やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか? 作:ステルス兄貴
八幡がDATSで仕事をしていると、妹の小町から相談事があると言う電話が来た。
川崎の時と似たような状況だったが、妹の頼みとあっちゃ断れない八幡だった。
そして、仕事が終わり、小町との待ち合わせ場所のサイゼに行くと、
「‥‥また、お前か‥‥しかもなんか一人増えているし‥‥」
大志の他にもう一人、小町と同じ同世代の男子が居る事に不快感を覚える八幡。
「あ、あの比企谷先輩、どうも‥‥この前はお世話になりました」
大志は川崎の時の一件について八幡にお礼を言う。
「ああ‥‥それで小町、相談事ってなんだ?」
「あっ、その前に自己紹介だけ済ませておこう。マコト君」
「えっ?あっ、うん。比企谷さんと同じクラスの阿部マコトと言います」
小町に促され、マコトは八幡に自己紹介をする。
「そうか‥‥だがしかし、小町はやらんぞ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。大志君と同じで、マコト君はタダのクラスメイトだから」
「うぐっ」
「はうっ」
小町のクラスメイト発言にダメージを受ける大志とマコト。
大志なんて二度も言われたのだからダメージが二倍だ。
「それで、相談事ってなんだ?」
「実は‥‥」
小町は先程、慎一郎がマコトに仕掛けてきたデスバトルについて八幡に話した。
「はぁっ!?なんだ!?それは!?」
八幡はデスバトルの内容を聞いて憤慨した。
(どうりで、ここ最近、デジヴァイスの再発行を頼むテイマーが多いと思った‥‥でも、デジモンは‥‥)
一応防水加工、衝撃加工は施されてされているが、デジヴァイスとて人の作ったモノである以上、完全無欠ではない。
何らかの原因で壊れたりしている。その場合、DATSにて再発行の手続きをとれば、デジヴァイスは再発行されるが、パートナーデジモンに関しては、新たなパートナーデジモンを再びもらうにはデジヴァイス以上に再発行の手続きには時間がかかる。
その際、デジモンを失った理由など詳しい調査がDATSにて行われる。
慎一郎とデスバトルをしてパートナーデジモンを失ったテイマーはデジヴァイスの申請はしているが、パートナーデジモンの申請に関しては慎重だった。
大半のテイマーは慎一郎とのデスバトルの際、慎一郎から「僕のデジモンに勝てたら大金を払う」と言われて金銭につられて彼とのデスバトルを行い、パートナーデジモンを失った。
彼とデスバトルをしていたテイマーはそのほとんどが小、中学生の新米テイマーやお金に困っているテイマーが多かった。
テイマーになったばかりの新米テイマーはデジモンを不遇に扱って殺したと思われDATSからデジタマの再発行どころかテイマーの資格を剥奪されるかもしれないと思っているテイマーが多かった。
自分のパートナーデジモンを失った事を隠す為、とりあえずデジヴァイスだけは再発行してもらっているのだろう。
「それで、そんなふざけたゲームをしているバカは何処のどいつだ?」
「確か、城崎電子工業の城崎慎一郎って奴です」
大志がデスバトルを仕掛けている奴の正体を八幡に教える。
「城崎電子工業!?」
八幡は自分らが内偵を進めている会社の関係者がまさかそんなふざけたゲームをしている事に驚いた。
「それで、ソイツが使っているデジモンは何ていうデジモンだった?」
「えっと‥‥アンゴルモンとか言っていました」
マコトが、慎一郎が使っているデジモンの名前を八幡に教える。
「アンゴルモン?」
(そんな名前のデジモン居たっけ?)
