やはり俺の青春にデジモンが居て、俺がDATS隊員なのはまちがっているのか? 作:ステルス兄貴
教室の鍵をかけ、その鍵を職員室へと返しに行く八幡。
当然いろはも八幡について行く。
「あー、もうっ!何なんですか!?あの人は!?あれのどこが完璧を自称する人間ですか!?どうみても人間性の魅力何てこれっぽちもない出来損ないじゃないですか!!」
いろはは雪ノ下の言動に対して未だに怒っている。
「まぁ、そうだな‥‥」
八幡も僅か二日であるが、雪ノ下とは上手くやっていける自信はなかった。
口を開けば罵倒して、自分が正しいと思いそれ以外の全てが悪だと思っている。
そんな人物が人を救う?世界を変える?
とんだ夢物語だ。
雪ノ下は自分の才能を示すのに実績ではなく罵倒と毒舌をもって行い、しかも他者をおとしめて自分を偉く見せようとする。だが、自分で思っているほど才能などない。
実際、いろはに自分の言動を論破され、満足に反論も出来ずにただ黙って睨んでいるだけだった。
その姿からはとても完璧とは程遠い。
「先輩?」
「ん?ああ、すまない。少し考え事をしていた」
「それはいいんですけど、あまり抱え込まないでくださいね?」
「ああ」
八幡はいろはには先に昇降口へ行っているように言うと、自身は職員室へと向かう。
そして職員室へと到着し、平塚先生に奉仕部の部室の鍵を返す。
「比企谷、完全下校時刻にはまだ早いぞ、戻れ。大体なんでお前が鍵を持ってきている?」
しかし、平塚先生は八幡に戻れと言う。
「雪ノ下が急な体調不良で帰りました。それによって今日の活動は此処までにしようと言う事になりました」
八幡は流石にいろはに雪ノ下が論破されて泣いて帰ったとは言えないので、彼女は体調不良を起こしたことにした。
「嘘をつくな!!」
「事実です。大体鍵を俺が返しに来たことが何よりの証拠です。お疑いなら、あの空き教室と下駄箱へ行って確かめたらどうですか?雪ノ下がまだ居るのかを‥‥」
「いいだろう、もし嘘だった場合は覚悟しろ」
そう言い残し平塚先生は奉仕部の部室と昇降口へ確認の為、向かった。
それから十分後、平塚先生は職員室に戻って来た。
「それで、どうでした?雪ノ下はいましたか?」
八幡は念の為、平塚先生に確認をとる。
「‥‥ど、どうやら君の言う通りだったようだ」
悔しそうに八幡が言ったことが事実だったと認める平塚先生。
最初から彼の言う事を信じていれば、無駄に体力と時間を削ることも、恥をかくこともなかった。
今回の事は平塚先生の自業自得だった。
「それで、先生に一つ聞きたい事があるんですけど」
「なんだ?」
「‥‥奉仕部‥‥本当は俺ではなく、雪ノ下雪乃の更生の為の部活なんじゃないんですか?」
「っ!?」
八幡の質問に平塚先生はビクッと小さく身体を震わせる。
「な、何の事だ?」
確信を突かれた為か平塚先生の声は震えている。
「とぼけないで下さい。昨日、今日の雪ノ下の言動を見てはっきりと分かりました。彼女の異常性が‥‥訳を話さないと言うのであれば、俺はもうあそこへは行きません」
「言った筈だぞ、比企谷。異論反論は‥‥」
「では、この後、俺は校長室へ事の次第を話に行きますが?」
「くっ‥‥」
平塚先生は苦虫を嚙み潰したように顔を歪める。
そして、
「ああ、そうだ。あそこは‥‥奉仕部は雪ノ下雪乃の人格矯正の為に作られた部活だ」
平塚先生は自棄になったかのように奉仕部は雪ノ下の更生を兼ねた部活であることを認めた。
「なんで、そんな部活を作ったんですか?雪ノ下の人格を矯正するのであれば、それこそスクールカウンセラーに診てもらえば良いじゃないですか」
「奉仕部の本当の目的に気づいたお前なら分かるだろう?彼女のプライドの高さを‥‥」
「ええ、まぁ‥‥」
「彼女の性格から、彼女は決して自分に問題があるところを認めない。そんな彼女が素直にスクールカウンセラーの診断を受けると思うか?」
「いいえ。でも、一生徒の為だけに部活と言う隠れ蓑を使い、人格の矯正だなんて‥‥家族の方で無理矢理にでも心療科の治療でも受診させれば‥‥」
「ムリだ。そもそも雪ノ下の人格矯正は彼女の実家から頼まれた事だ」
「雪ノ下の実家?」
「ああ、彼女の実家は此処千葉ではそれなりに有名な会社だからな‥‥それに父親は県議会議員を兼任している」
「なるほど‥親でさえ、雪ノ下については手を焼いていると‥‥それで、権力と金で学校に雪ノ下の世話を押し付けた訳ですね?」
「‥‥」
八幡の問いに平塚先生は黙っている。
しかし、それでは肯定した様なモノだ。
「では、質問を変えます。どうして雪ノ下の更生役に俺を指名したんですか?答えてください」
「か、彼女は‥‥常に自分の言動が正しく世間が悪いと決めつけ変わろうとしない。比企谷、君はその年で既にDATSの隊員を務めている‥‥そんなお前かだからこそ、彼女を変えられると思ったんだ‥‥頼む、DATSの活動がない本当に暇な時だけでもいい、奉仕部に入ってくれないか?この通りだ!」
そう言い、平塚先生は頭を下げた。
これまでの八幡に対する態度は彼に奉仕部の本当の設立理由を悟られない為の演技だったのか?
