次回はちゃんとファイトしますよ〜。
…………まぁ、区切ったのはあまりにも長くて1話完結が無理だと判断したからですがね。
「いらっしゃい、だ。ミセリア」
「はい、お邪魔します」
「いや、違うか……」
「奏さん?」
「おかえりなさい、ミセリア」
「はい!ただいまです!」
「おかえりなさい、奏…………と、そちらは?」
響木家に帰った二人を奏の母――
だが、見知らぬ客人の登場に首を傾げている。
「あ、はい。僕はミセリアと言います」
「まぁこれはご丁寧に~」
「こちらこそご丁寧に……」
「いえいえ、とんでもない」
「まぁまぁ、まずは上がってくれや」
このままではいつまでも続けていそうだったので、二人を促す奏。
真面目すぎるとこういう時、話が進まないことがあるという一例である。
「で、奏。ミセリアちゃんはどうしたの?」
「ちゃ、ちゃん……」
「俺のバディ」
「へぇ、奏のバディ……ってバディ!?」
ありのままを伝えると、大層驚かれた。
「今まで音楽しかしてこなかったのに……」
「まぁ、ちょっとした転機があってな」
「でも、バディファイトに関わろうともしなかったのに……」
「それも覆す出会いがあったんだよ。な、ミセリア?」
「はい。改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ、だ」
「まぁまぁ!それじゃあ今日はお祝いね!」
「よっしゃ!」
「い、いいんですか!?」
「当然よ!何せ初めてのバディだもの!」
戸惑うミセリアに、何を言ってるのかと言わんばかりに胸を張る初音。
そこまで自信満々に言い切られると、それが正しいのだと思ってしまうから不思議である。
「ちょっと、お母さんもお兄もうるさいよ!」
玄関で騒いでいたら、階段から少女が不機嫌な様子で降りて来た。
少女の右肩付近には、金の鎧と白い羽根の白龍が、小さいぬいぐるみの様な姿で浮いている。その手にはフルートが握られていた。
「ああ、悪かったな
「全く……って、お兄、その子……」
「ああ、俺のバディのミセリアだ。ミセリア、こいつらは妹の鈴音とそのバディのソフルだ」
「正確には【
「よろしくお願いします」
「か……か…………」
何故かミセリアを見て、カタカタと震え出す鈴音。
「す、鈴音さん?」
「またですかぁ……」
「はぁ」
「あらあら〜」
何が何やら分からないミセリアを除いて、その
そして、その後の展開を予想して心の中でミセリアに合掌。
カタカタと震えながらのそり、のそりと近付く鈴音の不気味さに、若干恐怖したミセリアが一歩後ずさりした。
ガシィ!!
その瞬間を見計らったように肩を鈴音に掴まれる。
「ひっ」
「完っ璧じゃない!!」
「え?」
満面の笑みを浮かべる鈴音と、諦観ムードの空気のギャップに戸惑うミセリア。
何故か、完璧と褒められたことに嬉しさよりも悪寒が先立つこの状況に、目線で説明を求める。
「始まりましたねぇ」
「ああ、いつもの病気だ。間違いねぇ」
「か、奏さん?」
「すまんミセリア。多少疲れるだろうが、我慢して付き合ってやってほしい」
「えっと?」
「さぁさぁミセリアちゃん!いやミセちゃん!!」
「ミセちゃん!?」
「あたしの部屋でお着替えしましょうねー」
「か、奏さん!」
なんだかとてもよろしくない話になって来た気がしたミセリアが、奏にSOS信号を飛ばす。
それを受けた奏は、これ以上何の説明もなしでは、ミセリアにトラウマが刻まれかねないと思い、事情を伝えることにした。
「なに、鈴音が作った服を着るだけだ」
「服、ですか?」
「まぁ、アレやコレやと大量に着させられることも多いですがねぇ」
ソフルも経験があるのか、何処と無く哀愁を感じさせる表情で遠くを見やっていた。
