アーティスト・バディファイター・響木奏   作:龍崎悠司

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まずはバディファイトの説明回。

とはいえまだまだ初心者の域を出ないので、分かりづらい&間違ってたらすみません。


オープン・ザ・フラッグ!

 

 

 

 審判の冷王ミセリア。

 現れたモンスターはそう名乗った。

 

「えっと、僕のバディの方は……」

 

 現れたはいいが、候補者らしき人物が3人もいたので迷ったのだろう。

 見回して首を傾げている。

 

「か……」

「?」

 

 そんなミセリアを受け、奏が手を震わせる。

 無理もない、と水瀬は思った。

 生まれて初めて開けたパックから超ガチレアすら越えるレアカード、バディレアを引き当てたのだからーー

 

「可愛いじゃねぇか!!」

「ふぇえ!?」

 

 どうやら、水瀬の考えとは全然違うことを思っていたらしい。

 笑顔でミセリアの頭を撫でる奏。

 いきなり可愛いと言われ、頭を撫でられ照れてるのか、ミセリアが赤面している。

 確かに少し可愛いと、水瀬も思った。

 

「でも、そのモンスターって男じゃなかった?」

「そうですよ!僕は男なんです!」

「可愛いことに変わりねぇ!」

 

 ミセリアの必死の抵抗も、真正面からぶった切られた。

 男らしいと言えばらしいが、何とも言えない。

 それでも、可愛いと言われて顔を赤くしているミセリアは可愛いと思っても仕方がない。

 

「……まさか、1発目でバディレアとは…………私にはまだいないのに……」

「変な嫉妬してないで、どうするの?店長」

「あ、ああ……少年、おめでとう」

「ありがとな、店長」

「けど、実際どうするの?今開けたパックのカードだけじゃあファイト出来ないけど?」

「そうなのか?」

「知らないんですか?」

「お恥ずかしいながらって奴だな」

「それもだけど……ミセリア、カードになれる?」

「?はい」

 

 ミセリアが頭に疑問符を浮かべながら、カードに戻る。

 

【審判の冷王ミセリア】

 モンスター/サイズ3

 ダンジョンW/レジェンドW

 Dエネミー/魔王/アースガルド

 攻撃力20000/打撃力5/防御力20000

 ■このカードは「ミッションコンプリート “極大魔法 アポカリプス・デイ”」の効果以外で場に出せない。

 ■【対抗】【起動】君のターン中、ゲージ2を払い、君の場の魔法1枚をドロップゾーンに置いてよい。

 そうしたら、このカードをスタンドする。この能力は1ターンに1回だけ使える。

『貫通』『ライフリンク10』

 

 カードに書かれた情報をじっ、と見てから、もう大丈夫と再びミセリアに伝えた。

 

「どうかしたのか」

「あなたとミセリアには悪いけど、このカードはとても初心者には扱えないわ」

「ど、どうしてですか!?」

「まぁ、それを説明するためにもショップへ行きましょうか。ファイトを教えるのも、そっちのが楽だし」

「あ、それなら……」

「なに?都合悪い?」

 

 すでに夕方、西日もかなり眩しくなっている。

 時間がないなら後日、と思った水瀬に、奏は首を振って否定する。

 

「いや、せっかくだから自己紹介しようってな」

「ああ、そう」

「いつまでも少年ってのもな。響木(ひびき)(かなで)だ。ちなみに高校2年生」

「なんだ、同い年だったのね。水瀬(みなせ)(りん)よ」

 

 簡単に自己紹介を終えて握手する。

 

「わ、私のことも忘れないで欲しいかなぁ?」

「さ、引き上げるわよ店長」

「よろしくな、店長さん」

「ま、待ってください!……失礼します、店長さん」

 

 さっさと撤収してしまった動きに、思わず呆然となる店長。

 実に哀れである。

 

 

 

 

 ところ変わってカードショップ・STATION。

 その机の一角に陣取って、凛先生のバディファイト講座が始まった。

 

「まず、バディファイトを始める前に基本的なところから教えるわね」

「頼むわ」

 

 大前提の基本ルールとして、バディファイトは、相手を攻撃し、ライフをゼロにした方が勝ちとなるゲームだ。

 

「バディファイトのカードにはいくつか種類がある」

 

 まず、モンスターカード。このカードを場に出して相手に攻撃することで、ライフを削っていく。

 次に魔法。様々な効果をコストを支払って発動するカード。相手を妨害したり、自分を有利にしたりと千差万別。

 アイテムカード。プレイヤー自身が身に付けることで、モンスターと一緒に戦ったり、効果や影響を与えるカード群だ。

 

「プレイヤーがアイテムを使って戦うのか?」

「そう、それがバディファイトの最も大きな特徴の1つよ」

 