それとも素なのか判断に困ったが、とりあえず先生の話だけは聞いてあげた。
「はぁ~わかりました。ただし、俺が退部したいと思ったら退部させて下さい。いいですね?」
「あ、ああ‥わかった。約束しよう」
「それでは‥‥」
いつでも奉仕部を辞める事が出来る確約を取り付けたとはいえ、家族でさえ半ばあきらめた雪ノ下の更生‥‥八幡自身も出来る自信はなかった。
その頃、当の雪ノ下雪乃は‥‥
あれから学校から帰るとマンションの自室へと入り鞄を放り投げる。
雪ノ下の実家は千葉県内では有名な建築会社で彼女の父親はそこの会社の社長でもあり、千葉の県議会議員も務めている。
当然そんな家ならば、一般家庭の家よりも大きな豪邸とも言える家なのだが、彼女はそんな実家で両親に対する自分の扱い‥‥雪ノ下雪乃と言う個人は認めず、あくまでも雪ノ下家の人間であり、将来の進むべき進路を親が勝手に決めている事に対して嫌気がさしていた。
現在は実家を離れ、高級マンションで1人暮らしをしているが、そのマンションの購入費、光熱費、食費すべては雪ノ下自身が嫌悪している親が出している。
雪ノ下の親からしてみれば、学生時代は雪ノ下の自由にさせてやろうと思っていた。
ただ、学生生活の後、彼女の人格が今のままでは困ると思い、その保険として学校側で今の雪ノ下の人格の矯正を頼んできたのだ。
その雪ノ下家の依頼を受けて誕生したのが奉仕部だった。
だが、肝心の雪ノ下本人は、自分は選ばれた優秀な人間なのだから、これぐらいの待遇は当たり前なのだと大きな勘違いをしていた。
「雪乃‥‥?」
テイルモンは心配そうに雪ノ下に声をかける。
「大丈夫よ。テイルモン‥‥ちょっとシャワーを浴びてくるわ」
「‥‥」
雪ノ下はふらつくような足取りで浴室へと向かった。
その後ろ姿をテイルモンは心配そうに見つめていた。
浴室へと入った雪ノ下は、シャワーを頭から浴びる。
お湯が雪ノ下の髪を伝い、彼女の身体を温める。
しかし、それ以上に彼女の胸に抱いた嫉妬の炎はそれ以上に熱かった。
年下の後輩に論破された事、
同級生とは言え、人間面で自分よりも劣っている筈の八幡の存在にもイライラする。
ただでさえ、彼には学業では一度も勝った事がないのに‥‥
シャワーを浴び終えると脱衣所で、バスタオルで濡れた身体を拭いていると、雪ノ下の目にはデジヴァイスが映る。
雪ノ下は徐に自分のデジヴァイスを手に取る。
「私が弱い‥醜い‥?違う!!違う!!違う!!私は優秀な人間!!私は選ばれた人間なのよ!!そうよ、あなた達の様な下等な人間とは全然違うのよ‥‥」
雪ノ下は自分で自分に言い聞かせるかのように鏡を見ながら言う。
そして、デジヴァイスを握る手に自然と力が入った。
「それで先輩はやっぱり奉仕部を辞めるんですか?」
学校からの帰り道、いろはは八幡に奉仕部を辞めるのかと訊ねる。
「ああ、そのことなんだが、一応もう少しだけ続けようかと思う」
「ええっ!?」
八幡の答えにいろはは驚く。
「なんで!?どうして!?あれだけの事を言われたのに!!」
「あの後、平塚先生に聞いたんだ‥‥奉仕部の本当の事を‥‥」
「えっ?」
八幡は職員室での平塚先生とのやり取りをいろはに話す。
「やっぱり、可笑しいと思ったんですよね。部活動を始めるには部員が五人以上必要なのに、奉仕部は先輩を入れても二人‥‥部活動として認められるわけが無いのに‥‥これだから金持ちは‥‥」
いろはは雪ノ下家の強引かつ無責任なやり方に毒づく。
「それに雪ノ下のあの性格‥‥放っておけば、厄介かもしれないな‥‥」
「どうしてですか?そりゃあ、あの性格は厄介で、他人に迷惑をかけ続けそうですけど‥‥」
「ああいう人間は自棄になったら何をするか分からないからな‥‥一色、テイルモンの通常の進化系統は知っているな?」
「はい。テイルモンは成熟期ですから、通常ですと次の完全体はエンジェウーモンで究極体はオファニモンかホーリードラモンですよね?」
「ああ、そうだ」
エンジェウーモン 完全体 大天使型デジモン ワクチン種
美しい女性の姿をした大天使型デジモン。
以前は天使型と分類されていたが、その能力の高さから大天使型と判明した。
特徴として、成熟期の天使は6枚の羽を持ち、完全体の天使は8枚の羽を持っている。
性格はいたって穏やかだが、まがったことや悪は許しておけず、相手が改心するまで攻撃の手を緩めることはない。
その精神とパワーから、デジタルワールドの女神的存在と言われている。
必殺技の強力な雷撃『ホーリーアロー』は別名「天誅」ともいわれ、また、美しさと優しさの詰まった必殺光線『ヘブンズチャーム』は、デジモンの悪しき力が強いほど効果を発揮する。
