サッカー大会の上位の星から、星を選ぶ権利がある。しかし、居住することのできる環境の星は多くはない。加えて、ファラムオービアスは想像を絶するほどの民がいるらしい。もし、俺たちが優勝できなかったら、地球に地球人は住めなくなる。
そして、すでに滅ぶ種族が決定してしまっている。
「地球代表、アースイレブン……俺たちが…?」
「このアジア予選で今まで戦ってきたのは、宇宙人なんだね。」
「そうだな。グランドセレスタギャラクシー銀河辺境Aブロック予選だ。」
筋肉の隆起、ニンゲンと異なる動き、異常な身体能力。
俺たちはサッカーの技術でなんとか戦ってきたけど、真正面から戦って勝てる相手じゃなかった。もし、銀河全体で宇宙戦争をしていたら、地球は真っ先に滅んでいたかもしれない。そんな、漫画やアニメの出来事が今俺たちに起きている。暴動やパニックを起こさないために、秘密裏にサッカー大会を行っていたんだろう。
「さて、では選手諸君には準備をしてもらおう。旅立ちの準備をな……。」
「俺たちが、宇宙へ……?」
オズロックや宇宙船は去っていく。
「黒岩監督!あなたは全てを知っていて俺たちのことを率いていたんですか!?」
「なぜ秘密に!?」
憤りをぶつけるように神童や霧野が問いただす。
「本当のことを話して、お前たちは戦えていたのか?」
「「くっ」」
確かに、地球の運命をかけて戦いを初めからできなかっただろう。
「俺たち全員の判断だ。」
鬼道さんに続いて飛鷹さんや立向井さん、他にも名だたる選手が揃う。
義兄さんやアスカさんもいる。
彼らですら、
地球をかける戦いを俺たちに頼むしかないのだろうか。
「この運命を変えるために、俺たちは黒岩……いや『影山零治』を監督に選んだ。」
かつて帝国学園の監督として、伝説のイナズマイレブンと戦いを繰り広げた人物。ドーピングや身体に負担のかかる必殺技の開発、選手生命に関わる暗躍。多くの人の運命に左右してきた、死んだはずの人物だ。
「私は死に直面した『あの日』から、今まで見えなかったものが視えるようになった。人の中に眠る『ケモノ』だ。私にはぼんやりとだが、その力が視えるのだ。それこそがこの地球の……いや宇宙で選ばれた者の遺伝子に編み込まれた力だ。古来それは『精霊』と呼ばれていたらしい。」
「まさか森村のあの動きは……?」
「フェイの紅いオーラも…?」
「俺や剣城もシュートの威力が急に強まった気がした。」
「お前たちのDNAの中に眠る力の覚醒が始まったのだ。他の星の遺伝子を持つ者に接触したことで、自己防衛本能が『ケモノ』の力をめざめさせようとしている。レジスタンスジャパンのときは特例だったが、その力のために化身禁止ルールを提案したのだ。本選では化身の力を使ってもいいが、それだけでは敵わない相手が多いだろう。」
「SARUたちより強力な相手なのか……。」
「そして、一之瀬。お前はこのチームの最大の鍵だった。松風たちの『ケモノ』の力をめざめさせることに一役買ってくれた。『ケモノ』の力を幼少期すでに開花させていたからではない。お前の『ケモノ』の力の色はここにいる誰のものでもない。―――それはお前がこの星の生まれではないからだ。」
「「「なんだって!?」」」
「うそでしょ……」
「おれが……?」
俺は、地球人じゃないのか?
