縢れ運命!叫べ勝鬨!魔鎧戦線まどか☆ガイム   作:明暮10番

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バロン、合流!薔薇を貫く、勝利の槍!

 拓けた場所に出た。

 円形の広いホール。段となっている箇所には薔薇が咲き、下品な匂いを撒き散らす。

 針金で作られたような蝶が飛び交う中、その間を縫って魔女は姿を現した。

 

 

 ホールの中央、蝶たちの中、それは鎮座していた。

 艶かしい四本の脚を見せ付けている。

 だがそれらが支える身体は人間の姿ではなく、無機質じみた胴体と、蕩けたアイスのような頭の異形。背中にはケバケバしい柄の大きな、蝶の羽根がくっ付いている。

 

 

 血のようにベタッと赤色、ベルベットのように厚い緑色、ジョット石のように濃い黒色。

 

 頭には点々と、薔薇が咲く。

 

 

 

 

           I

     【Gertrud は 薔薇園の魔女】

  GERTRUD ゲルトルート げるとるーと

 不信。信じられない。不愉快、不愉快。不愉快。

 あの子もこの子も誰も彼もが敵、敵、敵敵敵敵。

 花は人、薔薇は人、棘のついた人々の群れ群れ。

 手折り手折られ私の番、捧げろ捧げろ捧げるの。

 薔薇薔薇薔薇のバラバラバラ、最後にパラリと。

  げるとるーと ゲルトルート GERTRUD

     【女魔の園薇薔 は durtreG】

           I

 

 

 

 

 

「う、うへぇ……グロテスク……」

 

「お、俺、無理無理! 生理的に無理! キモッ!!」

 

(……ちょっと可愛いかも)

 

「さぁて。ここで仕上げね! 絋汰さんはサポートをお願いします! 二人は見ていなさい!」

 

 

 マミの合図と共に、嫌々ながら絋汰は大橙丸を取り出す。

 二人が魔女目掛けて突撃を開始すると、天高いホールの天井からヒラヒラ、使い魔が下って来る。

 

 

「マミ! 増援だ!」

 

「使い魔の相手は任せられますか?」

 

「少し多いが……どうにか半数以上は!」

 

 

 絋汰は膝を曲げ、大きく跳躍。重厚な鎧を身に着けている割に、本当に身軽だ。

 

 

「うわぁ、高い……」

 

『人間本来の身体能力が跳ね上がっているね。魔法少女よりは直線的で劣るけど、あの防御力に対して上質な機動力だ!』

 

 

 

 飛び上がった絋汰は大橙丸を構えたまま、左手でバックル横のカッティングナイフを一回、倒す。

 

 

『オレンジ・スカッシュ!!』

 

 

「突き抜けるぜぇぇぇ!!」

 

 

 大橙丸が輝き出し、そのまま眼前の無数の使い魔へ、横両断。

 絋汰が使い魔らの後ろに抜けた直後、全員が弾けたように態勢を崩し、爆発四散する。

 

 

 

「一撃!?」

 

『簡単動作であれだけの力を発揮出来るのは興味深い。これなら長期間の訓練を必要とせず、しかも誰でも即戦力になれる』

 

「さっきから解説し過ぎだろ!?」

 

 

 着地した絋汰がキュウべえにツッコミ。

 しかし使い魔はまだまだやって来る。再び刀を振るい、相まみえる。

 

 

 

 

「私も負けていられないわね!」

 

 

 絋汰の奮闘を見て俄然、闘志の湧いたマミは、創り出したマスケット銃を構えて発射。

 巨体の割に魔女は非常に俊敏。マミの銃弾をヒョイヒョイ避けて行く。

 

 

「マミさん、外しましたよ!?」

 

 

 しかし逃走を許すほど、彼女は甘くない。指をパチンと鳴らし、魔法を発動する。

 

 

「私に、無駄弾はないの!」

 

 

 避けられ、地や壁に埋め込まれた銃弾が、眩い光を帯びる。

 それと同時に、光のリボンが射出され、魔女の身体に巻き付き拘束した。

 

 

「わざと外していたんだ……!」

 

「うおお! マミさんも凄い!」

 

 

 薔薇園の魔女は脚や身体、羽根を動かし必死にもがく。

 だが肉まで食い込む魔法のリボンは、蜘蛛の糸より遥かに厄介だ。寧ろ身体を更に圧迫させ、息が苦しくなる……魔女も呼吸するのか不明だが、痛覚はあるようだ。

 

 

 

 

「それじゃ、仕上げを……ッ!」

 

 

