やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか?   作:ステルス兄貴

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25話

夕食が終わってもチビモンは葉山の下に戻っては来なかった。

しかし、当の葉山本人はチビモンがまだ戻ってこないにも関わらず、心配するそぶりは見せず、周囲には

 

「きっと初めてくるところだから物珍しくどこか散歩に出ているんだろう。たまにはのびのびと森林浴をさせるのもデジモンの育成には必要な事なんじゃないかな?」

 

とチビモンの為みたいなことを言っていたが、内心では

 

(くそっあのクズめ、何処をほっつき歩いているんだ?)

 

と舌打ちをしていた。

夕食が終わり、片付け、入浴が終わると、小学生の引率教師たち、八幡たちDATSのバイト組、葉山たち総武高校のボランティア組は本館で明日の予定確認を行い、解散となる。

なお、雪ノ下のプロットモンは夕食を食べ、風呂に入った後、テイルモンに戻る事が出来た。

本館を出た引率の教師らは小学生たちが寝泊まりしているバンガローへと見回りに行く。

小学生は就寝時間で、昼間はオリエンテーションなどいろんなことをして疲れて眠っているかと思いきや、パワフルな十代であり、こうしたイベントの最中は興奮してなかなか眠れず大人しく寝るとは考えにくい。

お菓子を食べたり、枕投げをしたり、怪談話をしたりして、夜を過ごしていそうだ。

羨ましい反面、彼らの頭上に先生からの雷が落ちないかちょっと心配である。

タイガ、ニコ、アキホ、小町、いろはの五人はみんなでボードゲームかトランプでもやると言ってバンガローへと戻って行く。

八幡も行こうとしたら、葉山から一緒に来てくれと言われ、面倒なので帰ろうとしたら、肩を掴まれた。

その時の葉山の目は「殴ってでも連れて行くぞ」と語っていたので、八幡は仕方なく着いて行った。

本館の食堂では平塚先生、雪ノ下と由比ヶ浜の奉仕部メンバーと大岡、大和の葉山グループのメンバーが居た。

雪ノ下は八幡の姿を見て当然睨んできたが、あの約束がある為か、恒例の雪ノ下節が出る事が無かったが、この場に平塚先生が居なければ絶対に罵倒暴言の雪ノ下節が炸裂していたに違いない。

 

「それで、葉山。話と言うのはなんだ?」

 

みんなが揃ったところで、平塚先生は葉山に問う。

どうやら、今回みんなが集まったのは葉山がみんなを呼んだみたいだ。

 

「ちょっと、孤立している子がいたんです」

 

「ああ、あの子ね。ちょっと心配だし、可哀想だよね」

 

由比ヶ浜も留美の事は知っていたみたいだ。

 

「ああ、それでなんとか出来ないかと思ってみんなの意見を聞きたいんだ」

 

「やっぱ隼人君、やさしいっしょ!!」

 

「それな」

 

「だな」

 

葉山は何とか留美の現状を変えたいと思っている様だが、

 

「葉山、それはちょっと違うぞ。お前は物事の本質を理解していない。問題にするべきは、悪意によって孤立させられていると言う事だ」

 

葉山は恐らく留美が自らみんなの輪の中に入りたがっていないと思い込んでいたみたいだ。

 

「えっと、それって何が違うんだい?」

 

「つまり、一人でいる人間とそうではない人間がいると言う事だ。解決するべきは彼女の孤独ではなく、その周りの環境ってことだ」

 

「それで君達はどうしたいんだ?」

 

平塚先生に問われて、全員が黙ってしまった。

沈黙の理由‥‥それは、初めから何もする気は無いからだ。

こうしていじめについての話し合いをして、「あの子、可哀想だよね」 「何とかしたいよねぇ~」 などの世間話程度の話し合いをして、解決策がないにも関わらず「自分はこのようなことをしました」とアピールして「俺達偉くねぇ~」 と言う自己満足と優越感に浸りたいからだ。

 

実際に葉山は留美の問題の根本を間違って認識していたぐらいだ。

八幡が葉山の問題を指摘しただけで黙っているのは、どうする事もできないからだ。

何かを変える為の覚悟も力も持っていない。

ましてや相手は年が違う小学生。

このサマーキャンプが終わった後もずっと留美と一緒に居る事なんて出来ない。

それを分かっているから、誰も何もしない。

まして常日頃から人の目を気にする葉山はただ自分が良い人だと見せつけたいが、万が一、責任問題が生じたら、その責任はとりたくない。

葉山の心情は八幡の指摘でリスクが伴うかもしれないと言う事実に直面し、責任はとりたくない。

でも、虐めを受けているかもしれない留美の事は心配して憐れみさせてほしい。

とでも思っているのだろう。

自分たちに取ってその感情は美しく見えるのかもしれないが、八幡にとってそれは胸糞が悪くなるような光景だった。

陰口を叩くのも胸糞悪いが、本人が居ない中、同情されるのも陰口を叩くのと同じようにも見えてくる。

 

