け入れます」

 

 

 それは今も昔も変わらない、絋汰の戦う理由と同じだった。

 彼の方が気付かされた。心の奥底から、感動が溢れた。目の前の少女は今まさに、自己を確立しようとしていた。

 

 

「……俺も昔は、自己顕示欲で戦っていた」

 

「……え?」

 

「でもある日、俺の力は俺だけしか無いんだって気付いた。それからは自分の力を誇示する為じゃなく、守る為、変える為に使おうって決めたんだ!」

 

 

 まどかの肩に優しく手を置き、仮面で笑顔が見えない分、精一杯の明るい声で話した。

 

 

「まどか。お前は立派な魔法少女になれる! お前なら、力を正しく使える!」

 

「……! はい!」

 

 

 気を取り直し先に進もうとした時、彼は腰に装着していたロックシードの光に気付く。

 恐る恐る手に取ると、それは『カチドキロックシード』だった。錆びたような色をしていたそれは、薄く白い光を放っている。

 

 

「カチドキが……!?」

 

「それ、なんですか?」

 

「特別なロックシードなんだけど……まさか、戻った……!?」

 

 

 

 

 そんな希望も虚しく、光は無くなり、元の錆びたカチドキに戻る。

 同時に二人へ向けられた、鋭い声。

 

 

 

 

 

「あれほど俺の考えに渋っていた割に、上手く説得出来ているようだな」

 

 

 

 

 

 崩壊しかけたドーナツのアーチ。

 その下を抜け、姿を現したのはバナナアームの赤き戦士。

 

 

 

 

「……葛葉」

 

 

 

 

 アーマードライダーバロン……駆紋戒斗だ。

 突然の彼の登場に、鎧武は一瞬だけ面食らった。

 

 

「戒斗……!? お前、いたのか!?」

 

「あっ……さやかちゃんの事でいっぱいいっぱいで忘れてた……」

 

「知ってたのかよ!?」

 

「貴様がいる事は大体予想していたが……まぁ良い」

 

 

 

 バロンはまどかの前に近付き、顎を上げながら話しかける。

 

 

「鹿目まどか。お前、魔法少女になりたいのだろ?」

 

「あっ……!! おい、戒斗、お前止めろッ!!」

 

 

 以前話された彼の計画を思い出す。

 魔法少女になる為の願いを使い、元の世界に帰る。その対象がよりによってまどかと言う事実に、鎧武は怒りを露わにした。

 

 

「なんだ? 貴様も魔法少女になる事を勧めていただろ?」

 

「だからって願い事を強制させるのは間違っているッ!!」

 

「こ、絋汰さん? ど、どう言う事ですか……?」

 

 

 困惑し、狼狽、鎧武とバロンへ視線を行ったり来たりさせるまどか。

 止めようとする鎧武だが、バロンは容赦無く、そして呆気なく真実を告げる。

 

 

 

「単刀直入に言う。俺も葛葉もこの世界の人間ではない。お前の願いで、俺たちを元の世界に戻せ」

 

 

 その言葉の意味を理解しきれていないまどかは、呆然と立ち尽くすのみ。

 

 

「この世界の人間じゃない? ま、待ってください、理解出来ない……!」

 

「冗談ではない。この姿も、ロックシードと言う物も、この世界にとっては異質の存在」

 

「戒斗ッ!! いい加減に……!」

 

 

 

 

 バロンに近付き黙らせようと歩み寄る鎧武。

 しかし突如、彼はバナスピアーを胸部装甲に叩きつけ怯ませた。

 

「ぐぁあっ!?」

 

「絋汰さんッ!?」

 

 

 間髪入れず、腹部を突く。

 イチゴアームズ自体が軽い装甲と言う事もあり、鎧武は容易く吹き飛ぶ。

 

 

「酷い……!」

 

「こいつが必死になっている事が何よりの証拠だ。所謂、パラレルワールドの存在……おかしいと思わないか? 何故こうも、短期的に同じベルトを持つ存在が街に現れたのか……」

 

 

