俺はホームレスだ。
仕事も無い。当然金も無い。
昔は良く考えたもんだ。
RPGみたいに簡単に稼げないもんかと。
まぁ、当然そんな事がある訳でも無く。
冬の寒さに耐えながら—―眠った。
「く、あ~。あ?」
体から湯気の様な物が立ち上っている。
「冬だからなぁ」
子供の頃から体温がやや高めだった俺は、冬に雪を握りしめ手の表面を濡らすと湯気が出る事があった。今は冬なのだから、雪解けの水を被ったのだろうと辺りを見渡し異変に気付く。
「雪がねぇ。もう春か?」
そんな訳はないと解りつつも軽口を叩く。
「あ、何だ体までおかしくなってやがる」
体が縮み、ボロボロの肌もツルッツルになっている。しかも周囲がフッサフッサの森である。歩き難くて仕方がない。
「はぁ、仕方ねぇ。取り合えず川を探すか」
一人の時間が長いと独り言が増えてしまう。長い間ホームレス生活をエンジョイしていたが、特に仲間は出来なかったので独り言が増えた。
ホームレスは金を持っていても使うことが出来ない場合がある。その姿から入店拒否されるのだ。公園の水回りは古株たちが独占していたり、入っただけで不審者として通報されたりする。銭湯は嫌な顔をされるが、以前の入れ墨お断り問題の所為で拒否できなくなった。
それからは無秩序なホームレスの闘いの日々だ。
一般の目撃者が現れない様に夜中に他のホームレスに盗みを働くのである。それらを遠ざける為、一人でいる事が多くなったのだ。
「はぁー、こりゃあ別人だな」
どうにか発見した川をのぞき込むと、少年と言って差し支えない顔が此方をじっと見詰めている。試しに片手を上げてみると同じ行動をとる。
「若返った…?」
一瞬、一時代を築いた転生や憑依ものを疑った。だが不思議と分かる。これは自分だっと。
「まぁ、若くなって困る事もねぇか」
正直、非常に何が起こったのか気に掛かる。とは言え、考えた所で答えなどでないだろうし、それより差し迫った問題を解決しなければならない。
「まぁ、基本は川上だよな」
人里を探す。これに限る。考え事は歩きながらでも出来る。
川上を目指すのは当然、人里を探す為だ。川の流れは一定だから、綺麗な水を好む人間は、不純物が入りにくい川上の水を好ましく思うと読んだからだ。最低でも源泉を放置する程、文明の低い国は無いのではないかと思う。
昔誰かが、国の歴史は治水の歴史と語った。何かしらの痕跡ぐらいはあってしかるべきである。たぶん、きっと。
「ほー、山小屋…いや、森の中だから別荘か」
小屋の中に入ってみるとテレビとテーブル、椅子が置かれていた。
ずっと足にダメージを与える様な道を歩いて来たのだ。椅子を見つけて直ぐに腰を下ろした。
「んっな!?」
視界が真っ白に包まれ、鈍い衝撃と共に意識を失った。