やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか?   作:ステルス兄貴

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デジモン要素が少なくてすみません。
舞台を整えるまで、ちょっとデジモン要素が薄い話が続くかもしれません。


2話

 

 

DATSの仕事と、日誌、報告、そして現国に出されていた課題を無事に済ませ、なんとか提出することが出来た八幡。

しかしその日の放課後、彼は職員室へと呼び出しを受けた。

全く身に覚えのない事に八幡は何故自分が呼び出されたのか見当もつかないが、無視するわけにもいかないので、彼は職員室へと赴いた。

八幡を呼び出したのは彼の現国の担当でもあり、生徒指導部の平塚先生だった。

 

「なんでしょう?」

 

「なぁ、比企谷。これは一体なんだ?」

 

平塚先生は手に持った作文用紙を八幡に見せつける。

 

「作文用紙です。それぐらい見れば分かりますよ」

 

八幡は平塚先生の問いに答えるが、彼女は、『自分は今、イラついています』と言いたそうな雰囲気を醸し出している。

 

「私が言っているのは作文の内容だ」

 

「えっ?何か変でしたか?」

 

八幡は昨日、夜遅くに書いた現国の課題‥「高校生生活を振り返って」のお題の作文について何か内容が不味かったのかと訊ねる。

しかし、平塚先生の表情を見ると、どうやら八幡の書いた作文の内容はお気に召さなかったらしい。

では、彼は作文に一体どんな内容をかいたのだろうか?

それはこんな内容だった。

 

 

青春とは嘘であり、悪である。

 

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境全てを肯定的に捉える。

 

彼らは青春の二文字の前にはどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。

 

彼らにかかれば、嘘や秘密も、罪咎や失敗も、いつどこでリアライズするかわからない凶暴なデジモンの存在さえも青春におけるスパイスでしかないのだ。

 

いや、それどころか彼らはそうしたデジモンの存在自体知らないし、知ろうとしないのかもしれない。

 

デジモンは本来ならば、世界を滅ぼす事の出来る生物兵器に近い存在にも関わらず、彼らはデジモンをペット感覚か自分の地位を上げる為のステータスの道具の様にしか見ていない。

 

テイマーならばもっとデジモンの隠されたマイナス面も理解し、デジモンを取り扱う事の重大さ、責任を自覚するべきだ。

 

結論を言おう。

 

青春を謳歌せし者、リア充たちよ、デジモンをペット、道具として見ていない者たちよ。

 

砕け散れ!!

 

 

「なぁ、比企谷。私が授業で出した課題はなんだった?」

 

課題の内容を確認するかの様に訊ねる平塚先生。

 

「確か、高校生活を振り返って というお題の作文だと思いますが?」

 

「そうだな‥それで何故、君はこんな舐めた作文を書き上げたんだ?君はリア充に何か怨みでもあるのか?そりゃあ、私だって羨やむ所はあるが‥‥」

 

「そうですね‥‥リア充たちは数に物を言わせて、悪である黒ですら正義の白に変えてしまう。常に自分に降りかかる責任を他者におしつけて自分は知らぬ存ぜんを貫き通し、本来ならば、大事なパートナーであるデジモンをまるで道具の様に扱う‥‥彼らのやり方はとても嫌いです」

 

「あれだな。君は、性格は捻くれているし、目も魚のように腐っているな」

 

(いきなり身体的特徴をけなして来やがった‥‥アンタ、それでも教師かよ)

 

「栄養がありそうですね。知っていますか?マグロの目は栄養価がメチャクチャ高いらしいですよ。それにアラと呼ばれる魚の目玉はなかなかの珍味だと聞きました」

 

「真面目に聞いているのか?」

 

「先生から先にふっかけてきたんじゃないですか。それに俺はお題の通り、一年間の高校生活を振り返って思ったことを率直な意見で書いただけです。それとも教師受けがいい嘘を適当にでっち上げた方が良かったですか?」

 

「小僧、屁理屈を言うな」

 

「小僧って‥‥まぁ、先生の歳からすれば俺は小僧ですよね」

 

八幡がそう発言した瞬間、横に風が吹いた。

 

「女性に年齢の話を厳禁だと習わなかったのか? 次は当てるぞ」

 

「ならば、避けます。痛いのは嫌いなので‥それに年齢に関しては事実でしょう?不老不死の人間なんて居る訳がないんですから‥‥大体、生徒に暴力とか、教師としてその辺どうなんですか?」

 

「くっ‥‥そ、それより君は友達はいるのか?」

 

「ええ、いますよ、それなりに」

 

後輩のいろはは勿論の事、同級生の材木座‥‥はどうなるんだろう?友人・・なのか?

