ゴジラVSガイガン2019   作:マイケル社長

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ー決戦Ⅱー

・6月6日 木曜日 6:43

 

 

「「あぶない!」」

 

東京でゴジラとガイガンの争いを中継している近藤、そしてリアルタイムで映像を見ている大阪の尾形が同時に叫んだ。

 

身を乗り出した尾形に、列席の知事たちは驚きと奇異の視線を集中させた。

 

近藤自身、どこかでゴジラについ肩入れしたことを不思議には思った。

 

どちらの怪獣が勝つかわからぬし、いずれも重大な脅威には違いないのだが、あのガイガンの容姿は、人間が到底感情移入できるものではなかった。

 

あれなら、まだゴジラの方が・・・否、近藤は頭を振った。ゴジラの恐ろしさは一般的なものしか知らないが、ゴジラがもたらした被害を考えれば、こちらも感情移入などできるはずもなかったのだが・・・。

 

近藤は息を呑み、推移を見守った。ガイガンが勝つかもしれないー。

 

ガイガンの目がひときわ輝き、いま光の鉄槌をゴジラに注がんとしたときだった。

 

呻きながらも振るったゴジラの尻尾がガイガンの足を打ち付け、ガイガンはバランスを崩し身体が横倒しになった。

 

間一髪、放たれた赤い光の線はゴジラを大きく外れた。勢い斜め上方向へと伸びた先の日本テレビタワー27階付近に直撃し、破裂するように切断された上層階が落下、汐留界隈に降り注いだ。

 

粉砕されたガラスと土煙が膨れ上がり、近藤は慌ててビルの影に走り込んだ。細かい破片が頭や肩に当たり、その場にうずくまる。

 

地震のような揺れが走り、近藤は顔を上げた。もうもうと立ち込める土煙の向こうで、ゴジラが瓦礫を振り払いながら立ち上がったのだ。体勢を整えたガイガンを睨み、吼えながら突進する。

 

ガイガンの腹部中央にある突起を避け、脇腹に激しく頭突きするゴジラ。仰け反ったガイガンを押し込み、さらに足を踏ん張る。

 

ゴジラの必死の勢いにガイガンは後ずさり、コンラッド東京に背中をのめり込ませた。ガラスや瓦礫が洪水のように降り注ぎ、もがくガイガンはゴジラの背中に右の鎌を打ち込む。

 

血が噴き出すもかまわず、ゴジラは突進の勢いを緩めなかった。争う2匹に向かってコンラッド東京が倒れ、瓦礫に呑み込まれた。

 

飛び散るガラスや瓦礫から逃れ、近藤は瓦礫の中を窺った。瓦礫を弾き飛ばしつつ、なおも2匹は組み争っていた。

 

ガイガンの鎌がゴジラの背中を切り裂くが、ゴジラは頭に続いて手の爪をガイガンの腹部に食い込ませた。

 

ゴジラは赤黒い血を、ガイガンは黄緑色の体液を撒き散らしながら、激しく押し合う。日本通運ビル、東京ツインパークス両ビル、首都高速都心環状線を叩き壊し2匹は揉み合う。やがてゴジラは頭を上げ、ガイガンの首筋を狙い澄ました。猛然と牙を突き立て、トドメを刺さんとする。

 

ところが、ガイガンはひと啼きすると、口を閉じて力を込めた。身体中心に生えた鋭い突起群が破裂するような音を立てた。ミサイルのように勢いよく放出された突起は、ゴジラの顔に首、腕や胴体にすべて突き刺さった。

 

うち左脇腹に撃ち込まれた突起は、反対側の背中から飛び出した。ゴジラの身体を貫通したのだ。追うように大量の血液が噴き出し、ゴジラは前のめりに倒れた。

 

みずから流す血液だまりで苦しむゴジラを見下ろし、ガイガンは嗤うように啼くと、身を素早く回転させた。尾の先端がゴジラの背鰭を斬り落とし、返す尾はゴジラの右脚から腹部に大きな傷を作った。

 

切断された背鰭から白煙が上がり、ゴジラは苦し紛れに白熱光を吐き出す。周囲の瓦礫やアスファルトが融解し、煮えたぎった。四つん這いで逃れようとするゴジラを、ガイガンは足で踏みつける。背鰭の痕から出血し、そこを執拗に狙う。ガイガンの足はゴジラの皮膚を突き破り、ゴジラが激しく呻いた。

 

怒りに満ちた目を向けたゴジラの顔を蹴り上げ、ガイガンは勝ち誇ったように吼えた。右手の鎌を振り上げ、ゴジラの背中へ刺す。白煙混じりの血を噴き出し、苦しみの咆哮がこだました。

 

