やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか? 作:ステルス兄貴
昨夜、葉山たち総武高校のボランティア組はクラスメイトたちから孤立している鶴見留美を何とかしようとなった。
しかし、虐め問題の解決なんてどう見ても高校のボランティアの活動外の内容だ。
そもそも人類どころか高校生同士で仲良く出来ないのに、小学生同士を仲良くできる訳無いだろうに。葉山はこの問題の本質をまったく理解してない。
話し会で解決できるのであれば、俺や雪ノ下の関係だって此処まではひどくはなっていない。
(葉山、話し合いでみんな仲良くできるのであれば、俺とお前らの関係を改善させてみろよ。そうしたら、お前の言う『話し合えば分かり合える』 『みんな仲良く』の精神を認めてやるよ)
八幡は酷いと思われながらも留美の人生における責任は負いきれないので、留美を助ける事に関してはノータッチの姿勢を貫いた。
一方、葉山の方は八幡からの再三にわたる指摘から、今回の留美を助けることへの問題でリスクを理解しつつも八幡に対する対抗意識か、昔雪ノ下を助ける事が出来なかった贖罪なのかややムキになっていた。
しかし、虐め問題はそう簡単なモノではなく、留美を助ける方法は思いつかず、葉山と雪ノ下の間で無駄な水掛け論が繰り広げられ時間だけが無駄に過ぎて行った。
葉山と雪ノ下が不毛な水掛け論をしている中、八幡は留美と共にデビドラモンで夜間飛行をして夜景撮影をした。
翌朝‥‥
「‥ま‥ん‥‥は‥ま‥ん‥‥おい、八幡‥起きろ!!」
「うっ‥‥うん?」
誰かに声をかけられて八幡の意識が段々と覚醒して来る。
そして、重い瞼を開けると其処には自分の顔を除き込んでいるタイガの顔が映った。
「ん?白石さん?」
「やっと起きたか?ほら、着替えて、朝練に行くぞ」
「は、はい」
タイガに言われ、八幡は飛び起きると急いで寝間着からジャージへと着替える。
バンガローの外ではニコとアキホ、いろはが八幡を待っていた。
タイガもそうだが、ニコもアキホも昨晩は酒盛りをして結構な量を飲んでいたにも関わらず三人は八幡よりも先に起きて、二日酔いの様子もない。
ニコは元々、ロシア人なので、酒に強い体質なのだが、タイガとアキホも酒についてはどうやらザルの様だった。
DATS組はこうして朝練として山道をダッシュで駆け上る。
こうした早朝鍛錬を終え、シャワーを浴びて汗を流し終えると、朝食の準備となる。
準備が終わり、朝食を食べている中、八幡は昨日の夜、本館で行ったミーティングの内容を思い返す。
(えっと、今日はまず最初に夜に行う、キャンプファイヤーと肝試しの準備だっけな‥‥キャンプファイヤーは薪を積み上げて、肝試しは俺たちバイト組と葉山たちボランティア組がお化け役だったな‥‥雪ノ下の場合はあの罵倒する様な目つきで黙って立っているだけでいいんじゃねぇかな?)
(お化けの衣装は本館の倉庫にあったからそれを出して、薪は炊事場の近くにある薪を積めばいい筈だ)
(それにしてもキャンプファイヤーに肝試しとは、随分と定番な事をするな‥‥)
(しかも肝試しで脅かす役か‥‥ソレ、俺がやっても大丈夫だろうか?)