それにあの二人以外にもDATSには親しい隊員が大勢居る。

 

「比企谷、嘘を吐くな。お前みたいに目の腐った奴に友達がいる訳がないだろう。そんな嘘をつかなくても私は怒らんぞ」

 

平塚先生は同情する様な目つきで八幡の事を見てくる。

 

(うざっ、なんなのこの教師‥見た目だけで何でもかんでも判断しやがって‥‥)

 

「確か君は部活とかやってなかったよな?」

 

「ええ、DATSに所属しているので」

 

「友人はDATS関係か?」

 

「まぁ、そうでうすね。あっ、でもこの学校にDATSの後輩と同級生がいますけど‥‥」

 

「‥‥彼女は居るのか?」

 

「いいえ」

 

「そうだよな!!君に彼女なんてな!!アハハハハ!!」

 

平塚先生は八幡に彼女は居ないと知って満面の笑みを浮かべて嬉しそうだ。

 

「先生は彼氏が‥‥あっ、失礼しました」

 

八幡は逆に平塚先生に彼氏が居るのかと訊ねたが、平塚先生の言動から彼女に彼氏なんてモノが存在するわけがないと判断し、今度は八幡が平塚先生に同情する様な目で彼女を見る。

 

「だまれ、小僧」

 

「‥‥」

 

「ともかく、レポートは再提出だ」

 

「はぁ~‥‥」

 

(また書くのかよ、めんどくえぇ~)

 

「それと、君は私を傷付けた。そこで奉仕活動を言い渡す。異論、反論などは一切受け付けない」

 

「いやいや、いくら教師とは言えそんな勝手が許されるんですか?」

 

「いいのか?三年で卒業できなくても‥‥」

 

平塚先生は八幡を強制的に留年させると脅してくるが、

 

「お好きにどうぞ‥ただしその場合、俺も教育委員会と校長先生にその旨を報告させてもらいます。先生も教壇に今後も立てると思わないでくださいね。それに学年主席をどんな理由で留年させるんですか?その留年理由を聞かせてください。まさか、『私に彼氏がいないと言って傷つけたから』なんて馬鹿げた理由じゃないですよね?」

 

「うっ‥‥と、とにかく、ついてきたまえ!!」

 

「やれやれ」

 

これ以上の押し問答をしても時間の無駄だと思った八幡は大人しくついて行く。

だがこの時、八幡は奉仕活動と言っても罰掃除でもさせられる程度のものだと思っていた。

 

(あっ、今日もシフトが入っていたんだ‥‥一色と材木座にはちょっと遅れると知らせておくか‥‥)

 

「‥‥あっ、材木座か?比企谷だ」

 

「おお、我が盟友どうした?」

 

「なんか、平塚先生に訳の分からないまま、罰当番をさせられた。だから、ちょっと遅れる」

 

「そうか、あい分かった」

 

材木座に連絡を入れて次にいろはに連絡を入れようとしたら、八幡の先を歩いていた平塚先生が八幡の事を睨んでいた。

途中で立ち止まり、電話をしていた八幡に対して苛立ちを覚えたのだろう。

 

(一色に連絡を入れるのは後にするか‥‥)

 

いろはに連絡を入れられず、八幡は黙ってついて行くと、連れてこられたのは特別棟にある一つの空き教室だった。

 

(この教室の掃除か片づけでもするのか?)