 そして、必殺技カード。特定のタイミングで使用でき、コストは重たいが、フィニッシュとなる強いカード。基本的に決めたら勝てる。

 さらに必殺モンスター。必殺技と同じタイミングで使用して、追撃が可能。通常のモンスターと同じようには場に出せないので注意。こちらもカード性能がかなり高く、フィニッシャーとなるカードだ。

 

「最後に、フラッグカード」

「フラッグカード?」

 

 フラッグカード。自分のワールド、すなわち自身が扱うカード群を示すために使う。そのフラッグカードに示されたカード以外は扱うことが出来ない。

 

「フラッグカードとバディモンスターを除いて、50枚以上で組んだカードの束をデッキと呼ぶわ」

「バディモンスター?」

「それはまた後で」

「フラッグカードはデッキには入らないんだな」

「けど、バディファイトで遊ぶためには必ず必要よ」

 

 バディファイトで使うデッキは、自分が扱うフラッグのカードでなくてはならない。

 選ぶ基準は人によるが、バディモンスターに合わせるのが普通だ。

 

「つまり、強いからって好き勝手にはカードを組めないわけか……」

「そうよ」

「ミセリアはどこのフラッグのモンスターなんだ?」

「ぼ、僕はダンジョンワールドとレジェンドワールドです……」

「ワールド?」

「ワールドというのは、僕たちが実際に住んでいる異世界のことで、そこに所属しているモンスターや魔法のフラッグを持つファイターに従って戦います」

「大雑把だけど、戦国時代の合戦みたいって言えば分かる?」

「ああ、旗を背負いながら戦って、どこの軍か周りに教えるようなもんか」

 

 そんなところよ、と奏の意見を肯定する。

 

「でも、ミセリアは2つ?」

「それが、その子が使いづらいって言った点1つ目」

 

 実際に使うフラッグ、すなわちカード群はダンジョン、レジェンドのいずれかになるとは言え、選択できるカードがそれだけ多いことになる。

 選択肢が多ければ、それだけ悩む。

 初心者最大の難関であるデッキ作りにおいて、大きな壁になってしまうのだ。

 

「2つのワールドを使うフラッグは無いわけか……」

「特定のカード群をワールドを超えて使うフラッグはあるけど、ミセリアには関係ないから今は置いておく」

 

 凛の言葉に素直に頷く。

 基本的な情報を教わる中で、例外的なものを教えてもらってもこんがらがるだけだ。

 

「むぅ……ワールド以外で判断する材料はねぇもんか」

「あるわよ」

「お、マジか」

 

 再びミセリアにカードになってもらってその内容を示す。

 

「ここにミセリアの属性がある」

「属性?」

 

 Dエネミー/魔王/アースガルドと書かれた部分を指す。

 この属性が、ワールド内でさらに細かく分類を別ける要素となる。

 カードには、特定の属性のモンスターが場にいることが条件であったり、属性を参照する能力があるものも多い。

 デッキを上手く使うためにも、属性を見ることは大事なことだ。

 

「まぁ、今あれこれ言っても仕方ないから手っ取り早くワールドを決めてくれるとありがたいわね」

「んじゃ、これだ」

 

 そう言って取り出したのは一枚のコイン。

 

「表ならダンジョン、裏ならレジェンドだ」

 

 ピィン!と弾いて手の甲に乗せて抑える。

 出たのは、表だ。

 

「よし、ダンジョンワールド決定」

「そ、それでいいんですか!?」

「いいのいいの、それにまずは、っつー話だしな」

 

 いずれまた変わるかもしれない。もしくは2つとも使うかもしれない。

 だが、最初は触れてみることだ。

 そのためなら気楽なノリでいい。

 

「それじゃあ、ダンジョンワールドで仮組みのデッキを貸してあげよう」

「これ、そのまま買えたりしないっすか?」

「いいけど、シングルが多いから……高いよ?」

 

 貸し出しのデッキを組んでくれた店長に言ってみると、悪どい顔で笑っている。

 

「いくらで?」

「ザッとこんなもんだね」

「うーむ、いい商売してますな〜」

「どれどれ……?」

 

 店長の値段とデッキを見る凛。

 

「ちょっと、仮組みなのに詰め込みすぎ」

「あれ?そうかな?」

「こんなレア度の高いカードたくさん入れてたらそりゃ値段もあがるわよ」

 

 そう言うと、無駄にキラキラしたレアカードをがつがつ抜いていく。

 三分の一も抜いてから、代わりのカードを入れていく。

 

「必要なカードは入れるとしても、有用だからって最初のデッキで完成形を押し付ける必要はない」

「で、でもせっかくだし……」

「デッキを作っていくことも楽しみの1つ。それを奪う気?」

「がはぁっ!?」

 