 地面に伏す鎧武をそのままに、バロンはまどかへと足を進める。

 近付き、彼の存在が大きくなるほど、威圧感は増す。仮面で素顔は見えないのに、その下にある燃えるような目に睨まれている感覚もする。

 

 

 この男は容赦なく鎧武を斬った。その事実だけで、矮小で力の無い少女の足は竦む。

 

 

「それは俺たちが、一斉にこの世界へ招かれたからだ。元の世界に戻る術はない……ただ一つを除いてな」

 

 

 眼前に立ったバロンが、まどかを見下す。

 

 

「魔法少女のシステムは、唯一の術。でなければ、戸籍もなにも持たない俺たちは野垂れ死ぬしか未来はない」

 

「本当、なんですか……!?」

 

「この状況で嘘を言う必要はない。仮に嘘だとした所で、願いの効力が適用されないだけだ」

 

 

 混乱し、震えるまどか。まだ様々な事を決め兼ねている様子。

 そこへ彼は、決定打を口にした。

 

 

 

 

 

「……誰かの役に立ちたいのだろ?」

 

 

 悪魔の声は囁く。

 そうだ、自分は変わるんだ。誰かの為に力を使える人になるんだ。マミのように、さやかのように。

 どうせ願いがないのなら、魔法少女になる事が願いならば、誰かの願いを叶えてあげても…………

 

 

 

 

「……! ぐぅ!」

 

 

 横から飛んで来たイチゴクナイを、寸前で弾く。

 片膝をついた状態ながら、怒気に満ちた鎧武。バロンと再び視線を合わし、まどかの心を引き摺り出した。

 

 

 弾かれたクナイは、ドーナツアーチに衝突。

 柔いドーナツはいとも簡単に崩れ、破片と甘い匂いを辺りに散布させる。

 

 

「絋汰さん……!」

 

「……葛葉、貴様は腑抜けだ! お前も元の世界に戻らねばならないのだろ!! この世界に意味は無いッ!!」

 

「意味はある……!!」

 

「なに?」

 

 

 彼はとうとう、両足で立つ。ダメージが残っているのか、多少ふらついていた。だがそれでも、しっかり二本の足で立つ。

 クナイを両手に構え、武者震いによる鎧の軋みを響かせながら。

 

 

「マミは深い孤独を抱えてんだ!! さやかも、まだ自分を見付け切れていねぇ!! そうなった人間がどうなっちまったのか、俺は知っているッ!! 大人が傍にいるべきなんだ!!」

 

 

 脳裏に光実の姿が映る。

 自分が彼の孤独に気付かなかったばかりに、間違いをさせてしまった。

 真に彼を信じなかったから、悲惨の末を迎えさせてしまった。

 今だって信じてやれず、過去の光実に未来を伝えていない。傲慢だ。

 

 

「だから何だと言うッ!! この世界に来てまで甘ったれた事をッ!! そんな奴は弱者だ、捨て置けッ!!!!」

 

「捨てられるかよッ!!!!」

 

 

 彼の檄が轟く。

 

 

「まだあいつらは子どもなんだ……! 導いてやりたい、見届けてやりたい……! そうしなければ、俺は元の世界に戻ったとしても後悔する……だからこそッ!!」

 

「……やるつもりか」

 

「利用するなんざ…………ぜってぇに許さねぇッ!!!!」

 

 

 イチゴクナイを構え、鎧武は……絋汰は、戒斗に突っ込んだ。

 身構えていたとは言え高速突撃の衝撃は受け止め切れず、後方へ二人は転がる。

 

 

「あっ……! ふ、二人が……!」

 

 

 まどかから離れた二人は、完全に箍が外れる。

 

 

「ウガァッ!!」

 

 

 立ち上がったと同時にバナスピアーを叩き込み、絋汰を離す。

 しかしそれで食い下がる彼ではない。攻撃後の隙を突き、懐に潜り込みクナイで掻っ切る。

 

 

「ウラァァァッ!!」

 

「ぐぅう!?」

 

 一度入り込めば手数の多さで押し切るのみ。

 乱れるように斬り刻み、戒斗を一歩一歩後に引かせた。

 