昨日のカレーと言い、今夜やる予定のキャンプファイヤーと肝試しと随分と夏のキャンプならではの恒例行事をやるなと思うと同時に自分が肝試しでお化け役をやっても大丈夫かと脅かし役なのに不安になる八幡だった。
「お兄ちゃん!キャンプファイヤーの準備が終わったら、川で遊ぼうよ!」
小町がそう言ってきた。
八幡としても暑いから涼みたいと思っていたし、何より小町の水着が見られるのは、テンションが上がる。
「八幡、衣装とお前のノワールをデビドラモンに進化させたら、魔王か死神に見えるんじゃねぇ?」
ニコが肝試しの時の脅かし役のシチュエーションを考えて八幡に提案する。
確かに昨日の夜、デビドラモンを見た留美はマジでビビっていた。
確かによる突然、デビドラモンが空から降りてきても、森から出てきてもびっくりする。
更にその上に腐り目の自分が黒いローブでも着て乗っていたら確実にビビる。
下手をしたらトラウマを植え付けるか、失禁させてしまうかもしれない。
それはそれで、マズいので肝試しはスタートかゴール地点の係員になったほうが無難だと思う八幡だった。
朝食の席でノワールはそこに葉山のチビモンが居なかった事に気づいた。
チビモンが今のテイマー、葉山に対してかなりの不満を持っていたのは昨日のチビモンの様子で分かった。
ノワールは現状を変える為、チビモンにDATSへの保護を提案した。
チビモンにとって地獄である現象を打開すると言うのであれば、チビモンはDATSの誰かに保護を求めた筈だ。
しかし、八幡たちDATS組の様子を見る限り、チビモンがDATSの誰かに保護を求めた様子は見られない。
もし、チビモンが保護を求めたのであれば、葉山は今頃、取り調べを受けている筈だ。
しかし、葉山はああして、普段と変わりなく薄っぺらい笑みの仮面をつけて小学生の女子たちにちやほやされている。
ノワールが八幡に葉山のチビモンの事を言えば、八幡は信じてくれるかもしれないが、それ以上の事は出来ない。
保護に関してもチビモン自身が申告しなければ、そのテイマーについての事情聴取をする事は出来ない。
その肝心のチビモン自身が何処にいるのか分からないこの状況ではチビモンが出てきて八幡たちに保護を求めてこなければならなかった。
(チビモン、どうした?何処に行った?)
葉山以上にチビモンの事を心配するノワールだった。
朝食が終わりバイト組、ボランティア組は早速キャンプファイヤーと肝試しの準備をする。
男どもはキャンプファイヤーの準備で薪を用意する。
「よっ、と‥‥」
「ハラショー!!」
タイガとニコの二人が、八幡たちが持って来た薪を斧で手ごろな大きさに割る。
アキホ、小町、いろは、雪ノ下、由比ヶ浜の女子たちは本館の倉庫から肝試しに使うお化けの衣装や光源となる提灯の用意をしていた。
人手が多かった為かキャンプファイヤーと肝試しの準備は直ぐに終わり、水着に着替えて、川に向かって歩いていると小町が話しかけてきた。
「うわっ、お兄ちゃん、また筋肉がついた?」
「えっ?そうか?」
(俺としてはお前の水着姿を見れて感激だ!!此処に戸塚が居たら、俺、マジで昇天しちまうかも‥‥)
小町はフリルのついた黄色のビキニの水着を着ていた。
小町の他に戸塚が女物のビキニの水着を着て、「八幡!!」と抱き付いてきたら恐らく彼は鼻血をだして、嬉しそうな顔でその場に倒れた事だろう。
八幡の身体つきに関して、彼はデジタル世界とは言え、結構肉体労働をすることがあるので、八幡の身体はそれなりに鍛えられていた。
もし、この場に海老名やルナモンが居たら、八幡と葉山やデジモンとのカップリングを想像されていたことだろう。
八幡たちが川につくとまだ来ていないアキホといろはが来ていなかった。
彼らがアキホといろはの二人を待っていると、
「おまたせ~」
後ろの方から、アキホの声が聞こえてきたので振り返ってみると、水着姿のアキホといろはが居た。
アキホは白のビキニに薄桃色のパレオを巻いた姿はその辺にいる男を悩殺してしまいそうな大きなお山を二つ持っていた。
(前々から思っていたが、鈴堂先輩、やっぱりスタイルいいな)
八幡たち男たちがアキホの姿に見とれていると、
「せ~ん~ぱ~い~」
いろはが仄暗い水の底から出てくるような声で八幡に声をかけてくる。
「なっ、なんだ?一色」
(水があるところで縁起でもねぇ声を出すなよ)
「アキホ先輩ばっかり、見ていないで私も見て下さいよ」
いろは は、エメラルドグリーンのビキニの水着に白とオレンジ色のパレオを身に着けており、両手でスカートをたくし上げるようにパレオをたくし上げる。
「どうです?私だって出ている所は出ているでしょう?」
いろはも由比ヶ浜程ではないが、出ている所は出ている。
「あ、ああ‥‥そうだな‥‥似合っているぞ」
(雪ノ下、後輩の一色に負けているぞ‥‥)
いろはと雪ノ下の胸の大きさを比較して、雪ノ下は後輩であるいろはに負けていた。