 銃を構え、魔力を集中させようとしたマミは、死角からの気配を察し、横へ大きく飛ぶ。

 ホールの至る所に植えられた薔薇の下より、使い魔たちが飛び出して来た。

 

 

「伏兵か!? おい、大丈夫かマミ!?」

 

「私は平気ですが、攻撃のチャンスを……!」

 

 

 強固なリボンと言えど、無限の力を持つ訳ではない。

 魔女に巻き付いたリボンは、細い物が一本、そして二本、三本目はやや太い物と、次々に切れて行く。

 痛覚はあっても、生身の人間には出来ない無理が可能のようだ。身体が変形するほどまでもがき、何とかリボンを引き千切ろうとする。

 

 

「す、凄い数だよ!?」

 

「ザコ敵多くない!?」

 

『タイミングが悪かったね。使い魔の繁殖期だったみたいだ。まだ二人で対処はしているけど……』

 

 

 さっさと最終射撃に移りたいマミだが、薔薇園の伏兵たちに気を取られ、なかなか行動出来ない。

 絋汰もサポートに入りたいものの、彼へ襲い来る使い魔の対処でいっぱいだ。

 

 

「ど、どうすんだマミ!?」

 

「仕方ありません。もう一度拘束を……」

 

 

 冷静に判断しながら、眼前に襲い来る敵へ銃口を向けた。

 

 

 

 

 しかし、マミが撃ち抜こうとした使い魔が、横へ吹っ飛んだ。

 

 

「……え!?」

 

 

 誰かが薔薇を掻き分け飛び出し、使い魔を蹴ったからだ。

 それは生身の人間で、赤と黒の服を着た存在。

 

 

 

 

「……フンッ! 次を期待するなんぞ、三流の考えだ」

 

 

 厳つい、男の声。

 その声を背中で聞いた絋汰は、驚きから動きを止めた。

 

 

 

「…………嘘だろオイ……!?」

 

「……まさか貴様も来ていたとはな……葛葉」

 

「えっ? 絋汰さんの知り合い?」

 

 

 男は真っ直ぐ、魔女の前に立つ。

 既に魔女を縛るリボンは、三本を残す。そろそろ解放されてしまう。

 

 

「あっ、危ないよ! 魔女が……!」

 

『いやっ、まどか、落ち着くんだ……もしかして』

 

 

 

 

 

 男が片手に持っていた物は錠前……『ロックシード』だった。

 使い魔を斬りながら振り向く絋汰の前で、彼は一思いにソケットへ固定する。

 

 

 

 

『LOCK・ON!』

 

 

 雄々しいラッパの音が響き、それは多重奏のファンファーレとなり戦士の出陣を祝う為、ホールに木霊する。

 揺れる薔薇、彼の登場により散った花弁、飛び交う蝶。それら全てが、一人の男を演出した。

 

 ジッパーを開く小気味良い音がなり、アーマーがゆっくり降る。

 

 

「そ、そのベルト……絋汰さんの物と……!?」

 

 

 愕然とするマミを無視し、

 

 

 

 

「変身」

 

 

カッティングナイフを落とす。

 

 

『カモンッ!』

 

 

 アーマーが急降下し、男の頭部に被さる。

 その形状を見たさやかが、思わず叫んだ。

 

 

「バナナぁ!?」

 

「『バロン』だッ!!」

 

 

 彼の怒鳴り声と共に、アーマーは展開する。

 さやかの言った通り、その形状は『バナナ』。

 

 

 

 

『バナナ・アームズ!』

 

Knight of Spear(ナイト・オブ・スピア)〜♪』

 

 

 鎧武者のような風貌の、絋汰の姿とは違い、西洋の鎧騎士のような風貌。

 赤い身体に、黄色いアーマーが見事に調和する。

 自由を得ようとする魔女の前で歴然と立つ彼は、まさに歴戦の勇者。

 

 

 

「『戒斗』ッ!? お前も、来てたのか!?」

 

「お前は相変わらずだな。勝機は、俺が掴む」

 

「いやお前も相変わらずだよ……良かった。元の世界の戒斗だ……」

 

 

 現れた男は『アーマードライダー・バロン』。勝利と己の力のみに固執する、激烈なる戦士。

 そして絋汰と共に、二重の意味で戦って来た『駆紋戒斗』だった。

 

 

「絋汰さんの、お友達様でしょうか?」

 

「あいつは仲間じゃない。目的が被るだけだ」

 

「……誰かに似てるわね?」

 

 

 使い魔と応戦するマミと絋汰の横で、戒斗は槍を取り出した。

 剥いたバナナのような意匠のランス、『バナスピアー』。

 

 

