サウジアラビア代表『シャムシール』との試合が決定された。
スタイルとしては完全な攻撃型とのこと。
「今日はこれで解散。あとは自由行動だ。明日からサウジアラビア戦へ向けての最終の調整を行う。以上だ。」
監督は水川さんを伴って、ミーティング室から出ていく。マネージャーである水川さんとはあまり話したことはないし、どこかミステリアスな人だ。それにしても監督にしては珍しい指示だ。
「休みなんて久しぶりだね。みんなはどうするの?」
「僕は休ませてもらいますよ。明日の練習が朝の8時からだとすれば、たまった疲労の92%は回復できますからね。」
「俺はちょっと弟たちに会ってくるよ。」
皆帆や真名部、瞬木をはじめ、自由時間を各自使うことになるだろうね。井吹や鉄角、天馬たちもサッカーの自主練習をやるようだし、俺も混ざろうかなー。
「ねぇー、フェイ! 私たちサッカーガーデンのショッピングモールに行くんだけど、一緒に来ない?」
さくらが森村を引っ張って、話しかけてきた。俺たちの合宿所はお台場にあって、ショッピングモールも同時建設されて、多くの人で賑わっている。義兄さんも女の子の頼みなら快く受けるだろうね。それに、もしトラブルがあってもいけない。
「うん、いいよ。」
「やったっ!」
―――うそでしょ、断らないなんて!?
イナズマジャパンのジャージのまま行くのではなく、一度着替えて集まることになった。白いシャツにオレンジのベスト、短いズボンという動きやすい服装。リフティングをしながら待つ。
「お待たせ!」
「おまたせ、しました……」
桜色のカーディガンでデニムのショートパンツ、太ももを完全に隠すくらいの黒タイツを履くさくら。黄色いパーカーの上にオーバーオールを着た森村。
「いや、今来たところだよ。2人とも似合ってる。」
「そ、そう?行きましょ!」
―――うぅ~、卑怯…。
海に面したショッピングモールはお店が集合していて、どちらかというと商店街に近い。さくらの希望で服を見に行って、森村の希望で本を見に行って、外でやっているショーに立ち止まる。
しかし、
さくらと2人きりになると、森村は何かに怯えた様子を見せる。
有名なドーナツ屋さんで休憩をとる。
「思ったより、ここって充実しているなー。ねぇ、フェイってこういうの慣れてるの?アメリカで女の子とよく出かけていたり?」
―――エスコートがなんだか上手いのよね
「そうでもないかな。サッカーばかりしていた俺たちをアスカさん達が連れて行ってくれたくらいかな。義兄さんが行くと女性ファンに囲まれるからね。ついでに俺にも声をかけられるし、あまり乗り気じゃなかった。いやー、日本って穏やかでいいね。」
妙にさくらたちに向けて携帯を構える女性が多かった気がするけど。
「そ、そうなんだ。ところで、好葉ってどういう条件でチームに参加したの?」
「ふぇ…?」
「私は世界最高峰のチームへの海外留学なんだ。」
―――世界に旅立って、絶対トップになってやる。
森村は答えることはなく、俯いたまま。
「あー、無理に言わなくていいの。じゃあさ、フェイって監督に何か言われてきたの?」
「うん、直接会ったね。俺って別に功績なんてないんだけどね。アメリカのプロサッカーチームに混じってやっていたから目に留まったんじゃないかな。」
あの頃は同年代の人たちとサッカーやることを避けていたし。
ピロン
イナリンクに着信が入る。
これは俺たちチームメンバーが使っているSNSだ。
「九坂君が警察に!?」
街の不良たちと喧嘩したということ。確かに彼自身も不良らしいけど、そういった悪意は一度も感じられなかった。森村は俯いて顔を曇らせている。
「……とにかく寮に戻ってみよう。」
急いで戻ってみると、すでに天馬以外が集まっていた。
キャプテンとして行ってきた天馬も交えて、話し始める。
彼がチームに参加した条件は、復学。
―――日本代表として彼が相応しいのか。
迷いを心に残したまま、試合の日となった。
準決勝の相手、サウジアラビア代表シャムシール。
「神童、またそれか!」
試合開始と同時に、また井吹の前までやってくる。
キーパーとしてゴールを任せられるようになったけど、彼はまだ足りないものがある。そしてそれは自分で気づくべきこと。雷門との試合を経験したから、あと少しなんだろうけどね。
「速い!」
さくらがドリブルで抜かれ、ゴール前まで向かってくる。瞬木がベンチで、DF5人という俺たちの守備固めを諸共しない連携だ。
「この先には行かせない!アインザッツ……なにっ!」
神童は旋律とともにブロックするが、必殺技後の隙をつかれてボールを奪われる。
「ここは俺が……くっ!」
「お前が守備の要だっていうのはバレバレなんだよ。」
2人の選手に行く手を阻まれる。
キャプテンのFWの必殺技を見ていることしかできない。
「オイルラッシュ!」
吹きだした石油とともに、ボールが向かう。
「ワイルドダンク……くそっ!!」
ボールに向けた右手が滑ってしまい、ゴールが入ってしまう。
必殺技の相性は最悪だ。
「なんだよ、今のシュート……。」
「ドンマイ、井吹!!」
試合再開するも、
勢いは完全に相手にあって押されていく。
「これがジャパン代表か?」
「お前みたいな弱いやつがよー。」
「木偶の棒っていうんだっけ?」
「弱い?……舐めんじゃねぇぞ、おんどりゃぁー!!」
目つきが変わり、我を忘れる。
3人の選手を殴って吹き飛ばしてしまう。
ピーッ
『ファール!!九坂が相手に危険なタックルだーー!』
「くそっ、やっちまった。」
「九坂君、怖がらないで。」
―――強くならなきゃ皆が離れていくって
呆然とした九坂に、森村は伝える。
「俺が何を……?」
フィールドに立ち尽くし、拳を握りしめていた。
ここで彼を変えたら、ずっとこの溝は埋まらない。
イエローカードを受け取った九坂を入れたまま、試合再開する。
天馬の想いも虚しく、危険な九坂を避けながらパスを繋いでいく。
「大砂漠砂嵐だ!」
「「「「おう!」」」」
5人の一斉スライディングでボールを運ぶ必殺タクティクス。
爆進する砂煙は彼らの動きを隠す。
「おらっ、オイルラッシュ!」
俺たちDF陣を越えての必殺シュート。
「ワイルドダンク!!……っ!またか!」
井吹の必殺技は無力だった。
これで0vs2