 正論で返されて再び、何かがグサリと店長に刺さる。

 とりあえず、デッキが出来たのか新たな値段と共に渡される。

 

「でも思ったよりはするな……」

「仕方ないのよ、あなたのバディのカードはレア度高いし、それと一緒に必要になるカードもあるから」

「というか、バディのモンスターをそのままデッキに1枚だけってわけにはいかねぇのか?」

「出来なくはないけど、意味は無くなるわ」

「意味?」

 

 疑問符の浮かぶ奏に次の解説を行う。

 

「さっき言ったバディモンスターのことね」

「ふむふむ……」

 

 バディモンスターとは、そのまま自身の相棒となるモンスターカードのことを指す。

 このモンスターを場に出すことで、最初の1回のみライフを1回復出来る。

 バディギフト、と呼ばれるものだ。

 

「あれ?そういやさっきはバディモンスターはデッキに入れないって……」

「そう、デッキに同じカードは4枚までだけど、バディモンスターだけは、プレイヤーとフラッグと共に並ぶから、最大で5枚必要になるの」

「???」

「まぁ、細かい形式が分からないから想像付かないだろうけどね」

 

 こればかりはやってみないと分からないだろう。

 

「じゃあ、とりあえずファイトしてみましょうか」

「よし、では私が!」

「店長は横でサポート。解説しながら私がファイトする」

「そんなぁ!?」

 

 ショックで打ちひしがれる店長を置いて、店の地下に続く階段を指差す。

 

「店長の案内でそこから降りていって。私はこっちだから」

「あいよ。行こうぜ、ミセリア」

「は、はい!」

「置いてかないでおくれ~」

 

 店長の案内どころか、という感じで進んでいく。

 しばらく歩くと、大きな扉が奏たちを迎えた。

 

「これは……」

「ふっふっふ……なんと、我がショップの地下にはファイトステージがあるのだよ」

 

 ドヤ顔の店長をしり目に、扉を開ける。

 

「おぉ……すっげぇ」

 

 そこには闘技場のような雄々しく荘厳な舞台があった。

 計9つの台が、左右対称に存在している。

 漂う雰囲気が、いやにも闘気を奮い立たせる。

 両端の台に、奏たちと凛が向かい合う。

 

「まずはルミナイズよ」

「ルミナイズ?」

「ルミナイズっていうのは、自分の意気込みと使うデッキ名を宣言することだよ」

 

 簡単に言えば名乗りである。

 と、凛が丸い大きな宝石のようなものが付いたデッキケースを取り出した。

 

「それは?」

「コアデッキケース。まぁ、これは後日ね」

「うーい」

 

 奏には、四角い箱のような装置が渡される。

 どういう原理か、宙に浮いていた。

 対する凛のケースは丸いガラス玉のような形にいつの間にか変形している。

 

「では2人とも、ルミナイズしちゃって!」

「騎士たちの前に跪きなさい。ルミナイズ【仮組み騎士伝説】!」

「なるほどな。えー……コホン。俺の可愛いバディを見ろ!ルミナイズ【ミセリアとの愛の結晶】!!」

「ぶふっ!」

 

 勢いよくルミナイズしたら、横から吹き出された。

 

「ちょ!ちょっと奏さん!!」

「ん?どうかしたか?ミセリア」

「どうかしたかじゃないですよ!何ですか、その恥ずかしいルミナイズは!?」

「えぇ〜、咄嗟に考えたにしては悪くないと思うんだけどなぁ……」

「次にそれやったら、バディ解消ですよ!」

 

 どうやら、ミセリアのお気に召さなかったらしい。

 

「むぅ、それは仕方ない……別パターンのラブルミナイズを考えておくか」

「ラブじゃなくていいんです!」

「イチャつくなら他所でやって」

 

 ミセリアと奏のやり取りを強制的に終わらせた凛。

 イチャついてない、というミセリアの抗議の視線を黙殺して、説明を続ける。

 

「ファイトを始める準備として、デッキから手札6枚、ゲージを2枚置く」

「えっと、どうやるんだ?」

「この機械に手をかざすと反応してくれるからそれで動かすんだ」

「ゲージは様々なコストとなるもので、自分フィールドの左側に裏側で置かれるのよ」

「なるほど」

 

 なんとなく手を動かすと、それに反応してカードが6枚手元に来た。

 同じ要領で左側に投げるように動かすと、2枚がゲージとなって置かれた。

 

「これで準備OKだな」

「ファイトを始める掛け声は、オープン・ザ・フラッグよ」

「うし、OKだ」

「「オープン・ザ・フラッグ!」」

 

 響木奏の、人生初ファイトが始まった!

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