イナズマイレブンGO-魔術師の弟子-   作:ヒラメもち

3 / 23
第3話 バラバラなイレブン

お台場。

ここにイナズマジャパンの合宿所『お台場サッカーガーデン』があるんだ。アジア予選開始まで1週間もあるんだ。まだまだ強くなって試合に挑めるんだね。

 

駅前でリフティングしながら、そこへ向か……

「ここはどこだ?」

 

「ねぇ、一之瀬君だよね?」

 

俺と同じ水色のジャージを着た、桜色の髪の少女が話しかけてくる。

 

「さくらじゃないか、おはよう!」

 

「よ、呼び捨て……うん、おはよう!」

 

一度なぜか一歩引かれたけど、笑顔になって挨拶を返してくれた。

 

「ところで、合宿所ってあっちだよね? もしかして道に迷った?」

 

周りをキョロキョロ見渡してみると、駅前の広場の外周をぐるぐる歩き回っていたみたいだ。

 

「ごめん、案内してもらえると嬉しいかなー。」

 

「いいよ!」

―――はぁー、なんか調子狂うなー

 

前を歩いていく彼女の背中を追いかけながら、リフティングを続ける。

 

「それって、リフティングだよね? よく歩きながらできるね。」

 

「アメリカにいた頃からずっとやっていたし、もう癖になっているかな。」

 

「へぇー、どうして日本、日本代表に?」

 

「俺って1人ぼっちでサッカーやってたところを義兄さんに拾われたんだ。アメリカに住んでいたんだけど、カズヤさんの両親は日本にいるから日本国籍になってるんだよね。」

 

「それって……」

 

「カズヤさんって『フィールドの魔術師』って呼ばれるMFなんだ!!ボールコントロールが上手くて、カッコいいシュートでハットトリックを決めるんだ!」

 

「お義兄さんのこと、大好きなんだ?」

 

「もちろん!……お、これがスタジアムか。」

 

 

 

屋内に入ると、ゲートを抜けた先には真新しいフィールドが広がっている。それに、天馬たちもすでに集まっているようだ。

 

俺たちも準備運動をしていると、監督が来る。

 

「松風。練習を始めろ。」

 

「はい!……みんなサッカーで大切なのは体力づくり。特に持久力はとっても大事なんだ!」

 

キャプテンである天馬に続いて、2つのゴール行き来するシャトルランのように、走り始める。サッカー経験者である俺たちや運動部にいた人たちは、悠々とこなしているんだけどね。

 

「はぁはぁ……」「ぜぇぜぇ…」

「2人とも、自分に負けるな!」

 

「ハァーハァー……」

「好葉。遅れても大丈夫。自分のペースで最後まで走り抜こう!俺も付き合うよ。」

 

天馬は、そんな彼らへ話しかけていって元気づけていく。

 

 

 

「いったん休憩でーす!」

 

マネージャーである葵の声で、何人かがへたり込むようにその場で座っていく。サッカー以外の運動部に所属していても『走る』ことに慣れていない人たちはかなり堪えたみたいだ。

 

井吹に至っては、俺たちと競うように追ってきていたからね。

 

続けて、

パス、ドリブル、シュート、そしてキャッチングを、4人で教えながら練習していく。

 

瞬木ですら、慣れないサッカーで今は肩で息をしている。

 

「今日の練習は終了でーす! ホームエリアでご飯の時間まで休んでくださいね!」

 

監督は何も言わず去っていく。

俺たちは地面と一体化するメンバーが歩けるようになるまで待って、宿舎へとゆっくり向かっていく。後方を付いてきている神童は特に気難しい顔をしているね。剣城や天馬も思いつめている。

 

 

「アハハ……サッカーって大変だね。」

 

「どうだった?」

 

「私も、新体操で体力をつけたつもりだったんだけどね。一之瀬君ってば、ピンピンしてるじゃない?」

 

「慣れてないことをすると体力を使うからね。生まれた時からボール持っていた気がするし。ボールはともd……お、ここもサッカー場なのか!」

 

「良い眺め!」

 

 

「ここは『ヨットハーバーグラウンド』。サッカーガーデンにある2つのスタジアムのうちの1つですね。」

 

宿舎の目の前、海浜公園にも真新しい芝のサッカーフィールドがあった。海に面していて、心地よい風が吹いていて、ここでサッカーをするのは気持ちいいだろうね。眼鏡をかけていて、情報収集が得意なDFの真名部が教えてくれる。

 

 

 

自室に荷物を置いて、夕食を食べて、ミーティングが終わった時には、

「もう、日が暮れているのか。……よし!」

 

今日も、月は見えない。

 

目を閉じ、胸に手を当てる。

俺の背中から紫色のオーラが溢れ、少しずつ形を成していく。

 

―――薄黄色の長い髪の兎人

 

「それって……?」

 

「化身。大会では禁止だけど、使ってあげないと可哀想だし。……って、さくらじゃないか。」

 

すでにゆったりとした私服に着替えていて、さくらが街灯に照らされていた。

 

 

結んだ髪を解いていて、夜風に靡いていた。

 

「えっと、ボールを持って宿舎が出ていくのが見えて。」

―――私よりも輝いていることが嫌。

 

「そうなんだ。」

 

「ねぇ……私たちって足手纏いなんだよね。だから、こんな時間に練習するんだよね。」

―――どうせ一之瀬君だって、一番じゃない私なんて。

 

 

「俺にはサッカーしかないから。俺が繋がりを作れる『唯一』だから。俺は誰よりもサッカーで輝く。」

―――化身は泣いていた

 

 

意識がバラバラなイレブンにとっては、1週間は泡沫のように流れていった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告