やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか? 作:ステルス兄貴
DATSのバイトにてサマーキャンプを行う小学生のサポートで群馬県の千葉村へとやって来た八幡たち。
しかし千葉村でのキャンプ初日にまさか、学校以外では会いたくもない雪ノ下達に出会ってしまうとは運が悪いのか、それとも神はそんなに八幡の事が嫌いなのか?
兎も角、荷物を置くために本館へと向かっていた八幡は自分の不運を呪っていた。
雪ノ下は相変わらず不機嫌そうな顔をしている。
こんなんで小学生たちの前に出て大丈夫か?
アイツの不機嫌オーラに当てられて泣きださないか?
そんな事を考えていると、
「ヒッキー達ってバイトでここに来ているんだよね?」
由比ヶ浜が確認するかのように八幡に声をかける。
「その仇名はやめろって言っただろう」
「えっ?だって、比企谷でしょう?だからヒッキーなんだよ?」
「それだと小町も『ヒッキー』になるけど?」
「はぁ?何言ってんの?ヒッキー。小町ちゃんは小町ちゃんだよ?」
「‥‥ああ、すまなかった。バカなお前に言ったところで理解できないよな?」
「ちょっと!ヒッキー失礼だし!キモい!!」
「やめろと言っているのにやめないお前の方が失礼だ。このビッチが!!」
「なっ!?わ、私はまだ処女‥‥わっー!わっー!!今のはナシ!!」
由比ヶ浜は自分がまだ処女である事を隠すかのように一人で騒ぎだす。
「別に恥ずかしがることはないんじゃない?その年で処女なのは珍しい事じゃない筈よ」
雪ノ下が由比ヶ浜を慰めるが、年頃の女子が『処女』という単語を惜しげもなく連発しているのはどうかと思う。
「そ、それよりもバイトっていくら位出るの?」
「さあな、俺は金目当てでこのバイトに来たわけじゃないからな」
八幡はバイト代目当てでこのサマーキャンプに来たのではなく、何か別の目的があってこのサマーキャンプのバイトに参加した。
「じゃあ、何のために来たの?」
「お前には関係ない事だ」
「なにそれ!?ヒッキーマジ、キモイ!!」
「なんで、俺がそれほど親しくもないお前に俺の事を何でもかんでも話さなきゃならなんだよ。そんな簡単な事も分からないのか?前々から思っていたんだが、よく、お前総武高校に入れたな。裏口入学でもしたんじゃねぇか?」
八幡はこれまでの由比ヶ浜の言動から彼女が進学校とされる総武高校に入学出来たのは裏口入学で入って来たのではないかと勘繰る。
「屑谷君、いくらなんでもそれはあんまりよ。貴方の方こそ、裏口入学で入ったんじゃないの?」
「俺は二年連続の学年主席だし、入学試験でも合格通には俺が主席だと言う知らせが来ていたんだよ」
「嘘ね。入学式で新入生挨拶をしたのはこの私だったのよ。代々、総武高校の新入生挨拶は入学試験の主席が務めるのよ。貴方、そんな事も知らないの?」
「俺は入学式の朝、交通事故で式には参加していないんだよ。何処かのラブラモンを助けてな」
「‥‥」
入学式での事故の事を言われ、由比ヶ浜は気まずそうな顔をする。
八幡は今更、由比ヶ浜との間に『ホンモノ』と呼べる関係が築けるとは思わない。
ラブラモンの件についてもそうだが、学校生活においてもほんの些細事で雪ノ下同様、一々罵倒して来るし、更には自分の私生活やプライベートに関しても赤の他人なのにグイグイと首を突っ込んで来る。
いや、今思えば奉仕部の連中とは最初からそんな関係は築けないだろうし、切っ掛けさえなかった。
奉仕部であったのは罵倒と拒絶だけだった。
そんなことを考えていると今回のサマーキャンプに参加している小学生達が見えてきた。
雪ノ下は最低限の社交辞令は出来るのか、不機嫌オーラを引っ込めたが、笑みは浮かべず無表情だった。
小学生が集まっているグランドに来てみると引率の先生方が小学生を並ばせていた。
しかし、こうしたイベントに興奮しているのか、小学生たちは隣や周辺の親しい者たち同士でおしゃべりをしていた。