「別に俺は何もする気はないです」

 

みんなが沈黙している中、八幡は自分がしたい事を口にする。

 

「それは、どういう意味かしら?比企谷君」

 

雪ノ下が八幡を睨みながら訊ねてくる。

やはり、この場に平塚先生が居るから八幡の名前を態と変えて呼ぶことは無いが、八幡の意見は気に入らない様だ。

 

「虐めを受けているかもしれないのに見て見ぬふりをするのか?」

 

と彼女の目をそう語っている。

 

「どういう意味もない。そのままの意味だ。この場で話し合い、解決策を考えて、彼女を助けるために動くとしよう。それは素晴らしいと思うぞ。でもな、その後はどうするんだ?」

 

「それはどう言う事、ヒッキー」

 

由比ヶ浜が八幡に言葉の意味を訊ねてくる。

 

「俺たちが彼女を助けるために動いたところで、本当にその子を助ける事が出来ると思っているのかって事だ」

 

人目を常に気にする葉山は八幡が何を言っているのかは理解出来たみたいだが、雪ノ下と由比ヶ浜は気づいていない。

この二人はもう少し、人の心情や心理を理解する必要がある。

そんなで、世界を変える、人の相談に乗るなんて無謀だ。

そもそも奉仕部に在籍していた頃から雪ノ下の依頼に対する真剣さ、依頼人の依頼への向き合い方には問題があった。

コミュニケーション能力が皆無と言っていい雪ノ下に人様の相談事は無理なのだ。

 

「そもそもそんなのは無理だ。俺たちにそんな力はないし、責任問題が生じた時、その責任なんてとれない。もし、何らかの方法で彼女を孤独から救うことが出来たとして、それでみんなの輪の中に入って、楽しく過ごすことが出来ると思っているのか?俺たちが見ている時は仲良く演じていても俺たちが見ていない時に『高校生の人にチクったな』なんて言われて更に悪化するぞ。この中には虐めとは違うが、似たような事に心当たりがある奴がいるんじゃないか?」

 

八幡の言葉に葉山グループの戸部、大岡、大和は気まずそうに視線を逸らす。

あのチェーンメールや普段から葉山が居る時と不在の時の態度が違うのだから八幡の言葉は心にグサッと来た。

 

「仮に救うことが出来たとして、その後で別の誰かがみんなの輪から外されて、孤立させられるぞ、今度はソイツ為にまた何らかの方法を考えて実行するのか?そしたら、また別の誰かがハブられてっと、永遠にそれの繰り返しだ」

 

「で、でも‥‥それでも、見殺しにしていい理由にはならないだろう!!」

 

この問題のリスクや難しさを理解している筈の葉山はみんなの前でかっこつけたいのか、それとも虐められている子を見捨てるようなマネをしている八幡を悪人にしたいのか、いかにも熱血主人公らしい台詞を吐く。

 

「葉山、お前なら分かっているんじゃないか?この問題のリスクを‥‥」

 

「‥‥」

 

八幡は確信するかのように葉山に問う。

 

「さっきも言ったがな、俺たちが余計な事をした所為で彼女に対する虐めが更に酷くなったらどうする?今はハブられているだけで済んでいるが、俺たちが余計なことをした所為で現状が悪化して、不登校になるかもしれない。最悪の場合は自殺をするかもしれない。その時、お前はどう責任を取るつもりだ?自分達の力不足を理由に、彼女やその家族に『ごめんなさい』 『すみませんでした。許してください』の一言で済ますつもりか?無責任にも程があるだろう。だったら、初めから何もしない方がいいに決まっているんだよ」

 

八幡はあくまでも触らぬ神に祟りなしの姿勢を貫く。

 

「だから、何もしない、と?」

 

「ああ、そうだ」

 

「それでも‥‥いや、だからこそ、俺は彼女を助けたいんだ!!」

 

八幡が此処まで説明しても葉山は八幡に対する自棄なのか、それとも対抗意識なのか留美を助けたいと言う。

 

「そうかい。でも何かするんだったら、俺抜きでやってくれ。俺は彼女の人生に対する責任は取れないからな。そもそも彼女本人が『助けてくれ』とお前に頼んだのか?小さな親切大きなお世話、下手な親切なら余計な事をしない方が良いぞ」

 

八幡はそう言って本館から出て行った。

 

「比企谷の言う事も最もだな、いじめ問題に素人が首を突っ込むべきではないぞ」

 

