ラブライブ!Ω/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!! 作:la55
そして、翌日の放課後。
「これでいいかな」
と、氷と春は大会の提案書を書き上げると、すぐに星子が、
「ちょっと、みなさん、集まってきてください」
と言うので、みんな集まることに。
すると、星子、すぐに、九たち5人に、
「なんでまだスクールアイドルという幼稚なことをするのですか」
と、怒りながら言う。対する九たちは体力づくりだと言い張るも、星子はそれがスクールアイドルとつながりがあると言い張るばかり。しまいには、
「私が言っていることがすべて正しいのです!!」
と、言ってしまうほどに。
これを見た氷、
(これだと埒が明かないね。仕方がない。この手を使うしかないね)
と思うと、すぐに、
「だったら1つ勝負、したらどうかな?」
と、みんなに提案してみる。そして、氷はさらに、
「勝ったほうが負けたほうに命令できる。星子が勝てば、5人に対してこれ以上スクールアイドルの連取をしないって言えるでしょ」
と付け加えた。これなら頑固な星子でも納得するだろうと思ってのことだった。むろん、いつも前向きに答えちゃう九のことだから、というのも計算のうちだった。そして、氷の憶測どおり、九と星子、両方とも賛成した。
と、ここで横から、
「それじゃ、勝負のやり方だけど、この学校の島一周遠泳はどうかな?」
と、春が提案してきた。実は氷と春は事前に打合せをしていた。きっと近いうちに九たちと星子が対立するときがくる。そこで、氷が勝負事をもちかけ、春が途中からあいだにはいって遠泳大会をもちかける。そのほうが自然とうまくいくのではとの打算だった。そして、それはうまくいった。
途中、雪穂から、
「島一周遠泳って危なくないの?」
と、心配されるも、これも織り込み済み。
「それなら大丈夫です。島の漁師たちにすでに話をつけていますから」
氷は自信満々に答えた。実は昨日、漁協の集まりがあり、そこに氷と春がお邪魔していた。
「あの~、ちかいうちに高校で遠泳大会が行われるので、その手伝いをしてもらえませんか」
と、氷が漁協の組合員に頼むと、そこにいた、いつも法被を着ているハッピーさんから、
「こりゃ、あの伝説が復活するんだねぇ。自分は親父のススメで島外の高校だったし、入れてもいろんな事情でその伝統が取りやめになっていたから、参加できなくて悲しいもんだったよ。でも、それが復活させるんだったら、俺が一肌脱いでやるぜ」
と、力強く言われると、その隣にいたいつも特攻服を着て漁をする特攻野郎Sチームのリーダーからも、
「もちろん、俺たちも一肌脱ぐぜ。ハッピーにいいところもっていかせたくないしな」
と言われる。こうして、漁協の組合員の全会一致で遠泳大会を全力でサポートすることが決まった。そして、九たちと星子の対立が決定的になったのを見計らって漁協に連絡していたのだ。なので、遠泳大会の準備はすでに終わっているのだ。ちなみに、たい子は漁協の組合長の娘ではあるが、氷と春が内緒にしてほしいと組合長に言ったため、組合長はたい子に対してしゃべっていなかった。なので、たい子も知らないことだった。とはいえ、
「都合がよすぎる…」
と、雪穂が言うくらい、氷と春の手際のよさだった。
で、春の提案からすぐに九は、
「それじゃ、港にレッツゴー!!」
と言って、みんな港に移動した。
ただ、多恵は、
「そんな茶番~」
と、言って逃げようとするも、春に見つかり、強制的に連れて行かれた。
港ではすでに漁師たちによって遠泳大会の準備は終わっていた。さらに、なぜか冷えた体を温めるためのつみれ汁すらも作っていた。それほど漁師たち、いや、島の人たちは過去で潰えた伝統が再び復活したことにどれだけ喜んでいるのだろうか。それは雪穂に対して漁協の組合長であるたい子の父の言葉でも表れていた。
