・6月4日 月曜日 11:27 新潟県妙高市池の平地区
「えー、妙高市池の平の公民館です。避難者が多数集まってますが、ゆったりできないとのことで、駐車場の車で夜を明かす人も数多くいます」
近藤は自身のiPhoneで駐車場に並んだ車両を撮りながら、避難場所の様子を語りかける。
「さっき、住人のおじいちゃんに話を聞けました。4日前からまともに風呂に入っておらず、公民館に異臭が漂っている、この暑さで男は公民館の水道で水浴びできるが、女の人は大変だ、自分も車に寝泊まりしてて、節々痛い、そう話してました」
近藤が撮影している様子は、自身のチャンネルを通してYouTube上でライブ配信されている。
「昨日訪れた、山形の鳥海山では、地元の旅館や国民宿舎が自治体と協定結んで、避難者の収容にもある程度の個室とプライバシーが与えられてました。まあ、こういうところにも自治体の災害への取り組みが顕著に現れてきます」
近くを通った行政関係者らしき男性が、近藤を怪訝な目で見ている。
額に浮かぶ汗を拭うと、今度は未だ噴煙を上げ続ける焼山へiPhoneを向けた。
「昨夜、また小さな火砕流が観測されたそうです。妙高杉ノ原、黒姫といったスキー場は完全に飲み込まれ、飲み込まれた近くの旅館・ホテル跡では救助作業が夜を徹して続けられてます。さっきね、火砕流の現場まで近づいたら、おまわりさんに叱られて戻ってきました。やっぱダメなんだね、そういうの」
『復旧の邪魔』『おまわりさんコイツです』『逮捕しろよこんなヤツ』
YouTubeのコメント欄に辛辣な言葉が投げかけられる。
「もう一か所、避難場所を取材したら東京戻りまーす。上信越道が通行止めになってるから関越まわりで帰りまーす」
一度撮影を止め、あふれ出る汗を水飲み場で洗い流す。
なるほど、さっきの老人の言う通り、公民館の中から何とも言えぬ臭いが漂ってきた。
ただでさえここ最近の水不足で給水制限されている上、同時多発的に発生した災害のため自衛隊や行政のサービスも満足に行き届いているとは言い難い。
熱中症やいわゆるエコノミークラス症候群での災害関連死も出始めているが、噴火が沈静化する気配は今のところない。
近藤は自家用車のパジェロに乗り込むと、冷房を全開にして車を発進させた。
あまり褒められたものではないが、これから避難場所となってる妙高市役所を訪れ、災害支援の進捗を(アポなしで)取材するのだ。
スマホホルダーのiPhoneには、Yahoo!ニュースの号外が続々と流れてくる。
『避難長期化、相次ぐ災害』
『速報 石川県能登半島で震度4』
『猛暑で蜃気楼? 東京で“お化けカマキリ”目撃情報』