ゴジラVSガイガン2019   作:マイケル社長

34 / 44
ー決戦ー

6月6日 水曜日 6:20 東京都千代田区永田町 首相官邸

 

 

地下一階、危機管理センターに急遽仕付けられた総理執務室にて、瀬戸は続々と押し寄せる職員からの報告に聞き入っていた。

 

総務省からは東京大停電前から発生していた日本各地の災害状況、財務省からは40時間東京の経済が沈黙したことによる悪影響の説明、外務省からはエールフランス機墜落に関するフランス政府からの説明要求と国連安保理による日本国内での武力行使作戦、関連して国土交通省からはエールフランス機墜落のレクチャーと、停滞していた問題が破裂したような有様であった。

 

だが目下、日本政府の最優先課題は東京に出現したゴジラと、カマキラスが進化したと思われる怪獣への対応であった。

 

瀬戸はゴジラ及びカマキラス関連案件以外は後回しにするとし、官邸危機管理室、国家安全保障局、防衛省、警察・消防の要職を執務室に集めた。

 

「すると、事態対処への準備は整っているんだね?」

 

報告を聞き終え、瀬戸は仲川国家安全保障局長に訊いた(混乱により、浦野防衛大臣とは連絡つかず)。

 

「はい、元よりカマキラス・・・例の、カマキリのことですが、八田部神奈川県知事による治安出動要請を請け、その対応に当たるべく用意をしていたところでした」

 

瀬戸は頷き、望月に向き直った。

 

「では、あとは発令のみだな?」

 

「おっしゃる通りです。自衛隊法第76条、並びに怪獣対策基本法第18条に基づき、内閣総理大臣命による、怪獣掃討のための防衛出動発令要件は整っています」

 

瀬戸は軽く息を吐くと、正面を見据えた。

 

「わかった。実行に移してくれ」

 

神妙な面持ちで頷き、防衛省の職員は席を立った。

 

「とはいえ・・・」

 

瀬戸は渋い顔をした。

 

「都民の避難が進んでいるとは思えんが・・・」

 

誰もが顔を背け、視線を泳がせた。

 

「しかし総理、これ以上の被害拡大を防ぐためには・・・」

 

菊池の言葉に、瀬戸も視線を逸らせた。

 

「第一、ゴジラとあの怪獣―映像ではガイガンと呼ばれてますが―に対して、自衛隊の兵器がどれだけ有効となるか、実証がありません」

 

米沢首相補佐官が脇から口を出した。

 

「最善を願うとすれば」

 

隣の望月が瀬戸に耳打ちする。

 

「自衛隊の武力行使前に、双方、共倒れになってくれることですなあ」

 

瀬戸は唇を結び、大きく頷くばかりだった。

 

 

 

 

 

・同時刻 東京都中央区築地五丁目 

 

 

築地界隈を破壊しながら、ゴジラとガイガンは組み合ったまま力比べをするように力を圧し合っていた。

 

ゴジラが幾度か放った拳はガイガンの硬い皮膚と鱗に弾かれ、カマキラスの鎌をいとも簡単に引き抜いた怪力もガイガンには歯が立たなかった。

 

ガイガンの喉笛を狙い、首に喰らいつこうとするゴジラに、ガイガンは敢えて自身の胸部を張り出した。胴体の中央に生えた刃のような突起に顔が刺さり、苦痛の咆哮を上げるゴジラを捕らえ、鎌を頭に振り下ろした。

 

ゴジラの脳天から赤黒い血が噴き出し、顔に刺さった突起がさらに喰い込んだ。

 

無理やり顔を引き抜き、ゴジラは角度を変え斜めからガイガンの喉笛を狙った。だがガイガンは素早く鎌を横に払い、突進するゴジラを切り裂いた。

 

首を裂かれ、さらに多くの血が溢れた。苦悶に唸るゴジラに、ガイガンは続けざまに鎌を振るった。

 

これまでのカマキラスとは比べ物にならないほど鋭利かつ硬く強化されたガイガンの鎌は、ゴジラの皮下組織まで難なく到達、厚い皮膚に保護されていた血を流させることもたやすいことだった。

 

呻き声を上げるゴジラは完全に攻撃の手が止まり、ガイガンに決定的な好機を与えた。

 

その巨大さからは想像もつかぬ速度で身体をひねり回し、空を切って尻尾が真一文字にゴジラの腹部を切り裂いた。

 

より激しく出血し、ゴジラは勢いよく朝日新聞東京本社に倒れ込んだ。立ち上げるのに苦しむゴジラに近寄り、ガイガンは何度も足蹴にした上、やはりナイフのように尖った足でゴジラの傷口を抉った。

 

苦痛に唸り、ゴジラは瓦礫の中でもがく。もっとも大きい腹部の傷口を、ガイガンは容赦なく踏みつけた。血しぶきが飛び、周囲を赤黒く染めた。

 

腹部を踏まれつつ、ゴジラは渾身の力で身を起こし、ガイガンはバランスを崩し転倒した。ふらつきながらもガイガンを睨みつけ、口を閉じ歯を固く噛んだ。

 

ゴジラの背鰭が沸騰するように熱を発し、全身に力をためる。

 

やがてゴジラは大きく口を開き、起き上がったガイガンに正面から白熱光を浴びせた。鋭い咆哮が上がり、ガイガンは後ずさる。

 

白熱光を吐き出したままゴジラは距離をつめ、近距離から吐き続けた。

 

