伝票をジャティスに押しつけ………任せた私は、使い魔で捕捉した『カーミラ』の場所へと走っていた。
走りながら軍用コートを羽織り、髪飾りで髪を留める。このコートってどういう仕組みなのか、サイコロ程度の大きさにまでなる。持ち運びにホント便利。
ちなみに私は今、というか最近?魔術的な身体能力の補助は一切していない。
まぁしかし、それ以外による強化はしている。
“呼吸”。
それは『鬼滅の刃』という創作世界の人間たちが、人に仇為す鬼を殺すため身に付ける操身術のこと。
心肺活動を著しく増強させることにより、一度に大量の酸素を体内に取り込む。そうすることで、身体能力を瞬間的かつ大幅に上昇させることができる。
修行方法は完璧に我流でしかなく身に付けられるとも思っていなかったが、どうにかこうにか自分のものにすることができた。
………簡単にまとめはしたが、そう簡単なことじゃなかった。
魔術が使えない状況に陥った際のために、何かしらの戦闘手段を備えようとして、そして“呼吸”を身に付けようと考えたのはいい。……いいとして、だが。まずどうすればいいのか分からなかった。
当然のことながら『
“呼吸”ができるようになるまで何度も自分を痛めつけ、それだけでは足りず何度も死にかけた。
特に“全集中・常中”は会得するまでがホントにヤバかった。“全集中の呼吸”を一度行うことでさえ、かつては多大な危険を伴っていた。それを四六時中となれば、どれほどか言うまでもないだろう。
自分でも何故そこまでしたのかはっきりと言えない。ぶっちゃけ分からない。だが一回やり始めたことを諦めるというのを、私はしたくなかった。
(ホント損な性分よねぇ、我ながら)
一つ苦笑いを零して、意識を『カーミラ』を捉えている使い魔に割く。
「は?」
視界に映った光景に思わずそんな声が出る。
どういうわけかグレンがボロボロの『カーミラ』に襲われ、それを庇ったセラが傷を負い血を流していた。
「ーーー殺す」
自分でも驚くほど冷たい声だった。
ダンッ
一瞬にして視界が変わり、空中から勢いよく着地する。
『カーミラ』が先に私に気づき、一拍遅れてグレンも私に気づいた。
「ッ!?」
体中に痛みが走った。それを堪えて『カーミラ』を睨みつける。
使用した魔術は[ショート・テレポ]。
本来セリカさんしか使用できないような魔術だが、使い魔を座標にすれば私でもその真似事くらいできる。
しかしショートと言える距離でなかったせいか、尋常でないくらいの痛みがあった。
だけどそれも、目の前の光景に比べれば些細なこと。
「《我が手に・刃を》」
手首にある金属製の腕輪を素材にして、細身の刀を錬成した。
息を吸う。体温が上がる。
地面を砕かんばかりの勢いで踏み込み、爆発的な加速を以て瞬時に『カーミラ』を刀の間合いに置く。
彼女の首へと刃を振るった。
“炎の呼吸”壱の型、不知火。
『カーミラ』は人ならざる身体能力で私の刀から逃げようとする。が、それよりも私が刀を振り切る方が速い。
「ちっ」
思わず舌打ちをする。
流石というか、曲がりなりにも吸血鬼。
首の半ばまで斬られながらも素早く後方に飛び退きーーー直後まるで何かを避けるように首を逸らした。
次の瞬間、彼女の顔があった位置を雷が通り抜ける。
ジャティスの援護かなと思ったのだが、どうもそれは違った。
「其処までだ、吸血鬼」
特務分室の魔導士礼服を翻すのは、休みを与えた筈のアルベルトだった。
というわけで、クロスするのは『鬼滅の刃』の技です。後でタグ追加しときます。