八幡はアンゴルモンなるデジモンの名前に聞き覚えがなかった。
もしかしてまだ自分が知らないデジモンなのかもしれないと思い、モバイルパソコンを使い、DATSのデジモンデータベースにアクセスをしてアンゴルモンを検索する。
すると、
『該当デジモンなし』
という検索が出てきた。
「‥‥なぁ、本当にソイツが使っていたデジモンは『アンゴルモン』って名前なのか?アンドロモンやガルゴモンの名前を聞き間違えたんじゃないか?」
八幡はそれっぽい名前のデジモンの名前と聞き間違えたのではないかと訊ねる。
アンドロモン 完全体 サイボーグ型デジモン ワクチン種
人型タイプのサイボーグデジモン。
完全体になりきれていないデジモンなど一撃で倒す戦闘力を持っている。
アンドロモンの技術はメタルグレイモンやメガドラモンに流用されている。
その強さは桁違いであり、必殺技はアーム部分から発射されるエネルギー状の刃物『スパイラルソード』。
ガルゴモン 成熟期 獣人型デジモン ワクチン種
テリアモンが進化した獣人型デジモン。
狩猟が得意なハンターデジモンでもある。
見た目の姿に反して、素早い動きで確実に敵を仕留める正確無比な攻撃をする。
脚力が強く空高く飛び上がり、耳を広げて滑空することもできる。
普段は陽気な性格だが、一旦怒ると手が付けられなくなるところがある。
愛用のジーンズ「D-VI'S503xx」はこだわりの一品である。
必殺技は両腕のバルカン『ガトリングアーム』と敵の懐に入り込んで、下からガトリングアームで突き上げる『ダムダムアッパー』。
「いえ、違いますよ!!」
「そうだよ!!いくら何でも間違えないよ!!」
「それどころか、今まで見た事もないデジモンでした!!」
「‥‥」
大志達が今まで見た事の無いデジモン。
いくら小町たちが中学生でまだテイマー歴が数年で全てのデジモンを見た訳でもないと言ってもそれ以上の経験を積んでいる筈のDATSのメインコンピューターでも『アンゴルモン』なるデジモンはヒットしなかった。
「それで、小町、相談事ってなんだ?そのアンゴルモンについて聞きたいのか?」
「ううん、違うの‥‥えっと‥‥その‥‥大変言いにくい事なんだけど‥‥」
「なんだ?言ってみろ」
「‥‥怒らない?」
「怒らない、怒らない、俺はお前を怒った事があるか?」
「う、うん‥‥」
八幡に言われ、小町は恐る恐る八幡に話す。
「はぁっ!?お前!?勝手にそんな約束をしたのか!?」
小町から聞かされた話を聞いて思わず声を上げる八幡。
彼女は八幡のあずかり知らない所で勝手にデスバトルの決闘を八幡に押し付けていた。
「だ、だって‥‥どうしてもアイツの事が許せなかったんだもん。それにお兄ちゃんならあんな奴のデジモンぐらい簡単に倒せるでしょう?」
「‥‥」
小町からの頼みとあれば断れない。
それに相手は内偵先の会社の関係者‥‥
警察の内偵では金に関しての不正の証拠は固まりつつあるが、まだデジモンについての不正が出ていない。
そんな中でDATSのデータベースにもヒットしないデジモンの存在‥‥
(ん?まてよ、これはもしかして‥‥)
八幡は小町からの頼まれ事で城崎電子工業のデジモンに関しての不正が分かるかもしれない。
「‥‥分かった。何とかしてみよう」
「本当ッスか!?」
「流石、お兄ちゃん!!」
「どうか、僕のハードアーマの仇を討って下さい!!」
「あっ、ああ‥‥」
八幡は小町の頼みを聞くと同時に内偵先の城崎電子工業のデジモンによる不正をこの機会を通じて暴いてやろうと思った。
翌日、八幡は学校を休んで、朝からDATSへと向かい、捜査本部にてDATSのメインコンピューターにも登録されていないデジモン『アンゴルモン』についてとそのテイマーである城崎慎一郎について調べた。
警察がある程度、事前に調べただけあって、城崎電子工業の経営者、社員の家族構成まで調べてあり、その中に城崎慎一郎は簡単にヒットした。
彼は経営者の息子だった。
経歴をみると、流石は電子系会社経営者の息子、小さい時から帝王学と共に電子・コンピューター関係の勉強をして来た様だ。
そして12歳でテイマー資格を得ている。
「ちゃんとテイマー資格を持っている‥‥パートナーデジモンが突然変異な進化をしたのか?いや、もしその場合なら、DATSにちゃんと報告する筈だから、データベースにアンゴルモンのデータが残っている筈だ」
パートナーデジモンがこれまで見た事の無い新種または突然変異な進化をした場合、テイマーは直ちにDATSへとその旨を報告する義務がある。