その間も、ミセリアを自分の部屋に引きずり込もうと鈴音は肩から手を離さない。
「ぐへへ、こりゃええもんですわ〜。じゅるり」
「奏さん!?本当に大丈夫なんですよね!?」
発言がもう色々とアウト色濃厚になって来たので、涙目で奏に助けてと訴える。
というか、息を荒くして引きずられるのは恐怖でしかない。
流石にマズいと思ってか、力付くでミセリアを抱き寄せて鈴音を引き離した。
「ほら、いい加減にしろ鈴音。ミセリアは俺のバディだ」
「えー、ケチンボ〜」
「ケチじゃない」
鈴音の頭をペチン、と叩いてからようやくミセリアを家にあげた。
「ああ、でもミセリアの服の件は頼むことになるから用意はしといてくれな?」
「ちぇ〜、分かってるよ」
ぶすぅ、とむくれたまま自身の部屋に戻る鈴音。
おそらく言われた通りに服の用意をしに行ったのだろう。
「2人とも、お風呂は沸いてるから入ってきなさい」
「一緒に入るか?」
「ひ、1人で入れます!!」
冗談混じりに言うと、ピシャリと言い切られた。
奏もそう言うと思っていたので、風呂場に案内してギターを自分の部屋に置きに戻った。
「ふぅ……」
自室にギターを置いて、一息つく。
疲れた様子だが、それも仕方ないだろう。
なにせ、奏にとっては激動の1日だったと言っていい。
「まさか、俺にバディが出来るとはな……」
意外だというレベルではない。
正に驚天動地。
それは最早、奏の中では事件なのだ。
「ミセリアじゃなかったら、どうなっていたことやら……」
それこそミセリアの属性にある魔王そのままのような、禍々しく恐ろしい姿のモンスターであったならば。
果たして、受け入れてバディを組んだだろうか。
「それに、いい出逢いもあったことだし」
店長さんと、水瀬凛。
あの2人には、きっとこれからもお世話になる。
デッキを早く完成させたいし、カードの情報も知りたいし、ファイトもしたい。
「ま、それもこれも音楽のお陰だな」
今日、あの場所で路上ライブをしていなかったら。
店長さんが、あそこで転ばなかったら。
回収し忘れてたパックを、ファンの子が渡してくれなかったら。
返したパックをその場で渡されなかったら。
奏はバディを始めていなかったかもしれない。
だから奏は感謝する。
出逢いに、親切に、音楽に。
「お兄、ミセリアちゃんのパジャマ持ってきたよ」
「おう」
ノックの後、鈴音の声が聞こえたのでドアを開ける。
手渡されたのは、ピンクの生地の可愛いらしい
「鈴音。一応言っとくと、ミセリアは男だぞ?」
「えぇ〜?うっそだぁ、あんな可愛いいのに、男の子なわけが……」
「いやマジで」
「…………ほんと?」
再確認に首肯で返すと、かなりショックを受けた様子で崩れ落ちた。
「そんな……せっかく可愛いスカートとか履かせようと思ったのに……色々とアイディアが閃いたのに……」
「まぁ、頼んでOKしたなら女装させてもいいけどよ」
「マジ!?」
「ちゃんと許可とれよ。それとサイズ的にも今日はその寝間着でいいだろ」
「やった!お兄愛してるー!」
「はいはい」
落ち込んだ反動か、ルンルン気分で脱衣所に向かった鈴音。
いずれ実現するであろう未来の光景に、奏は苦笑する。
とりあえずは、着替えを用意して風呂に入る準備だ。
『いただきます』
手を合わせてから始まる、響木家の夕食。
「いやぁ、あんまり豪華に出来なくてごめんね。ミセリアちゃん」
「いえ、そんな……」
「いつもより3品は多いだろ。作りすぎじゃね?」
「いくらなんでも多いよ、お母さん……」
「なに、初音殿の料理は美味しいですからねぇ。残す心配はないでしょぅ」
「ミセリア、食べてみ?」
「で、では……」
目の前のおかずをフォークで刺し、口に運ぶ。
もきゅもきゅ……コクン
パァアアア!!