 

 それを甘んじて受け入れるほど、彼は弱くない。

 

 

「貴様ッ……舐めるなぁぁぁぁあッッ!!!!」

 

 

 スピアーを短く持ち、クナイを防御。

 そのまま速攻で鍔迫り合いを制し、空いた絋汰の脇腹へ渾身の一撃を放つ。

 

 

「あぁッ!?」

 

 

 吹き飛び、お菓子の中へ転がり回る絋汰。

 しかし彼はただでは倒れない。

 

 

 

 

『オレンジ・アームズ!』

『花道・オン・ステージ!』

 

 

 

 粉塵を斬り払い、鎧武はオレンジの姿に。吹き飛ぶ最中、ロックシードを取り替えた。

 

 

「はぁぁぁぁああッ!!」

 

 

 大橙丸を構えたまま、バナスピアーと再び鍔迫り合い。

 しかし今度は軽いクナイではない。次は絋汰が制し、戒斗の胸部装甲を袈裟斬り。

 

 

「ッああ!?」

 

「戒斗ぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

 

 身体を大きく捻り、回転斬り。

 重厚な一撃を受けた戒斗は敢え無く吹っ飛ばされ、地面を這う。

 

 

「チィッ!……やはり葛葉絋汰、一筋縄ではいかない奴ッ!!」

 

「立てよ戒斗ッ!! まだまどかを誑かすってんなら斬り足りねぇぞッ!!」

 

「勝ち誇るなぁぁぁッ!!!!」

 

 

 鎧武とバロン、絋汰と戒斗。雌雄を決する一騎打ち。

 二人はそれぞれの武器を掲げ、同時に走り出した。

 

 

 

 

「もうやめてぇ!!」

 

 

 悲痛な叫びと、二人の間に飛び込もうとする影。

 そんなまどかの存在に気付き、やっと彼らは動きを止めた。

 

 

「元の世界に帰りたいなら、私が願います! だからもう……傷付け合わないで……!!」

 

 

 子鹿のように震える彼女は、大粒の涙を流していた。

 彼女は本気で彼らの戦いを嘆き、心を痛めている。その様子を見た絋汰は我に返り、武器を下ろした。

 

 

「まどか……?」

 

「……フン」

 

 

 戦意を無くした者と戦うなど、戒斗の主義に反する。

 彼も構えを崩し、戦闘を放棄した。

 

 

「それで良い。なるべく早く契約を結ぶんだな」

 

「………………」

 

「……おい、まどか! その必要はないんだ!?」

 

 

 思わず駆け寄り、まどかへ説得をする。

 涙の溢れる目を擦りながら、震える声で縷々語る。

 

 

「これで喧嘩が止まるなら……」

 

「マミも言っていたろ? もっと、じっくり考えなきゃいけない……!」

 

「……良いんです。私は魔法少女になる事が願いのようなモノなんですから……持て余すなら、誰かの為に……」

 

「葛葉。前に貴様が言っていた通り、これは本人の意思だ」

 

 

 戒斗の傲慢な物言いに、また絋汰はかかろうとする。

 しかしそれは、まどかの悲しみを感じ取った事で、思い留まった。

 

 

「…… それでも……俺は……」

 

 

 

 

 途端、頭の中にキュウべえの叫びが轟く。

 それは絋汰のみならず、まどかも戒斗も同様だった。

 

 

 

『早く!! 魔女が孵化するよッ!!』

 

 

 

 報告を聞き、三人は急いで魔女の広間を再び目指し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 縛られた状態のまま跪くほむら。

 奥の方で、膨大な魔力を感知した。恐らく魔女が孵化を始めたのだろう。

 この時点で彼女は諦めていた。もうどうにもならないと、諦観を滲ませた。

 遣る瀬無さからか、それとも哀悼か、頭を下げて現状の自分を恥じる。

 

 

 もう、こうなって以上、何も出来ない。

 

 

 

 

「き、君は、あの時の……!!」

 

 

 

 背後から男の声が投げかけられた。

 首を一生懸命回し、その人物を視界に収める。

 

