すでに、美しい青い星から離れて暗い宇宙だ。
18万8千光年先の惑星で試合が行われる。今まで地球で俺たちは宇宙人たちと予選を行ってきた。それがホームグラウンドの試合とするなら、これからはアウェイの試合となる。20人にも満たない俺たちだけが相手の星に行くことになるんだ。もちろん、その距離は途方もないけれど、この新幹線にも似た宇宙船はファラムオービアスの科学力によって作られたもので、ワープ航行すら搭載されている。
今まで暮らしていた合宿所が合わさってできた宇宙船には個室が存在している。特殊な練習場であるブラックルームもあるし食堂もある。宇宙に来たとしても、それほど俺たちの生活はあまり変わってはいなかった。
地球時間で朝と呼べる時間。
起床してミーティング室に行って挨拶を交わしていく。
不思議な夢を見た天馬は、光輝く 謎の妖精『ピクシー』を連れていた。手乗りサイズで危険な宇宙生物には見えないが、なんだか消えそうだけど凄まじいオーラを秘めているように思える。
「ああ、いたいた あんたたち!」
車掌もしてくれている食堂のおばちゃんが部屋に駆け込んでくる。なんだか急いでいるようで、俺たちは後方の車両にある食堂に呼び出された。みかんの皮が散らばっていて、知っている少年がいた。天馬の親友である西園が申し訳なさそうに席に座っていた。
「みんなに改めて紹介するよ。俺とずっと一緒にサッカーやってきた西園信助だ。」
「お騒がせしてすみません!!」
「ああ、雷門中のキーパーの。」
「密航なんて思いきったことやるわね。」
「ガッツ見せるじゃねぇか。」
黒岩監督もすでに彼の乗船認めてくれたらしい。たしかに俺たちのGKは井吹だけだったし、アースイレブンはなぜか16人には 1人だけ足りなかった。秘めているオーラも天馬たちに負けていないと思う。もしかしたら、白竜や霧野、そして西園の途中参加は予想通りだったのかもしれない。ガッツを見せて、レベルアップして這い上がってきたんだ。
彼を歓迎する俺たちに対して、
瞬木だけは何も喋らなかった。
―――イラつくんだよね ああいうやつ
***
特に航行に異常はなく、ワープ。
紅い岩や砂に囲まれた星『サンドリアス』へたどり着いた。
試合は明日か。
今までの試合と違って、アウェイの星なんだよね。
どこか恐竜にも見えるサンドリアス人の町を歩いていく。
乾燥していて、重力が軽い。
「これは苦労しそうだね。」
リフティングをしてみるけど、いつも通りにいかないんだ。
身体が軽い代わりに、ボールの重さが軽いし砂に足を取られてしまう。
「……ところで、」
「「ここはどこだ?」」
見渡す限り砂漠の場所で、声が重なる。
「へぇ、お前もサッカーやるんだな。」
俺と同じ薄黄色の髪で、短髪の少年がリフティングをしながら口を開いた。
着ている黒いコートは砂で汚れている。
「うん。物心ついたときからずっとかな。」
「奇遇だな。俺もだぞ。」
「俺の名は一之瀬ルーフェイ。よければフェイって呼んで!」
「俺はカイザ。よろしくな、フェイ。」
リフティングを続けながら、並んで歩き続ける。
太陽は眩しく輝いていてさらに砂に足を取られて、体力を奪われていく。
「カイザはこの星の人じゃないんだよね?」
「Yes, 俺は宇宙を股に掛ける傭兵なのさ。……おっと目的の獲物だ。」
砂漠の砂が上に吹き上がっている。
硬い頭部を突き上げて出てきたのは恐竜。
「こいつの素材を依頼されて、この星にきたんだ。」
ボールを勢いよく蹴り上げ、跳んで追いつく。
ボールを相手に向かって蹴ると一度静止し、黄金の光の円錐が展開される。
跳びこむようにボールを両足で蹴りつける。
「ゴルドスマッシュ!!」
地面に着地すると、黄金の流星が恐竜へ向かう。
俺のクリムゾンスマッシュに似ていて、さらに威力は超えている。