「絋汰さんのお知り合いの方として、お願いします! 魔女にトドメを!」

 

「言われなくても今やる」

 

 

 戒斗はバナスピアーを構え、拘束を抜け出しそうな魔女へ突っ込む。

 しかし自分たちの主人の危機に、マミと絋汰の相手をしていた使い魔が戒斗を妨害。

 

 

「そんな小っぽけな壁など、俺には障壁にすらならん!」

 

 

 彼は槍を手の中で回し、目にも留まらぬ速さで突く。

 穂先に貫かれ生命を終えた使い魔は、バラバラに弾けた後に煤塵と化す。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

 懐まで迫った使い魔には、バナスピアーの側面を叩きつけてやる。

 地面と槍とで挟まれた敵は、虫のようにグシャッと潰れ、塵芥になる。

 

 

「ハァァァァアッ!!!!」

 

 

 進路を邪魔する使い魔を、雄叫びと共に突く、斬り払う、殴り付けるで全滅。

 後には、ただ破いた紙切れのような残骸が残る。邪魔する存在はもういない。

 

 

「これで終わりだ!」

 

 

 魔女はリボンを、あと二本にまで千切っていた。

 戒斗は突撃しながら、カッティングナイフを一回倒す。

 

 

 

 見ていた絋汰も、負けられない。

 

 

「よっしゃあ! 俺も決めるぜ!」

 

 

 大橙丸と無双セイバーを合体させ、薙刀に。

 そのまま無双セイバーのソケットへ、ロックシードを嵌め込む。

 

 

『LOCK・ON!』

 

『一……十……百!……』

 

 

 

 二人の様子を見て、マミも俄然、やる気だ。

 

 

「魔法少女も頑張らないとっ!」

 

 

 空からやって来る使い魔たちに狙いを定める。

 そしてマスケット銃を変形させ、巨大な大砲にした。

 

 

 

 

『バナナ・スカッシュ!』

 

『千!! 万ッ!!!!』

 

「ティロ・フィナーレッ!!」

 

 

 魔女の拘束が解けた。が、もう遅い。

 颯爽とバックステップで離れようとする魔女の眼前には、飛びかかるバロンの姿。

 

 

 

 魔女をバナナ型のオーラが貫く。

 左側を、オレンジ型の衝撃波が両断。

 上部を、黄金の光線が撃ち抜く。

 

 

 暴威のバロンの一撃は、魔女をホールの壁に磔。

 極上の鎧武の攻撃は、使い魔らに加え咲き乱れる薔薇ごと切断。

 特大のマミのティロ・フィナーレは、ホール天井を数多の使い魔と蝶ごと破壊。

 

 

 

「きゃああ!!」

 

「うわぁあ!?」

 

 

 辺りに衝撃と粉塵、轟音と明滅。

 そして薔薇の花弁と、捥がれた蝶の羽根が散る。

 

 

 

 

 

【人も薔薇とてただの花。立入禁止は取り外される。ご協力、ありがとうございました】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さやかとまどかは気が付くと、そこは暗く埃の舞った、廃墟の会議室。

 薔薇の香りと狂気の充満する、あの世界ではなくなった。

 

 

 

 呆然とする二人の前で、魔法少女マミと、アーマードライダーたる鎧武とバロンが立っている。

 

 

「……魔女は任せちゃいましたけど、先輩の格好良さは見せられたかしら?」

 

「その魔女とやらは軒並み、骨のない奴らだな」

 

「そ、それよりもぉぉ!!」

 

 

 絋汰は戒斗の後ろまで近付き、その頭を叩く。

 

 

「ぐぅ!? 貴様、斬られたいのか!?」

 

「お前も来てたんだなぁ! 一人ぼっちかと思ってたよぉぉ!」

 

「抱き着くな! 止めろ!」

 

「おぉお、悪い悪い悪い! てか、バナナも久しぶりだなぁ! ずっとレモンだったよなぁ!」

 

「お前は何を言っているんだ!? ええい! 離せッ!!」

 

 

 

 じゃれ付く絋汰を無理矢理引き剥がし、戒斗は変身を解除する。

 

 随時不機嫌そうな、厳つい顔。ニュートラルがその表情の為、本当に不愉快そうな彼の顔は恐ろしかった。

 乱れたコートの襟を直し、放置された会議机に腰を下ろす。

 

 

「はじめまして、巴マミと申します。先ほどはありがとうございました。宜しければ、お名前を……」

 

「こいつは、駆紋戒斗。俺と同じ、アーマードライダーだ」

 

「勝手に自己紹介するな」

 

 

 戒斗は腕を組み、呆れながら割れたガラスの外へ視線を向けた。

 