「お、美味しいですっ!」
「良かったわ〜」
「たくさんあるから、遠慮するなよ?」
「はい!」
目を輝かせて料理を食べるミセリアを微笑ましく眺めつつ、奏たちも食べ始めた。
「それにしても可愛いわね〜」
「だよねー、お兄には勿体ないよ」
「おいおい、鈴音。お前にはソフルがいるだろ」
「そうですよぉ、鈴音。あまり酷いこと言われると傷付いてしまいますぅ」
「そうだそうだ。俺のバディを着せ替え人形にしようとしやがって」
「いや、奏さん最初は許可してましたよね?」
ミセリアのツッコミはスルーして話は続く。
「でもお兄だってソフルとセッションしてるじゃん」
「アレはソフルがいつの間にか入ってくるんだよ」
「奏殿のバラードは最高に気を高めてくれますからねぇ」
「俺としてはソフルはノリノリの曲もいけると思うんだけどな」
「残念ながら、それは音楽性の相違というものですねぇ」
「うーむ、残念」
「セッション?バラード?」
聞き慣れない単語に首を傾げるミセリアに、自身の話をほとんどしていなかったことを、奏は思い出した。
「ああ、ミセリアにはまだ言ってなかったな。俺、シンガーソングライター、つまり作曲して歌ってるんだ」
「あ、ちなみにあたしは、服飾デザイナー兼コーディネーター。まぁ、あたしもお兄もアマチュアどころか素人だけどね」
「いいんだよ。好きでやってんだから」
「そだねー」
うんうん、と頷きあう兄妹2人。
「にしても、あのお兄がバディファイトを始めたとはねぇ」
「感慨深いわ〜」
「ええ、私も自分のことのように嬉しいですねぇ」
「そ、そんなに触れて来なかったんですか?」
「まぁなぁ」
「ミセちゃん。お兄ってね、バディモンスターのこと嫌いだったんだよ」
「ええ!?」
ミセリアにとって衝撃の真実が明らかにされた。
初対面であんなに好印象だといってくれて、ファイトもあんなに楽しそうだった奏が、元々バディモンスターが嫌いだったとは。
ミセリアは欠片も想像していなかった。
「私がここに来た時もかなり警戒されてましたねぇ」
「今でもそうなった原因のモンスターは大嫌いだけどな」
「よく始めましたね、奏さん」
「店長さんたちへの義理立てがスタートだけど、それでもミセリアのことが気に入ったから始めたんだ」
「そ、そうですか」
奏の言葉に対して、そっぽを向いて素っ気なく言うミセリアだが、頬が赤くなっていることまでは誤魔化せていない。
なんだか、犬が尻尾をぶんぶん振っている姿を幻視した。
「〜〜〜!可愛い!やっぱお兄のバディにするには勿体ない!」
「あらあら、娘が増えたみたいで嬉しいわ〜」
「ぼ、僕は男ですよ!」
「くぅ、今のは可愛すぎた…!男とか女とか、もう関係ねぇ可愛さだわ!」
「奏さんまで!?」
「ふぅむ……人間とは、あの様な姿に悶えるのですねぇ」
「ソフルさんも!何を冷静に分析してるんですか!?」
ミセリアが言うも、その雰囲気やら盛り上がりが収まることはない。
そんなこんなで、ミセリアが響木家に来た初日は騒がしくも明るく過ぎていった。
翌朝。
するする、という布の擦れる音と人の動く気配でミセリアは目が覚めた。
「ふぁ……あぅ?奏しゃん?」
「あ、悪い。起こしちまったか?」
「いえ、大じょぶぁ〜、ぇすよ?」
だが、まだ寝ぼけているのか呂律が回っていない。
視界もぼやけているのか、奏のいる方向に正確には顔を向けていなかった。
「……どうしゃたんぇす?」
「あー、まぁこれから学校に行くんだ」
「かっこう?」
「夕方くらいには帰ってくるから、母さんの家事でも手伝っといてくれ」
「ゆうかた?ゆうがた……ゆ、夕方ですか!?」
言葉の意味を反芻して理解したミセリアが急に起き上がってきた。
その勢いに、奏は一歩後ずさる。
「お、おう。目ぇ覚めたか」
「あ、はい。おはようございます……ではなくて夕方まで、帰ってこないんですか!?」
「俺も高校生だからな。学校には通わなきゃいけないんだ」
「じ、じゃあ僕も……」
「いいけど、規則であんまりその姿ではいられないぞ?」
「そうなんですか?」
「休憩は挟むけど、1日中授業ってのがあってな。その間は授業の邪魔をしないようにカードになってもらうのが規則なんだ」