待っていたメンバーが揃ったことで、みんなは川遊びをする。
水鉄砲で撃ち合ったり、川魚を探したりして八幡たちは大いに川遊びを楽しんだ。
川で遊んで一時間経った頃、八幡は一度川から上がって体を温めた。
夏とは言え、川の水に浸り過ぎて身体を冷えすぎると風邪をひいてしまう恐れがあるからだ。
休んでいると、不意に後ろから視線を感じた。
しかし八幡の後ろは森なので、人がいるとは思えなかった。
だが確かに人の視線を感じる。
そこで八幡が振り向いてみると、そこには一人の少女、鶴見留美がいた。
「どうした?留美。今は確か自由時間のはずだったはずだが?」
「どうして、分かったの?」
「ん?それは、俺が隠れていたはずのお前を見つけた事か?」
「そう‥‥」
「生憎と俺はボッチなもんでな。視線には敏感なんだよ」
「ボッチ?」
留美は八幡の言う『ボッチ』と言う単語にやや懐疑的な視線を送りながら首を傾げる。
八幡はボッチと言うが、この状況ではボッチの前に『元』がつく。
それに視線が敏感なのはデジタルワールドにて野生のデジモンが居るエリアで巡回やキャンプしたりしているからだ。
「それにしてもどうしたんだ?昨日より元気がないようだが?」
「朝ごはんから戻ったらみんなは部屋から居なかった」
朝食後、留美がバンガローに戻ったら班のメンバーは留美を置いて何処かへと言ってしまったようだ。
小学生なのにずいぶんとえげつない事をする。
放置するとは状況は思っている以上に深刻の様だ。
葉山は話し合いで解決できると思っているようだが、その根拠は一体どこから湧いてくるのか、一度じっくりと聞いてみたい。
「ねぇ、八幡はさぁ‥‥」
「ん?なんだ?」
八幡が葉山の事を思っていると、留美が声をかけてきた。
「八幡は小学校と中学校の時の友達っている?その人と連絡を取り合っている?」
留美は八幡に小、中学校の頃、親しい友達は居たのか?そして今でも連絡を取り合ったりしているのかを訊ねてきた。
「小学校に中学校ねぇ‥‥まぁ、そもそもその時には親しい奴なんかいなかったからな、連絡を取り合う奴すらいねぇ」
「‥‥」
言っていて、なんだか虚しくなるようなセリフだ。
それに留美の現状には大して役立っていない。
留美のプロットモンからも『コイツ、使えねぇ』って感じの視線が突き刺さる。
「ま、まぁアレだ。小学校の友達なんて必要ない。中学に行ったら中学の高校に行ったら高校の友達とみたいになってくから」
「でも、お母さんは納得しない。林間学校で写真たくさん撮ってきなさいって‥‥」
留美は昨日のデジカメを八幡に見せる。
夜景の写真はとったが、それだけではどうやら無理みたいだ。
「私の状況も今の嫌な感じも高校生くらいになれば変わるかのかな?」
小、中学校の間は八幡からの指摘により、変わらない可能性が高いことを受け、高校ならこの現状が変わるのかと思い八幡に訊ねる。
「‥‥そうだな‥‥ただ、留美が今のままでいるつもりなら変わらないかもしれないな」
「ど、どうして?」
「テイルモンを連れた髪の長い高校生がいただろう?」
「う、うん」
「一応、アイツとは同じ高校、同じ学年、そして一時は同じ部活にいたんだが、アイツも小学校の頃、留美と同じ様な虐めを受けたらしい‥‥その結果が今のアイツだ‥‥人間性の魅力何てこれっぽっちもなく、他者を見下し、自分を偉く見せようとする歪んだ人間‥‥しかも自分を神に近い存在だと無意識の内にそう思っている‥‥可能性だが、アイツの姿は未来のお前なのかもしれない‥‥」
「でも、少し分かる気がする‥‥シカトされると自分が一番下なんだって感じで惨めっぽい」
「だからと言って他者を常に見下すのも間違っている」
「分かっている‥‥でも、もうどうしようもないし」
「何故だ?」
「‥‥私、見捨てちゃったの‥‥仲が良かった子を‥‥」
留美のクラスでのシカトゲームはクラスメイトがいきなり、シカトされハブられる。
それは当時、留美の仲が良かった友達も例外ではなかった。
その時の留美もまさか、後に自分が此処までシカトされ、ハブかれるとは思ってはおらず、みんなと共に悪ふざけでその友達をシカトしえハブいた。
それが後々になって手痛いしっぺ返しを食らい、今は立場が逆転している。
「もう仲良くできない。仲良くしても、またいつこうなるかわかんないし。同じことになるなら、このままでいいかなって。惨めなのは、嫌だけど‥‥」
(そうか、コイツはもう諦めたんだ‥‥)
八幡は留美の態度を見て、彼女は完全に自分と自分の周囲を見限り諦めている。
プロットモンも留美の事を心配そうに見ている。
留美にとってもう心を許せるのはプロットモンだけしかいないのかもしれない。
このままでは、留美は完全に第二の雪ノ下になってしまう。
彼女の実家は金持ちなので雪ノ下の我儘が通っているのだろうが、留美の家はどうみても一般家庭‥‥
雪ノ下と違って一般家庭の子が雪ノ下みたいになったとしてうまくいくだろうか?
