何か最近「学戦都市アスタリスク」のユリス憑依ものを書きたくて仕方ない。まだまだこっちで書きたいことがあるというのに……実はもう一話に手を出しちゃったんですよね。仕上がり次第投稿するかな。
グレン視点に挑戦します。
これは俺たちが郵便社に忍び込む少しばかり前の出来事。
「ねぇ、グレン君。少し聞きたいんだけど………いいかな?」
セラはそう言いながら俺の隣に座ると、じっと目を合わせてきた。そして両の手で頬杖をつき、ぐいっと顔を近づけてくる。
「何だよ、白犬」
「イヴに何か言われたことでもある?」
「っ!」
動揺は一瞬。だがそれだけで目の前にいるこいつには十分だったらしい。やっぱり、というような表情を見せて肩をすくめた。
脳裏に蘇るのは俺が特務分室に入って間もない頃、イヴと酒を飲み交わしながら今になっても捨てられない俺の夢を、正義の魔法使いを目指しているのだと馬鹿みたいに語った日のこと。
『正義の魔法使い、ねぇ?いいんじゃないの、やってみれば。誰が不可能だと断じたわけでもなし………それにいざって時は私が助けてあげるから』
そう言うあいつは同い年だっていうのにどこまでも上から目線で、そして気のせいかもしれないが、どこか俺を憐れむような視線をしていた。
酒を傾けてイヴは言った。
『けどね、グレン。………どうせ言っても無駄だろうけど、それでも一つだけ言っておくわ』
『ーーーーーーその先は地獄よ』
事実、俺は地獄を見た。正義の魔法使いが幻想にすぎないことを理解した。
だがそれでも俺が特務分室に居続けるのは。
「……それでグレン君はイヴと仲が悪いんだね」
きっとこいつが居るからだろう。
「いや別に、そういうわけじゃねえけどよ……」
セラの言葉にそう返した。だがならば仲が良いと聞かれるとそうでもない。
イヴが俺を嫌っていないのは分かるし、それどころかどうにか距離を詰めようとしていたのも分かる。何というか、態度が友達を作ろうとする子供みたいなのだ。言えば絶対怒るだろうから言わないが。
(つーか……)
横目でセラを眺めてため息を吐く。
結局セラに話してしまった。こいつに隠し事というのは何故かできそうにない。
「でもちょっと気になるかな」
「?何がだよ」
「イヴがグレン君に言ったこと」
「……まぁ、確かにな」
最近になってようやく気づいた、違和感というには本当に些細なもの。セラは当然のようにそれに気づいた。
「グレン君の行き先をイヴなりに予見した、っていうよりも………何だかそういう実例を知っているみたいに感じる言い方」
俺は頷いた。
そう。あの時のイヴの口振りはまるで俺、あるいはジャティス以外に正義を目指した奴が居て、それを知っているかのようだった。
「そうだっ、今度一緒にイヴに聞いてみようよ」
「はあっ!?何言ってんだよ白犬」
「聞かなくていいの?グレン君は気にならない?」
私はそうでもないんだけどなぁ。
笑顔を浮かべるセラを見て言葉を詰まらせる。
気にならないわけがない。
俺とジャティス以外にもし、もしも本当にそんな奴が何処かにいるというのなら、実在しているというのなら。
「………そうは言ってねえだろ」
「良かった。じゃあ決まりだからね」
一体何がどう決まったのか尋ねようとしたその時、ジジイがひょいと顔を出して口を開いた。
「グレ坊、セラもおるな。そろそろ時間じゃから準備せい」
「んなの、とっくに終わってるっつーの」
ジジイにそう返答しながらも、俺とセラは一応自分の装備を確認してから立ち上がる。
「儂としては朝になるまでに、フェジテを出ておきたいと思っとる」
「うん、私も出来ればそれがいいと思う。グレン君は?」
「あぁ。そうだなジジイ、白犬」
俺は銃を片手に握りしめた。
「………手早くやろうぜ」