奏の説明に、しゅん、となるミセリアだが、それも数秒。
気を取り直して顔を上げる。
「それはそれで寂しいですけど……でも、ずっと離れ離れになるよりかは!」
「そ、そうか?じゃあデッキは……バラバラじゃあ無理か。んじゃミセリア、俺の制服の胸ポケットに入ってくれ」
「分かりました」
言われて素直にカードになって収まる。
寂しがり屋なのかな?と、ミセリアの意外な一面を見た気がした奏であった。
「行ってきます」
「いってらっしゃ〜い。ミセリアちゃんは?」
「一緒に学校行きたいってさ。カードになってもらってる」
「あらまぁ〜、じゃあミセリアちゃんも、いってらっしゃい」
「行ってきます」
カードの状態で、声だけで返事をするミセリア。
「奏さん、学校ってどんなところですか?」
「んー?面倒だけど、楽しくて、やってられないこともあるけど、辞めたくはならない、って感じかな?」
「???」
「ま、詳しくは着いてからな〜っと、ヤベ」
奏が歩いていた道の後ろからバスが通ったのを見て走り出した。
「どうしたんですか!?」
「あれに乗りたいんだ!……けど、無理かなぁ?」
「なら、僕に任せてください!」
「ミセリア?って、うわわ!?」
自信満々なミセリアの声がしたと思ったら奏の身体が宙に浮いた。
バランスが取れなくて困っていると、ものっそい速さ、としか言いようのない速度でバスに向かって飛び始めた。
目標のバスすら超える速度で。
「ま!?ままままま、待てミセリア!もう追い抜いたから!ここでいいから!?」
「はい!」
「っ!ぐぇええ〜」
奇跡的に、ちょうどバス停の近くで急停止出来た。
なんとか何にもぶつからずに済んだが、ひやっとしたでは済まされない所業だった。
これは叱らねばなるまい、とカードを取り出そうとするが。
「えへへ、どうでしたか?奏さん」
「あー、うん。次からはもうちょっとゆっくり安全にやってくれ……」
どう聞いても、褒めて褒めて!と笑顔で待っているようにしか聞こえないミセリアに、強く言うことは出来なかった。
後でソフルにでも教育を頼もう、と決意する奏だった。
「乗れなかったら乗れなかったでと思ってたが、 ともかく結果オーライだな」
前向きに考えてバスに乗った。
電車に揺られること十数分。
「これなら、僕と飛んだ方が速くありませんか?」
「あー……っと、また今度、広いとこでな?っとと、すみません」
ミセリアと話していたら、新たに乗ってきた人と当たってしまった。
電車が少し混んできたようだ。
座るのも無理そうなので、周りを見て隅の方へ移動するか考えていたら、見つけた。
奏のものとは違う制服を着た女子を痴漢している男がいるのを。
見つけた以上は助けるしかない。
すっ、と動いたところで、別に動いた者がいた。
「何しとんのや、この外道!」
「ああ?」
今度は同じ制服の大阪弁だか京都弁だかの女子が、痴漢を糾弾した。
まるで正義の味方のようだが、やり方はあまり良くない。
指摘された男は、明らかに苛立った様子で凄んだ。
「何がなんだって?」
「乙女の柔肌は、許可なく触れてええもんやない!」
「はあ?何も嫌がってなかったぜ?」
「こんの、ド腐れ外道がぁ」
ハラハラしながら見ていると、その後ろで別の男が動き出すのが見えた。
咄嗟に身体が動く。
「げへへ、まだ1人ーー」
「危ねぇ!!」
「ぐへぁ!?」
体当たりで体制を崩し、転んだところを上に乗って抑え込む。
「こんの、離しやがれ〜!」
「離すか、クソ野郎。……ミセリア!」
「はい!」
「バディモンスターだと!?」
「俺の鞄から……いや、こいつを抑えられるか?」
「任せてください!」
言うが早いか、ミセリアが力を使う。恐らく奏を飛ばしたのと同じ力で拘束したようだ。
「がぁあ、あ……あ。なんだ、これ?」
「よし、ナイスだ!今のうちに……」
2人目が動けないのを確認して、鞄の中からギターの予備の弦を取り出して、2人目の手足に巻いて確実に拘束を終えた。
「これで良し。ミセリア、もういいぞ」
「はい」
「がはっ、くそ!」
「まだ俺がいること、忘れんな!」
1人目の男が、仲間を助けようと奏に襲いかかってくる、が。
バギィッ!!