この報告を怠ると、厳重注意、重ければテイマー資格の剥奪にも繋がる。
デジモンはまだまだ未知の領域が多い生物で進化系統も固定化されていない。
実際に八幡の黒アグモンだってグレイモン(青)やダークティラノモンではなく、デビドラモンに進化している。
そうした進化の傾向を調査、記録、観察するのもDATSの仕事の一つである。
「DATSのデータベースにヒットしないデジモン‥‥見た事の無い姿のデジモン‥‥デジモンを作った?‥‥いや、いくらコンピューターに強いからってそんな事‥‥デジモンを人工的に作ったりする事って出来るのか‥‥それともパートナーデジモンを自分の手で改造でもしたのか‥‥?うーん‥‥」
デジモンを人工的に製造したり、改造したりするのは違法であるが、これまでのデジモン犯罪ではデジモンを悪用しての犯罪はあったが、人工的にデジモンを作ったり、デジモンを改造したケースはこれまでなかった。
八幡が自分の仮説に頭を捻っていると、
「出来るよ‥‥」
「えっ?」
八幡の呟きに応えたのはいつの間にか八幡の傍に来ていた一乗寺だった。
「デジモンを人工的に作る事‥‥出来るよ」
「そ、そんな事、可能なんですか?でも、そんな記録はどこにも‥‥」
「それはDATSが設立される前だったから‥‥でも、確かに人工的にデジモンは作れるよ‥‥僕は昔、それを作った事があるから‥‥」
「‥‥」
一乗寺は八幡の傍に座ると昔、自分の手で‥人工的にデジモンを作った事があると言う。
それはDATSが設立前の事なので、時効と言うか、法律制定前の事なので、誰も一乗寺を裁くことは出来ない。
「‥それって、どう言う事なんですか?」
「それは‥‥」
一乗寺は八幡に昔の自分の過去を話した。
彼には三歳年上の治という兄が居た。
治は昔から優秀な兄で、当時の一乗寺にとって憧れの存在であると同時に両親の期待、愛情を全て独り占めしてしまう嫉妬の対象でもあった。
どんなにテストの点をとっても褒められるのは兄だけで自分がとっても「治の弟だ」
悪ければ「治の弟なのに‥‥」と、まるでテストの点が良ければ治の手柄となり、悪ければ一乗寺だけの責任にされていた感じだった。
兄の成績が少しでも下がればそれも一乗寺のせいとされた事もある。
そんなある日、パソコンの中から一つのデジヴァイスが送られて来た。
一乗寺は自分よりも優秀な兄に送られてきたものだと思っていたし、治も自分の為に送られてきたものだと思っていた。
しかし、治がデジヴァイスを触っても何の変化もなかった。
一乗寺は治が居ない時、こっそりデジヴァイスに触れると、デジヴァイスは光を放ち、彼はパソコンを通じてデジタルワールドへと行き、そこで出会った異世界のテイマー、秋山遼とパートナーデジモンのワームモンと共にデジタルワールドの世界を旅してミレニアモンを倒した。
そう、送られてきたデジヴァイスは一乗寺のモノだったのだ。
ミレニアモン 究極体 合成型デジモン ウィルス種
様々なデジモンのデータが融合した究極の合成型デジモン。
倒すことは不可能であると言われているが、未だに解明されていない融合の原因をつきとめることが、その攻略の糸口になるとされていた。
必殺技は、時を圧縮して異次元を作り出し相手を永遠に亜空間に閉じ込めてしまう「タイムアンリミテッド」。
遼と共にミレニアモンを倒し、遼は自分の世界へ、一乗寺も元の現実世界へ戻った。しかし、デジタルワールドを旅した一乗寺に対して治は自分が選ばれなかった事に対して嫉妬心を抱き、一乗寺からデジヴァイスを取り上げてしまった。
この時一乗寺は初めて兄に対して嫉妬よりも上の負の感情、殺意を抱いた。
彼は心の中で願った‥‥兄さん何て死んでしまえ‥‥っと‥‥
そして一乗寺のその願いが通じたのか、それからすぐに治は交通事故でこの世を去った。
兄の葬儀の後、彼はとある人物の話術にそそのかされ、暗黒の海にて心の中の闇を増加させ、デイモンカイザーとなった。
そして、カイザーとなった彼は以前戦ったミレニアモンを元に様々なデジモンのデータを融合させたデジモン、キメラモンを作り出した。
キメラモン 完全体 合成型デジモン データ種
手、足、体、尾、翼など全体を構成する各パーツが、様々なデジモンの合成で組み合わされ創られている一乗寺賢がデジモンカイザー時代に作った合成型デジモン。
恐るべき闘争本能、そして強大な破壊力を有していた。
必殺技は四本の腕から放出される、死の熱線『ヒート・バイパー』。
この熱線を受けたものは、見るも無残にバラバラに四散してしまう恐ろしい技である。
