縢れ運命!叫べ勝鬨!魔鎧戦線まどか☆ガイム   作:明暮10番

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ロックシードとソウルジェム

 魔法少女、マミに案内され、絋汰らは彼女の家へと案内される。

 綺麗なマンションの、これまた綺麗な一室だ。

 飾られた花の匂いと共に、心地の良い甘い香りが漂っている。この部屋で寝るとグッスリ熟睡出来そうだ。

 

 

「うわぁ〜、素敵なお部屋ですね!」

 

「あたしの部屋とは大違い……」

 

 

 部屋全体を見渡してみれば、ベッドは一つしかなく、物も少ない。

 

 

「アレ? 親御さんとかは?」

 

「一人暮らしなんです。両親は、昔に亡くなりまして……」

 

「あ……な、なんか悪いな」

 

「いえ。もう慣れましたから!」

 

 

 気丈に振る舞ってはいるが、微笑む彼女の顔に影がある事を、絋汰は見逃さなかった。

 成熟しているように見えるが、やはりまだ子どもの面があるのかもしれない。

 

 

 

 

「……さっ! 遠慮なくかけて。お茶でも用意するわ」

 

「そ、そんな、申し訳ないですよ」

 

「いいのいいの。ちょっと長話にもなるし、色々あったからリラックスもしないと」

 

「まぁまぁ、まどか! ここはお言葉に甘えよっ!」

 

 

 遠慮がちな『鹿目 まどか』と、フランクなボーイッシュ……『美樹 さやか』のコンビはチグハグに見えて、なかなか合っていた。

 友達、親友と言うより、子どもと保護者のような風に見えるのだが。

 

 

 マミが暫し、キッチンへ席を外している最中、さやかは絋汰に話しかけた。

 彼の傍らには、キュウべえが控えている。無表情のまま赤い小さな目でジーッと見つめて来る様は、威圧的で少し不気味だ。

 

 

「えーっと……絋汰さんのは、魔法じゃないんですよね?」

 

 

 ここに辿り着くまでに、色々と話し合った。

 まず、絋汰のアレは魔法ではない事や、『契約』とは無関係である事は理解させた。流石に『ヘルヘイムの森』やらについては絋汰自身も難解である為、話していないが。

 

 

「魔法と言うよりも何というかなぁ……でもマミのと比べると、断然科学の力だな」

 

「科学の力ってスゲー……え、空中にチャックが開いたのも科学?」

 

「詳しくは俺も知らねーぞ? 開発者はどっか行っちまったし」

 

「え? 絋汰さんが作ったんじゃ……?」

 

「俺に作れる訳ねぇーだろ!?」

 

 

 絋汰は変身デバイスたるベルトと、錠前をテーブルに置いて見せた。

 まどか、さやか、キュウべえはそれらを興味深そうに観察している。

 

 

『確かに構造上は、材料と設備さえあれば誰にも再現可能な物みたいだね』

 

 

 まどかが錠前を触ってみた。絋汰はそれを止めない辺り、普段から危険な物ではないようだ。

 

 

「この錠前みたいな物も、作られた物ですか?」

 

『こっちの方からは強い力を感じるよ。明らかに人の手による物ではないね。なんだい、コレは?』

 

「お前、俺より詳しくないか?」

 

 

 キュウべえは触りもせず、見ただけで錠前の力を感じ取れたらしい。

 絋汰の説明を期待でもしているのか、大きな尻尾は左右に忙しなく振られている。

 

 

「ベルトは『戦極ドライバー』って言って、錠前は『ロックシード』。キュウべえの言う通り、ベルトはロックシードの力を引き出す装置だ。ロックシードについては……まぁ、秘密って事でいいか?」

 

『魔法に匹敵する力を感じるよ。これを科学の力で制御するなんて、よっぽど大きな組織が関与しているようだね。僕としては是非、聞いておきたいよ』

 

「た、確かに秘密にされるには……気になるかなぁ〜さやかちゃんは。まどかもそうでしょ?」

 

「うん!」

 