平塚先生も八幡同様、今回の問題には首を突っ込むべきではないと忠告してその場を後にした。

八幡と平塚先生が消えた後も葉山たちは諦めずに留美を何とか助けたいと言う話を続けた。

 

「ヒキタニや平塚先生はああ言ったけど、俺はやっぱり諦めきれない。俺は、なんとか可能な範囲でなんとかしてあげたい」

 

「貴方では無理よ。昔、そうだったでしょう?」

 

しかし、雪ノ下はそう断言すると、葉山に冷たい視線を突き立てる。

 

「あの時はそうだったかもしれない‥‥でも、今は違う」

 

「どうかしらね」

 

二人の口調からやはり、雪ノ下と葉山は昔なにかあったのは明白だったが、その場にいる他の人は口を挟まなかった。

 

「この案件は私達、奉仕部が何とかするわ」

 

雪ノ下は葉山ではなく、自分たち奉仕部が彼女を助けると言う。

 

「で、でも、ヒキタニが言っていたじゃないか。彼女本人が『助けてくれ』と頼んでいる訳でないって‥‥」

 

此処に来て葉山は八幡、平塚先生と同じく放置した方が良いと意見を変える様な発言をする。

葉山は人目を気にするあまり、あっちへフラフラ。こっちへフラフラと優柔不断な考えなのかもしれない。

最も本人はほとんど無自覚である。

 

「そ、それは‥‥」

 

奉仕部で活動するのであれば、留美本人が雪ノ下に『助けて』と依頼をしなければならない。

彼女本人からの依頼がなければ動く事は出来ない。

 

葉山はこれで雪ノ下が変に動いて下手な責任問題が雪ノ下に被らないとホッとする。

しかし、

 

「ゆきのん。あの子さ、言いたくても言えないんじゃないかな?」

 

由比ヶ浜が雪ノ下に助言をする。

 

(アイツ、余計な事を!!)

 

葉山は由比ヶ浜の助言に内心、舌打ちをする。

由比ヶ浜はグループ内では「空気を読むことが唯一の取り柄」だと言っていたが、実際に周りの空気に流れているだけで空気を読んでいるわけでは無い。

さらに今回の様に火に油を注ぐような発言をするので、全然空気を読んではいない。

 

「どういうことかしら?由比ヶ浜さん」

 

「あの子、ハブられているんでしょう?話しかけたくっても、仲良くしたくてもそうできない環境ってあるんだよ」

 

「けど、今の状況下だとそもそも話しかけるハードルが高いかもしれない」

 

葉山は必死に由比ヶ浜を諦めさせる。

由比ヶ浜が諦めた雪ノ下もきっと諦めるだろう。

 

「彼女、意外と性格きつそうだから小学生の女子グループの中だけだと溶け込むのは難しいかもしれない。中学にいけば仲のいい友達は出来るさ、きっと」

 

その後も話し合いと言う無駄な時間が続いたが、結局何をすればいいのか、具体的な案もまとまらず、更には留美を助けるのか助けないのかを決める事もなく、夜は更けていった。

 

 

八幡がバンガローへといくと既にゲーム大会は終わり、社会人組の皆は酒盛りをしていた。

小町もいろはも自分のバンガローに戻り寝ている頃だろう。

酔っ払いに絡まれるのは御免なので、八幡は酒盛りが終わるまで外で時間を潰すことにした。

幸いノワールと言う話し相手も居る事だし、なんとかなるだろう。

 

時間つぶしの為、ノワールと共に適当にぶらついていると雪ノ下とテイルモンの姿を見つけた。

見つかると「変態」だのと言って雪ノ下節が炸裂しそうだし、下手をすれば強姦未遂犯に仕立て上げられそうなので八幡は雪ノ下に気づかれないようにその場から離れる。

そして、周りに誰もいない開けたところへ出ると八幡とノワールは空を見上げる。

今日の夜は雲一つない綺麗な空で星と月が輝いている。

 

「また来たぜ、相棒‥‥お前と俺と、あの時と同じ森で見る月だ」

 

八幡が月を見上げながらノワールに語りかける。

 

「ああ、あの夜も怖い夜だった‥‥小隊全員三十二人が全滅して生き残ったのはお前と俺だけだけだ、へへっ‥‥不死身のコンビ!!俺も八幡もかすり傷ひとつ負ってなかった」

 

(いや、あの時は三十二人も居なかっただろう)

 

八幡が心の中でノワールの言葉に対してツッコミをいれる。

 

八幡とノワールが月身をしていると、背後に気配を感じた。

 

「何かが俺たちを狙っている、人間ではない‥‥俺は恐い」

 

「よしてくれぇ、恐れを知らぬ戦士だろうが」

 

「‥‥なにやっているの?」

 

