ラブライブ!Ω/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!! 作:la55
大地の自殺はその後、事故死として扱われた。自殺だと保険金が下りないことが多かったからだった。建造はそれを見越して事故死に見せかけたのだった。
こうして、多額の保険金を受けた建造はそれをもとに借金をすべて返し、不良債権となっていた株や土地を全部償却、余ったお金で会社を切り盛りしていた。むろん、すぐに仕事が増えるわけではない。もちろん、工事が増えることもない。それでも建造はたとえ小さな工事、人がいやがる工事をすすんで引き受け、多くの工事を手がけることになる。それが建造の会社、また、土居建設の信頼にもつながり、それが次の工事への依頼につながっていった。このような好循環により、土居建設は少しずつであったが大きくなっていった。
そして、ときがたって2000年、建造の会社土居建設は孫請けから下請け、そして、元請けができる会社へと成長を遂げていた。つまり、大きな工事を直接受注できる会社にまでになったのだ。
「ここまで長かったな、大地」
と、建造は大地の遺影の前で祝い酒を飲んでいた。
「大地よ、俺の会社は地方ではあるが、元請けとして初めて受注した工事を完遂できた。ここまで成長できたのもおまえのお陰だ」
と言うと、これまでの苦しみを思い出していた。大地の残したお金で最初は小さな工事、人がいやがる工事を数多くこなしていくうちに信頼を得ていった土居建設。そして、それを続けているうちに大手建設会社から直に下請けの依頼を受ける。建造はこれはチャンスということでその下請けを大手建設会社の期待する以上のものをつくりあげた。
「俺は下請けであっても全力でやった。下請けとしてはそこまでお金をもらっていない。そのため、工事をしてくれた従業員には十分な賃金をあげることまではできなかった。でも、それでも、従業員たちはこの土居建設の将来のため、それを我慢して俺と一緒に頑張ってくれた」
と、建造は下請けの工事のときのことを思い出すと、さらに、
「そして、その工事を認めてくれた地方の市長さんからこの俺に直接「元請けとして工事をしてくれないか」と言ってきてくれた。俺はこれこそ土居建設の命運をかけるときがきたと思ったよ」
と言うと、初めて手がけた元請けの工事のことを思い出していた。その地方の市長は戦前からある市民会館を建て替えようと計画していた。そんなとき、土居建設が下請けとして工事していた現場に偶然見学に来ていたその市長は、下請けではあるが熱心に働く従業員たちに心を打たれ、土居建設を元請けとして直々に迎え入れようとしていた。
「だけど、その市民会館は昔からあるとても美しい建物だった。だから、その立替工事には反対する市民も多くいたな」
と、建造は反対する多くの市民たちのことを思い出すと、すぐに、
「そこで俺は元請けとして工事を受注するとすぐにある建築デザイナーに全体的な設計を依頼した。でも、依頼をかけたときのデザイナーの苦しい表情、あれには俺も悪いことをしたなと思ったよ」
と言うと、そのデザイナーのことを思い出していた。建造はそのデザイナーに新しい市民会館の設計を依頼したとき、あることをお願いした。それは、
「外観は残しつつ、中は最新の設備を持つ立派な建物にしてほしい。あと、耐震もしっかりね
」
これには建築デザイナーも困らせてしまった。が、この建築デザイナーはこの要求をすべて叶えるぐらい立派な設計図を作成してくれた。その設計図をもとに建造は自ら陣頭指揮をとり、会社の総力を結集して一生懸命取組み、新しい市民会館を完成させた。
「そして、落成式のとき、昔の外観そのままの姿を見た市民のみなさんはとても喜んでいたな」
と、建造は新しい市民会館の落成式のときのことを思い出していた。落成式のとき、昔からある美しい建物の姿は残っていたことに反対していた市民たちですら喜んでいたという。ただ、外観はそのままでも、中は最新設備を整えているだけでなく、耐震もしっかりしている。これ以上ない出来だった。
「大地よ。俺は元請けとして第一歩を踏むことができた。これでおまえの故郷、九龍島に一大リゾート地を造るというおまえの夢にむかうための第一歩をようやく踏むこともできる。大地よ、天国から俺の活躍を見ててくれよ」
と、建造は大地に対してこれからも頑張っていくことを誓う。
