ここはアメリカの、とあるサッカー場。
カウボーイハットを被った大人と、
うさぎを彷彿とさせるような薄黄色の髪の少年。
「ビリーさん、行きます!」
「カモン!」
ボールを空へ蹴り上げた俺の背後には化石の恐竜。
「真ダイナソーブレイク!」
噛みつくように、両足でボールをシュートすると、恐竜が吠えてさらに勢いを増していく。
ビリーさんは動じず、リズムに乗るようにフットワークをしている。
「フラッシュアッパーV4」
右手で数回の衝撃波を発して威力を弱め、タイミングよくボールを打ち上げると、ゴールの裏へ転がっていく。
「くそーっ!」
「うん。ちゃんと威力は上がってるね。」
話しかけてきたのは茶色の髪のイケメン、カズヤさんだ。実は今の俺の保護者で、義兄でもある。そして、親友のアスカさんも来ている。2人とも日本人だけど、アメリカのプロサッカーチームのエースだ。俺の信じる最強のMFと、最強のDFだ。
「ずっと練習していたからね!」
「君の本気なら、俺でも止められるかどうか分からないがね。」
「ビリーさん……でも、次の大会じゃ化身禁止らしいし。」
少年少女サッカーの世界大会『フットボールフロンティア・インターナショナル ビジョンツー』通称FFIV2がもうすぐ開催されるんだけど、化身とその関連行為の全てを禁止するというルールなんだ。確かに化身を使えるプレイヤーが目立っているけど、多くはない。
だからといって、
「全力全開を出せないっていうのは、嫌だなー」
「アハハ。君って本当に守に似ているよね。」
「一哉もだけどな……。」
GKとして、円堂守という名は世界中に響いてる。そのライバルであるロココ・ウルパと最強の座を争っている。そして、アスカさんやカズヤさんは、円堂さんがキャプテンをしていた頃のチームメンバーだったらしい。
そして、俺の憧れるリベロプレイヤーでもあるんだ。
そんな人と俺が?
「「どこが?サッカーが好きなところ?」」
「お、おう。そういうところだよな。」
「おい、そろそろ飛行機の時間じゃないか?」
ビリーさんの発言で、俺たちは時計を見て青ざめていく。
俺は空港に向かって、全力全開で走り出し始める。
「ヤバイヤバイ!じゃあ、俺行くんで!……また」
―――サッカーやろうね!
***
―――時空を越えた戦いから、時が過ぎた。
今日は練習も早く終わったんだ。
なぜなら、
「いよいよ明日かー!」
円堂さんたちが出場して優勝に輝いたFFI。
その第二回大会がもうすぐ開催されるんだ。その日本代表の選考会が明日にある。もちろん、俺たちも選ばれるとは限らない。雷門中以外にもたくさんの、サッカーの上手いサッカープレイヤーがいる。太陽や白竜や南沢先輩たちがいて、そしてまだ見ぬプレイヤーが日本全国にいるかもしれない。
「う~~、ワクワクしてきた!」
「天馬はすごいね。僕なんかずっと緊張しているのに……」
サッカー部に入部したときから、ずっと一緒にプレーしてきた親友の信助は自信がないのか顔が暗い。たしかに、三国先輩や千宮路のような経験の多いGKがたくさんいて、選ばれるのはたった2人の可能性がある。
「なんとかなるさ!信助だって、時空最強イレブンの一員なんだから!」
「そうだね。落ち込んでばかりじゃ、劉備さんに笑われちゃうよね!」
よしよし、いつもの信助だ。
「お、河川敷だ。練習していこう!」
「うん!」
河川敷へ降りて行ってカバンを降ろした。
俺はシュート体勢に入る。
全力の助走をつけて、ボールをドリブルしていって、ボレーシュートを叩きこむ。
「真マッハウィンド!!」
風を纏ったシュートがゴールへ向かっていく。
信助は一度ゴールから移動して、横から走りこんでいって、跳躍、
「ぶっとびパンチ改!!」
劉備さんのアドバイスで身に着けたGK技でパンチング
―――太陽を隠す
空へ飛んでいくボールを攫うように跳んだ少年が地面に降り立つ。俺たちの方を見ていて、笑顔を浮かべる。彼女と似ていて、親友が重なるような……。
「Hey!サッカー、やろう……やんね。」
日本語に慣れていないのかな?
「う、うん。」
パン!
「よーし、こい!」
「OK」
徐に、
ボールの右側を擦り上げるように回転をかけると、ボールは浮いていく。
「真スパイラルショット!!」
全身を使ったボレーシュート。
回転する光を纏ったボールがゴールに向かっていく。
「速い!!」
「くっ、ぶっとび……うわーー!」
ゴールに突き刺さる。
啞然とする俺、転がるボールを見たまま動かない信助。
ゴールを決めた彼は気難しい顔をしたままだ。
(まだまだカズヤさんのシュートには勝てないか)
「よし!次は俺とだ!」
信助から受け取ったボールを蹴りこみ、彼に向かってドリブルしていく。
「真そよかぜステップ!!」
一気に加速、さらに一回転しそのまま彼を……
「フレイムダンス改!!」
逆さまになってブレイクダンスをしていくと、炎を纏っていく。その炎が伸びてきて俺のボールを攫っていった。
「すごい!君やるね!どこの中学校?」
「えーと、……いや、鋭いドリブル技だったから俺も焦ったよ。そして、俺は今までアメリカにいたんだ。日本語は勉強中なんだ。」
「「へー」」
アメリカ、海外かー。
俺も世界大会で勝ち進んでいけば、世界中のプレイヤーと戦えるんだなぁー。
そう思うと、
「ワクワクする!」
「俺も、日本のサッカーを見るのが楽しみだ。俺の憧れのプレイヤーはみんな、雷門中だからね。ところで、君たちって雷門中だよね?」
「そうだけど……」
「よかったー、なんとか雷門町まで来れたんだー。」
「えっと、良ければ案内しようか?」
「サンキュー!木枯らし荘ってところだ。」
それって俺が住んでいるところじゃないか。
信助は俺の方を見てくる。
口を開こうとすると、
秋姉が河川敷に降りてくるのが見えた。
「天馬、信助君、今日も練習?それで……」
「お!アキさんだ!」
「えっと……?」
「カズヤさんの……コンヤクシャだよね!」
「い、一之瀬君とはまだそんな関係じゃ!」
顔を赤くしながら、両手のひらを振っている。
風邪なのかな?
「秋姉、大丈夫?」
「え!? いや、気にしなくていいから!」
「えー、アスカさんからそう言えって言われたのにな。」
土門君~と言いながら、拳を握りしめる秋姉には化身の兆候が……
「ところで、まだ自己紹介してなかったか。俺は、一之瀬ルーフェイ!アメリカからやってきた。」
「僕は、西園信助!」
「俺は、松風天馬!」
満面の笑みを浮かべた彼は、本当に……