「即答かよ……」

 

 

 ヘルヘイムの森が、そこの果実が、そもそもヘルヘイムの森と言うのが……と、恐らく説明に一日足りない上に、自分でも理解しかねている点が多い。

 どうしたものかと渋面になる絋汰の前に、琥珀色の紅茶と美味しそうなケーキが置かれる。

 

 

 

 

「絋汰さんも困っているでしょ? まずは、あなたたちと関係がある話からしましょ」

 

 

 上手く話が変わり、ホッと一息吐く。

 ここからは絋汰も知りたかった、『魔法少女』の話。

 

 

「まずは、これを見てくれるかしら?」

 

 

 首元にかけ、セーラーブレザー内に隠していたネックレスの先を見せる。

 

 卵型のガラスのような物だ。緻密な装飾と、中で煙のように揺れる黄色いオーラからして、普通の品ではないとは分かる。

 それでも目を奪われるほど、壮麗な物だ。

 

 

「きれい……」

 

「これは……なんだい?」

 

「絋汰さん的に言えば、そのロックシードと言う物と同じかしら。『ソウルジェム』と言って、魔法少女の魔力の源よ」

 

 

 テーブルに乗ったキュウべえの頭を撫でる。彼は目を細め、それを受け入れた。

 

 

「キュウべえによって選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石なの」

 

「契約?」

 

 

 まどかとさやかは目を見合わせる。

 そう言えばキュウべえは、「契約して魔法少女になって」と勧誘していた。

 

 続きの説明は、彼から続けられる。

 

 

『僕との契約によってソウルジェムが手に入る。そのソウルジェムによって魔法少女となり、「魔女」と戦う使命を課せられるんだ』

 

「戦いの使命……な、なぁ、それって、危険じゃないのか?」

 

 

 戦う事の素晴らしさと恐ろしさ、良さと悍ましさを両方知る絋汰だからこそ出て来た疑問だった。

 戦う力を得られる事は良いかもしれないが、戦う使命を課せられるのは、まだ中学生の少女らにとって重荷ではないのか。

 

 

『確かに危険さ。でも、メリットもある』

 

 

 彼の疑問と心配に対し、キュウべえは答える。

 

 

『使命が課せられるその代わり、「一つだけどんな願いでも僕が叶えてあげられる」んだ!』

 

 

 その言葉を聞いた途端、マミ以外の三人の表情が驚きに変貌する。

 

 

「ど、どんな願い事も……!?」

 

「何でも叶えられるの!? 金銀財宝とか、不老不死とか、カロリーオフとか!?」

 

「いきなり願い事のランクが落ちたな……」

 

 

 キュウべえはピョコっと首を縦に振り、肯定。

 

 

『まぁ、その子の資質次第でもあるけどね。でも資質さえあれば、どんな事も叶えられるよ。かの有名な「卑弥呼」、「クレオパトラ」、「ジャンヌダルク」も魔法少女で、彼女らも願いによって名声を手に入れたんだ』

 

「卑弥呼!? クレオパトラ!? ジャンヌダルク!? そ、それに並べるの……!?」

 

「そんな大昔から魔法少女は戦っていたのか……!?」

 

 

 明らかに絋汰らの『アーマードライダー』より、遥かに歴史が長い。戦いの重荷云々の話は飲み込んでしまった。

 歴史と偉人が魔法少女だった事実に愕然とする二人に代わり、まどかがキュウべえへ質問をする。

 

 

「でも、その、戦わなきゃいけない『魔女』ってなにかな?」

 

 

 キュウべえはケーキを食べながら続ける。

 人間の物でも普通に食べられるのかと、絋汰は思った。

 

 

『魔法少女が希望ならば、「魔女」は絶望さ。魔女は呪いを振り撒き、人間を意のままに操って、不幸な事件を起こすんだ』

 

「そうなのよ」

 

 

 マミが説明を請け負う。

 

 

「世間でもよくある、理由が曖昧な自殺や殺人事件も、殆ど魔女が関わっているわ。いつもは結界……あなたたちが迷い込んだあの空間に隠れているけどね。普通の人が入ればまず出られないから、本当に危なかったわ」