高熱に触れた部分から白煙が上がり、ガイガンは叫んだまま仰向けに倒れた。東京国税局が倒壊し、白熱光の余波でコンクリートの瓦礫が融解、発火した。灼熱のガスをなおも吐き出し、ゴジラは地面に屈したガイガンを蹴飛ばした。

 

重量級のゴジラの脚は、硬質化したガイガンの皮膚をも砕いた。浜離宮朝日ホールに頭から突っ込んだガイガンは、瓦礫を払いながら立ち上がった。

 

二匹は睨み合いつつ、間合いを保ち様子をうかがった。

 

ゴジラは首と腹部から出血が止まらず、白と黒がはっきり見て取れた眼は血で染まっていた。相対するガイガンも、ゴジラに蹴られた脇腹にヒビが入り、黄緑の液体が流れだしている。また白熱光を浴びた背中と腹部は黒ずみ、うっすらと煙が上がっている。

 

勢いよく吼えると、ゴジラは力を込めて踏み出し、素早くガイガンの首に牙を突き立てようとした。先ほどより身を低くし、振るわれたガイガンの鎌が背鰭をかすった。

 

だが牙が到達する直前でガイガンは身を引き、中途半端に頭突きした程度になった。詰められた間合いを見逃さず、今度はガイガンが両手をゴジラの背中に突き刺した。痛みで口を開いたゴジラは、その勢いでガイガンの肩に喰らいついた。

 

絶叫しつつも、ガイガンはぐいぐいと鎌を喰い込ませていく。呼応するように、ゴジラの牙もガイガンの皮膚を貫いていく。

 

膠着状態のまま、二匹はもがき、足が環二通りを踏み外して浜離宮の堀に突っ込み、バランスを崩した拍子にゴジラは思わず口を放した。それに引っ張られ、鎌が抜けないままガイガンもゴジラと共に浜離宮恩賜庭園に倒れ、堀をのたうち回った。堀の水はゴジラの血とガイガンの体液でグロテスクに染まり、美しい緑の庭園を汚した。

 

先に立ち上がったガイガンから逃れるように、ゴジラは転げまわって距離を作った。態勢が整わないゴジラに猛然と向かうガイガンだったが、ゴジラは敢えて身を起こさず、身をよじって尻尾を振り上げた。

 

強烈な一撃が顔面を直撃し、ガイガンは勢い削がれふらついたが、転倒までには至らず、足を踏ん張った。

 

怒りに吼え、ガイガンは右の鎌を振りかざした。そのままゴジラの左目を抉るかと思いきや、ゴジラは口いっぱい開いて鎌を牙で受け止めた。

 

鋼鉄同士がこすれ合うような音を立てながら、ゴジラはより牙に力を込めた。ガイガンの鎌はヒビが走ったのち砕け落ち始め、さらに力が込められると、完全に崩壊した。ガイガンの鎌を、バリバリと噛み砕くゴジラ。

 

怯んだガイガンは残った左の鎌でゴジラを攻撃するが、決定打にはならずゴジラはより間合いを詰めた。

 

今度こそ首元に噛みつこうとした刹那、ガイガンの目が紅く光り、まるで火の粉を凝縮したような炎を口から吐いた。

 

ゴジラの白熱光には及ばぬ熱と威力だったが、ゴジラの勢いを止めるには充分だった。

 

身を引き、警戒しながら唸るゴジラに、ガイガンは炎を放った。射程距離においてもゴジラのそれに劣っていたが、ゴジラの皮膚が軽く焦げた。

 

思わぬ飛び道具に、ゴジラは距離を保ち、隙を窺い始めた。下手に突進すれば胴体の突起、背後からにせよ鞭のように鋭利な尻尾、そして片方を失いこそしたが、散々自身を切り裂いた鎌に、炎まで出してくる。

 

これまでゴジラの方が白熱光という武器があるため、やや優勢と思われたが、潮目が変わりつつあった。

 

ガイガンは短く吼えると、赤い目を光らせ、ゴジラを睨んだ。

 

下手に動かず、ゴジラはじっと様子をうかがう。

 

ガイガンの背中に生えた半透明の羽根に電気が走り、ひときわ強く目が光る。空気を切り裂くような音と共に、目からの光が線のように伸びた。

 

ゴジラの右肩口に当てられた光は、ゴジラの皮膚を焼き切った。その熱で瞬時に傷口が塞がれ出血こそしなかったが、右肩を穿たれたゴジラは悲鳴のような怒号を発し、築地から汐留交差点に横倒しになった。

 

地下を走る首都高に頭が喰い込み、動かない車列が爆発した。

 

黒煙で視界を確保できないゴジラに、ガイガンはもう一度光を発した。

 

一直線に走る赤い光はゴジラの尻尾に命中、激しく火花が散り、赤い光の線はそのままゴジラの背鰭を直撃した。

 

ゴジラの背中が爆発的に黒煙を噴き出し、うめき声を上げながらゴジラは転げ回った。

 

しばらくするとゴジラは動かなくなった。目はギョロギョロと動くが、もはや身を起こすほどの力もないのか、粗く唸りながら突っ伏してしまった。

 

背中の放電がより激しさを増し、ガイガンはゴジラを見下ろす恰好のまま啼いた。

 

黒煙が晴れ、ゴジラの首元が露わになった。ガイガンの眼光が強くなり、眼下のゴジラ目掛けて発射された。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。