 

八幡がこの教室の清掃をするのかと思っていると、平塚先生はそのまま無造作に扉を開けた。

 

「邪魔するぞ、雪ノ下」

 

無人かと思われた教室には椅子に座って本を読んでいる一人の女子生徒とその少女の膝の上で眠っているデジモンが居た。

その光景はなかなか絵になる。

平塚先生が入ってきた事で教室に居た女子生徒は本から視線を出入口にいる平塚先生へと移し、

 

「先生、入る時はノックをお願いしているはずです。何度言えばわかるのですか?」

 

その女子生徒は平塚先生の姿を見ると少しだけ不満気な表情をした。

 

(それは同感だな、ますますこの人が教師なのかと疑問に思うぜ)

 

「ノックをしても君は返事をしないじゃないか」

 

社会人ならば、人が居る部屋に入る前にノックをするのは常識だろう。

それにもかかわらずまるで悪びれる様子のない平塚先生の態度に八幡はますます平塚先生への不信感を高める。

 

「返事をする前に先生が入ってくるんですよ‥‥それで、そこに居るぬぼーっとした人は誰なんですか?」

 

「ん、ああ。いつまでそこにいる?入ってきたまえ」

 

平塚先生から促され教室へと入る八幡。

 

「今日から、ここの新入部員だ。ほれ、自己紹介をしろ」

 

「2年F組、比企谷八幡です。――って新入部員って何ですか!? お断りです!!俺は部活には入りませんよ。放課後は忙しいんですから、その訳は先生も知っている筈でしょう!?」

 

この学校の教師ならば八幡がDATSの隊員である事を知っている筈だ。

それにもかかわらず、平塚先生は八幡を強制的に部活へと入れるつもりだ。

 

「君には舐めた作文を書いた罰としてここでの部活動を命じる。それに君は腐った目だけでなく、その曲がった根性と友達が居ない孤独体質も直さないと、社会に出て苦労するぞ。なお、異論反論抗議口答えは一切受け付けない」

 

「大きなお世話です。人の性格を言う前にまずは先生の性格を直したらどうなんですか?それだから彼氏も結婚も出来ないんじゃないんですか?」

 

「衝撃のファーストブリット―――――!!!!」

 

八幡の返しに等々キレたのか、平塚先生は固めた拳を八幡に向けて放ってきた。

しかも此処は職員室と異なり、他の教師の目がないから思いっきりやってきた。

だが、八幡も伊達にDATS隊員ではない。

彼はひらりと身を翻して攻撃を躱す。

 

(成長期のデジモンの攻撃の比じゃないな)

 

八幡が自分の攻撃を躱したことが意外だったのか驚いた顔をする平塚先生。

 

「さっきも言いましたが、教師が生徒に対して平然と暴力を振るとは‥‥しかも高校生の小僧に言葉で勝てなくて振るうなんて‥‥ホント、教師の風上にも置けない最低の教師ですね、貴女は‥社会人ならばちゃんとリスクは考えた方がいいですよ。もし今の攻撃が当たって、俺が校長に訴えれば、先生は懲戒免職になっていたかもしれませんよ。そういう意味では俺は先生の救世主な訳ですね。まぁ、俺としては態と当たって先生を免職に追い込んでおいた方が良かったかもしれないと思っていますけど‥‥」

 

「ぐぬぬぬ‥‥」

 

八幡に言葉で勝てず、再び拳を叩き込みたい衝動に駆られる平塚先生であるが、此処でもし、再び拳を振い、八幡に当たり、彼の言う通り、八幡が校長に泣きついたら自分は処分されるかもしれないと思うと下手に八幡に拳を叩きつける事が出来なかった。

 

「平塚先生、ここで暴力事件を起こさないでください。部活停止になったらどうするつもりですか?それに先生が大声を出したせいでこの子が起きてしまったじゃありませんか」

 

女子生徒の膝の上には先程まで眠っていたデジモンが起きていた。

そのデジモンは白い猫のような姿をしているデジモンだった。

 

 

テイルモン 成熟期 聖獣型デジモン ワクチン種

体は小さいが貴重な神聖系のデジモンであり、見た目にそぐわない実力を持っている。

神聖系の証であるホーリーリングを尻尾につけているが、このホーリーリングが外れてしまうと、パワーダウンしてしまい本来の力を発揮できなくなる。

両手にはサーベルレオモンのデータをコピーした長い爪をつけている。

必殺技は長い爪を使って相手を攻撃する『ネコパンチ』と鋭い眼光で敵を操る『キャッツ・アイ』。

なお、猫の様に見えるが実際は猫に擬態したハツカネズミ型のデジモンである。

 

 

折角気持ちよさそうに眠っていたテイルモンが起きてしまった事に女子生徒は不満そうな顔をする。

 

「それで、彼の性格と孤独体質を社会に出ても大丈夫なようにすればいいわけですか?」

 

