〈sideグレン〉
「嘘だろ、おい………」
目の前で繰り広げられる光景に絶句する。周りを見れば、全員が似たりよったりな反応をしていた。
「これは………凄いね」
「あぁ。まさかイヴがここまでやれるとは」
「いや、それを言うならリィエルもじゃろう。どちらも凄まじいことは変わらんがな」
「イヴって剣も使えたんだね」
イヴ=イグナイトは誰もが認める凄腕の魔術師だ。室長を務めるあいつの実力を見る機会は、決して多くはないが皆無ではない。
それから俺とアルベルトしか知らないことだが、リィエルはイルシア=レイフォードという暗殺者の能力と記憶を引き継いでいる魔造人間だ。だから生まれて間もないのに、戦闘能力が著しく高い。
そのリィエルを魔術で翻弄するなら理解できる。距離を保って遠くから仕留めるのも分かる。あるいはジジイの十八番である[魔闘技]を使うなら、近接戦をするのもいいだろう。
だが、まさか。
「いいいいやぁああああーーーッ!!」
「はぁッ!!」
まさか執行官No.1《魔術師》のイヴが真正面から斬り合うとか思わねーって。
〈sideout〉
「『万象に希う・我が腕に・剛毅なる刃を』ッ!」
先に動いたのはリィエルだった。彼女は地面に拳を打ち付け、己の身長ほどもある大剣を瞬時に錬成する。
直後に恐らく[フィジカル・ブースト]で強化したが故に可能であろう異常な速度で、私へと駆け出した。そしてその勢いのまま、大剣を振り下ろしてきた。
全集中・常中ーーー炎の呼吸 弐ノ型“昇り炎天”
私はそれを刀の斬り上げで防ぎ、リィエルの突進を押し返す。
「ッ!?」
(重たッ!!?)
全集中の呼吸を用いて尚手に震えが残っている。
これが原作において特務分室のエースとして重用された、《戦車》リィエル=レイフォードの一撃か。
「いいいいやぁああああーーーッ!!」
一撃必殺の威力を内包し、めちゃくちゃな太刀筋で迫る刃の全てを弾く。反撃に刀を何度も振るうが、とんでもない瞬発力で防がれあるいは避けられる。
「ならッ!」
炎の呼吸 漆ノ型“盛炎のうねり”
私は自身の前方を広範囲に渡って、猛烈な勢いを伴いながら薙ぎ払う。が、獣じみた動きでまた避けられる。
(瞬発力が高いのもそうだけど、勘が凄い良いわねこの娘。初見で“炎の呼吸”の型を避けるとか)
同時に後ろに飛んで距離を取った。だがリィエルが着地する瞬間に、力強く地面を踏み込み距離を詰める。
炎の呼吸 壱ノ型“不知火”
彼女に向け袈裟がけに振った刀は、限りなく不意打ちに近かった筈なのに、リィエルは大剣を盾のように構えて涼しい顔をして防いでいた。
彼女と再び距離を取り、私は口を開く。
「実力は申し分ないわね。けど中途半端に模擬戦を終わらせるのも何だし、次で終わりましょうか」
元々実力があるのを疑ってはいなかったけど、仮にも室長の私が経歴を伏せられた子供を何も言わずに特務分室に加えるというわけにもいかない。ので、分かりやすく模擬戦という形を取っただけにすぎない。
「分かった」