一乗寺が作り出したキメラモンは本宮大輔のパートナーデジモン、ブイモンがマグナモンに進化してキメラモンは消滅した。
それと同時に自身のパートナーデジモン、ワームモンもその戦いで一度死んだ‥‥
キメラモンが倒され、パートナーデジモンの死により、彼は本来の『やさしさ』を取り戻し、カイザー時代にデジモンに行った非道の罪を償うように同じ本宮大輔、井ノ上京、火田伊織、高石タケル、八神ヒカリと共にデジタルワールドの為に戦った。
一乗寺が作ったキメラモンは彼が作ったその一体きりで、現在までもその存在はデジタルワールドで確認されていなければ、パートナーデジモンをキメラモンに進化させたテイマーも現在まで確認されていない。
まさに人類が確認した最初で最後の人造デジモンだ。
マグナモンに関しては本宮大輔がDATS設立後にマグナモンのデータをDATSへ提供したのだが、キメラモンについてはDATS設立前、キメラモンとの戦いの後、一乗寺の為を思い、データを消していた。
キメラモンは一乗寺にとってパートナーデジモンの死を思い出させるデジモン。
自分がカイザーだったと思い出させる黒歴史を象徴するデジモン。
一乗寺はもう十分反省をしてデジタルワールドの為に戦った‥‥これ以上、彼を苦しめられない。
そんな思いで大輔たちはキメラモンのデータを消去した。
キメラモンの事を覚えているのは当時、戦った大輔たちとキメラモンを作った一乗寺本人のみだ。
まさか後々にでDATSと言う組織が設立されるなんて彼らには予想外だったことなので、キメラモンのデータ消去については彼らに責任はない。
「そんな事が‥‥」
「ああ‥僕にとって償っても償いきれない大きな十字架だ‥‥」
「では、一乗寺さんの経験からデジモンの情報と環境があれば人造デジモンを作れると‥‥」
「ああ‥そのアンゴルモンってデジモン、DATSのデータベースにはヒットしなかったんだろう?」
「ええ」
「となると、やはりそのデジモンは人工的に作られたデジモンの可能性が高いな‥‥」
「一乗寺さん、実は‥‥」
八幡は一乗寺に慎一郎が行っているデスバトルについて、
そして明日、そのデスバトルを八幡が城崎電子工業の会社で行う事を伝えた。
「まさか、そんな事を‥‥」
「勿論、負けるつもりはありませんし、今回は手加減もするつもりもありません‥‥ノワールには負担をかけますが、手段は選びませんよ、話を聞く限りではソイツはテイマーの中でも最低の奴です。DATSでも証拠を掴んで、ソイツのテイマー資格の剥奪も検討しているところです」
八幡は今回のデスバトルに関して、手加減も手段も問わずに行うつもりだった。
そして、もし慎一郎のデジモンが本来のパートナーデジモンからの進化ではなく、人造デジモンだった場合、DATSとしては慎一郎のテイマー資格の剥奪も検討している。
ただでさえ、彼はデスバトルとか言うデジモンを殺すゲームを行っている。
それだけでも十分、許されざる行為だ。
実際にデスバトルの現場を目撃していない一乗寺本人も慎一郎の行為には胸糞悪い不愉快さを覚えている。
その後、八幡は一乗寺らと共に城崎電子工業への摘発を翌日に決め、その作戦内容のミーティングを行った。
そして翌日の放課後、八幡、小町、大志、マコトの姿は幕張にある城崎電子工業本社ビルにあった。
「ようこそ、城崎電子工業へ‥‥」
ロビーには今回、八幡のデスバトルの相手、城崎慎一郎が待っていた。
「君が今回のバトルの相手かな?」
「ああ」
「確かそこのレディーのお兄さんと聞いたけど、随分と似ていないね」
慎一郎は八幡と小町に似ていないと言う。
「うるせぇ、よけいなお世話だ」
八幡としては慎一郎の行為も許せないが彼がそれなりのイケメンな事も許せなかった。
「さあ、さっさと始めようぜ‥‥」
「ふっ、いいだろう。貴方はそうとう自分のデジモンを僕のアンゴルモンのエサにして欲しいみたいだな」
慎一郎は不敵な笑みを浮かべている。
「さて、競技場はこっちだ。もっとも貴方のパートナーデジモンにとっては処刑場でもあるけどね」
慎一郎は八幡をバトルの場へと案内する。
「さあ、此処だ」
案内された場所はアリーナの様な所で中央に普通の3Dバーチャル装置よりも大きな3Dバーチャル装置があり、周りには観客席も用意されている。
「此処が、城崎電子工業が誇るバトルドームだ‥‥では、始めようか?楽しい、楽しい、死のゲームを‥‥」
慎一郎はデジヴァイスを八幡に見せつけ、デスバトルの開幕を宣言した。