「ああ、そうだ。頼めるか?」

 

「お断りします。彼からは、何か卑猥なものを感じます。私の貞操が危険になります」

 

「はっ、誰がお前のような平面胸に欲情するか‥‥自分の胸を見てからモノを言えよ。俺よりもお前の方が問題があるように見えるが?」

 

八幡の返しに女子生徒は睨みつけてくる。

彼女自身、恐らく胸にコンプレックスを抱いているのだろう。

 

「何を言うかと思ったら、私ほど完璧な人間はいないわ」

 

「うわぁ、自分で自分を完璧とか言う?俺の知り合いに中二の奴がいるけど、それ以上にドン引きだぞ」

 

「貴方こそ何を言っているのかしら?貴方の性格の方が問題よ。まぁ、そのひん曲がって歪んだ貴方の性格をこれから直していくのよ。私に感謝しなさい」

 

「じゃあ頼んだぞ、雪ノ下」

 

平塚先生はそう言い残して教室から出て行った。

この教室に居り、平塚先生から雪ノ下と呼ばれた女子生徒の名前は、雪ノ下雪乃。

総武高校、国際教養科、2年J組の所属する女子生徒で容姿は黒髪に大人びた美少女であり、学校では誰もが知るほどの存在であるが、胸は同世代の他の女子に比べるとやや劣っている。

 

「いつまでも突っ立ってないで座ったら?」

 

「‥‥」

 

八幡は正直に言ってこんな所からさっさと帰りたい気分であるが、教室の外から平塚先生の気配がするので、あの気配がするまでは大人しくして居ようと思い、教室の後ろに積まれていた椅子を一つ降ろしてその椅子に座る。

 

「そういやここは何部なんだ?」

 

「平塚先生から聞いてないの?」

 

「ああ、ついて来いって言われただけだからな」

 

「そう。ならゲームをしましょう。ここがなんの部活か当ててみなさい?」

 

「いや、そう言うのはいいから、さっさと答えろ。答えるのが嫌なら別に答えなくても良い。後で平塚先生にでも聞くから」

 

八幡は正直此処が何部なんて興味は高くはないし、雪ノ下のクイズに付き合うつもりもなかった。

此処が何部だなんて後日退部届と共に平塚先生に訊ねればおのずと判明する。

バッサリと切り捨てただけで、雪ノ下はまるで親の仇でも睨むような鋭い視線を向けてきた。

ついでに自分の主である雪ノ下がバカにされたのかと思いテイルモンも八幡を睨んでいる。

 

(テイマー、パートナーデジモンそろってそっくりだな。まぁ、そう言う所を見る限り、コイツ等の関係は深いんだろうな)

 

雪ノ下とテイルモンの関係は決して八幡が作文で書いたデジモンを自分の為のステータスとしての道具として扱う様なテイマーではないと思い、その部分に関しては、八幡は雪ノ下を少しだけ見直した。

 

「ここは持たざるものに自立を促す部活。ホームレスには炊き出しを、途上国にはODAを、モテない男子には女子との会話を‥ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ」

 

雪ノ下は此処が何部なのかを語り、歓迎すると言うが、その態度と口調からは決して自分を歓迎している様には見えない。

多分、社交辞令みたいなものだろう。

この分では平塚先生が雪ノ下に頼んだ八幡への更生とらやも行われるのかも怪しいし、そもそも八幡は雪ノ下に更生をしてもらうつもりなど毛頭ない。

 

「何言ってんだか、俺の事を何も知らないくせにそんな上から目線で俺に問題があるかのように言いやがる、やっぱりお前の方が人間性に問題が有るんじゃないか?とにかく、俺はこんな部活に入る気はありません。わかりましたか?平塚先生」

 

教室の外に居る平塚先生の気配がいつまでも去りそうにないので八幡はさっさとこの場から去る為、声をかける。

 

「まさか気づいていたとはな‥‥雪ノ下、どうやら比企谷の更正に手間取っているようだな」

 

八幡に声をかけられて平塚先生は再び教室へと入って来る。

しかも先程の八幡と雪ノ下のやりとりを盗み聞きしていたにも関わらず、問題があるのは八幡の方だと決めつけている。

 

「本人が問題を自覚していないせいです」

 