「以上だ。宇宙へ行くかどうか、地球の運命をかけて戦う覚悟がある者はついてこい。」
葛藤する者、混乱する者、すでに決意をした者。
俺は呆然と監督の背中を見たままだった。
「フェイ、俺は君の義弟であることには変わらないよ。」
肩を優しく叩いてくれる。
義兄さん……
「そうそう!一緒にサッカーやってきた仲間じゃないか!」
「フェイのおかげで私たちパワーアップしたみたいだし!」
天馬、さくら……
「うん、ありがとう。もう大丈夫だ。」
俺が頷くと、みんな頷いてくれた。
俺たちアースイレブンはキャプテンを見る。
「それで、どうする天馬……?宇宙へ行くのか?」
「サッカーで地球を救えるなら、俺たちのサッカーが地球の希望になるなら、宇宙へ行くしかない!ここで『なんとかなるさ』って言ってもみんなの不安は無くならないと思う。でも、俺たちのサッカーでなんとかしたい!」
「よく言った、天馬!!」
円堂さんが1人の少年を連れてやってくる。
彼こそ元イナズマジャパンキャプテンで雷門の守護神。世界中に名を轟かせるGKだ。覇気というか、凄まじい頼もしさがにじみ出ている。まるでゴールを任せたいと自然と思えるような存在だ。
「お前たちのメンバーにこいつが加わる。」
「私は市川座名九郎と申します。みなさんとともにサッカーをやらせていただくことになりました。」
丁寧なお辞儀をする彼に、天馬たちは口をポカーンと開いている。
「こいつには全部話して、俺がずっと特訓をしていた。絶対に力になってくれるはずさ!」
「そうですね。名もなき小市民として協力させていただきます。では、少しお見せしましょう。」
ボールを地面に置く。
「いよ~~あ、カブキブレイク!!」
強力なボレーシュートがゴールに突き刺さる。
「ここまでのシュートを出せるとは。」
「これは頼りになるな。」
「そう言うと思いましたよ。」
褒めてくれたストライカー2人に対して謙虚に答える。
「だが……本当に俺たちやれるのか…?」
「地球の運命が…私たちにかかっているって……」
「優勝できる確率は高くはないでしょう。」
「なんかプレッシャーっす……それに飛鷹さんたちのほうが」
「は?なにお前腑抜けたこと言ってんだ。」
「残念ながら無理だ。俺たちには『ケモノ』の力は宿っていない。」
「この地球で君たちの帰りを待っているよ。」
「「「でも……」」」
俺も含めて、まだ決心がつかない。
これから始まるサッカーが未知数なんだ。
「なあ お前たち。サッカーは好きか?」
「え?……好きっていうかなんか楽しいって思うようになったかな。」
「バスケほどじゃあないがな。」
サッカーを始めて1年も経っていない彼ら。
「うちはサッカーのおかげで勇気出せる。」
「俺は夢中になれるようなモノを見つけたっていう感じがする。」
過去に傷を持っていた俺たち。
「それって、サッカーを好きになったってことだよね?」
「大切なのはサッカーがどれだけ大好きかっていう気持ちと必ず勝とうっていう気迫だ。そういうやつに勝利の女神は必ず微笑んでくれる。今までの試合を見て、俺たちは分かってる。お前たちは誰よりもその想いが強い。お前たちならどんな困難でも必ず乗り越えられる。お前たちなら絶対地球を救えるってな!」
円堂さんも義兄さんも笑顔で信じていてくれる。
「俺たちから言うのはこれだけだ。」
「「「「「サッカーを楽しんで来い!!」」」」」
「「「「「はい!!」」」」」
俺たちはそれぞれ、家族や友達に伝えるため各自解散した。
俺と義兄さん、アスカさんは天馬と一緒に木枯らし荘に行く。
すでに西園やアキさんが待っていてくれた。
2人には事情を話す。
「えーーーっ、天馬たちが地球代表!?」
「俺、絶対地球を守ってみせるさ!」
「天馬ったら、すっかり頼もしくなっちゃって。」
「俺たちは地球で信じて待ってる。」
「フェイも頑張って来いよ!」
「もちろん!俺の知らない宇宙のサッカープレイヤーと会えるし、楽しみだよ!」
「そうか。じゃあ、どれだけ強くなったかサッカーやりにいこう!」
「いこういこう!」
俺は義兄さんと河川敷に向かって走り始める。
「もう!一之瀬君たち、ご飯の時間まであまりないわよ!!」
「「すぐ戻ってくるからーー!!」」
俺が何者か分からないけれど、
今はサッカーを楽しもう。
サッカーと絆がここにいる証明をくれる。
***
夕飯の買い物の帰り道、
もう癖になってしまったリフティングをしながら、パパとママに話す。
「もうこの子ったら、勝手にサッカーやりだしたと思ったら、今度は宇宙に行くですって?」
「ふっ、だったら私たちも、宇宙からの中継で応援しないとな。ははは。」
「もう!信じてよね。いいもん、私は輝いてみせるんだから、宇宙で一番!!」
「さくら……がんばってきなさい」
―――ちょっと見ない間に成長しちゃって。
「パパ、ママ…」
「ところで、あの一之瀬君とはどういう関係?」
ミスしてボールが転がる。
「うわあああ!!まだ何もないから!」
「ちょっと待て、どういうことだ!!」
「フェイとはなんでもないからーー!」
いつも冷静なパパは焦っていて、
いつも厳しいママは してやったりという笑顔。
今の時間の、紅い夕日はきれいだった。
でも、空はどんどん色が変わっていくんだよなぁ。
***
快晴の青空。
誰も欠けていない、15人のメンバーが集まった。
今まで暮らしていた宿舎が、
電車型の宇宙船『ギャラクシーノーツ号』となる。
「よし、みんな行くぞ!」
ーーー宇宙へGO!!