小学六年生の彼らはテイマーになりたてなのか幼年期~幼年期Ⅱのデジモンが近くに居る。
きっとそのデジモンが彼らのパートナーデジモンなのだろう。
引率の教師がメガホンで一喝すると段々と静かになる。
「はい!みんなが静かになるまで三分掛かりました。次はもっと早く静かになるようにしましょう!」
(うわぁ、懐かしいな)
引率教師の台詞を聞いて八幡は懐かしさを感じる。
小学生時代や幼稚園時代で教師や保育士が集会や避難訓練などで集まった際のお決まりの台詞だ。
時計で生徒が静まるまで時間を図っているのだから、何とも律儀だ。
ただ、この台詞を生徒たちに言ったからといってこの次も今回の時間よりも早くに静かになる保証はない。
「それではこれから三日間、みなさんのお手伝いをしてくれるボランティアのお兄さんとお姉さんに挨拶をしてもらいます。では、お願します」
引率教師が総武高生の葉山たちと八幡たちDATSの紹介をする。
「総武高校の葉山隼人です。三日間と言う短い時間ですが、よろしくお願いします」
葉山が笑みを浮かべながら自己紹介をすると、小学生の女子からは黄色い悲鳴があがる。
しかし、男子の方はあまり面白くない顔をする。
やはり、年齢にかまわずにイケメンは人類の敵なのだろう。
葉山から始まり、総武高校生が小学生に自己紹介をしていく。
そして、雪ノ下と由比ヶ浜の時は葉山の時とは逆で男子が嬉しそうな顔をしていた。
こちらも年齢に関わらず、小学生とは言え男と言う事だ。
そしてテイマーになりたての彼らの興味の対象はやはり、年上のテイマーとそのパートナーデジモンだった。
雪ノ下のテイルモンはその見かけによらず、小さいながらも成熟期のデジモンであり、その世代を常に維持しているので、小学生の新米テイマーからは「すげぇ」 「かわいい」と言っている。
それを聞いて雪ノ下は内心で優越感に浸っていた。
一方、葉山のパートナーデジモンは夏休みとなったこの時期も未だに成長期には進化出来ておらず、チビモンを見て小学生から‥とくに男子からは「あの高校生の兄ちゃんのデジモン、俺たちと同じ、幼年期のデジモンだぜ」 「育てるの下手なんじゃねぇ」 と言われている。
それを聞いて葉山は人知れず顔を歪める。
(くそっ、小学生のガキの癖に‥‥これも全部、ヒキタニと進化出来ないあのクズデジモンのせいだ‥‥)
と、内心で自身の進化出来なくなったパートナーデジモン、そしてその原因となった八幡に怒りを覚えていた。
八幡がノワールと自己紹介をした時、小学生からはその腐り目の為か、ちょっと引かれた。
でもノワールに関しては黒いアグモンと言う事で、「かっこいい」という台詞が飛び交い、八幡はちょっと傷ついた。
タイガとニコの時は、葉山の時と同じように女子からは黄色い声がして、アキホの時は、男子からテンション高い声がした。
「はい!ありがとうございました。ではこれより、オリエンテーリングを行います。各自、決められた班に分かれてください!!」
事前に班を決めおいた様で小学生たちはいくつかのグループへと分かれる。
この真夏の暑さの中なのに小学生たちは実に元気である。
オリエンテーリングは指定されたポイントを順に巡っていき、其処にあるクイズを解いて、キーワードを割り出した後、ゴールを目指すものだ。
小学生たちは我先にとポイント地点、そしてゴールを目指して歩きだした。
すると、葉山グループがうるさく騒ぎ始める。
八幡としてはもうお決まりのパターンなので、慣れた。
「いや~小学生ってマジで若いわー。俺らってもうおじさんじゃね?」
(それ、平塚先生の前じゃ絶対に言うなよ、戸部)
高校生でおじさんならば、アラサーの平塚先生はおばあちゃんになってしまう。
「ちょっと戸部ッチ、そう言うのやめてよね。それじゃあ、あたしやゆきのんがおばさんみたいじゃん!」
由比ヶ浜が戸部の発言に対して噛みつく。
