イナズマイレブンGO-魔術師の弟子-   作:ヒラメもち

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第20話 アドバンスド・ダーク

水の惑星 サザナーラに降り立つ。

街行く人は、地球人と同じ手足を持ち、見た目も似ている。身体は水色で、ところどころ海の生き物に見られるような特徴があり水中でも活動できるのだろう。そして穏やかそうな雰囲気の人が多い。

 

99%が水の星だけど、

酸素があって俺たちも活動できる、チューブ状の街が築かれている。

 

「まるで水族館に来たみたいだね。」

 

「そ、そうね!」

 

俺の右手を掴んだ手に力が籠められる。

よほど、俺が迷子にならないかどうか心配なのだろう。なんだか動きが緊張しているのは、初めての星で危険なことが起こりうる可能性があるからだろう。本当にさくらにはいつも助けてもらっている。

 

 

5人組のサザナーラ人が近づいてくる。

 

「お前たち、アースイレブンだな?」

「なあなあサッカーバトルやろうぜ。」

「アタシたちチキューのサッカーに興味あるの!」

 

このサッカーバトルの誘いにはメリットとデメリットがある。この星の環境に少しでも慣れることができ、サザナーラ人のサッカーを見ることができる。しかし何か裏があるような誘いであって、どこから相手選手たちが見ているか分からない。

 

キャプテンに判断を任せようと決めた俺たちのなかで、神童が口を開く。

 

「天馬、どうする?」

―――あまり手の内は見せたくない

 

「瞬木との連携プレイで、一気に決めようと思います。さくら、フェイはサポートしてくれ。井吹、ゴールは頼んだよ。」

 

2人の会話は小声だった。

しかし、サザナーラ人たちはまるで聞こえているようにニヤリとする。

 

 

「さあさあ!それじゃあ準備よ!」

 

街にあるサッカーフィールドへ移動する。

騒ぎを聞きつけて多くのサザナーラ人が集まってきた。もちろん、純粋に俺たちのサッカーを見に来ている者たちが多いだろう。心が覗かれる感覚と、ギャラリーに紛れた1つの悪意ある視線が向けられているのを感じる。

 

「フェイ、どうしたの?」

 

「いや、なんでもないよ。」

 

「そう……」

―――また 独りで抱え込むんだ

 

 

キックオフ。

瞬木が俊足でドリブル、天馬にパスを繋ごうとする。

 

「なんだか、ボールが上手く飛ばない……?」

 

天馬は、勢いを失って転がってきたボールを取りに行く。サンドリアスと違って重力が大きいから、浮かせたボールがすぐに地面に落ちてしまうのか。それに、いつもより瞬木もスピードが出せていなかった。

 

「ふふっ、いただき!」

予想していたかのように的確にパスカット。

 

「私が止める!グッド……」

 

「あまい!イリュージョンボール!!」

いくつも見えるボールに困惑して、さくらはドリブル突破されてしまう。

 

「君もおそーい」

俺のスライディングも鮮やかに躱される。

 

「ドンマイドンマイ!!」

―――なにやってるんだか

 

 

「もらったぁっ!」

 

「俺に任せろ!!」

相手のノーマルシュートをガッチリとキャッチする。

 

井吹がボールを転がすと、凄まじいスピードで転がっていった。フィールドが滑りやすいという、これもこの星の特徴なのだろう。

 

ボールを得たのは瞬木だった。

 

「俺はこんな茶番なんてどうでもいいんだ!さっさと終わらせる!」

 

瞬木は黒い炎を纏って回転しつつ浮かび上がっていく。

「ダークトルネード!!」

上空からゴールへ叩きつけるようにシュートを放つ。

 

「「エアーバレット!」」

2人のDFが風の弾丸で挟み込み、ボールは勢いを完全に失った。

 

「なにっ!」

―――今のは本気のシュートなんだぞっ

 

「フフッ、ざーんねん。」

「せっかくのチャンス無駄にしちゃったねー」

「おいおい、ツルギを出せよ。」

 

「くそっ、俺だってストライカーなのに。」

 

 

 

「よう、苦戦しているな。」

 

「カイザ……」

 

観客を掻き分け、サッカーフィールドの外から話しかけてくる。確かに、天馬は剣城のことを気にしてプレーに集中できていなくて、瞬木はストライカーとしての劣等感を感じてしまっている。2人の動きは星の環境のせいだけじゃなくて、確実に鈍くなっている。

 

「アクセルを使えよ。それしかないよな。 もちろんリスクはあるが、ね……?」

 

次第にさくらへ視線を向けつつ言いきった。

 

 

 

意識を集中し始める。

 

「ダメッ!!」

 

「どうして…?」

片腕を掴まれて止められた。

 

「また倒れそうになるんでしょ。ねぇ、他の方法を選ぼう? 化身もあるし、連携技だってあるんだし。」

 

アクセルによる負担は いまだに解消できていない。加速したまま必殺シュートを放てば、無事に立っていられる自信はない。たとえソウルを発動したとしてもどうなるかわからない。

 

それでも、

 

「それしかないんだ。別に俺が倒れてもみんながいるし……」

 

パン!