 

 マミは会議室中央へ歩き、落ちていた物を拾い上げた。

 黒く丸く、上下に尖った装飾がつけられた宝石だ。横から見れば『Φ』に見える。

 

 

「それは?」

 

「どうやら、魔女とやらを倒すと手に入るらしいな」

 

「あら? 戒斗さんは、ご存知なんですか?」

 

「ふん」

 

 

 懐から二つ、同じ物を取り出した。

 

 

『魔法少女でもないのに、魔女を倒せたんだね。確かにその「グリーフシード」は本物だ!』

 

「グリーフ……シード?」

 

 

 まどかが呟き、代わりにマミが説明に移る。

 

 

「魔女が時々、何個か持っている物よ。つまりは、魔女の卵ね」

 

「え!? ま、魔女の卵!? 危ない物じゃ……!?」

 

 

 バットを構え警戒するさやかに、戒斗が言い放つ。

 

 

「持っているだけならただの物だ。丸一日経ったが、孵化の予兆すらない」

 

「寧ろ、魔法少女にとっては役に立つ物よ。ほら、みんな見て」

 

 

 マミは自身のソウルジェムを取り出す。

 最初見た時と、何か違っていた。

 

 

「あ……濁ってる」

 

「魔力を使うと、ソウルジェムが濁るの。これが強くなれば、魔法が使えなくなっちゃうわ。だから」

 

 

 ソウルジェムに、グリーフシードを近付ける。

 するとソウルジェム内の濁りが飛び出し、空中で弧を描いた後にグリーフシードへ吸い込まれた。

 

 

「これで魔力は元通り! 魔法少女の見返りとは、これの事なの」

 

『そして使用済みのグリーフシードは、僕が回収する。これで魔女の心配はなくなるよ』

 

 

 絋汰はグリーフシードを見ながら、昨日の話を思い出す。

 魔法少女が見返りの取り合いをする話。

 

 

「じゃあ、魔法少女で取り合いになるってのは、それか?」

 

「ええ。別に魔女と戦うだけの魔法じゃないんですよ。色々な事が出来ますから、人によっては浪費するって子もいたりします。魔力を戻す唯一の手段ですから、グリーフシードで争いが起きるんです」

 

「華やかなだけじゃねぇんだなぁ……」

 

 

 ファンシーな魔法少女の、リアルな実情。理想ばかりではないんだなと虚しくなり、絋汰は戒斗の隣に座る。

 

 その話で悲しくなったのは、優しい心を持つまどかだ。

 

 

「……その。魔法少女同士で、一緒に戦えたりしないのですか?」

 

「子どもとて人間だ」

 

 

 戒斗が切り捨てる。

 

 

「その点は変わらん。利益がある以上、純粋な協力関係など夢物語だ」

 

「でも、魔女は人間を襲って……」

 

「誰しもが正義を持っているとは限らんだろ。寧ろそんな理想を持っている奴ほど、甘ったれの弱者だ」

 

「ちょっと、お兄さんねぇ!」

 

「おい、戒斗! 相手はまだ中学生だぞ!」

 

 

 流石に言い過ぎだと感じ、さやかが突っかかる前に絋汰が遮る。彼の強い物言いにはさやかもムッとしたようで、言及はしないものの戒斗を睨み付けていた。

 

 しかし彼の言う事は、現役の魔法少女であるマミにも一理思わせる点があるようで、誰にも見せずに悲しげな表情になる。

 

 

 

 

 そんな彼女へ、戒斗は待っていた二つのグリーフシードを投げ渡す。

 瞬時に反応し、上手くマミはそれらを受け取った。

 

 

「話を聞くに、俺には無用の長物だ。くれてやる」

 

「……ありがとう、ございます」

 

「それより葛葉。この現状について、話してもらうぞ」

 

 

 戒斗は立ち上がると、マミに一瞥すらせず部屋から出ようとする。

 その途中、まどかの抱くキュウべえと目が合った。

 

 

「……なんだそいつは」

 

『やっぱり、君にも僕が見えるんだね。そのベルトは人間の第六感にも影響を及ぼすようだ』

 

「……気味の悪い生き物だ」

 

 

 怯えを見せるまどかの横を抜け、彼は出て行った。

 すぐさまその後ろを絋汰が追う。

 

 

「ご、ごめんな! 悪い奴じゃないんだけどなぁ、我が強いと言うかなんか……と、兎に角、またな!」

 

 

 マミ、さやか、まどから全員に頭を下げた後、彼も部屋を去る。

 少し辺りが寂しくなった所で、マミは溜め息混じりに変身を解除した。

 

