11月26日に日間ランキング33位でした!ありがとうございます!
今後もよろしくお願いします!!
<sideジャティス>
目の前にいる女性をため息混じりに眺める。
イヴ=イグナイト。
今代の
今は任務中だというのに、彼女の装いはいつもの特務分室の服装ではない。長袖の赤みがかったジャケットの下に、丈が短めの黒いワンピースというかなりラフな格好をしている。
それも対象の吸血鬼が中々見つからないことと、それから珍しいことにイヴの希望があったせいで、飲食店に入ることになったからだ。
「任務に集中できていない?」
この僕が?
いかにも美味しそうにサンドイッチを頬張っているイヴには聞こえないよう、彼女が先ほど言った言葉を小声で呟く。
そんなわけがない。と言いたいが、自覚はある。でなければ今回の任務、ここまで手こずってはいないだろう。
(それにしても……)
こうしてイヴと二人で居ると、あの日のことを思い出す。
その日の任務は外道魔術の討伐だった。それをイヴと共にこなした後、僕らは夜遅くで王都からかなり離れた場所ということもあり、一夜を近くの街にある宿で過ごすことにしたのだ。
そしてもう寝ようとしたときに、部屋のドアがノックされた。
「ジャティス、私よ。ちょっと開けなさい」
「……何かな。僕もそろそろ寝たいと思っているんだけど」
「あまり時間は取らせないわよ」
寝間着姿のイヴはそう言うと、堂々と部屋に入ってくる。少し図々しいとも思ったが、まぁ彼女には今更な話でもあるだろう。
「唐突だけど、貴方に聞きたいことがあってね」
「本当に唐突だね?ま、答えられることなら答えるさ」
僕がそう言うと、彼女はベッドに腰掛けて口を開く。
「貴方の夢は何?」
(何を聞くかと思えばそんなことか)
自然と口元が歪んだ。
そんなもの決まっている。
「正義を為すことさ」
そう。それこそが僕の為すべきこと。例えどのような手段を用いようとも、必ず悪をこの手で裁く。
「いや違うわよ」
「は?」
「だから、それは夢じゃないって言ったの」
しかしイヴは僕が言ったことを否定した。僕の正義を愚弄するのかと思わず殺気が溢れた瞬間、再び彼女は口を開く。
「貴方のそれは使命みたいなものよ」
「…………………………そうかもしれないね」
いやむしろ言われてみれば、夢というよりも使命と言うべきだろう。何だか釈然としないものはあるが。
「別にそれが夢でもいいんだけど」
「いいのかい」
「私が聞きたいのはその後なのよねぇ」
僕のジトっとした視線を無視して、イヴは指先で髪の毛を弄りながら続けた。
「それを為し終えたとして、それから貴方はどうしたいの?」
「…………………………」
イヴの問いに何も答えられず、ただ沈黙を返す。しかしそれは許さないとばかりに、無言で見つめられた。
視線を逸らして正直に告げる。
「………考えたこともなかったよ」
「ふぅん、そう。やっぱりねぇ」
僕の返事を予想していたのか、イヴは此方に視線を向けることなく呟く。
「別にそんなもの無くても構わないだろう」
何となくイヴの反応が気に喰わなくて睨みつけるような視線を向けたが、イヴは気にする素振りもなく足をぶらつかせる。
「そりゃね、絶対にないとダメなんて言わないわ。だけど」
少しの間を空けて、それから微笑みを浮かべながら言った。
「きっとある方がいいと思うの」
「………ふん、そうかい」
「そうよ」
言いたいことはもうないのか、イヴはベッドから立ち上がる。
「いきなり悪かったわね。お休みなさい、ジャティス」
それだけ言って部屋から出て行こうとするイヴの名前を呼ぶ。彼女は足を止めて振り向いた。
「何?」
「君の夢は何なのさ?」
気まぐれでそう尋ねると少しだけ悩むように黙り込み、そして静かに言葉を吐き出した。
「“守りたい”のよ、私は」
何を、とは言わなかった。
「見つけた」
イヴの声に意識を戻す。
「吸血鬼かい?」
「そうよ。これ頼むわね」
彼女はそう言って伝票を僕に押し付けると、音もなく走り出す。その姿はあっという間に見えなくなった。
ここ最近の彼女は、あれで身体強化系の魔術を使っていないらしい。末恐ろしいことこの上ない。
あの日からかなりの時間が経ったが、相変わらず夢なんてものはない。
しかしふとした拍子に、自分の夢は何なのか考えてしまうようにはなった。
「まぁ、先ずは任務といこうか」
すぐさま浮かび上がったものをかき消す。
「お会計ですか?」
「ん?あぁ、頼むよ」
店員に伝票を渡そうとした手が固る。
(高い……)
サンドイッチ二人分にしてはやけに高い。
ふと視線をイヴが座っていた席に向ければ、昼食以外の皿があった。恐らくはデザートの類だろう。それも一つや二つではない。
ブチリと何かが切れた気がした。
回想シーンやや強引な気がしてならない。こんなんですみません。
次回にようやくクロス要素出せれそうです。