 

「え……?」

 

頬を叩かれて―――

 

 

「繋がった絆を大切にしてって、フェイが言ってくれたじゃない。」

 

彼女は泣いていて―――

 

「あなたのそれは『全力全開』だけど、決していいものじゃないと思う。」

 

どういうこと―――

 

「私たちのために『無茶』をしなくていいの。もっとあなたは自分のことを大切にしてよ。だから、お願い……やめて…?」

 

ねぇ、どうして―――

 

 

 

「お優しいことだ。明日を楽しみにしてるぜ、アースイレブン。」

 

「あーあ、白けちゃった。」

「ま、楽しかったよ。いろいろおもしろいもの見れたしー」

「行こうぜー。」

 

カイザや5人組は去っていく。

 

海の底に相応しい静寂が流れていた。

 

 

 

 

***

 

試合の日となった。

サザナーライレブンもすでにフィールドに来ている。

 

腰まで届く水色の髪で、ヒラリという紫天王が助っ人に来たんだ。サンドリアスのときのバルガに続いて2人目。サザナーライレブンたちとは上手くいっていないようで今はベンチで待機している。そしてカイザはすでに俺と同じDFとして、リベロとして試合に出ている。

 

 

 

天馬のもとへ、相手のキャプテンたちが寄っていく。

 

「ねえ、アースイレブンのみなさん。ポワイたちからていあーん!」

「チキューと重力違うじゃん?」

「サッカーの実力で勝負しようかなって!」

 

「それって、俺たちのアズルを見ないってこと?」

 

「正々堂々サッカーしようかなって思ったの。」

「いい勝負にしましょう。」

 

「あ、ああ。」

 

 

『アズル』

サザナーラ人が見ることのできる心の形。人が考えていることによって、様々に色や形を変えていく。プラスな気持ちなら赤や橙などの明るい色と優しい形、マイナスな気持ちなら青や黒と歪な形となる。それを見ることで彼らは考えていることがわかる。

 

 

スターティングメンバーは、

 

FW 瞬木 ザナーク

MF さくら 神童 天馬 九坂

DF 俺 鉄角 真名部 皆帆

GK 井吹

 

 

俺もポジションにつき、前を向く。

さくらの心配そうな顔が視界に入ったけれども、目を逸らすことしかできなかった。

 

 

 

試合開始

キックオフと同時に、瞬木がドリブルで前進していく。

 

「キャプテン!」

「よし、パスが繋がった。やっぱり心を読んでいないのか!」

 

「あなたたちなんて、心を読まなくたって簡単よ!」

 

「うわっ!」

緩やかなスライディングでボールを奪われる。

 

「ドンマイ、キャプテン!」

―――俺がせっかくチャンス作ってやったのによ。

 

 

 

 

まるで心を見ているかのように、

動きが読まれて瞬木以外はプレーに圧倒されていく。

 

「キャプテンもう一度だ!」

 

「ああ。ミキシトランス アーサー! 真 風穴ドライブ!!」

竜巻の道を突き進みドリブル突破。

 

「よし、剣城……」

天馬の動きが止まる。

 

「ウォーターフォール!!」

巨大な滝を創り出す。

 

「うわぁ!?」

水流によって弾き飛ばされる。

 

 

 

「ちっ。」

―――こいつらに任せてられるかよ。

 

瞬木が俊足で追いつき、ボールを奪う。

 

「やーん、すごいスピードだね お兄さん!」

 

「ふっ、どうだ。」

―――なんで俺がお前らの尻拭いなんか

 

 

瞬木から俺へパスが繋がる。

 

「わーいわーい!」

「「「かーごめかごめかごめ」」」

3人の選手が俺を囲むようにゆっくりと歩いている。

 

 

重力の影響で、

ボールを宙に浮かせてのパスは得策じゃない。

 

「くっ…アクセル……」

さくらが視界に入る。

 

「「「いえーい!」」」

3人同時に勢いよく向かってくる。

 

「しまった!?」

声が自然と漏れる。

迷っている隙をつかれてボールを奪われてしまった。

 

 

「フェイだいじょうぶ。 私がフォローするから……」

 

「あまいあまい!リキッドフロウ!!」

水と化して、さくらはドリブル突破されてしまう。

 

「そんな!?」

 

「ここは俺が! フット……」

鉄角も水の動きに翻弄されてしまう。

 

 

「ポワイが ゴール決めちゃうよー!」

 

「皆帆!真名部!頼む!」

 

「「スピニングカットW!」」

合成した衝撃波でのブロック技を放つ。

 

「うわわ、あぶないよー?」

相手のキャプテンはタイミングよく立ち止まることで、回避する。

 

「完璧なタイミングだったはずです!?」

「まるで動きを読まれたような…」

 

「くそっ」

―――右か左か……右だ!!

 

 

相手の動きを読んで、井吹は勢いよく跳ぶ。

 

「せやー!」

 

決して強い蹴りではなかった、

地面を這うように進んだボールがゴールのネットに弾かれる。

 

「なん…だと…」

 

「イエイ!!」

「「「やったーっ!」」」

 

 

心に迷いを抱えたまま、

試合時間は はかなく流れていく。

 

サザナーライレブンの笑いと、

カイザとヒラリの嗤いが、俺たちをさらに焦らせていく。

 

 

 

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