八幡とノワールが即興劇をしていると、背後からは呆れた声がする。

振り返ってみるとそこには留美とプロットモンが居た。

 

「「天体観測」」

 

八幡とノワールが声を揃えて此処で何をしているのかを留美とプロットモンに答える。

 

「望遠鏡も無いのに?」

 

「こうして星を見上げているだけでも十分に天体観測になるだろう」

 

「ふ~ん‥‥」

 

「それよりもお前‥‥」

 

「お前じゃない、留美」

 

「‥‥留美はどうして此処に?もう就寝時間はとっくに過ぎているぞ」

 

「周りがバカ騒ぎをしてうるさくて眠れないから出てきた」

 

「先生に見つからないか?」

 

「大丈夫、バレないように偽装はしてきたから」

 

「そうか‥‥」

 

そう言って留美は八幡の隣へとやって来る。

荷物が隠されないかと思うが、バンガローのロッカーは鍵があるので、荷物を隠されることは無い。

流石に留美を虐めている班のメンバーでもロッカーを壊してまで留美の荷物を隠したりはしない。

そんな事をすれば確実に疑われるからだ。

 

「そう言えば八幡‥‥」

 

「ん?なんだ?」

 

(って言うか、いきなり名前呼びかよ)

 

「昼間、黒いアグモンが模擬戦で完全体に進化したって周りが言っていたけど、それって八幡のデジモン?」

 

「そうだよ。って言うか、このキャンプで黒いアグモンなんて俺が以外にいないよ」

 

八幡の代わりにノワールが留美の質問に答える。

 

「相手は確かテイルモンだったって聞いたけど?」

 

「うん、テイルモンだったよ」

 

「テイルモンか‥‥」

 

「ん?どうした?テイルモンになにかあるのか?」

 

「私のパートナーデジモンはプロットモンでしょう?」

 

「ああ、そうだな」

 

「テイルモンって猫のような鼠だし、それに小さい‥‥例え成熟期でも小柄だから舐められやすい」

 

雪ノ下のテイルモンはまだ新米のテイマーにとっては凄いと思われていたが、いずれ留美の同級生たちのパートナーデジモンも成長期、成熟期へと進化していく。

その時、成長期の様に小さいデジモンだったら、虐められている留美のデジモンはみんなの嘲笑の対象になるかもしれない。

 

「どうせならもっと強そうなのがいい」

 

「まぁ、デジモンの進化は色々だからな。俺のノワールだって普通のアグモンとは違う進化系統だからな」

 

「どう違うの?」

 

「通常のアグモンはグレイモンかティラノモンに進化するが俺のデジモンは、成熟期はデビドラモン、完全体はギガドラモンだ」

 

「デビドラモン?ギガドラモン?」

 

留美は昼間の八幡と雪ノ下の模擬戦を見ていないので、ギガドラモンがどんなデジモンなのか分からなかった。

 

「流石にギガドラモンを見せる訳にはいかないが、成熟期のデビドラモンならいいぞ」

 

「ホント?」

 

「ああ‥‥そうだ、留美どうせなら夜景でも見に行くか?」

 

「えっ?」

 

「ちょうど、デジカメを持っている様だし、空からの夜景何てそう簡単に撮れるものじゃないぞ」

 

「行く行く!!」

 

不愛想で何もかもがつまらなそうにしていた留美がこの時ばかりは年相応な女の子の顔をしていた。

 

「ノワール、進化だ」

 

「おう!!」

 

アグモン進化―――――デビドラモン

 

「ひぃっ」

 

成熟期のデビドラモンに進化したノワールであるが、いくら月と星の光がある環境でも夜の暗闇に光るデビドラモンの赤い四つの目は不気味だった。

デビドラモンを見てちょっと怖がる留美。

 

「ほれ、いくぞ」

 

八幡は見慣れているので、平気な様子でデビドラモンの背中に乗ると留美に手を差し出す。

プロットモンは留美の頭の上に乗り、彼女は八幡の手をとる。

 

「よし、いいぞ」

 

八幡がポンポンとノワールの背中を叩くとノワールは夏の夜空にはばたく。

初めて空を飛んだ留美は怖がる様子はなく、興奮している。

そして空から見える夜景を幾枚も持っていたデジカメに収めていた。

夜景を楽しんだ留美は八幡のデビドラモンにバンガローの近くまで送ってもらい、こっそりとバンガローへと戻って行った。

八幡も今ならもう酒盛りも終わっているだろうと思い自分のバンガローへ戻って行った。

しかし、葉山のチビモンは朝になっても戻って来ることは無かった。

 




留美が夜景の写真を撮るのはゆるキャンでなでしこやリンが写真を撮るのと同じ感じです。
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