 

 

 キュウべえがケーキを嚥下した後、また絋汰へ視線を合わせる。

 

 

『所で君の力は、結界を抜けられるのかい? 君が変身する時に膨大なエネルギーと強力な空間干渉が観測されたよ!』

 

「隙があればお前、俺の事聞いてくるなぁ?」

 

 

 最初こそ不気味だったが、段々と鬱陶しいだけに思えて来た。

 

 

「絋汰さんの力はどうあれ、彼が奮闘していなければ私は間に合えませんでしたよ。私からも、お礼をさせていただきます」

 

「いや、いいよいいよ! 俺も、助けられたからさ!」

 

「そう言えばちゃんとお礼を言ってなかった……あ、ありがとうございます!」

 

「あたしも本当に助かりましたよ。あの、最初の時、変な人扱いしてすみませんねぇ?」

 

 

 大勢の人間から感謝される事は、アーマードライダーになってから実はそんなに無かったりする。

 素直な感謝を受け、絋汰は照れ臭そうにハニカミながら頭を掻いた。

 

 

「……あっ。そう言えば……結界を抜けた時にいた、もう一人の女の子は誰だったんだ?」

 

 

 彼の質問に、思い出したかのようにさやかが話し出した。

 

 

「あれ、今日からウチの学校に来た転校生ですよ!『暁美 ほむら』って言いましてねぇ! まどかにガン飛ばすわ、まどかにポエム飛ばすわ! 今思えばヤベー奴の片鱗は見せていたなぁ……」

 

「恐らく学校の時点で、鹿目さんに魔法少女の素質があると見抜いていたんでしょうね」

 

「え? 私に素質があるなら私が狙われそうですけど……」

 

 

 まどかの質問に、キュウべえが私見を述べる。

 

 

『新しい魔法少女が生まれるのを阻止しようとしたんだね。候補の少女を狙うより、大元の僕を狙った方が合理的だ。魔女を倒すと見返りがあって、それの取り合いで衝突する事もあるんだ』

 

「純粋に正義の為に魔女を倒そう!……って子ばかりじゃないのよ。競争相手を増やさない為に、キュウべえを狙って妨害しようとしたのじゃないかしら。折角、強力な魔法を持っていそうなのに……」

 

「な、なんて身勝手な……! これを、『悪女の深情け』って言うんですよね!」

 

「ちょっと意味が違うような……」

 

 

 

 

 謎の少女、ほむら。確かに彼女のやった事は、無力で小さな生命を手にかけると言う、許されざる行いだ。

 

 

 しかし絋汰にはやはり、違和感があった。本当にそんな単純なんだろうかと。

 去り際に見せた表情が頭に残る。寂しげで、悲しそうな顔だった。

 

 違和感はあるが、その言語化はまだ難しい。頭の後ろで手を組みながら軽く仰け反った。

 

 

「………………」

 

 

 チラリと、隣のまどかを見やる。

 彼女も何か思うところがあるようで、俯いて考え事をしているようだ。

 

 

「……ん? どうした? 何かあるのか?」

 

「……え? い、いえ! 軽い考え事をしてました」

 

「そうか?」

 

 

 魔法少女になって戦う事に、実感がないのだろうか。

 願いを何でも叶えられるメリットよりも、戦い続ける使命感の重量、魔法少女ならではの人間関係への億劫さが際立っているようだ。

 まどかのその様子を迷いと呼んだマミは手を叩き、二人に提案する。

 

 

 

 

「それなら二人とも、暫く私の魔法退治に付き合ってみない?」

 

「え?」

 

「ええ!?」

 

 

 ニコッと笑って、絋汰も見る。

 

 

 

 

「ボディーガードとして、絋汰さんもどうです?」

 

「……え? お、俺も!?」

 

 

 三人ともが各々に驚く。この数分だけで、一ヶ月分驚いたのではないか。

 

 

