ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

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 感想がとても有り難いのに、返信できなくて申し訳ないです。すみません(._.)
 それから、新しく仮面ライダー聖刃なんてのが始まってますね。どんな風になっていくのか、気になります。


第36話 罠

 

「キャスター、覚悟!!」

 

 リィエルと同等かそれ以上の突破力を以て、セイバーは海魔の群れを突き抜け『青髭』の元へ至った。そして不可視の剣を『青髭』へと振り下ろす。

 

「あ、何故………聖、処」

 

 そう言い残し、『青髭』は事切れた。ドサリと力なく、その身体が崩れ落ちる。

 

「やった、のか?」

 

 グレンが小さく零した言葉に「それはフラグ」とツッコミ入れようかなと思ったけど、確かに間違いなく『青髭』は絶命している。その証拠とでも言えばいいのか、数多くいた海魔も全て消えていた。

 

「そうみたいね。もう、一撃喰らうなんて油断したわ」

 

「あの、イヴさん。一応、診させて下さい」

 

「ん?別にいらないわよ。ただの打撲でしょうし」

 

「………軽く、触診するだけですから」

 

 半ば強引にその場に座らされた。そして服の上からシノブによって触診されている最中に、街の方へ向かわせていたバーナード達がやって来た。

 

「思ってたより、戻ってくるのが遅かったわね。何かあったの?」

 

「街の調査をしとったら、急によく分からん化け物共に襲われての。まぁ適当に蹴散らしてやったわい」

 

「そう。街の方の調査結果は?」

 

 ガハハ、と笑うバーナードを無視してアルベルトに尋ねると、シンプルに「手遅れだった」と答えが返ってきた。

 

「手遅れ?どういうこと?」

 

「『青髭』とやらはかなり前から、好き勝手していたのだろうな。何の問題もないように見えたが、死者が蔓延っているだけだった」

 

 ………それはゾンビたらけだったと、そういうことなのだろうか?

 

「生存者は?」

 

「確認できなかった。ところでイヴ、そこの女は何だ?」

 

 アルベルトの言葉に、全員の視線がセイバーに集中する。

 

「あぁ。ジャティスが使ってる人工精霊(タルバ)あるでしょ?あれと同じ、ただの使い魔よ」

 

 そう答えるとセラが「嘘だぁ」と呟いた。グレンもそれに同意するように何度も頷く。そんなに信じられないのかね?

 

「マスター、この者たちは?」

 

 どこか警戒した風に、セイバーが自発的(・・・)に質問してきた。それに少し疑問を覚えながらも、彼らは私の仲間と言う。

 

「そうでしたか、それは失礼しました。どうか皆さんも、私のことはセイバーとお呼び下さい」

 

 そう言う彼女に思わず首を傾げる。何かがおかしい気がする。

 

「………疑似霊素粒子を使ったのかい?」

 

「?そうよ」

 

 ジャティスはセイバーを一瞥し、黙って何かを考え始めた。何を考えているか知らないけど、個人的なことなら後にして欲しい。

 

「それより、そこの男が『青髭』か?」

 

 アルベルトが事切れた『青髭』を見て眉をひそめる。

 

「えぇ。無限増殖する化け物の召喚なんて、面倒な魔術を使っていたけど…………面倒なだけだったわ。全く………三流魔術師(グレン)にも劣ってそうな相手に、わざわざ命令とはいえ特務分室(私達)が動く必、要」

 

 ーーーーーーちょっと待った。

 

 ここの調査を実施していた魔術師たちは、そこそこまぁまぁ腕が立つ。流石に特務分室と同レベルとは言わないが、それでも確かな実力があった筈だ。

 

 違和感を覚えて倒れ伏す『青髭』をじぃっと見る。よく目を凝らすと、皮膚の一部が剥がれ内側に“何か”が見えてきた。

 

「………まさか」

 

 錬成した刀を逆手に持ち、息の止まったジル=ド=レェの胸から腹を浅く裂いた。

 

「おい待て、いきなり何してッ!?」

 

 グレンも思わず言葉を止める。リィエルの目はセラが塞いだ。私とてリィエルに人の中身をジロジロと眺めさせたくもないので、彼女がそうしてくれるのは有り難い。

 

 その遺体の内側には、子宮があった。身体の内臓と外側が一致していない。しかし、何かしらの魔術で変化しているわけではない。

 

 コレは|外見を『青髭』に似せて加工された女性の遺体《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》だ。

 

「皆すぐに逃げて!」

 

 罠だと、直感的に理解した私はそう言ったけど、その指示は遅かった。

 

 地面の下から先ほどのものとは比較にならないくらい、複数の大きな触手がその姿を現した。それらは私と皆を分断し、私を捕える動きを見せる。

 

「………ヤバい」

 

 そして触手に飲み込まれたかと思えば、次第に意識が薄れていく。

 

「姉さん!!」

 

 ーーー懐かしい呼び方をされたのは、きっと気のせいだろう。

 


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