サンドリアスイレブンとの試合は、不穏なスタートとなっている。
「何をしているバルガ!!卑怯なプレイをさせるんじゃない!!」
「ふっ、何を言っているんだ、サンドリアスキャプテンさんよぉ。戦いは勝つか負けるかだろう?お前さんの言う誇りなんてものも勝たなければ、宇宙の塵となるのさ!」
それでもサンドリアス人たちはどこか渋り始める。
「おらっ、ボールよこせ!!」
サンドリアスのプレイヤーからボールを強引に奪った。
「そーれそれそれ、いくぞおっ!! つちだるま!!」
岩を纏ったボールがゴールに向かってくる。
「フェイ、いけるか!?」
「やってみる!化身アームド!……クリムゾンカット改!!」
マフラーを風にたなびかせて、威力を底上げした紅い膜で防ごうとした。
しかし岩は依然として転がっている。
「ほらよっ!!」
岩から勢いよくボールが飛び出す。
「なんだとっ!?」
手を伸ばすように飛びつくが、ゴールを許してしまう。
試合再開となっても、ラフプレーは続く。
激しい猛攻で、俺たちDF陣は立ち上がれない人が多い。
砂の粒子が巻き上げられる。
「ダストジャベリン!!」
槍と化したシュートが向かってくる。
「くそっ、神童頼む!!」
―――これ以上は点をやれない。
「アインザッツG3!!」
旋律のシュートブロックでも止まらない。
「ライジングスラッシュ改!!」
進化した衝撃波でも抑えきれない。
「やらせるかあああ!!」
霧野が身を挺したヘディングでボールを外に出す。
「霧野、大丈夫か!?」
「くっ、すまない、これ以上は無理そうだ……。」
皆帆、真名部、霧野の3人と、
市川、森村、さくらの3人が交代する。
俺は交代する3人のもとへ向かう。
「みんなは俺たちの動きどう思った?」
「相手の動きじゃなくて??」
「普段の皆さんなら、もっと戦えたでしょうね。しかし……」
「勝つことにこだわっている、だね。」
地球の未来がかかっているから。失敗は許されないから。もっと強くならなきゃいけないから。何かの理由に俺たちはプレッシャーを感じてしまっている。天馬や剣城ですら、攻めに意識が集中してしまっている。独りよがりのプレーとまではいかないけれど、俺たちDF陣とFW陣が分裂してしまっている。
攻撃と防御それぞれに意識が集中してしまっているんだ。
「そういうと思いましたよ。」
「うち、どうすればいい?みんなの辛そうな顔見たくないの。みんなの心を守りたいの。」
「森村さん。鬼ごっこを知っていますか?」
「えっと……?」
「あなたがボールを持ってオニから逃げ続ける。そうすれば、みんなを守れるのです。しかし、本気でやらなければなりません。やれますか?」
リベロの俺と違って、ディフェンスを中心としてプレーしてきた森村が積極的に攻撃に参加していくこと。相手のラフプレーを掻い潜りながら、みんなにサッカーで想いを伝える覚悟はすでにできていた。
「うち、がんばる!!」
「好葉、私も頼ってね。」
「うん、ありがとう。よし、全力全開!」
相手のコーナーキックで試合再開となる。
さくらは化身を発動させる。
「月華の魔導士ラヴィニア!! 光輪の矢!!」
宙に浮くボールを地面に縫い付けるように落とす。
そして、森村へパス。
「みんなのイライラとかムカムカとか、うちが引き受ける。」
「そんな小さな体で何ができる!?ひと思いにつぶしてやる!!」
「うぅ」
ロックハンマーの衝撃で、森村は吹き飛ばされる。
「森村ぁ!!」
九坂は駆け寄ろうとして、一度立ち止まる。
青い光を纏っていって、1人で立ちあがった。
「負けない!うちがみんなを守るっ!!」
黄緑色のフォックスが森村に憑く。
バルガの周りをフォックスは駆け始めると幻想的な煙に包まれる。
「ソウルストライク!!」
煙の中から飛び出して奇襲、ボールを掻っ攫う。
これこそが森村をはじめとする、俺たちに宿る「ケモノ」の力だ。
地球外のサッカープレイヤーに立ち向かったことで覚醒したDNAに刻まれたもの。