「魔法少女がどんなものか、自分自身の目で確かめてから判断したらいいと思うの! それに絋汰さんも、その力を正義の為に使わないと勿体ないですよ。魔女退治のお手伝いをしてくれたらもっと素敵ですね!」

 

『それは良い提案だね、マミ。僕としても君の……戦極ドライバーかい?……それの性能をもっと測りたいんだ。もしかしたら魔法少女にも一部運用出来るかもしれない』

 

「キュウべえもこう言っていますよ!」

 

「そいつ好奇心隠す気ねぇよな」

 

 

 とは言え、元の世界に戻る算段も今の所ない。

 元の世界が心配な事には変わりはないが、魔女の存在が危険な事も確かだ。

 ならば少しの間、まどからが魔法少女になるまで程度なら付き合っても良いかと考え直す。

 

 

「まぁ、少しの間だけになるけど。こっちも出来る限りの事はするから」

 

 

 そう言って、ケーキをフォークで切り、口に運んだ。

 

 

「…………うん? これ、何処のケーキだ? 市販じゃないだろ?」

 

「あら? 気付かれました? それ、私が自作したんですよ!」

 

 

 マミの自作ケーキと聞き、まどかとさやかの二人も食べてみる。

 

 

「……わっ! 美味しい!」

 

「魔法少女で強くて、一人暮らしも出来て、美味しいケーキも作れるし美人……マミさん、スペック高すぎじゃないですか?」

 

「うふふ! 機会があれば一緒に作りましょ!」

 

 

 頰を緩め、マミのケーキを絶賛する二人。

 キュウべえも人間ではないのに、ケーキに夢中だ。人外生物の味覚にもマッチしていると分かる。

 

 

 

 

 絋汰は皆の様子を眺めた上でもう一口食べ、気付かれないように首を傾げた。

 

 

 

「…………シャルモンのおっさんのせいで舌が肥えたか……まぁ、現役と比べるのも悪いか」

 

 

 やけに薄い甘味を疑問に思いながら、残しては悪いと考えケーキは全て平らげる。

 

 

『………………』

 

 

 彼のその様子を観察していたキュウべえ。

 何を考えているのかは、無表情で悟らせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バナナ・スパーキングッ!!』

 

「ぐぅぅあああッ!!!!」

 

 

 槍を地面に突き、衝撃波を発生させる。

 その衝撃波に飲まれた、落書きのような生物や、パリの凱旋門のような物体は一気に消失。

 

 

 同時に歪んだ鏡面の空は溶け始め、辺りはただの夜の公園になる。

 異常の終焉を悟った彼は、警戒を消した。

 

 

『LOCK・OFF』

 

「なんなんだ、コイツらは?」

 

 

 道を歩いていた途中、突然辺りは異形の世界へと変貌し、実体があるのかないのか分からない敵に襲われた。

 だが彼にとって取りに足らない敵。ささっと撃退。

 

 

「……あの女、何か知っていたな。聞き出せば良かったか」

 

 

 後悔先に立たず。

 一先ず理解出来た事は、この町ではインベスとは違う、別の脅威が蔓延っている事だろうか。

 

 

「………………」

 

 

 道に、何か落ちている。

 彼はそれを拾い上げた。酷く冷たく、ドス黒い色の妙な物。

 丸いジョット石を装飾で囲んでいるような形だ。

 

 それには先の尖った部分があり、不思議な事にその先端を立てた所で、石は倒れない。あの謎の敵の物だろうか。

 

 

「……フンッ、面白い。こう言うのも一興か」

 

 

 彼は抑揚もなく呟き、その場を後にした。

 宵闇でも消しきれない紅のラインが浮かぶ、特徴的な服を着こなした男。

 今の彼が考えている事は、自分の寝床の確保だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ三日月を、二人の男が眺めていた。

 一人は全てを変える強さを求め、一人は全てを守る強さを求めた。

 孤独の夜を歩く男と、夜道の少女たちを守る為に付き添う男。

 

 

 再会の時は近い。

 それは今、眠りについている『兄弟』にも言えるだろうか。

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