「まさか、あの伝統がよみがえるなんて、こんなうれしいことありません」
と。
開始10分前、全校生徒はスクール水着に着替えていた、1人、下に水着を着込んでいるひろ子を除いて。ただし、1・2年と3年は別々のところで着替えていた。
で、3年生が着替えている最中、春は星子にスマホを渡すと、
「ねぇ、星子、この動画、見ない」
と、春が言うと、星子、
「こんな大切な勝負のときにまったく関係ない動画見る余裕なんてないです」
と断るも、強引に、
「星子、ちゃんと見なさい!!」
と、星子の目の前で動画を再生する。その動画からは、
「新しい出会いに感謝しよう~♪」
と、かわいい衣装を着て踊るスクールアイドルの姿があった。そう、春が見つけてきた(そして、春が一生懸命練習した)「スプリングコンタクト」の動画だった。
「わぁ、きれい!!」
と、星子、目をキラキラしながらつぶやくも、すぐに、
(いやいや、いけない。おじいさまの言うことを守らないと、こんな衣装、こんな踊りなんてハレンチなんだ)
と、思ってしまい、すぐに、
「なんなんですか、あのいかがわしい動画は!!」
と一刀両断する。
が、その一瞬のあいだを氷は見逃さなかった。氷はすぐに、
「それって本当に本心なの?」
と、星子に問うと、星子はすぐに、
「はい、これが私の本心です。あのいかがわしい動画、なんで私に見えるのですか?」
と反論する。これには氷、
「絶対にそうかな。私の知っている星子はそんなこと言わないよ」
と言うと、星子、
「私はいつだって同じことを言っています。女性は淑女であるべきだと。女性は男性の一歩後ろに歩くべき、そして、女性はおしとやかに、つつましく、優雅に、良妻賢母を目指すべきなのです」
と、怒鳴るように言う。
そんなときだった。
「なら、これらはなんなのですか!!」
「春…」
こんなににえぎらない星子の対応にキレてしまったのが春だった。春は星子の前にあるものを見せる。星子はただそれを見つめるだけだった。春はそんな星子に向かって怒るように言う。
「星子、これはなにかしら。ファッション雑誌やスクールアイドルの雑誌だよね。これね、学校の図書館、それも閉架図書のある部屋にから見つかったの。その部屋って星子と氷しか入れないじゃない。でもね、氷がわざわざそんなところに隠す必要はない。だって、氷は自分の部屋にその雑誌を置けるから。で、家族の方針でそんな雑誌を自分の部屋に置けず、隠さないといけない。でもって、誰にもばれずにその閉架図書のある部屋で保管し、いつでも読むことができる人物って、あとは星子だけじゃないかしら」
これには星子、ただ、
「…」
と、黙るのみだった。
そして、氷はそんな星子にあることを聞く。
「星子、実は九たちと一緒にスクールアイドルしたいんじゃない」
これには星子、
「私は…、私は…」
と、何も言えない状況に。星子にとって誰にもバレたくない秘密が一番の親友である春と氷にバレてしまい、さらに氷からいたいところをつかれているので、頭の中がパニックを起こしていた。
春はそんな星子を見て、ついにあることを言い出した。
「星子、なんでファッション雑誌やスクールアイドルの雑誌を見たいか、私はよ~くわかるよ。だって、星子だって1人のかよわい少女だもんね。普通におしゃれして、普通にみんなとファッションなどのたわいもないことをおしゃべりしたいって。そして、女の子なら誰でもあこがれるアイドル。スクールアイドルなら、誰でもなれるもんね。ひらひらしたスカートを着て、きれいな衣装を着て、みんなの前でかわいく歌って踊る、星子はそれをしたいって夢見ていたんでしょう」
これには星子、ついにキレた。