(いや、雪ノ下の場合はもう人間をやめてくれ‥‥)
デジモンみたいに死ねばデジタマになってやり直せるが、人生は死ねばやり直せないが八幡は、雪ノ下はおばさんどころかもう人生をやめて欲しいとさえ思った。
「それで俺達は何をすればいいんですか?」
八幡がタイガにこのオリエンテーリングで何をするのかを訊ねる。
「えっと、八幡といろはちゃんは小学生たちと一緒にコースを回ってもらってコースから外れる子が居ないか、危険な場所や蛇などの危険生物が居ないかを見てくれ」
「了解」
「はい」
「俺とニコ、アキホはゴール地点での昼食の準備‥生徒達へのお弁当や飲み物の配膳だな」
「OK」
「ハラショー」
葉山たちは八幡と同じで小学生たちの引率だった。
そして、オリエンテーリングのコースを歩いているとアオダイショウが出てきた。
小学生の女子らは突然出てきたアオダイショウに悲鳴をあげるが、其処を葉山が颯爽と登場し、アオダイショウを遠ざける。
女子らはキラキラした目で葉山を見ていた。
反対に男子たちは面白くない顔をしていた。
コースを進んで行くにつれて、気になるグループがあった。
それは女子五人のグループなのだが、その内の一人だけが他の四人と距離を置いていた。
その子は見るからに彼女は孤立していた。
そして、孤立していた彼女は他の小学生たちがまだ自分のパートナーデジモンが幼年期~幼年期Ⅱなのに、その子だけは既に成長期となっていた。
彼女が連れていたのは首に金色の首輪みたいなものを着けた耳の垂れた白い子犬みたいなデジモンだった。
プロットモン 成長期 哺乳類型デジモン ワクチン種
垂れ耳が特徴的な神聖系デジモンの子供。
まだ幼いため、その神聖的な力を発揮することがでない。
そのため性質的には不安定で、善にも悪にもなりえてしまう。
必殺技の『パピーハウリング』は超高音の鳴き声で、敵を金縛りにしてしまう。
他の四人の小学生は葉山と一緒になってクイズを解いているようだった。
そして、葉山は孤立している子に気づき、その子に近づいて話しかけていた。
何を話しているのかは流石に此処からでは聞こえないがこれまでの葉山の言動や彼の性格からして大体は予想できる。
きっと、「皆と一緒に行こう」とか言っているのだろう。
幼稚園児ならばその対応であっているのかもしれないが、小学六年生にもなってその対応はどうだろうか?
しかも見ている限り、他の四人は意図的に彼女をハブっているし、彼女自身もあまり周囲との交流を求めている様には思えない。
まるでミニ雪ノ下みたいだ。
実際、彼女の容姿も黒く長い髪とパートナーデジモンにプロットモンを連れているという共通点がある。
テイルモンはプロットモンの進化先の一つでもある。
しかし、葉山はなんだ?
自分のグループ以外でも仲良くない奴等を見ると、ソイツらまで仲が良くないと気が済まないのか?
まさに葉山教の布教に見える。
(でもな、葉山。お前がやっている事は完全に悪手だぞ。孤立している子を無理矢理グループに戻しても何の解決にならない。しかもイケメンのお前がやると周りの子達はお前が消えた後、「あいつ、生意気」とか「高校生に優しくされて調子の乗っている」とか言うな、絶対に‥‥そこから更に事態は悪化するだろうし、お前は無理矢理グループの中に戻しただけで、解決したと自己完結をしてアフターケアーなんてしないだろうな)
(その後で、いじめが悪化しても同じ事を繰り返し、まさに負の連鎖が増すな‥‥その時お前はどうする?誰かに責任を押し付けて逃げるのか?‥‥多分そうだろうな)
(大体、本人が助けを求めているなら兎も角、求めてもいないのに手を貸すのは大きなお世話と言うものだ)
八幡は葉山の行動を冷ややかな目で見ていた。
「先輩、どうしたんですか?」
いろはが葉山の行動を見ていた八幡に声をかける。
「いや、なんでもない」
「でも、先輩さっき、葉山先輩の方を見ていましたよね?」