硬い頭部を砕かれ、恐竜はゆっくりと倒れていく。
彼は徐に宇宙船を展開させる。
「スマートだぜ。またな、フェイ。」
「うん、またいつか会おう。」
宇宙船が飛び去っていた方向、
砂の煙が晴れていくと町が見えたのでまっすぐ向かう。
「ふぅ…なんとか戻ってこれたか。」
「フェイ!!まーた、どこか行っちゃって!!」
さくらに手を引っ張られて、
俺たちの宇宙船まで連れていかれる。
「別に逃げないんだけど……?」
「こうでもしないと、いつもいつもはぐれるじゃない!?」
それ以上、有無を言うことのできなかった。
ブラックルームで最終調整して、試合に臨む。
宇宙を移動してきたというスターシップスタジアムでポジションにつく。
観客はこの星の人たちで埋め尽くされていて、
まさにアウェイだ。
「ついに、初戦か。」
もしこの試合で負けたら、地球の未来はない。
スターティングメンバーは、
FW 剣城、白竜
MF 天馬 神童 九坂
DF 俺 鉄角 霧野 真名部 皆帆
GK 井吹
DFの多い陣形だ。
しかし、俺はリベロとしていつでも前線に上がるつもりだ。井吹や霧野が中心となって守備を固めていく、神童や天馬が中心となって攻撃を繋いでいく。これが俺たちのサッカーだ。予選を通して繋がった絆で俺たちは、宇宙で戦っていく。
相手はバルガっていう助っ人がいるらしい。ファラムオービアス人のDFで、筋肉が凄まじい。サンドリアス人とはどこか息があっていない。それにしても、なぜ俺たちアースイレブンを警戒しているんだろうか。すでに決勝を決めているチームでも、やはり星の未来がかかっているからだろうか。
ホイッスルの音で、試合が開始される。
剣城と白竜は、天馬にボールを託して前に進んでいく。続いて、俺たちDF陣も少しずつラインを上げていく。
相手も様子見程度に、慎重に向かってくる。
いや、
持ち場を明らかに離れて、バルガが走ってきている!?
「グハハ!!俺に任せておけ!!」
地面を勢いよく叩き、巨大な岩の鎚を手に持つ。
「ロックハンマー!!」
ジャンプして、勢いよく振り下ろす。
「うわぁーー!」
「「「「キャプテン(天馬)!!」」」」
直撃は免れたものの、衝撃波で地面に叩きつけられる。
「グワハハ!これが地球代表の実力か? 話にならんな。おらぁ!!」
必殺技を使わないロングシュートが向かってくる。
「「スピニングカットW……なんだって!?」」
皆帆と真名部の合体技が、紙のように破れる。
「くっ、ミキシトランス ジャンヌ!! ラ・フラムG2!」
進化した炎の壁でも、スピードは緩まない。
「うおおおお!!ライジングスラッシュ!!」
爪跡の衝撃波で弾き返す。
しかし、
開始早々圧倒的な身体能力を見せつけられた。
「挨拶代わりだ!お前たち!この星の未来のためだ。容赦するな!!」
「「「あ、ああ!!」」」
バルガの言葉で、相手チーム全体にラフプレイが目立ち始めた。しかし彼らは辛そうなサッカーをしている。嗤っているのはバルガただ1人。相手のキャプテンやキーパーはラフプレイを止めようと叫び続けている。
「うおおお!!おんどりゃぁぁーー!」
怒髪天となった九坂がぶつかっていくが、1人抑えるので精一杯。
「グハッ……」
更なる選手に吹き飛ばされる。
「九坂っ!!このやろう! フットワークドロウ!!」
ボクシングのフットワークでボールを掻っ攫う。
「無駄だ!いくぞ!!」
2人が仁王立ちして地面を踏み込むと鉄角が岩の谷に孤立する。
「「「ノーエスケイプ!!」」」
残った1人がスライディングでボールを奪う。
鉄角は地面に打ち付けられる。
俺たちDF陣を中心に疲労が溜まっていく。
そして、天馬をはじめとする攻撃陣は憤りを感じていた。
まるで、
お互いのチームが攻守それぞれ半分に分かれたようだった。