「私だってあこがれているわよ。普通におしゃれして、みんなとたわいのない話をしたいよ。スクールアイドルにあこがれてなにか悪い。私だって九たちみたいにかわいい衣装着て、スカートをひらひらさせながらみんなと一緒に歌って踊りたいよ、でも…」
と、本心を言う星子だったが、途中で口がこもってしまう。それを見た氷はすぐに、
「それっておじいさまの言いつけを守るためじゃない。本当は九たちと一緒にスクールアイドルをしたい。でも、おじいさまの言うことだから、無理にしたくないって言っているんじゃないかな」
と言うと、星子、
「そうよ。おじいさまに言われているからだよ。この島では、おじいさまの言うことが絶対。それが家族ならなおさらだよ。それを破るなんて、私はできないよ」
と言うと、春、
「いつもおじいさまの言いつけを守るためなんて言っていても、いつかはそれが通らなくなることもあるんだよ。いつまでもおじいさま、おじいさまって言っていたら、星子の心の成長は止まったままなんだよ。もっと自分の心に正直になろうよ」
と、強く呼びかけるも、星子、
「それは…」
と躊躇する。
これを見た氷、すぐに、
「それじゃ、この勝負で踏ん切りつければいいじゃない。勝てばいつもの星子のまま、まければ新しい星子を受け入れる。それでいいんじゃない」
と、星子に提案すると、星子、
「うん…」
と、素直に同意する。これを見た氷、
「それじゃ、この勝負頑張っていきましょう」
と、星子と春に声をかけた。
開始2分前にチームわけとルールが発表された。チームは多恵を除く1・2年生連合と多恵を含む3年生チームに。これには氷と春の陰謀が隠されていた。1・2年連合には水泳が得意なひろ子のほかに、体力に自信がある九、小明がいる。一方、3年生チームのメンバーには水泳が得意なメンバーはいないし、多恵にいたっては都会育ちのお嬢様なので、頭数にはならない。というわけで、1・2年連合が勝つ確立が非常に高いのだ。
なお、全員で島1周するわけでなく、リレー方式でたすきをつないでいく方式を採用した。これは全員とも遠泳の経験がないので、最初から全員で島1周するのはきつすぎる。それならばと、リレー方式で島を1周する方法をとった。ただし、1人が泳ぐ距離に制限はなく、疲れたら次の泳者に交代することになっている。
で、ついに遠泳大会がスタートした。
「ひろ子ちゃん、早い…」
と、九が見とれるほど1・2年生連合の第1泳者のひろ子は同じく3年生チームの第1泳者の春の距離をどんどんひろげていく。ついには100mも離してしまった。
続く1・2年生連合の小明はその距離を保ちつつ、つぎのめい、そして、たい子へとたすきをつないだ。対する3年生チームの第2泳者氷はその距離を保つだけで必死だった。
だが、ここでとんだ伏兵があらわれた。
「土居(多恵)さん、早い…」
と、九が驚くのも無理がなかった。泳ぎが得意なひろ子すら、
「土居さんってこんなに水泳が得意なんて」
と、驚いていた。伏兵多恵、その泳ぎはすさまじく、
「はいはいはい」
と、言っているみたいにリズミカルにクロールをしているようだった。そのスピードは体育が得意な小明だけでなく、学校で泳ぎのスピードがナンバーワンのひろ子に匹敵するくらいだった。100mあった距離はどんどん短くなっていき、ついには、
「あ~、追いつかれる~」
と、九が心配するくらいたい子と多恵がならんでしまった。ちなみに、あとで聞いた話によると、多恵は東京では遠距離の水泳選手として有名だったとのこと。恐るべしスーパー女子高生多恵であった。
そして、勝負は最終泳者の九と星子の対決となった。が、ここで氷が一言。
「これはちょっとまずいわねぇ」
これに春、
「なんで?」
と、氷に聞くと、氷、
「本当なら、1・2年連合が圧倒的な差で勝っているつもりだったけど、土居さんが頑張りすぎて五分の状態になっちゃった。ということは、星子は勝とうと無理をするんじゃないかな」
