イナズマイレブンGO-魔術師の弟子-   作:狩る雄

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第7話 雷門魂

 

ボールが鮮やかに、何度も舞う。

 

「198,199,200!」

 

「やったあ!新記録!!」

 

「リフティング、すごく上達してるよ!さくらちゃん。」

 

「葵ちゃん、ありがと。でも、まだまだなんだよね……。」

 

「アハハ、フェイって気が付けば、いつもやってるからね。」

 

たぶん1000回超えたくらいのリフティングをしながら、会話に混ざる。

 

 

「そう? さくらも動きが前より鮮やかになっていたね。迷いがなくなったというか。」

 

「み、見てくれていたの!?」

―――もしかして

 

「うん。サッカーを教えてきた身としては気になるし。」

 

「あ、うん、そうなんだー。」

―――この鈍感っ!

 

真名部も皆帆も切磋琢磨し合い、瞬木や鉄角も一緒にシュート練習だ。九坂もキャプテンに教えを乞うようになった。少しずつ、チームとして練習に参加するようになったメンバーが多い。

 

「みんな、一旦休憩だ! この後は練習試合だから、身体をしっかり休めておいてくれ。」

 

「「「おう!」」」「「はーい!」」

 

 

彼らは実戦で伸びるところが大きい。

天馬たちが声をかけてくれたことで、この練習試合を組んでくれた。

 

 

 

「待たせたな!イナズマジャパン!!」

 

特徴的な髪型の長身のGKに率いられて、個性的なメンバーたちがサッカースタジアムに入ってくる。彼らこそ、天馬たちが通う雷門中のサッカー部だ。俺がちゃんと話したことのある人は西園くらいだろうか。

 

「雷門イレブンのみなさん、今日は練習試合をしてくれて、ありがとうございます!」

 

さくらが笑顔で挨拶をすると、何人かが顔を赤くする。

 

「天馬、風邪っぽいメンバーがいるみたいだけど?」

「そうだね。体調が優れていない人たちは……」

 

「一時的なものだから、気にするな。」

 

「「そう?」」

 

剣城の言う通り、顔の熱は少しずつ収まっているようだ。

 

 

「三国さん、霧野はどうしたんですか?」

 

「神童か。あいつは最近、サッカー協会に呼ばれてどこかへ行っているみたいだな。詳しいことは俺たちも知らされていない。」

 

「……そうですか。」

 

「神サマ、久しぶり…!」

 

「あ、ああ。そうだな。」

 

 

時間も有限だから、

「それじゃあ、そろそろ試合を始めましょう!」

 

天馬の声でそれぞれベンチに集まり始める。

 

 

 

 

―――試合開始

 

今日は

エースストライカーである剣城をベンチに下げ、瞬木のワントップだ。

 

キックオフと同時に九坂が駆け込んでいく。

「俺だって、やってやる!」

 

「開始早々、焦りすぎだよ。ハンターズネットV3!!」

空中を2度引っ掻いて作った網で、巨体を弾き飛ばす。

 

「うわっ!」

「ドンマイ九坂!」

 

 

連携にも慣れているのだろう、的確なパスが繋がっていく。

 

「倉間!」

 

「任せろ!サイドワインダーV3!!」

蛇が地を這うようなシュートがゴールに向かっていく。

 

「行かせるか!ワイルドダンク!!」

ダンクの衝撃波で地にボールを埋め込む。

 

「ナイスキャッチ!」

「どうだ!!……森村!」

 

「ふぇ……」

森村にパスがつながるが、どこかオドオドしているままボールを取られる。

 

 

「みんな、戻れーーーっ!」

 

攻撃に意識が集中していた天馬たちの走りも虚しく、

 

 

「もらいますよ!……一乃先輩、青山先輩!!」

 

「「ああ!」」

 

指笛を鳴らすことで地面から青いペンギンが5匹顔を出す。

「皇帝ペンギン!!」「「2号V2!!」」

シュートするとペンギンがついていき、ツインシュートでさらに勢いを増す。

 

 

「くっ!俺が止める!!ワイルド……」

勢いよく跳びあがったが、ペンギンたちの動きに翻弄されてしまう。

 

ゴールにシュートが突き刺さる。

 

「やったー!」

「ナイス!!」

 

 

「ご、ごめん、うちのせいで。」

「いや、俺が止められたかったのが悪い。」

 

自分達を責めていく。

 

 

―――試合再開

 

瞬木が俊足でシュートを決めに行く。

 

「パルクールアタック!!」

空中からの全力シュート。

 

「絶ゴッドハンドX!!」

勢いよく手をクロスさせ、前進しながらのゴッドハンドで完全にシュートを抑え込む。

 

「いいシュートだ!」

 

 

 

「なんて必殺技なんだ!?」

「あれってゴッドハンド!?」

 

「技を出すスピードが速いね。ロココ・ウルパが使う代表的な技だ。」

 

雷門の底力に驚愕するメンバー。

よく使いこまれていて精度の高い必殺技が多い。

 

 

「速水、行け!!」

 

「はい、真ゼロヨン!!……浜野君!」

「くっ、なんて瞬発力だ。」

陸上のクラウチングスタートで瞬木の横を駆け抜けるドリブル技。

 