「ぎゃっ!?」
「ウチがいるんを、忘れんで欲しいわ」
手に持った竹刀を1人目のこめかみに向けて、思いっ切りなぎ払った。
よっぽど痛いのか、蹲って動けないでいる1人目を再びミセリアと協力して拘束した。
次は〜番台交番前〜。次は〜番台交番前〜。
タイミングよく、交番前のバス停に着くようだ。
「うし、ここで降りるか。ミセリア手伝ってくれ。……すいませーん、降りまーす!」
奏が告げると、誰かが降車ボタンを押してくれたらしい。
ピンポン、と音が鳴り、間も無くバスが停車する。
「よし、降りるぞミセリア。それから助かったよ、アンタ。お礼はそのうちするわ。そっちの君も、もう大丈夫だ」
「待ってぇな」
「ままま、待ってください!」
とりあえず、場を収めようと被害者と正義の味方ムーブした女子に一声かけると、揃って待ったが掛かった。
「なにか?」
「ウチも降りるわ」
「私も降ります!」
「いや、俺たちだけで大丈夫だって」
交番で引き渡したら遅刻するかもしれないのと、加害者の男たちには近付きたくないだろう、という配慮のつもりだったが、拒否された。
「そうはいかへんよ。ウチも関わった1人やし、こっちの子ぉは被害者や。警察に説明するんも早いと思うけどな?」
「そうですよ!」
「つってもなぁ……」
「じゃ、じゃあ、その、条件が!」
「条件?」
「えと……その…………さ、サインください!」
「へ?」
言われて出してきたのは、マジックペンと以前に路上ライブで販売した奏のCDだった。
キュキュッ、とサインを書いて被害者の女子に渡す。
大そうな喜び様だ。
「きゃー!やった!サインゲット!」
「こんなんで良きゃ、別にいいけど……」
「へぇ、あんさんアーティストやったん?」
「時折、路上でライブしてるだけだ。アマチュアですらねぇ」
「それにしては、やと思うけど?」
「ま、こんな素人の歌で喜んでもらえるならありがたい話だよ」
ともあれ、最初に用件を済ませなければ。
「えっと、すみません」
「はいはい……と、これは?」
「バス痴漢と暴漢の現行犯です」
「わ、私が被害者です!」
「僕たちが取り押さえて、ここに連れて来ました」
「はん、証拠なんてねぇだろ?」
「そうだそうだ!」
往生際の悪い2人に、どうしたものかと奏が思っていると。
「証拠ならあんで?雪代!」
「はいはーい、お待たせ」
「な、こいつもバディモンスターだと!?」
驚いてる周囲の意に介さず、手に持ったケータイの録画映像を見せる。
そこには、男が痴漢し、暴行を加えようとし、それらを暴かれて取り押さえられるシーンの一部始終がきっちり写っていた。
「うん、確かに。一応、その映像をこちらのパソコンに移させてもらいます」
「はいな〜」
そう言ってケータイを渡し、ドヤ顔で男たちを見る。
悔しそうな顔で歯をくいしばっているが、自業自得この上ない。
「はい、終わりました。ご協力、感謝します」
「おおきに〜」
ともあれ、これで一件落着である。時間は、まだ余裕がありそうだ。
「んじゃ、次のバスでも待ちますか。えっと……悪い、アンタのこと学校で見た覚えがなくて……」
「まぁ、しゃーない。ウチ、今日転校してきたさかい」
「マジか。俺は響木奏だ、一応シンガーソングライターやってる。んで、こっちはバディのミセリア」
「ウチは
「こちらこそ」
「はい、お願いします」
バディファイトを始めた奏に、また新たな出逢いが1つ。