「‥よく見ているな」
「先輩の場合、色んな意味で目立ちますからね」
「あまり深く突っ込まない事にするよ」
「それで、どうしたんですか?」
いろはは、八幡に何故、葉山の事を見ていたのかを改めて聞いてくる。
「あ、ああ‥実は‥‥」
八幡はいろはに先程の小学生たちと葉山の行動を話した。
「雪ノ下先輩もそうですが、葉山先輩は違う意味でめんどい人ですよね」
「あれ?お前、葉山の事好きじゃないのか?」
「うーん‥まぁ、葉山先輩は、顔はいいんですけど、人間性に関しては雪ノ下先輩と同じくちょっと苦手ですね」
いろはの言葉に八幡はちょっと意外性を感じた。
葉山程のイケメンならば、女子ならば誰でも好意を抱くと思ったのだが、雪ノ下同様、いろはも葉山に関しては好意を抱いてはいない様だった。
八幡は葉山のやり方には正直言って全く賛同できなかったが、ただ孤立している子に関してはちょっと気になった。
木立の間を抜けていくと、開けた場所に出た。
山の中腹に位置するその地点がゴールであるらしい。
其処では先に車で登って来たタイガたちが昼食の弁当の用意をしていた。
タイガのデジマルやニコのガオモン、アキホのピヨモンも手伝っていた。
「デザートに梨が冷やしてあるから、昼食後に皮をむいて小学生たちに出してあげてくれ」
『はーい』
昼食後、サポートメンバーのみんなはデザートの梨を包丁で皮むきをする事になったのだが、
「な、なんで!?ママがやっているのをあんな見ていたのに!!」
由比ヶ浜が上手く梨の皮をむけなくて騒いでいる。
(いや、見ているだけじゃダメだろう)
八幡以外にも梨の皮をむいているメンバー全員が多分同じ事を思っているだろう。
雪ノ下もため息を吐き由比ヶ浜に見せるように梨をむき始めた。
彼は知らない事だが、由比ヶ浜は超がつく程、料理が下手であり、彼女の作ったクッキーはまさにダークマターであり、それを食べた雪ノ下は腹痛で学校を休む羽目となった。
由比ヶ浜の料理はもしかしたら、デジモンでさえ倒せるほどの威力があるのかもしれない。
「由比ヶ浜さん、包丁は固定して梨を回転させるのよ」
「こ、こう?」
「違うわよ。切り口は梨に対して水平に。刃を入れる角度が深いと身が削れてしまうわ。‥‥遅い!素早くやらないと手の熱が移って温くなるでしょう!?」
「ゆきのん、包丁持つと怖いよ!」
「結衣はお皿と爪楊枝を用意したらどうかな?」
「そうね。その方が効率的だわ」
葉山が由比ヶ浜に皿と爪楊枝の用意を提案すると雪ノ下も葉山の提案に賛同する。
「むぅ~」
由比ヶ浜は納得いかなそうだが小学生たちが待っているので、渋々と包丁を置く。
「げっ、ヒッキー無駄に包丁使いが上手い、キモイ!!」
皿を用意していた由比ヶ浜が梨を剥いていた八幡に対してナチュラルに毒を吐く。
八幡は無視して黙々と梨を剥いている。
仕事柄、八幡はデジタルワールドにてキャンプする事があるので、サバイバル知識の他にアウトドア料理の知識もタイガたちから教わっていた。
その為、包丁での皮むきぐらいは簡単に出来る。
「ちょっと、ヒッキー!! 無視する事ないじゃん!!」
八幡に何のリアクションもして貰えなかった事で由比ヶ浜が声を荒げる。
「由比ヶ浜先輩、梨の皮もむけないのであれば黙ってお皿を用意してくださいよ。それぐらいしか役に立たないんですから」
いろはも当然、八幡同様アウトドア知識はあるので、彼女も普通に梨の皮を包丁でむいている。
そして八幡にナチュラルに毒を吐いたのを返すかのように由比ヶ浜に毒を吐く。
雪ノ下もこれには反論はなかったのか何も言わなかった。
その後、飢えた小学生とデジモンたちは梨をお腹いっぱい食べていた。
ルミルミって小学生の頃の虐めや長い黒髪と意外にも雪ノ下との共通点があるんですよね。
高校生になって胸も雪ノ下と同じなのかは不明ですが、アニメを見る限り容姿もやや似ていたので、彼女のパートナーデジモンはプロットモンとなりました。