ゴジラVSガイガン2019   作:マイケル社長

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ー爾後ー

 

 

東京大停電、そしてカマキラス、ガイガン、ゴジラの東京襲撃からおよそ1か月が経過した。

 

本格的な混乱が始まってから40時間に過ぎないとはいえ、曲がりなりにも日本の首都・東京が機能を喪失したという前代未聞の事態は、政治的・経済的には当然として、復旧後もさまざまな混乱と騒動を巻き起こした。

 

やむを得ない事態であったとはいえ、日本の国家中枢で権力の空白が生まれたという事実は、国家体制を揺るがす議論に直結した。

 

与党では今回の事態を鑑み、有事法制の見直しを図る専門部会が立ち上がったが、野党はもちろん与党内においても、権力の置き場、行使に関する議論が紛糾した。

 

外交面では、自国機墜落後調査や追求が遅々として進まないことにフランス政府が抗議したことへの対応、未遂とはいえ一時国連による日本統治まで検討されたことの後処理に追われ、珍しく闇に包まれていた霞ヶ関はこれまで以上に夜を照らすこととなった。

 

経済的混乱も激しかった。文字通り都内の物流が停止したことによる損失はもちろん、ゴジラが豊洲市場を物理的に破壊したことで日本の食糧供給体制すら崩壊の懸念が生じた(こちらについては千葉、横浜、埼玉など、近郊市場への暫定的機能移転によって幾分か混乱は収束した)。

 

また停電復帰後も、そのままエンジンが故障してしまった車両や、持ち主が現れない車両も数多く発生。修理、あるいはレッカー移動の手続きにも手間取ったこともあり、6月中旬まで都内の道路は深刻な渋滞に悩まされた。従って物流の完全な復旧にも時間を要し、ヤマト、日通といった物流各社が通常営業に復帰できたのは6月も下旬になってからのことだった。

 

鉄道各線は、電気さえ通じれば運行再開できたため道路交通ほどの支障はきたさなかったが、ゴジラやガイガンに破壊されたゆりかもめ、りんかい線、JR新橋駅界隈は運行再開の目処が立たず、山手線もそれぞれ浜松町、有楽町にて当面折り返し運転をすることとなった。

 

金融市場においては、日本国債の暴落は避けられ、また金融モラトリアム発動により官民併せて債務不履行に陥る危険性はなくなった。

 

とはいえ、復興需要から円高が急激に加速、6月21日には戦後最高値となる1ドル71円を記録。7月に入っても下落の兆しはなく、日経平均株価は戦後最安値に接近した。

 

だが極端な円高は救いの神ともなった。7月に入り、1リットル当たりのガソリン価格が約20年ぶりに100円を切ったため、復興需要に貢献する結果となった。海外からの資材費も下落し、経産省が試算した当初予想よりも復興は促進されるという見通しが立った。

 

事件発生から4週間後の7月1日、政府は間接的損害も含めた今回の被害総額が述べ60兆円に達すると発表。7月中に復興予算、経済対策を含めた臨時予算委員会が開催されることとなり、与野党はさらなる対応に追われた。

 

また警察庁は、一連の怪獣災害による犠牲者が12万7000名に及ぶと発表。昭和29年のゴジラ東京上陸、翌年のゴジラ、アンギラスによる大阪襲撃に匹敵する、戦後最悪の災害となったと談話を発表した。

 

遺体がまったく無い犠牲者も多く、遺族への対応も難航。葬儀会社も寺院も圧倒的に足りず、自治体や企業などが合同の葬儀をあげざるを得ず、遺族もそれで納得する他ないケースが多発した。

 

事態の収束に伴うかのように、5月から日本各地で頻発していた地震、火山噴火が収まりつつあった。全国的な異常高温も低下し、四国〜東日本には例年通り梅雨入りが宣言された。

 

例外的な異常事態が、6月20日に台湾南部の台南市に発生した。

 

体長が10メートルほどの巨大な蟹と亀が突如台南市の漁港に出現。争いながら陸地へ上がってきたのだ。

 

台湾空軍の爆撃によって蟹と亀は駆除されたが、ゴジラやカマキラス、ガイガンとの関連も不明なままだった(6月5日に、日本の茨城県に上陸しゴジラに焼き殺された巨大なイカとの関係を指摘する声もあったが、確証はなかった)。

 

そして、最大の脅威であるゴジラであるが、ガイガンとの戦いを終えて東京湾から太平洋へ逃れて以降、行方が分からなくなっていた。

 

海上自衛隊横須賀基地所属の潜水艦、ずいりゅう、そうりゅうによる追跡、探索がただちに実施されたが、レーダー、ソナーいずれにも反応がなかった。

 

ただ、ゴジラが流す赤黒い血液を追跡したところ、小笠原諸島から日本海溝へ伸びており、潜水艦はおろか人類が到達できぬ深い海の底へ逃れたことは明らかだった。

 

流出した血液量から推定して、ゴジラは致死的なダメージを負っていることは疑いのないことであり、日本海溝へ沈んだまま死亡した、あるいは二度と浮き上がれぬことが出来ないのではないか、という論調が強まりつつあった。

 

海上自衛隊はそれでも、小笠原諸島沖の警戒を緩めなかったが、ゴジラ死亡説、そして結果的にゴジラが首都機能喪失という事態を打開したこともあり、ネット上ではゴジラ救世主論なることまで語られ出した。

 

いずれにせよ、日本に深刻な損害をもたらした事件ではあったが、徐々に復興の兆しが見えてきたこと、少なくとも直近の怪獣上陸は考えられないこともあり、世間も人々も日常として、事件後を歩み始めていた。

 

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