と、冷静に分析する。春、
「でも、九ちゃんは体力があるし、泳ぐスピードも早い。これなら星子も諦めて…」
と言うと、氷、
「いや、だからだよ。星子はそんな九に勝とうとさらに無理をする。だって、勝つことができれば、これ以上九たちがスクールアイドルをしなくてすむし、おじいさまの言いつけを守ることができる。だけど、それは自分の本当の思いを永遠に封じ込めることにもなるから、負けてあげたいと思う。その心のゆれうごきが逆に危ないのよ」
と言うと、春、
「それはあたっているかもね」
と言うと、星子のほうを見た。
九と星子の戦いは抜いたら抜き返す、その繰り返し。星子、抜かれると、
(これじゃ負けてしまう。負けたらスクールアイドルの活動を認めてしまう。そうなったら、おじいさまの言いつけを守れなくなる。おじいさまの言うことは絶対。私はおじいさまの言うとおり、大和撫子、淑女を目指さないといけないの)
と、思って腕に力がはいり九を抜く。が、抜いてしまうと、
(このままじゃ勝っちゃう。勝ったら、スクールアイドルを目指している九たちが悲しんでしまう。それよりも、私の本当の気持ち、かわいい服を着て、みんなと一緒にファッションを楽しむこと、いや、九たちと一緒にとてもきれいな衣装を着て、スクールアイドルとして楽しく活動できなくなる)
と思って、腕の力が抜けて九に追い抜かれる。その繰り返しだった。
が、ゴール手前で星子の頭の中にある人物があらわれた。
「いいか、女性とは大和撫子らしく、おしとやかに、つつましくするべきものだぞ」
そう、おじいさまの顔だった。これには星子、
(おじいさまの言うことは絶対。絶対に守らないと。絶対に勝たないと)
と思い、勝負にでた。泳ぐスピードがあがる。そして、ついに、
「あっ、星子が九を突き放した」
と、春が叫ぶくらい九を突き放す。
(あともう少し。あともう少しで勝てる!!これでおじいさまの言うことが守れる)
と、星子はなにか焦りを感じているみたいに思うと、
(もっと早く、もっと早く)
と、なにかを念じ始めた。
が、ここで星子に異変が起きた。
(ううっ)
と、星子の足裏に激痛が走る。
(もっと頑張らないと、もっと頑張らないと)
と、星子は思うも、体が思うように動かない。
(体、動いて、動いて。このままじゃ負けちゃうよ)
と、星子は焦るも、星子の体は思うように動けないまま。
そして、星子はそのまま沈んでいく。自分もどうにかして浮上したいが体が動かない以上、ただ沈んでいくしかなかった。このとき、星子は、
(あっ、短い人生だったな。私、いろんなことしなかったな。みんなとファッションについて語りたかったな。九たちと一緒にひらひらのスカートを着て、かわいい衣装を着て、スクールアイドルしたかったな。もっと本当の自分をみんなに見せたかったな)
と思うと、そのまま体を丸め、そのまま自然の流れに身をまかせて沈んでいった。
星子の異常はすでに海上でも気づいていた。
「星子、どうしたの?もしかして、足をつったの」
と、氷があわてていると、春は、
「落ち着いて!!まずは星子を助けましょう。誰か、星子を助けに言ってください!!」
と叫ぶと、隣にいた特攻野郎Sチームのリーダーは、
「ダメだ。星子譲ちゃんを助けようにも星子譲ちゃんが沈むスピードが速すぎて間に合わない」
と言うと、氷、
「誰か、星子を助けてあげて~」
と叫ぶと、すぐに、
「まかされました」
と、誰かが答えた。
そのまま海中に沈んでいく星子。心のなかでは、
(このまま私は死ぬのかな。春、氷、みんな。さようなら)
と思っていたが、その瞬間、
「星子ちゃん、待ってて!!
と、言う誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。が、星子の記憶はここでぷつりと消えた。