そんなときだった。
「社長、市長がお見えになっております」
と、建造の部下が市長が来たことを告げる。
「わかった。応接室に行く。市長をそこに通してくれ」
と建造が言うと、部下はすぐに、
「わかりました」
と答え、建造のもとを離れる。
「さて、私になにか用事かな」
と、建造は襟を正して応接室に行く。
「おお、市長殿、こんにちは。私になにかごようでしょうか」
と、建造は応接室で市長をあたたかく迎える。それに市長、
「実はな、あなたを見込んでお願いがあるのじゃが」
と言うと、建造、
「この私にですか。私でよければ」
と言うと、市長は建造の近くに移動し、その願いを言った。
「実はな、あなたに縁談をもってきたのだ。その縁談を受けてくれないか」
これには建造、
「えっ、私に縁談ですか。でも、会社はまだ成長途中です。まだ売上なども少ない。そんな私に縁談なんてはやいですよ」
と謙遜するも、市長は建造の耳元に近寄り、小さい声で話した。
「実はな、その縁談のお相手なのだが、こそこそ…」
「えっ、うそでしょ!!」
と、縁談の相手の名を聞いた建造は驚いてしまう。なんと、その縁談の相手は、その市長が治める地方出身の大物政治家の娘であった。その大物政治家はぞくにいう建設族、つまり、建設業界関係を管理している国土交通省に顔がきく政治家だった。それだけじゃない。その政治家はその建設族のなかでも有力な政治家であり、大手建設会社にも顔がきくことでも有名だった。
(これはとんでもないことだ。この政治家と強いパイプを築けたら、今後、俺と大地の夢、九龍島での一大リゾート開発を優位に進めることができる。こんなチャンス、なかなかないぞ)
と思う建造だったが、
(ちょっと待て。でも、なんでまだまだひよっ子の俺にこんな大きな縁談をもってきたのか。これってなにかのわな?)
と、市長を疑ってしまう。そこで、建造は市長にある質問をした。
「なんで、建設業界のなかではまだまだひよっ子の私にこんな大きな縁談をもってきてくれたのですか」
これには市長、すぐに、
「それはな、あなたが工事を引受けてくれた市民会館の立替工事はバブル崩壊のときからこの地方では懸案事項だったからじゃよ。戦前のときからある由緒正しい建物、かつとても美しい建物だったから、その立替は昔から反対が多く、その立替計画を立てては消え、立てては消えの繰り返し。それをあなたはいとも簡単にしてみせた。それも反対する多くの市民たちすら納得するくらいにな。そのことをあの方(大物政治家)に話したら、とても興味をもってくれたらしいでな」
と言うと、市長は建造に向かってこう言った。
「その方(大物政治家)はあなたの将来性を見越して縁談をもちこんだのだ。だからこそ、この縁談を受けてくれてほしい。あななの将来のためにもな」
これには建造、
「はぁ」
と、ただ答えるしかなかった。が、市長はさらに、
「そして、あなたはまだ若い。まだまだ成長できるが、家庭をもつことで守るものができ、さらなる飛躍ができる。どうだ、やってもらいえないだろうか」
と言うと、建造、ついに降参。
「わかりました。その縁談、受けましょう」
と、大きな声で答えた。
その後、建造はその大物政治家の娘とお見合いをする。その娘の名は奏。
「はじめまして。土居建造と申します」
と、建造が挨拶をすると、奏も、
「奏と申します。どうぞよろしくお願いします」
と、大和撫子らしく物静かに挨拶する。
お見合いは静かに進められていた。最初緊張していた建造だったが、物静かに、それでいて優雅に話をあわせる奏にいつしか心ひかれるようになる。
そして、2人だけの時間がくると、
「ところで、奏さんはなにが得意のですか?」
と、建造が早速奏に聞くと、奏、
「そうですね。料理、裁縫などなど。花嫁修業といいますか、いい花嫁になるためのことはすべてしてきたのです。それに…」
と言うと、建造もつられて、
「それに…」
と言うと、奏はすぐに、
「ピアノを少ししておりました」
と言うと、建造は、
「そうですか。それならお願いがあります。ピアノを弾いてくれませんか」
と、奏にお願いをすると、奏、
「わかりました」
と、お見合い会場にある備え付けのピアノを弾く。
♪~
そのピアノの音色を聞いた建造、
(なんていい心地なんだ。これまで仕事だけをしてきた自分にとって安らぎを与えてくれているみたいだ)
と思うと、
「とてもいい曲、とてもいい響きですね。まるで奏さんをあらわしているみたいだ」