息を呑みながら撮影する近藤の動画に、首相官邸、大阪府庁舎で観ている政府・自治体首脳たちは驚きの声を上げた。

 

「ゴジラがやられる!」

 

大阪の原田が声を上げた。

 

白熱光を吐こうとしたゴジラは、放出時の放熱器官である背鰭が大きく損傷したことで、ガス欠の車のように息切れた。最大の武器が出せなくなったことを確認し、ガイガンは追って背中を斬り裂く。

 

足元を狙うべく、最後の力を振り絞って動かした尻尾を、ガイガンは左足で踏みつけた。反撃の手段を失ったゴジラは、なおも一矢報うべく白熱光を吐かんとするが、エネルギーが放出されず苦しげに唸った。

 

勝負は決着の刻を迎えようとしていた。近藤も、そして映像を観ている誰もが、ゴジラが負けることを確信していた。

 

だが近藤は、後頭部付近にわずかに残ったゴジラの背鰭が帯電するように青く発光していることに気づいた。

 

ゴジラの断末魔だろうか。だがその帯電光は徐々に大きくなっていった。それは伝播するように、ゴジラの背中を包み始めた。ゴジラの口から白煙が上がり始め、やがてそれは発光するような青色の煙となった。ゴジラは大きく息を吐くと、青い煙は周囲の瓦礫や鉄骨を飴細工のように溶かした。

 

異変に気付いたガイガンは、トドメを刺すべく傷つけたゴジラの背中に向けて鎌を振り下ろした。

 

誰もが、ゴジラの死を直感した。

 

次の瞬間、凄まじい青き爆発が起こり、近藤は思わず目を閉じた。目の前でカメラのフラッシュを焚かれたような強烈な光が近藤の網膜に焼きつき、刹那、近藤の身体が一瞬浮き、猛烈な風が起こった。

 

何かの破片やガラスが当たり、目の衝撃と大轟音、身体の痛みで近藤はスマホを落とした。

 

映像が途絶え、誰もが撮影者といま起きた事を案じた。

 

 

 

 

 

 

全身の痛みに、近藤は意識を覚醒させた。短時間だが失神したらしい。

 

耳鳴りが続き、近藤は頭を振った。

 

いまだ目には先ほど炸裂した閃光の残滓が浮かぶが、どうにか見えるようになってきた。

 

辺りを見回し、近藤はガラスに埋まったスマホを見つけた。

 

幸いにもスマホは無事で、近藤は再びゴジラとガイガンの方へスマホを向けた。

 

瓦礫の先に、右腕を失ったガイガンが絶叫を上げていた。その向こうで、何かがゆっくりと起き上がった。

 

全身を青く帯電させ、口から件の青い煙を立ち昇らせたゴジラだった。

 

怒りをあらわすように大きく吼え、一層青い光がゴジラを包んだ。ガイガンが最後に抉ったであろう背中の傷口からは、おびただしい血液と共に口から昇るのと同じような青い煙が噴き出していた。

 

ゴジラはガイガンを見据え、息を吸い込んだ。無いはずの背鰭を包むように背中が発光し、大きく口を開けた。

 

白熱光ではなく、濁流のような青い煙がガイガンを襲った。ガスのように空気に伝播する白熱光とは違い、不安定ながらも一直線にガイガンへ放たれていた。

 

ガイガンは腹部から爆発的に白煙を上げ、甲高く啼いた。

 

もう一度息を吸い込み、ゴジラは口を開けた。

 

青い煙はより直線的にガイガンへ向かった。当てられたガイガンの肩口が爆発し、火柱が上がった。

 

苦しむガイガンに、ゴジラは容赦せずもう一度放った。もはや青い煙や白熱光などではなかった。超高熱の吐息が太い一直線となってガイガンを焼く。超高熱の直線・・・熱線と表現するのがもっとも当てはまった。

 

ゴジラは歯ぎしりし、怒りの唸り声を上げながらガイガンと距離を詰めた。再び背中が発光し、より強度を増した熱線が放たれた。

 

爆発的にガイガンは弾き飛ばされ、電通本社ビルに激突した。ガイガンの胴体が発火し、熱線の煽りを受けて電通ビルのガラスがひしゃげた。

 

電通ビルはガイガンへ向けてゆっくりと傾き、建物中央付近で折れた。凄まじい質量の瓦礫がガイガンを襲い、身を伏せるように身体を曲げる。

 

大きく吼えると、ゴジラは渾身の熱線を放った。瓦礫と燃え上がる身体に喘ぐガイガンに直撃し、大質量の瓦礫が吹き飛び、次いで猛烈な火球が膨れ上がった。火山の噴火を思わせるその爆発はガイガンと電通ビル、周囲のロイヤルパークホテル、カレッタ汐留を飲み込み、やがて大爆発した。

 

 

 

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