ゴジラVSガイガン2019   作:マイケル社長

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―爪痕ー

・6月5日 火曜日 6:08 北海道札幌市中央区北3条西6丁目

 

北海道庁 本庁舎3階 知事執務室

 

 

一橋以下職員は、オホーツク地方の自治体から上がる情報とテレビの中継を注視し、状況把握に努めていた。

 

夜が明けて道警、STVを先駆けに各放送局がヘリを飛ばしたことで、被害状況がより明らかになってきた。

 

網走市内は市街地を中心に、ゴジラの侵攻ルートが瓦礫の山と化していた。

 

特に手ひどいのが、JR網走駅付近の繁華街・商業地区だ。

 

碁盤の目状に綺麗に整備された市街地はもはや無法地帯、瓦礫やガラスが散乱し、市の一角はもはや車両での侵入は望むべくもなく、民間の土木工事会社による重機の導入を待つほかなかった。

 

さらに、もっとも被害が顕著だったのは、太平洋岸の厚岸町だった。

 

厚岸湾に突き出た半島の先、厚岸町中心部はゴジラの白熱光によって焼き尽くされ、町役場、高校、町営住宅といったコンクリート造りの建物が炎上―場所によっては高熱による融解―するため、消防車の放水ではまるで消火が間に合わない。これ以上の延焼を防ぐべく破壊消防に切り替えるも、文字通り焼石に水、消防署長と町の消防団長は撤退を命じる他術がなかった。

 

「弟子屈、大空町といった他の侵攻地域は比較的被害が軽微です。単に通過しただけにとどまったのが一因です」

 

副知事から矢継ぎ早に繰り出される深刻な報告にも、一橋は気丈に精神を保つべく努力していた。

 

「ただ、ゴジラ由来の放射能汚染は大変な問題です。網走、厚岸では消火・救助に向かった警察・消防に多数の被曝者が出てしまったものと見られます」

 

建物はまた建造すれば何とかなる。火災も、消火にせよ鎮火にせよ収束すれば活路はある。だが、ゴジラの被害でもっとも頭を悩ませるのが、高線量の放射能汚染だった。

 

「こちら、避難所となっている厚岸町小谷地区公民館前です」

 

テレビでは、NHKが厚岸町の様子を放映している。

 

「ここから見える厚岸町中心部は、現在でも激しく炎上しているのが確認できます。当初は消防による放水が行われましたが、高濃度の放射能が観測されたため、現在は消防・警察も立ち入り禁止。現在、放射能汚染に対応可能な釧路広域消防本部、及び陸上自衛隊化学科NBC部隊の到着が待たれます」

 

カメラは憔悴しきった町民を映し、控えていた初老の男性にマイクを向けた。

 

「公民館長の樋村さんです。樋村さん、昨夜の様子をお話いただきたいのですが」

 

「はい。えー、明け方でしたか。町の防災無線で」

 

すると背後から、煤だらけの消防服に身を包んだ男性が声を上げた。

 

「離せよ!おい、なんで自衛隊は来てくれなかったんだ!?」

 

「あの、すみません・・・」レポーターを完全無視し、男性が息巻く。

 

「せめてゴジラに攻撃を加えていれば、もしかしたら倒せたか、少なくとも進路は変わっていたかもしんねーぞ!なんで出動しねーんだよ!」

 

「やめろって!」「立山さん下がってください!」

 

取り巻きの制止にもかまわず、カメラに近寄る。

 

「おまけにこっちが必死に消火しようとしたら、放射能とかふざけんじゃねーよ!最前線に立ったうちの若い団員どうしてくれんだよ!?」

 

「以上、厚岸町の現場からでした」

 

無理やり中継を終わらせようとしてもなお、「このままで済むと思うなよ、オレは出るとこ出てやるからな!!」と叫んでいた。

 

一橋は頭を抱えた。あの男性の怒号はすべて、自分に向けられたも同然だった。

 

「ゴジラの状況は?」

 

なんとか気力を保ち、副知事に尋ねた。

 

「太平洋へ抜けた後、下北沖100キロの地点までは自衛隊も把握してましたが、現在見失ったそうです。海上自衛隊による探索が続けられています」

 

言葉を発せず頷いた。

 

 

 

 

 

同日 6:12 大阪府庁舎

 

 

ゴジラによる惨禍は、庁舎会議室に集まった各府県知事も確認していた。

 

あの消防団と思われる男性の怒号は、誰の耳にも強く残った。

 

「ゴジラは現在、海上自衛隊の監視下にあるそうですが、正確な居場所は把握できていないそうです」

 

大阪府の職員から報告があった。

 

「仮に把握できたとして、現況、どう対処すればいいのやら・・・」

 

原田はとっくに出されたお茶を飲み干すと、噴飯やるかたなくつぶやいた。

 

「次、どこに現れるかわかったモンじゃありませんね」

 

ぼんやりとした会田の言葉に、誰もがやや苛立つと同時に、次の事態を想像した。

 

「失礼します」

 

どうにもならない空気を打ち破るかのように、職員が入ってきた。

 

「例のカマキリ事案に関して、京都大学から先生がいらしてます」

 

通してくれ、と原田が頷くと、無造作にうちわをあおぎながら、ポロシャツに薄汚いチノパン、洗髪してないのか、髪の毛がべったりとした小柄の男性が入ってきた。

 

「呼ばれたから来ました、京都大学大学院、生命科学研究科の剱崎です」

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