 

 

 

 上着のない、シャツ姿の男。顔に見覚えがあった、自分が以前怪我を癒した、見知らぬ男。

 唐突な再会、そして有り得ざる場所での再会。お互いにあの人物なのかと、一瞬疑ったほどだ。

 

 

 呉島貴虎は、暁美ほむらと再会した。

 

 

「貴方は……! お願い、これを解いてッ!!」

 

「それは?……いや、疑問よりも……解くんだな」

 

 

 颯爽と近寄り、リボンを手にかかる。

 だが魔女を固定するほどの代物。大人の男の力とは言え、ビクともしない。

 

 

「ぐぅう……! 無理だ……! 何か、斬る物は……!?」

 

「……ちょっと待って」

 

 

 彼女の腕に付いていた、砂時計の嵌め込まれた盾。

 それを何度か揺すると、物理法則を無視して、明らかに盾より大きな物が飛び出した。

 

 

 日本刀。レプリカではない、本物だ。スラリと続く白刃が証明している。

 

 

「……もっと手軽な物はなかったのか?」

 

「スイスアーミーナイフじゃ斬れないわ!」

 

「……またマイナーな物を……」

 

 

 これしかないと言われたのなら、これしか無いのだろう。

 貴虎は日本刀を握る。刃に映る自分を見た時、とても懐かしい気分になれた。

 

 

 

「すぐに取り掛かろう」

 

 

 彼はやけに手慣れた持ち方で日本刀を握り、これまた見事な太刀筋でリボンの根元を斬って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホイップクリームが囲む広間に辿り着いたのは、マミと龍玄。

 マカロンの傍で隠れるさやかを発見した。

 

 

「美樹さん! キュウべえ! 怪我はない!?」

 

「マミさん!! 大丈夫です……って、え? こ、絋汰さんじゃない?」

 

 

 アーマードライダー龍玄としての姿は、さやかは初めてだ。

 

 

「一回顔は合わせたっけ?」

 

「聞き覚えのある声……あっ! 絋汰さんと禁断の愛の人!!」

 

「いや、その覚え方はないでしょ……」

 

 

 悠長に再会を喜ぶ彼らに、キュウべえは忠告する。

 

 

『マミ! そろそろ孵化するよ! グリーフシードはあそこだ!!』

 

 

 

 

 

 

 広間の中心に据えられた、高い高い塔と椅子。

 塔はテーブルで、チョコンと乗ったケーキ。その手前の椅子の上に、それはあった。

 どす黒く、根をはる葛のように空間へ黒い芽を広げるグリーフシード。

 

 とうとう、割れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               Ⅳ

         【Charlotte は お菓子の魔女】

     CHARLOTTE シャルロッテ しゃるろって

 

      タルト            ゼリー

    イチゴのケーキ        ミルクのプリン

   チョコチョコチョコ      サトウサトウサトウ

  あれもほしいこれもほしい  どれもほしいぜんぶほしい

 すべてほしいなにもかもほしい あなたがほしいいまほしいの

あいされたいあいがほしいかまってほしいきづいてほしいはなして

どこにあるのそこにあるのどれにあるのなにがあるのなかにあるの

じらさないでこんどっていわないでおこらないでむししないですぐ

いいこわるいこいいこでわるいこわるいこいいこいいこのわるいこ

 あまいあまいのとんでゆけにがいにがいのあっちいけあっちいけ

  ぜんぶほしいたべたいのみたいさわりたいききたいほしいの

   ほんとうにほしいのはなに?さんたさんはくれないの?

    なにがほしい?あいされたいの?なきたくないの?

     ぜんぶってどこまではてはないのどこまでよ

      だからほしいのはなんなのきづいてよ?

       クリームケーキチョコクッキーアメ

        ミルクゼリーミックスジュース

         タルトプリンコンペイトウ

           サトウとコウチャ

            ほしいのは?

             チーズ

              !

 

     しゃるろって シャルロッテ CHARLOTTE

        【女魔の子菓お は ettolrahC】

               Ⅳ

 

 

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