フォックスの鳴き声が響く。
「トリックボール!」
ボールが巨大化して相手に降り注ぐ。
「うわあああ……あれ??」
しかしそれは幻だった。
フィールドをドリブルで駆け始める。
森村の勇気とやさしさがフィールドにいるアースイレブンに響く。
「森村 サンキュな!頭が冷えたぜ。」
「九坂君、良かった……。」
「好葉、こっちだ!」
「キャプテンおねがい!」
パスを受け取り、そよかぜステップS で華麗に躱していく。
「みんな円堂監督たちの言葉を思い出せ!! 」
天馬がフィールドに声を響かせる。
「確かに、勝たなきゃいけないサッカーだ。でも、サッカーを楽しまなきゃサッカーが泣いてるよ。みんなラフプレーに負けるな。みんなで心を一つにして、全力全開で立ち向かうんだ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
天馬の導きで再び、俺たちの心は1つになった。
復帰したバルガが立ち塞がる。
「いかせるかぁ!!」
「ミキシトランス アーサー! 王の剣!!」
光輝く聖剣で斬りつつ、ドリブル突破。
「剣城、神童さん!」
「「ああ!ミキシトランス!!」」
2人も、最強の偉人の力を纏う。
―――力を借りるぞ みんな!!
『時空』を駆け巡って得た絆の力、
色とりどりのオーラを集約し纏っていく。
「「「最強イレブン波動!!」」」
虹色のシュートがゴールに向かう。
「「「「「いけーーーーっ!!」」」」」
「うおおお!!サンドノック!」
地面から突き上げられた砂の腕とぶつかり合う。
硬めた砂が割れて、ゴール。
「「「「よっしゃーーっ!」」」」
「「「やったーーっ!」」」
俺たち全員が3人を祝福する。
これで同点。
ホイッスルの音が、前半の終了を告げた。
「やはりお前たちのやり方はヌルすぎる!!相手がソウルを使ってきたなら、もっともっと完璧に叩きつぶさなければいけない!」
「もうやめろ!!彼ら地球人は正々堂々と立ち向かってくる。それなのに私たちはどうだ?誇り高きサンドリアス人として恥ずかしくないのか!」
「いいのか!?俺がいなければ、お前たちの星は滅びるだろうよ!!」
「「「それでも!!俺たちは誇りを選ぶ!」」」
「なっ!くそっ……後悔するんじゃねぇぞ。」
バルガがスタジアムから1人去っていく。
ここからがサンドリアスイレブン本来のサッカーなんだね。
―――後半開始
「アースイレブンの諸君、すまなかった。そして、これからは俺たちのサッカーでぶつかっていく!!」
「ああ!勝負だ!!」
「「「「サッカーやろうぜ!!」」」」
お互いに持ちうる全てを使ってぶつかりはじめる。
俺たちは化身やミキシトランスを使って彼らの高い身体能力についていけるくらいだ。やはりこの広い宇宙で最強のサッカープレイヤーたちと戦っていくには、ソウルの力がどれほど重要か分かる。
相手のキャプテンが黄色に輝く。
「うおおおお!!」
黄色い爬虫類が憑く。
「カゼルマもソウルを!? ワンダー……」
「ソウルストライク!!」
土を潜りながら天馬のブロックを抜き去る。
森村が向かっていく。
「うちが止める!!はああああ」
黄緑色のフォックスが憑く。
「「「キャプテンの邪魔はさせん!!」」」
しかし行く手を阻まれる。
「お前たち……ダストジャベリン!!」
ソウルの力で勢いを増した砂の槍が向かってくる。
「くそっ、俺もソウルを出せれば……」
「だったら俺がやる!」
俺にもできる。
まだ完全とはいかないけれど、ソウルの力の一端は出せるはずだ。
ルビーに輝く。
「うおおおお!」
小さなカーバンクルが憑く。
「ソウルストライク!」
まずは一時的な加速。
さらに額のルビーが紅く輝いて、膜を次々と重ねていく。
数多くの防御膜は、完全に砂の勢いを抑え込む。
「「なにあれかわいい!」」
元に戻った風の音に混じって、さくらや葵の声が聞こえた気がした。