オファニモン 究極体 座天使型デジモン ワクチン種
女性型天使デジモンの最終形態である座天使型デジモン。
セラフィモン、ケルビモンと共にデジタルワールドの中心部“カーネル(神の領域)”を守護する三大天使型デジモンの一柱でもある。
神の側面でもある慈愛と慈悲を伝えるデジタルワールドの聖母的な存在で、徹底した神の法の執行官であるセラフィモン、神と智の守護者であるケルビモンと、それぞれの役割がある。
必殺技は『エデンズジャベリン』と、『セフィロートクリスタル』。
ホーリードラモン 究極体 聖竜型デジモン ワクチン種
神獣デジモンの究極の形態。その雄々しい姿は空の王者を思わせる。
その姿を見た者は少なく、普段はどこにいるのかさえ全く判明していない。
しかし、ひとたびデジタルワールドに巨大な悪のエネルギーが発生するとどこからともなく現れ、その巨大な力で悪を無に帰すと言われている。
必殺技は全ての正義の光エネルギーを相手にぶつける『ホーリーフレイム』。
「俺が懸念しているのが、雪ノ下が自棄になり、テイルモンを暗黒進化させないかと言う事だ‥‥」
「テイルモンの暗黒進化‥ですか?」
「ああ」
「テイルモンが暗黒進化したらどうなるんですか?」
「オファニモン:フォールダウンモードだ」
オファニモン:フォールダウンモード 究極体 堕天使型デジモン ワクチン種
怒りのあまり自らの感情を殺し、狂気に落ちたオファニモンの姿。
どれだけ粛清しても残虐非道な悪行は増え続ける世界に憤りが高まり、心を閉ざしてしまった。
悪の芽を摘むために、正義の弊害になると判断した相手は誰であろうと狩り、自分が認める正義の世界を築き上げようとするのである。
必殺技は、武器となる炎を纏った『フレイムヘルサイズ』と相手が息絶えるまでなぶり続ける召喚技『デモンズクリスタル』。
「オファニモン:フォールダウンモード?それってオファニモンとなにが違うんですか?」
「天使から堕天使となり、その性格はある意味で雪ノ下の願望をそのままにしたようなデジモンだ」
「雪ノ下先輩の願望?」
「ああ‥自分の正義の為、自分が悪だと思ったモノは全て破壊する。この場合、テイルモンにとっての正義‥‥それは雪ノ下が望むモノであって、悪は雪ノ下が敵、不要としたモノ全てだ‥‥それが例え自分の家族だろうと、雪ノ下本人が敵、不要と認めたら、暗黒進化したテイルモンは容赦なく、慈悲もなく、躊躇なくそれを破壊し続け、雪ノ下が望む世界を創りあげようとするだろう」
「‥‥」
八幡からオファニモン:フォールダウンモードの話を聞いていろはは言葉に詰まる。
「で、でも先輩のノワールなら、何とか出来ますよね?それにあの雪ノ下先輩が暗黒進化とは言え、テイルモンを究極体に進化させられるとはとても思えませんけど‥‥」
「俺だってそう思っている。だが、物事に絶対なんて事は無い‥‥何の切っ掛けで起こるか分からない‥‥それに出来る事なら俺はあの力は使いたくない‥‥俺自身、ノワールが初めてあの姿になった時は、自分のパートナーデジモンの筈なのに、身震いしたからな‥‥」
「‥‥」
八幡は自分のデジヴァイスをチラッと見る。
デジヴァイスの中に居るノワールは眠っており、八幡の話は聞こえなかったみたいだ。
「まぁ、取り越し苦労になってくれるのが一番だな。それに平塚先生からはいつでも退部しても構わない許可は得ている」
「だと‥いいんですけど‥‥」
八幡の話を聞き、どうにも不安になるいろはだった。
翌日の放課後、八幡といろはの姿は昨日と同じ、奉仕部の部室にあった。
いろはもなんだかんだ言って八幡に付き合ってくれた。
「「「‥‥」」」
ただ、部室の空気は重苦しい様な息苦しさを感じる。
八幡は時折、雪ノ下をチラッと見るが基本、手元の小説に目をやっており、雪ノ下の方は八幡といろはをいない者と扱うかのように小説に目をやっている。
いろははデジヴァイスを操作している。
下校時刻までこの重苦しい空気が漂うこの教室に居なければならないのかと思っていたのだが。それは意外にもこの教室を訪ねてきた来訪者によって終わりを告げる。
「失礼しま~す――ってヒッキー!?何でここにいんの!?」
やって来たのはウェーブのかかった茶髪、着崩した制服を纏い、童顔で胸が大きな女子高生で、いろはのビッチ度を上げた様な印象を受ける女子生徒だった。
(一色か?雪ノ下か?兎も角、呼ばれているぞ、ヒッキーさん)
(それにしてもヒッキーって引き篭もりみたいな渾名だな。すると、やはり雪ノ下の事か?)