と言うとともに、
(俺は決めた。この奏さんと結婚しよう)
と、奏と結婚する意志を固めた。
それから1年のあいだ、元請けとして初めての受注で成功を収めたことで土居建設に大型工事がどんどん舞い込むことになり、建造もさらに忙しくなったが、そのかたわらで奏と愛をはぐくみ、翌年、建造と奏は結婚した。
だが、結婚したにもかかわらず、建造はあまり家には帰らなかった。別に愛人ができた、とかうわついたものではなかった。結婚したことで建造はいっそう仕事にまい進するようになった。自分の夢、大地の夢、九龍島に一代リゾート地を造る、それを叶えるだけではない、奏との生活を守るととに、自分の会社、土居建設をより大きくするために。
そんな建造、仕事が予定よりはやく終わったので久しぶりに奏のいる、そしてピアノが置いてある家に帰ることになった。
「奏よ、ただいま。元気でいたか」
と、家に帰るなり、奏にただいまを言う建造。
「おかえりなさい。お風呂にしますか、それともお食事にしますか?」
と、奏は建造に訪ねるも、建造、
「久しぶりの帰宅だ。そこまでかしこまらなくてもよい」
と、奏に優しく言う。実際、建造にとって1ヶ月ぶりの帰宅だった。そんな建造の気遣いに奏、
「はいはい。でも、私はいつもケータイであなたの声を聞いていますから、久しぶりとは思わないのですよ」
と微笑み返す。あんまり家に帰らない建造であったが、1日に数分程度奏と電話で会話をしていた。そのため、奏にとって久しぶりとは感じていないらしい。
そんな奏に対し、建造、
「そうか、そうだったな。いつも(電話越しだけど)会話をしているから久しぶりじゃないな」
と、奏に同意する。
そのあと、お風呂を浴びた建造は奏と一緒に遅めの夕食をしていた。
「あなた、明日は東京で会合ですか?」
と、奏はご飯を食べながら建造に聞くと、建造、
「そうだ。明日は会合というより勉強会が行われる。俺はそれに参加する」
と答えた。建設業界、そして、建設に関係する省庁に顔がきく大物政治家の娘、奏と結婚したことにより、建造はその大物政治家のつてを使い、東京にある大手建設会社や中央省庁の人たちと交流することができた。そして、明日には若手の人たちが集まって勉強会を開くことになった。
「で、そのあとは全国各地の現場をまわるのでしょ」
と、奏が聞くと、建造、
「そうだ。俺にとって現場は重要だ。1回は見ないと気がすまない」
とたんたんに言う。奏との結婚は建設業界、中央省庁と強いパイプをもつだけではなかった。元請けとして初めての受注の成功のことが奏の父、大物政治家によって全国に広がっていったのだ。そして、それがもとで全国各地から工事の依頼が殺到していたのだ。だが、建造はその工事を選んでいた。ふつうならここぞ好機ということで、すべての工事を請けるべきなのだが、建造は違っていた。最初のうちはあまり広げすぎると工事の管理が行き届かなくなり、どこかで破綻する。それを防ぐため、自分たちができる工事を選んでいた。これは建造がバブル景気の波にのり、株や土地などを次々と買いあさった結果、バブル崩壊とともに不良債権となり、多額の借金が残ったことが教訓となったためだった。とはいえ、選んだ工事も全国各地に点在するため、建造は飛行機を乗り継いで全国をまわっていた。それほど現場を大事にしていた。
「そうですか。それなら、今日、私も1杯付き合いますよ」
と、奏は建造の仕事に対する熱心さを認めつつ、建造にお酒を勧めた。
その後、2人はお酒を飲んでいるうちに奏から建造に質問をした。
「ところであなた、あなたの夢ってなんですか?」
これを聞いた建造、すぐに、
「これは秘密だ。誰にも話すなよ」
と言うと、奏、
「はい、わかりました」
と答える。
そして、建造は自分の夢を語った。
「俺は九龍島という南の島に一大リゾート地を造りたいと思っている。これは俺だけじゃない。俺のかつてのパートナーだった大地の夢でもあった。俺はその大地の意思を受け継ぎこの夢を叶えたいと思っている」
これには奏、
「それはいいことじゃありませんか。あなたのかつてのパートナーの夢を引き継ぐなんて素晴らしいことじゃありませんか」
と、建造を褒めると、建造、
「おまえはなにも言わないのか。かつてリゾート開発が盛んに行われたけど、そのほとんどが失敗に終わっているんだぞ」