 

「……な、なによアイツゥ!! いきなりやって来てあーだこーだ……絋汰さんもなんでアイツ庇うんだか!」

 

「絋汰さんには戒斗さんの……私たちには知らないモノを知っているのでしょうね。人を一面のみで判断しちゃ駄目よ」

 

「それはそうですけど……まどかにも容赦しないし!」

 

「はいはい、まだ体験は終わってないわよ」

 

 

 怒りの冷めないさやかと、オドオドしているまどかの背中を押し、三人と一匹も外に出る。

 

 

 

 

 

 廃ビルの外。

 手前の路上で倒れていたハズの女性が、いなくなっていた。

 

 目を凝らせばヨロヨロと、路地裏から表通りに行こうする後ろ姿が見えた。

 

 

「あ……行っちゃった」

 

「魔女は人間の生命エネルギーを狙っているの。それを抜き取る為に人間を襲う訳ね。だから人間自らを捧げさせる為に、『魔女の口づけ』で操って事件を起こさせるのよ」

 

「あの首元のマーク……」

 

「勿論、口づけを付けた魔女を倒せば元通りになるわ。そして記憶も消えるから、自分が助かった事にも気付けない……」

 

 

 二人にマミは笑いかける。

 

 

「決して感謝される戦いではないわ。でも、私たちのお陰で、何も知らない人々の幸せを守れるのよ……それが魔法少女の役目」

 

 

 

 

 気付けば空は暗くなりかけていた。街灯がぽつぽつ、灯り出す。

 陽の光を浴びていた街は、夜の中で光を放ち始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絋汰と戒斗もまた、そんな夜の街を歩いていた。

 話しやすいようにと、ひと気のない場所に向かう。先々と進む戒斗に、絋汰は呆れたように話しかけた。

 

 

「おい戒斗! お前が強者弱者に拘ってんのは分かるが、なにもまだ若い女の子に説くようなもんじゃないだろ」

 

「戦いの運命にある、或いはこれから戦う者に対して、現実を教えてやっただけだ。アレはただの子どもではないだろ?」

 

「……確かにそうだが。でもマミのように、強くて優しい魔法少女もいるんだ!」

 

「そう言う奴からすぐに死ぬ。強者とは呼べまい」

 

 

 夜の公園に辿り着く。

 人がいない事を確認した彼は、足を止めて絋汰へと振り向いた。

 

 

「それでだ。ここはなんだ? 全く別の世界か?」

 

 

 戒斗に対し、まだまだ言い足りない絋汰だったが、彼にも説明をしなければならないと気持ちを切り替えた。

 

 

「……お前の言う通りだ。SFみたいな話だが、平行世界とやらじゃねぇか?」

 

「やはりな。この街にも、沢芽市にあった建造物を見かけた。チームバロンの拠点もあった……ただのカーディーラーになっていたがな」

 

「俺もチーム鎧武のガレージを見つけたよ。完全に廃墟だったけどな?」

 

「似た人間もいた。『ザック』を見つけたが、ただの大学生だった。俺の事は知らない」

 

 

 絋汰は手摺に手をかけ、公園の綺麗な池を眺めていた。

 戒斗は空を見上げ、薄雲の向こうにある月を眺めていた。

 

 

「……ヘルヘイムの侵食もないし、インベスもない」

 

「ユグドラシルもなければ、ビートライダーズもいない……張り合いがない」

 

「お前らしいな……『オーバーロード』の侵攻で、世界がクラックまみれにもなってねぇしさ。平和な世界だ」

 

「………………は?」

 

 

 戒斗は怪訝な表情で、絋汰を見た。

 彼も戒斗の予想外の反応が気になり、再び二人は顔を向き合わせる。

 

 

「待て。オーバーロード? 世界がクラックまみれ? 何を言っている?」

 

「い、いや、それは俺の台詞! お前だって、ゲネシスドライバーはどうしたんだ?」

 

「俺は次世代機を持っていない! 俺は合同イベント後に意識が……」

 

「合同イベントって……抗争終了宣言の時!? だ、だいぶ前じゃねぇか!?」

 

「だいぶ前……? つまり葛葉、お前は……!?」

 

「じゃ、じゃあ戒斗……お前……!?」

 

 

 互いが互いを、怪物でも見るかのような目で眺め合う。

 雲が晴れ、月光が注ぐ中で、同時に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

「『未来』の人間なのか!?」

 

「『過去』の人間なのか!?」

 

 

 この世界に飛ばされた時と同等の衝撃が、二人を襲う。

 彼らは、『別の時間軸の人間』と言う事になる。

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