学校で問題を起こしても雪ノ下の家ならば、金で問題を揉み消す事が出来るだろうが、普通の家では‥‥
葉山や雪ノ下に虐め問題は関わらない方がいいと言いつつも八幡は留美の事を何とか救いたいと思い始めていた。
そんな時、
「ロリ谷君。小学生に手を出すのは良くないわよ。警察に連絡した方がいいわね」
八幡が先程、留美の将来の姿と言った雪ノ下がやって来た。
「したいのであれば、してみろ、ただ小学生と話していただけで警察を呼んだ‥‥一体どんな罪に問われるんだ?逆にお前の方が警察からちゅういを受けるぞ。お前はあくまでも雪ノ下建設の社長の娘であって、お前自身はなんの権力も持っていないんだよ。そこを勘違いするなよ」
八幡にそう言われ、苦虫を潰したような顔をしていた。
簡単な挑発に乗る事と言い、相手を睨み付けることしか出来ないとは精神年齢は小学生並かもしれない。
まぁわかりきった事なのだが‥‥
「大体、昨日の模擬戦で言った筈だろう?あの模擬戦で勝った方は負けた方になんでも言う事を一つ命令できるって‥‥それで俺はお前に『二度と関わるな』って言った筈だぞ。お前は約束事一つも守れないのか?お前は俺に嘘を平気でついた訳か?」
「人間でないモノに嘘も約束も無いわ」
「‥‥お前さん、やっぱり病気だ。医者に行け。眼科でその目玉をくりぬいて代わりにビー玉でも詰めてもらえ」
「何ですって!?大体人間もどきの分際で!!大体、人間モドキの癖に貴方が私と同じ空気を吸っている事だけでも吐き気がするのに‥‥」
雪ノ下がそこまでの毒を吐くと、
「だったら、吸わなきゃいいはずでしょ?」
「そうね、留美の言う通りね。あなたみたいのが存在し続けたいのなら、二酸化炭素を吸って酸素を出す練習でもしたらどうかしら?」
留美と彼女のプロットモンからのまさかの反撃を受け、雪ノ下は気まずくなったのかすごすごとその場から去って行った。
「‥‥」
八幡は留美のまさかの反撃にちょっと驚きつつちょっと引いた。
彼女がシカト、ハブられたのは只のブームやデジモンの進化だけではなく、彼女自身の性格も問題があったのではないだろうか?と思う八幡だった。
「はぁ~‥‥」
雪ノ下を追っ払った留美はため息をつく。
「あれが私の将来の姿?」
雪ノ下の言動を見て恐らく留美は同族嫌悪を抱いたのだろう。
でも、現状での留美の虐めに対する解決策はまだない。
(何とかできないか‥‥なんとか‥‥)
留美自身も雪ノ下の言動を見て、心の隅に変わりたいと願ったのかもしれない。
「なぁ、留美‥‥」
「なに?」
「お前の現状を変える手はまだ思いつかないが、一つ、忠告しておきたい事がある」
「なに?」
「あの黒髪以外でもう一人、金髪のイケメンの高校生がいただろう?」
「うん」
「アイツにも注意しろ」
「どうして?」
「アイツもお前の現状を知っている。その上で、お前とお前を虐めている奴を集めて話をして解決を図ろうとしている」
八幡は留美に葉山がやろうとしている事を忠告する。
「そんな事をしても解決なんてしないし、後で私がもっと虐められる」
留美も八幡が危惧した事を理解していた。
葉山が自分と自分を虐めている連中を集めて話し合いをしたところで、葉山が去った後、自分はきっと今まで以上の仕打ちを受ける。
もっと惨めな目にあう。
そんなのは嫌だ。
「もし、葉山が話しかけてきたら、無視して逃げろ。強引に手を掴んできたら、大声をあげろ。それとなるべく引率の教師か俺たちの近くに居た方が良い」
「分かった」
八幡は葉山に対する対処を留美に伝える。
その後もやはり、八幡の予想通り、葉山は留美との接触の機会を窺っていたが、彼女が引率の教師、そして八幡たちDATS組の傍に居る事で接触できずに居た。
そして日が段々と傾いてきた頃、
「ハヤト‥‥ドコだ‥‥」
森の奥から静かにそして不気味な声が響いた。