と、奏に言う。実際、全国各地でリゾート開発が盛んに行われていたが、その多くが失敗に終わり、いまやリゾート開発をすることすら難しくなっていた。
そんな建造の心配をよそに、奏は堂々と、
「それでも夢をもつって大切なことですよ。今や夢をもたない人たちが多くなりました。そのなかで、今だに大きな夢をもっているなんてすごいと思いますよ」
と言うと、建造、
「本当か。それならよかった。ありがとう、奏」
と、奏に御礼を言った。
が、そんなときだった。
ゴホン ゴホン
と、奏から大きな咳が聞こえてくる。
「奏!!」
と、心配する建造。これには奏、
「あなた、心配しなくてもいいですよ。いつもの咳ですからね」
と言うも、建造はすぐに、
「なにがいつものだ。おまえは体が弱いんだから、しっかり休むように」
と、奏に注意する。が、その奏は、
「そんなこと、少しでも休めばいいだけのことですよ」
と強気で言うも、すぐに
ゴホン ゴホン
と、また咳をする。建造はついに、
「奏、今から寝室に行くぞ。俺も休むからおまえも休めよ」
と言うと、奏、
「そうですか」
と答えていた。
実は奏、生まれたときから体が弱かった。そのため、咳をよくする。今回も我慢してッ咳を止めていたが、それすらもかなわず建造の前で咳をしてしまった。良妻賢母、大和撫子の奏であったが、体が弱いので、外に出かけることは難しかった。買物にしても配送で送ってもらうか、ネットで取り寄せるしかなかった。そんな奏であったが、建造はそんな奏を愛していた。体が弱いことを理解するとともに、奏を大事にしていた。
そんな建造と奏であったが、なかなか家に帰ってこない建造に対し、いつでも帰ってこれるように支度をしている奏、仲むつまじい生活を送っていた。そんな2人に対し、点からの贈り物が届いたのは2006年初めごろだった。
「奏さん、おめでとうございます。妊娠してますよ」
ある病院の産婦人科の看護婦から奏に妊娠したことを言うと、奏、
「えっ、本当ですの!!」
と驚く。奏、すぐに建造にメールを送ると、すぐに奏のケータイが鳴る。奏、それをとると、
「本当にそうなのか。よかったじゃないか、奏。ヤッター、ヤッター」
と、建造は奏のケータイからも大きく聞こえるくらい大きな声で喜んでいた。
そして、2006年8月10日…。
「生まれましたよ。大きな女の子ですよ」
と、分娩室の扉の前で待っていた建造に助産婦さんが赤ちゃんが生まれたことを告げると、建造は、
「やったー。ついに俺たちに待望の赤ちゃんが生まれた!!」
と、大きく喜ぶとともに、
「あの体が弱い奏のことだ。あまり無理をしたと思っていたが、それでも無事だったのはとても嬉しいぞ。本当に頑張ったな、奏」
と、さらに喜んでいた。
その翌日。
「大きな赤ちゃんですね。とても健康ですよ。いや、とても体が丈夫に見えますよ。これなら将来は安泰ですね」
と、看護婦から赤ちゃんのことを言われると、建造、
「そうですね。私たちにとってこの赤ちゃんは希望の星となります。本当にありがとうございました」
と、看護婦さんに御礼を言う。
その後、建造は赤ちゃんと一緒にいる奏のそばに行くと、すぐに、
「奏、よかったな。大変丈夫な赤ちゃんだ」
と、奏を褒めると、奏は、
「それはありがとうございます、あなた」
と逆に御礼を言う。
が、そのときだった。
ゴホン ゴホン
と、突然咳をする奏。それを見た建造、
「奏、おまえ、まさか無理しすぎたんじゃないか」
と、奏を心配すると、奏、
「そんなことないですよ。私も赤ちゃんもともに大丈夫ですよ」
と、元気な姿を建造に見せる。が、建造はすぐに、
「あまり無理するな。ちゃんと横に寝てろ」
と言うと、奏、
「そうですか。それじゃそうします」
と、ベッドに横になった。
そんな奏に対し、建造はあることを言った。
「奏、この子の名前、もう決めたぞ」
これには奏、
「名前ですか。なんでしょうか?」
と聞くと、建造はこう答えた。
「多恵。多くの恵みをもたらす。この子は将来、俺みたいに多くの人たちに恵みをもたらす。そして、奏みたいに優しい子に育てたい。おれはそう思って多恵と名付けた」
これには奏、
「とてもいい名前ですね。多恵、あなたの名前は今日から多恵ですね」
と、赤ちゃんを癒す。これには建造、
(この赤ちゃんは私たちの宝だ。絶対いい子に育ててやる)
と心に決めるも、逆に、
(奏、無理していなければいいのだが…)
と、奏のことを心配する建造であった。