「撤退もありじゃと思うぞ?現状の戦力では、あの怪物に対する決定打がないからの」
「可能性があるとすれば、アルベルトかイヴくらいだろうね。それでも、確実に仕留める保証はない」
「流石にあんな質量を一撃で、っていうのは無理があるんじゃないかな?」
「アルベルトのあれなら、ワンチャンやれるんじゃね?ほら、七星剣とかいうの」
「対象を視認さえ出来ればな。だがあれ程分厚い肉に入り込まれると、直撃させるのは不可能と言わざるを得ない。そう言うお前こそ、【イクスティクション・レイ】はどうした?」
「セリカならともかく、俺があれに撃った所でなー。城を一つ吹き飛ばせるような威力は流石に出せねーよ」
「やはり、一度退いて戦力を整えてから「いいえ、それではいけません」何?」
沈黙を保っていたセイバーが口を開く。
「あれは放置すればする程に、被害が増します。今、この場で対処するべきです」
………セイバーの言う通りではあるのだが、それが出来れば苦労しない。というかさっきから何なの?私ってセイバーの人格とか思考とかも再現したっけ?戦闘能力重視でイメージした筈なんだけど。
(いや、それは後でいいや)
とりあえず今は、あれをどうにかする方法が先だ。
「マスター、宝具開帳の許可を。私の宝具であれば、確実にあの怪物を消し飛ばせます」
「却下」
セイバー?の申請は思考の余地なく却下。
「なッ、マスターもあれを放置しようというのですか!?」
「そんなわけないでしょう」
私の言葉に意外そうな表情をする皆に向けて言った。
「三分。それだけでいいから、各々のやり方で時間を稼いで頂戴。その後は私が片づけるわ」
〈sideグレン〉
「ーーーってもなぁ、どうにかなんのかよこれ。まるで足止めできてる気がしねぇんだけど」
怪物の進行方向に次々と罠を仕掛けてはいるが、それが効いてる様子はない。いくら俺が三流魔術師とはいえ、流石に自信を失くしそうだ。
バーナードがリィエルとセイバーとかいう少女を率いている極一部では、どうやらそうでもなさそうだが。
「そんなこと言ってないで、早く次の場所に行こう?まだまだやれることはあるよ」
「………そうだな」
セラが駆使する風で移動して、また別の場所に罠を仕掛けている最中に、ふと気になって彼女に尋ねる。
「白犬。イヴは一体、何をどうするつもりなんだ?どんだけ強力な軍用魔術を当てても、あの再生速度を上回るのが困難なことは目に見えてる」
「うん。だからその再生速度を上回る一撃を、しかもお城と同じくらいの規模で当てないといけない。多分だけどイヴは、
「………は?あいつ、そんなの持ってんの?」
固有魔術。
再び移動しながらそう尋ねると、セラは不思議そうに首を傾げこう言った。
「もしかして、セリカさんから聞いてない?」
「何を?」
「イヴ、その固有魔術でセリカさんに勝ったことあるんだけど………」
絶句した。そんなの聞いたこともない。そもそもあのセリカに勝てる奴がいるなんて、想像すらしたこともない。
セリカ=アルフォネア。この大陸で唯一の第七階梯であり、俺の育て親である女性。長きに渡り務めた特務分室を辞めた今でも尚、その実力に陰りは一切見えない。
そのセリカに勝った。それがどれ程のことなのか、分からない程馬鹿じゃない。
例えば仮に、特務分室のメンバー全員で、有利な地の利を得たとして、さらにその上に完璧な奇襲を仕掛けることができても。
ーーーそれでも、セリカが勝つだろう。
それくらいにセリカ=アルフォネアという魔術師と、他の魔術師との間には大きな隔たりが存在している。
「勿論、無条件でってわけじゃなかったけど………グレン君。ちょっと離れよう」
セラの視線が上を向く。それに釣られて俺も上を向いた。
「でないと、巻き込まれちゃうから」
ジャティスの天使に乗り、空から怪物を見下ろすイヴがいた。