八幡がそんなことを考えていたら、いろはが耳打ちで教えてくれた。
「ヒッキーって、多分先輩のことですよ」
「はぁ?そんな訳‥‥」
「あら、自分の名前が呼ばれるのがあまりにも久しぶりすぎて返事の仕方すらも忘れてしまったのかしら?」
今日、初めてこの教室で雪ノ下が八幡に対して口を開いたのだが、その内容はやはり、八幡に対しての罵倒であった。
(こいつ、ほんとに罵倒しか出来ねぇのか?)
「生憎、俺はそんなあだ名で呼ばれたことは生まれて此の方一度もないし、俺の周りに俺の事を『ヒッキー』なんて呼ぶ奴もいない。てか、お前誰だよ」
八幡は自分を引き篭もりみたいな渾名で呼ぶ女子生徒に対してどこの誰かを問う。
向こうは自分の事を知っているみたいだが、八幡にしてみれば、自分の事を引き篭もりみたいな渾名この女子生徒には面識など無い。
「ヒッキーはヒッキーだし!!てか、同じクラスなのに覚えてないとかヒッキー、まじキモイッ!!」
たかがクラスメイトと言う関係だけで話した事もない赤の他人関係でキモイ扱いされてはたまらない。
「おい‥‥」
八幡が反論しようとした時、
「先輩は、引き篭もりでもないですし、キモくありません。何なんですか?貴女は?初対面でいきなりキモいって、失礼にも程があります。人としての常識が欠けているんじゃないんですか?」
「で、でも、ヒッキーはヒッキーだし。クラスメイトのこと覚えてなかったヒッキーが悪いんだし!!」
(コイツも雪ノ下同様、人の話を聞かないタイプの人間だな)
自分の非を認めないあたり、この女子生徒と雪ノ下は同類だと思う八幡。
「それで、此処に来たと言う事は何か依頼で来たのでしょう?由比ヶ浜結衣さん」
「私のこと知っているの?」
由比ヶ浜と呼ばれた女子生徒は雪ノ下が自分の事を知っていた事に驚いていた。
「全生徒の名前と顔を覚えているんじゃないか?」
「そんな事はないわ。貴方のことは知らなかったもの。比企谷君」
(はい、ダウト。試験結果の掲示板の前で、俺の名前をまるで親の仇みたいに見ている姿を一年の時から何度も見ているぞ)
雪ノ下は奉仕部に八幡がぶち込まれる前まで、八幡の事を知らないと言うがそれは嘘だと直ぐに見抜いた。
そして、由比ヶ浜が依頼内容を雪ノ下に伝えようとするのだが、
「えっと‥‥その‥‥」
彼女は歯切れの悪い言葉で八幡のことをちらちらと見てくる。
男である八幡が居ては相談しにくい事なのだろうか?
このままでは話が進まないので、見かねた雪ノ下が由比ヶ浜へと助け船を出す。
「比企谷君、少し部屋から出てってくれるかしら?」
雪ノ下が八幡に退室を言うと、その直後に八幡の携帯が鳴る。
「ちょっと。電話に出て来るわ」
丁度いいと思い教室から出て、相手を確認したらディスプレイには八幡の仕事先、DATSの千葉本部の隊長、御神楽ミレイからの電話だった。
八幡たちが所属するDATS千葉本部の隊長はゲーム版の登場キャラ、御神楽ミレイさんとなりました。