「いい加減にしろよ。大体、なんだ?変わるだの変われだの、赤の他人に俺の自分のことを勝手に語られたくないんだっつの!」

 

「貴方のそれは逃げでしょ?」

 

「はぁ?逃げて何が悪いんだよ?みんながみんな真正面から向き合えるほど強かねぇんだよ。それに兵法でも三十六計逃げるに如かずって戦法があるだろうがぁ。変わるつぅのも現状からの逃げだ。どうして過去や今の自分を肯定してやれないんだよ」

 

「それじゃあ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない!」

 

「俺がいつ、お前に悩んでいるって言った?いつ、助けてくれと頼んだ。仮に俺が何かについて悩んでいてもお前みたいに初対面で上から目線で罵倒して来るような非常識な奴には死んでも頼まねぇよ」

 

(コイツに頼むくらいならまだ材木座や一色に頼んだ方が百万倍マシだ)

 

「其処までだ、二人とも落ち着け」

 

此処で平塚先生の制止が入る。

 

「いいぞ、いいぞ。 私の好みの展開になって来たぞ」

 

しかも心なしか平塚先生が興奮している。

 

「それではこうしよう。これから君達は自らの主義主張を賭けて戦ってもらう。そして私はこれから君達へ悩める生徒を連れて来るので、彼ら彼女らを自分のやり方で救ってみたまえ。そして自らの手で自分の正義を示したまえ!!レディー、ファイt「prrr・・・」

 

「あ、すみません電話が来たので少し失礼します」

 

平塚先生が何かを言おうとしていた時、タイミングよく八幡の携帯が鳴る。

携帯が鳴ったので、八幡は廊下へと出る。

 

「もしもし」

 

「せんぱーい!!もう、どこで油を売っているんですか!?今日もシフトが入っているので、一緒に行こうかと私、昇降口でずっと待っているんですよ!!」

 

電話口からはいろはのキーンとする甲高い声が響く。

 

(あっ、やべぇ、一色に電話するのを忘れていた)

 

八幡は材木座には連絡を入れたが、いろはに電話を入れるのをすっかり忘れていた。

 

「あっ、すまん。平塚先生に絡まれて変な部活に入れられそうになっているんだ」

 

「変な部活?」

 

「ああ、詳しいことは本部についたら話す。さっさと切り上げるからもう少し待ってくれ」

 

「分かりました」

 

いろはとの電話を切り、改めて自分はこの訳のわからない部活には入部しない意思を伝えて帰ろうとして、教室を覗くと、

 

「‥‥何やっているんです?」

 

「グスッ、最後まで言わせてくれ!」

 

平塚先生が号泣していた。

 

「先生、みっともないです」

 

「いい年をした大人が何やっているんですか?」

 

「と、兎に角!自らの正義を証明するのは己の行動だけだ!勝負しろといったら勝負しろ。君達に拒否権はない!」

 

(この独神、アラサーの癖に精神年齢ガキ過ぎ。大方教師になったのも少年漫画の読み過ぎかスポコンのドラマの影響だろうな)

 

「勝った方が負けた方になんでも命令できる、という条件をつけるのはどうだ?」

 

(アホくさっ)

 

「お断りします。この男が相手だと貞操の危険を感じます」

 

「ほぉ~さすがの雪ノ下でも恐れるものがあるのか?比企谷に勝てないと思っているのかね?」

 

(安い挑発だな。こんな安くて見え見えの挑発に乗るバカはいないだろう。っていうか実際に俺は学業に関しては雪ノ下に勝っているがな‥‥)

 

「っ!?いいでしょう。その安い挑発に乗るのは癪ですが、受けて立ちましょう。」

 

(うわぁ、マジかよ。乗りやがったよ。こんな安い挑発に‥‥チョロすぎ。将来、詐欺に引っかかるタイプだな)

 

「それでは勝負の開始と行こうか。勝負の裁定は私が独断と偏見で下す。あまり意識せず、適当に、適切に、そして楽しく頑張りたまえよ、諸君」

 

そう言って平塚先生は出て行った。

 

(査定があの独神の独断と偏見って全然公平じゃねぇ‥‥やっぱこんなところさっさと辞めよう)

 

八幡は改めてこの奉仕部という訳の分からない部活、そして雪ノ下と関わるのは止めた方がいいと認識をした。

 


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