ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

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第4話 アルベルト=フレイザー

 

 昨日はセラと酒盛りしたので、当然のことながら仕上げるべき報告書の作成が終わっていない。

 

 おかげで若干の頭痛を抱える中、朝早くから報告書の作成を行う羽目になっている。

 

 いやまぁ、自業自得なのだが。

 

 ちなみに私が使っている室長用の職務机は、他のメンバーと比べてかなり広い。つか大きい。

 

 しかしその大部分は調査系や討伐系の任務を大雑把に左右に分け、さらに短期的なものと長期的なもので細かく整理した指令書で埋まっている。

 

 驚くべきことにこの指令書、数ある引き出しの中まで少なからず詰まっているのだ。

 

(これ全部片付いたりするの?)

 

 無理だと思う。

 

「おい、イヴ」

 

「ん?」

 

 声を掛けられた。こんな時間に私以外に居るとは思ってなかったので、誰だろうと思い一度顔を上げる。

 

「………………大丈夫なのか?」

 

 そこに立っていたのは、いつもの鷹のような鋭い視線を少しだけ柔らげた青年だった。

 

 アルベルト=フレイザー。執行者No.17《星》。

 

 個人的なものだが、特務で頼りになる男一位だ。

 

「あーー………えぇ、問題ないわ。次の任務に支障は出ないようにはしてるから」

 

 今日の予定を頭の中に思い浮かべつつそう言えば、彼は何か言いたげな表情になった。

 

 しかし「………そうか」と言っただけで、アルベルトは職務室から出ていった。

 

「あ、そうか」

 

 思い出した。そういえば今日の夜に、アルベルトと組んでの潜入任務があった。

 

 今回の相棒が朝早くからこんなことしてたら……。

 

「そりゃ、あんな顔もするわよね」

 

 早いとこ終わらせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 この時は間に合うと思ってたんだけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

<sideアルベルト>

 

「なるほど、了解した。途中からとはいえ、任務に参加はするのだろう?ならば構わん」

 

『そう言って貰えると助かるわ。苦労掛けて悪いわね、アルベルト』

 それじゃあ、また後で。

 

 片耳に取り付けたイヤリング型の通信魔導器を切り、一つため息を吐く。

 

(やはりこうなったか……)

 

 今朝にイヴと合った時点で、どこかこうなる気はしていた。

 

 彼女が報告書の作成をしていたのは見れば分かったが、驚いたのはその数。

 

 二十枚。

 

 それがイヴの机に広げられた、手付かずの報告書の数だった。つまりイヴは昨日だけで、その数の任務をこなしたということ。

 

 その報告書を仕上げるだけでも時間が掛かる上に、部下である俺たちからの報告書の確認やその他諸々。特務分室の室長であるイヴにはやるべきことが多々ある。

 

 しかしこうなることは、イヴにも理解できていた筈だ。

 

 彼女は、イヴ=イグナイトは優秀だ。それも

とびきり。自覚はあまりないようだが、先代の紅炎公と比べても遜色ないだろう。

 

 普段なら自分が任務に間に合わないなら、イヴは他の誰かを寄越すくらいのことをする。しかし今回はそれが無かった。

 

 見た限りでしかないが、恐らく既に彼女は限界近くまで疲弊しているだろう。

 

 この現状は。

 

(……イヴを取り巻く環境のせいか?)

 

 一瞬そんなことが頭に浮かんだが、すぐさま意識を切り替えた。

 

「今考えるようなことではない、か」

 

 今回の任務は天の智慧研究会との繋がりがある可能性が極めて高い、ある貴族が開くパーティーに乗じて潜入し証拠を探すこと。

 

 任務の内容を頭の中で確認し、俺はその貴族の屋敷に入り込んだ。

 




 
 これからしばらくはアルベルト回(の予定)です。

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