「おうよ!真なみのりピエロー!……錦!」

「私の必殺技より鮮やかに……」

波を創って球乗りしながら、さくらの横をくるりと躱す。

 

 

「行くぜよ!真 伝来宝刀!!」

天高く掲げた足でシュートを放つと、上に衝撃波を発しながらゴールに向かう。

 

―――俺は指示を待つ。

 

「今度こそ俺が止める!ワイルド……うわーーっ!!」

勢いよく跳んだが、発していた衝撃波に吹き飛ばされる。

 

ゴールギリギリに跳びこむ。

「クリムゾンカット!!」

紅い厚い膜がボールの威力を完全に抑え込む。

 

「前半終了でーす!」

 

 

 

「はぁ…はぁ…。これが雷門イレブンのサッカーか。」

「ぶ、分析が追いつきません。」

「僕も考えている暇がない連携だった。」

 

「九坂、大丈夫か?」

「はい。すみません、俺なんか足引っ張ているみたいで。」

「そんなことないよ。後半も一緒に頑張ろう。」

 

 

後半は、

相手のキーパーが三国さんから西園に交代か。

 

こちらは剣城と天馬が交代した。

 

「今度はこっちの番!ビューティフルフープ!!」

フープを使いながら鮮やかにMFたちを躱していく。

 

 

「行かせないド!アトランティスウォールG3!!……だドン!」

海から巨大な古代遺跡が生まれ、衝撃波で弾き返される。

 

「きゃあ!」

―――なんてすごい必殺技なの。

 

 

車田にボールが渡り、ドリブルで向かっていくところを神童が防ぐ。

 

「くっ……」

 

「神童どうした!?動きが鈍いぞ!……影山!」

 

「はい!」

 

―――皇帝ペンギン2号の体勢に入る。

 

「そのパスは読めていました!」

真名部がボールを奪い、拙いながらもドリブルしていく。

 

「フューチャー・アイ!……九坂君!」

向かってくる倉間の動きを分析し、的確に躱してパスを送る。

 

 

「おう!いけーーーっ!」

 

「真ぶっとびパンチ!!」

ノーマルシュートはパンチングで弾かれる。

 

「くそっ。」

―――意地を張らずバックパスをしていれば

 

「思い切りのいいシュートだったぞ。」

 

「う、うっす!」

―――剣城さん……

 

 

 

コーナーキックの前に、倉間と三国が代わる。

 

「FW、だと……?」

井吹が声を漏らす。

 

神童のコーナーキックから、ボールを狩野が奪う。

 

「一乃!青山!ボールを繋げ!!」

 

「「はい!ブリタニアクロスV3!!」」

2人同時の斬撃で、真名部と皆帆を吹き飛ばす。

 

「錦にパスだ!……錦!ボールを上げろ!!」

 

―――まるで神童のような、的確な指示で連携を繋いでいく。

 

 

 

炎を片足に宿す。宙に浮くボールに跳躍して追いつく。

「あとは俺が決める!バーニングスマッシュ!!」

大回転しながらドロップキックで、シュートが向かってくる。

 

―――俺は指示を待つ。

 

「くっ、フェイ!!力を貸せーー!!」

 

「待ってました!!スピニングカットV4!」

ギリギリのタイミングだったけど、シュートに跳びこんで勢いを弱める。

 

「これなら!ワイルドダンク!!」

地面に埋め、完全に威力を相殺した。

 

「そ、その、ありがとうな。」

 

「どういたしまして。あと1点決めに行くよ!」

 

 

受け取ったボールをドリブルして前進していく。

 

「さくら!」

 

「うん!ビューティフルフープ改!!」

以前よりさらに鮮やかに、躱していく。

 

 

「好葉ちゃん、お願い!」

 

「ふぇ…!?」

 

前ではなく、後ろにいた森村へのパス。

 

「好葉!前を向け!とにかく蹴るんだー!」

 

「キャプテン……うりゃあ!」

 

拙いパスだった。

しかし、想いの籠ったパスに俺は無理やり追いつく。

 

さくらを見て、頷き合う。

 

 

ボールを空中に上げると、空中でさくらがヘディングで目の前に落としてくれる。

「「ツインブースト!!」」

地面と平行に全力シュート、燃えるような勢いでゴールに向かう。

 

「くっ、ハンターズネットV3!!」

 

網を引き裂くことができたが威力が弱まってしまう。

 

 

すかさず剣城がシュートにチェイン。

「デスドロップG3!!」

闇を纏ったオーバーヘッドキックシュートが西園に向かう。

 

「真ぶっとび……うわぁーーー」

意表を突かれたことで、必殺技が間に合わずゴールが入る。

 

「試合終了でーす!」

 

葵の声で、何人かがへたりこむ。

 

「みなさん!今日はありがとうございました!」

 

「こっちこそ楽しかったぞ。キーパーの井吹も頑張れよ!!」

「他のやつも、もっともっと特訓して強くなれ。」

「またサッカーやろうぜ。」

 

 

俺たちはイナズマジャパンのメンバーと雷門中のメンバーが会話をしていく。特に、雷門中の3人は久しぶりに会えたこともあって、積もる話があるみたいだ。

 

さらに、体力が残っているメンバーは各々サッカーを教わり始める。

 

 

はじめて、

純粋に彼らが試合を楽しめた時間だった。

 

 

 

 


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