ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

34 / 50
第34話 セイバー

 【アイシクル・コフィン】や【フリージング・コフィン】で海魔を凍らせて、あるいは【ブレイズ・バースト】や【インフェルノ・フレア】で焼き尽くす。

 

 凍らせたものはセラかリィエルが砕いていく。グレンは主に罠系の魔術で海魔の足止めをしつつ、手に持つ拳銃で『青髭』へと銃弾を放つ。

 

 が、しかし。

 

 海魔の数が減る気配は一切なく、『青髭』に攻撃が届くこともない。

 

「全然、減らない」

 

「切りがないね」

 

「俺らが減らすより、あいつが化け物を増やすスピードが速い」

 

「というか、そろそろバーナード達の援護があっても良いと思うのだけど」

 

 さっきから結構派手な魔術を行使している。なのにそれがないということは、向こうにも何かしら起きていると考えるべきか。

 

(うーん。シノブと保護した子供だけでもさっさと逃したいけど………)

 

 難しいと言わざるを得ない。シノブが一人で海魔に襲われたりしたら彼女は長く抵抗できないだろうし、男の子を守りながらなら尚更だ。

 

「ウフッ」

 

 小さく『青髭』がシノブを見て笑った。嫌な予感を覚えて彼女の方に目を向ける。

 

「シノブッ!!」

 

「え?」

 

 呆けた声を出すシノブをセラの方に突き飛ばし、“何の前触れもなく身体が膨張した”子供から彼女を離す。

 

「ぐぅッ」

 

 直後に男の子は破裂し、その内側から食い破るようにして現れた海魔に吹っ飛ばされた。そして皆から少し遠い木にぶつかる。受け身をとり損ね、“呼吸”が乱れた。

 

「イヴッ!?」

 

 セラの声が聞こえたと思ったら、数え切れない海魔に囲まれる。どうやら予め、ここに血肉を撒いていたらしい。

 

「し、《灼熱の壁を》ッ!」

 

 とりあえず【フレア・クリフ】で私の周囲を炎の壁で覆った。それで海魔の足止めをしながら、呼吸を整える。

 

(やっぱり、ただ海魔と戦うだけじゃ『青髭』が英霊かどうか分からないわね)

 

 それを確認できてかつ現状を崩せる、新しい要素が欲しい。そして私には、用意できる手段がある。

 

 ポケットから水銀の入った瓶を取り出し、地面にゆっくりと垂らした。水銀で素早く地面に魔方陣を描き、ジャティスから拝借した疑似霊素粒子を宙にばら撒く。

 

(ジャティスなら魔方陣やら詠唱やら必要ないんでしょうけど、流石に私じゃそうはいかない)

 

 描いた魔方陣もこれから行う詠唱も、頭の中のイメージをより鮮明にするためのもの。それ以外の意味はない。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 【フレア・クリフ】の内側で片膝を付き、前世では特に有名だった呪文を唱え始める。

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)

 

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する。

 

 ――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

 誓いを此処に。

 我は常世総すべての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷しく者。

 

 汝 三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

 

 

 

 一人の騎士が現れる。

 

 金髪碧眼の少女。青いドレスの上から白銀の鎧を身に纏い、その両手は何かを握っているかのように丸められている。

 

「《蒼銀の氷精よ・冬の円奏曲(ワルツ)を奏で・静寂を捧げよ》」

 

 【フレア・クリフ】を解除した。【アイシクル・コフィン】を発動し、冷凍光線で化け物を凍らせる。直後、それらが全て砕け散った。

 

「ーーー問おう」

 

 それを為した彼女は私に視線を向け、こう言った。

 

「貴女が私のマスターか?」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。