リョカはポケモン達になるべく頼らず、自分自身でモンスターを倒すために武器と防具、服を揃えることにした。
幸い、今まで持っていたお金がこの世界の通貨になっていた為、お金には困っていない。
リョカは装備を揃える為、都市の中央にある塔、バベルの商業施設であるヘファイストスファミリアバベル支店に向かった。
四階から八階をぶらぶらと練り歩き、気に入る武器と防具と服を探す。
ふいに、呼ばれた気がしたリョカは、ある店の一角に放置してある美しい鞘(紺色に銀色の繊細な模様の施されたもの)に収まった剣を見付けた。
リョカは購入するために剣を持った。驚くべきことに、その剣は羽のように軽かった。
軽すぎるので、すぐに折れてしまうのではと危惧したリョカは悩んだ。
「おお! その剣に選ばれたのだな!」
その時、おじさんがリョカに声を掛けてきた。
「選ばれた?」
「ああ、その剣は選ばれた者しか持てない。選ばれていないと重すぎて持てないんだ。ここには大の大人五人がかりで持ってきたくらいだ。あんたは選ばれたのさ」
「……この剣について詳しく教えて下さい」
「なら、兄ちゃん、ちょっと剣を鞘から抜いて見せてくれ」
リョカは剣を鞘から抜いて見せた。
刀身はサファイアのように透き通った美しい青。持ち手はミスリル銀で出来ている。
「おお……美しいな、よし、この剣だが、持ち主と共に成長し、悪なる者を祓う役割を持つ聖剣と呼ばれている。剣の名前は分からないな」
「充分です。買います」
「まいどあり」
聖剣は元々の持ち主が無償で提供してくれたらしく、無料に近い値段で買うことができた。
その後、動きやすい服はすぐに見つかった。特殊な糸が使われ、魔法が掛かったその服は高かったが、払えなくもなかった。
次は、動きやすい軽鎧を探して、八階まで向かった。
八階は目も飛び出るような金額のものばかりなのだが、チャンピオンであったリョカの懐はあたたかすぎるくらいだから、リョカは全然、気にならなかった。
リョカはある店に入ると、端の方に忘れ去られたように箱の中に入っている軽鎧を見付けた。
購入しようと、リョカは店員がいるカウンターに向かった。
すると、店員と揉めているくせっ毛茶髪の青年がいるのに気付いた。
「だから、なんで僕の作品は端の方に放置されるんですか!」
「だから、軽鎧はあんまり売れないんだよ」
「軽鎧の美学を知らないんですか!?」
白熱しそうな感じだったので、リョカは先に声を掛けることにした。
「あのー」
「あ、はい、なんでしょう」
「これください」
リョカが箱に入った軽鎧を見せると、二人は目を見張った。
「! こ、これは、僕が作った軽鎧! 気に入ってくれたんですか!?」
「え、ええ、素敵だと思って……」
「あ、ありがとう!」
青年はリョカの手を握り、涙を浮かべた。
リョカは会計を済ませると、青年と話すことになった。
「僕の軽鎧を買ってくれてありがとう。僕はアルン・フィフィーニアだ」
「俺はリョカ・タチバナ」
よろしく、とリョカがアルンに手を差し伸べた。アルンは目を瞬かせるとリョカの手を取り、笑顔を浮かべた。
「僕の名字を聞いても驚かないんだね」
これでも名門なんだよ、と言ってアルンは笑った。
「オラリオには来たばかりなので……」
「リョカは金持ちのボンボンなのか?」
八階の装備はいくら隅っこにあろうと、相当な価格になる。なので、オラリオに来たばかりで買えるというのは余程の金持ちでなければ無理だ。
「いや、このお金は俺が稼いだんだ」
リョカは笑顔で爽やかに言い放った。
「君、若いのに、凄いね……どうやって稼いだのか聞いてもいい?」
「ああ、出てこい、ルカリオ」
リョカはルカリオをモンスターボールから出した。
「!?」
「この子はポケモン。俺の故郷ではポケモン達を戦わせることで賞金を得たりする」
「凄いね、テイムモンスター?」
「まあ、似たようなもんだけど、こいつは俺の仲間だ」
「へぇ、かっこいいね……いいね、ルカリオってこの子だよね?」
「ああ、」
「この子の鎧も作ってあげるよ」
アルンはそう言うと、ルカリオの採寸を始めた。
ルカリオは戸惑いつつも、敵意がないアルンの好きにさせていた。
「よし、他にはいるかな?」
「いるよ、でてこい、みんな」
出てきたのはセレビィ、ピカチュウ、ニンフィア、スイクン、エンテイだった。
ルギア、ゼルネアスは大きい為、ファミリアで留守番中だ。
何故、リョカが手持ち以外のポケモンを持っていたかというと、イベントリにポケモン達を入れていたからだった。
イベントリには不思議な力があり、ポケモンを入れると、傷がすぐに回復するのだ。
ポケモン達はリョカと離れたくないという子ばかりなので、イベントリに入っているらしい。
「うわぁ、この子可愛い……」
アルンが思わず、といった感じで抱き上げたのはニンフィアだった。
「うちの子はみんな可愛いぞ」
「親バカか」
びしりと、リョカにツッコミを入れたアルンはニンフィアに頬ずりした。
ニンフィアは困惑しつつも、アルンの腕からするりと抜け出した。
「ああっ」
アルンが悲壮な声を発したが、ニンフィアは振り返りもせず、リョカの後ろに隠れた。
「まぁ、今ので大体のサイズは分かったから大丈夫」
(それも何か怖い)
「じゃあ、他のみんなの採寸もしてくれるか?」
「うん」
アルンは素早く採寸を済ました。
「じゃ、一ヶ月後には作っておくからね」
「あ、俺はヘルメスファミリアだからな」
「僕はヘファイストスファミリアだよ、じゃあねー!」
アルンは創作意欲が湧くぞー!と言いながら走り去った。
「大丈夫か、あれ、」
ポケモン達はさあ?とでも言うように鳴いた。
朝の日課である鍛錬をリョカはしていた。
ルカリオと体術の稽古をする。これは彼がリオルのときからずっとしていることだった。
神から与えられたスキルによって動きやすい身体だが、ルカリオよりも自身がまだまだ弱いということを感じていた。
「ありがとうございました、ルカリオ」
「ありがとうございました、リョカ、強くなったな」
ルカリオは波動の力で言葉を操ることもできる。
「まだまだだよ、ルカリオ、でも、ありがとな」
(否、実際にリョカは強くなっているのだが……まあ、いいか)
「おーい、リョカ、今度は俺と稽古だ」
と言って、リョカに声をかけてきたのは虎人のファルガーだった。
彼は大剣使いの剣士で、リョカが剣を手に入れてから稽古を付けてくれていた。
「おねがいします」
「あー、もう、お終い。続きは明日だ」
「えー」
「えー、じゃない、体力オバケが、お前に付き合ってたら日が暮れる、それに、今日は行くんだろ?……ダンジョンに」
「はい、そろそろ行かないとですね」
リョカはワクワクした表情でバベルを見遣った。
「無理すんなよ」
「はい!」
リョカは笑顔でファルガーに応えた。